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第37号単発セール
国内盤新譜から

 2007年前半にリリースが予定されている膨大な新譜の中で、とくにアリアCDが目をつけてセール価格でお贈りするコーナーです。


小菅優新譜
ライヴ・アット・カーネギー・ホール
国内SONY先行発売 SICC545 (2CD)\2940

 小菅優。話題の日本人女性ピアニスト。
 1983年東京生まれ。9歳でヨーロッパ・ピアノ教師協会会長カール・ハインツ・ケマリング教授に師事。10歳でヨーロッパへわたる。現在ハノーファー音楽芸術大学に在籍中。
 これまでほとんど無名だった彼女が突然有名になったのは、SONYからの新譜がレコ芸でいきなり特選を取ったから。さらに先日TBSの『情熱大陸』に登場し、一躍時の人となった。
 SONYからリリースされたのはリストの「超絶技巧練習曲」。いきなりこの難曲をもってくるというのもすさまじいが、彼女のすごいところはほとんどコンクール歴がないこと(青少年向けのピアノ・コンクールで2回ほど優勝している)。新人演奏家を紹介するときにつきものの、「XX賞受賞」とか「XXコンクール優勝」などの肩書きがほとんどない。まさにヨーロッパで鍛えられた、たたきあげの実力派。若いが、最近の日本人アーティストに多いアイドル性皆無のピアニストなのである。
 そんな彼女、2005年にはアメリカ・クラシックの殿堂カーネギー・ホールでのデビュー、2006年にはザルツブルグ音楽祭で日本人として2人目となるリサイタル・デビューを果たすなど、アイドル路線とは無縁の快進撃。昔ドイツRAMからリリースされていた3枚のアルバムもSONYが買い取り再発された。価格やレーベルなどかなり混乱していたが今回ようやく統一。最新新譜とあわせて現在の彼女のアルバムをご紹介します。

<最新アルバム>

国内SONY
SICC545
(2CD)
\2940
小菅優 ライヴ・アット・カーネギー・ホール

バッハ / ブゾーニ編:シャコンヌ
ハイドン:ピアノ・ソナタ変イ長調 H.16/46
ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番ヘ短調 op.57『熱情』
武満徹:雨の樹素描
シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集 op.6
グラナドス:マハと夜うぐいす(『ゴイエスカス』より)
リスト:超絶技巧練習曲集〜第5番『鬼火』
ショパン:ノクターン第20番嬰ハ短調
2005年11月14日、ニューヨーク、カーネギー・ホール・ライヴ
2005年11月14日、ニューヨーク、カーネギー・ホール・ライヴ
アメリカ・クラシックの殿堂カーネギー・ホールでのデビュー・コンサート。ニューヨークの聴衆を熱狂させた歴史的瞬間。レコ芸でも特選だった。

<独RAMからの移行盤>

独SONY
82876876232
\2600

リスト:巡礼の年 第2年への追加「ヴェネツィアとナポリ」
シューマン:アレグロ、幻想曲Op.17

小菅優(P)
RAM 50081からの移行。

SONY
SMK 93035
\1700

リスト:スペイン狂詩曲、
ラフマニノフ:楽興の時、
シューベルト:即興曲D.946より第1曲、第2曲
小菅優(P)
RAM 59881からの移行。
SONY
SMK 93490
¥1700
ショパン:練習曲Op.10、Op.25 小菅優(P)
RAM 59908からの移行。
ドイツ最大の音楽批評誌「フォノ・フォルム」より5つ星を与えられる。

<SONY旧譜>

SK 87315
¥2200
リスト:「超絶技巧練習曲」全曲 小菅優(P)
国内盤ソニー
SICC336
¥1680
リストは評論家から絶賛され、「ひとときも目を離せなくなりそうなピアノの芸術家の登場を記念する、特筆大書すべき1枚である。(浜田滋郎氏)」、「申し分ないどころか、昨今リリースされた同曲集の中でも、屈指の出来栄えである(那須田務氏)」、「演奏に相当な成熟度が感じられる。素晴らしいピアニストである。(山田治生氏)」・・・とまさにべた褒め。
ショパンはドイツ最大の音楽批評誌「フォノ・フォルム」で5つ星を受賞したという。何しろ彼女が尊敬するのはアラウやシュナーベルというのだから、やはりアイドル・ピアニストとはちょっと違う。
SK 93681
¥2200
ショパン:
  24の前奏曲Op.28/
  前奏曲 嬰ハ短調Op.45/
  夜想曲 嬰ハ短調 
小菅優(P)
国内盤ソニー
SICC223
\2520
独SONY
82876 810552
\2600
モーツァルト:
 ピアノ協奏曲9番「ジュノム」 /同第21番
小菅優
フォスター指揮
北ドイツ放送響
国内盤ソニー
SICC421
\2520
名前ばかりが先行してしまっていたが、SONYも少しずつ新録音をリリースしてくれている小菅優。モーツァルテウム音楽院大学院で学び、ザルツブルグ音楽祭で日本人として2人目となるリサイタル・デビューが催された彼女がここでようやく本命のモーツァルトを録音。第21番では自作のカデンツァも用意してやる気満々。でも自然でナイーヴな素敵なモーツァルトが出来上がった。
録音:2005年。

<カメラータ>

CMCD-28058
\2940
西村 朗:
 魂の内なる存在 —
   西村 朗 協奏曲集【西村 朗 作品集 7】
 (1)サクソフォン協奏曲〈魂の内なる存在〉(1999年)
 (2)〈樹海〉〜
    二十絃箏とオーケストラのための協奏曲(2002年)
 (3)ピアノ協奏曲〈シャーマン〉(2004年)
須川展也(A‐Sax)(1)
吉村七重(二十絃箏)(2)
小菅 優(P)(3)
飯森範親(指揮)
ヴュルテンべルク・フィルハーモニー管
より深いコスゲ・マニアの方に。
2002年から2004年にかけてロイトリンゲンのオーケストラ、ヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会でそれぞれ演奏された作品をセッションにて録音。須川展也(サクソフォン)、吉村七重(二十絃箏)、小菅 優(ピアノ)、飯森範親(指揮)と豪華アーティストたちによる入魂の一枚!




松浦豊明の世界 Vol.1
シューマン・ライヴ集

 レコード芸術の2月号の新譜評でいきなり特選を取って表に出てきた日本ピアノ界の重鎮、松浦豊明のアルバム。

 「戦後間もない1948年、HNK・毎日音楽コンクールに第1位かつ特賞。58年、第1回モスクワ・チャイコフスキー・コンクールに入賞。翌59年、ロン=ティボー国際コンクールに審査員全員一致で優勝・・・・・・。このように松浦豊明は、私たちが持った真に国際的な実力の具わる大家ピアニストである。それなのに、またこんにちなお77歳の身で現役たることを失わない名匠であるにもかかわらず、若い世代に果たしてその真価が広く知られているか否か。否とすれば、それは、いかなる巡り会わせか、氏の演奏になるレコードというものが、極端に少なすぎたゆえではあるまいか。幸いにして諸大学ほかで氏の薫陶を得た人々は別として、これでは松浦豊明がどれほどのピアニストであったのか、いや、現にあるのか、一般の好楽家にはほとんど知りようがない、という状況だった。したがって、氏の自宅に所蔵されてきた数多いライヴ・テープの中から、氏の自選・監修のもと一連のディスクが製作されることになったのは、たいへんに嬉しい成り行きである。」(レコード芸術2月号)
 
 ということでこれまで幻だった松浦氏の演奏がアルバムとして聴けるようになった。
 グリーンドアの監修などでも知られる小笠原吉秀がプロデューサーを務める。小笠原氏が、松浦氏にどういう編成でリリースするか尋ねたところ、作曲家でまとめたシリーズにしたい、ということに。そして第1弾はぜひにも、とシューマンとなった。
 演奏はいかにも巨匠の世界を生きてきた重鎮らしい堂々とした風格。とくにソナタは一発どりの生ライヴらしい緊張感あふれる白熱の演奏。
 次回はベートーヴェンが予定されているらしく、これから少しずつこの日本の誇る名匠の真価が明らかになる。

オフィス・マツウラ
TMCD001
¥2300
シューマン:蝶々、ピアノ・ソナタ第2番
        幻想曲、森の情景
松浦豊明(P)
1983,1985,1990年。


<秘蔵プライベートCD-R>

TM 0001
\3000
ブラームス:ピアノソナタ第3番、
ドビュッシー:喜びの島(以上1998年東京ライブ)
ショパン:夜想曲第5番、
リスト:ハンガリー狂詩曲第2番(以上1957年スタジオ)
松浦豊明(P)
実は密かに作成されていたプライベートCD-R。CDRで解説なし。在庫あと30枚程度らしい。
うーん・・・しかし、ひねくれているかもしれないが、こっちのアルバムにやられた。一般流通商品ではないかもしれないが、この演奏はすごい。
実に実に味わい深かったのである。とくにまさしく秘蔵となる1957年のスタジオ録音2曲のなんと潤いと感興に満ちていることか。晩年の孤高の演奏とはまた一味違う天才の音楽を聴くことができる。1年後にチャイコフスキー・コンクール、2年後にロン=ティボー・コンクールを控えるこの青年の心に淀みも力みもない。音楽は嬉々と歌い、跳ね、虹色の輝きを撒き散らす。半世紀前、この才能を持って彼は単身世界に乗り込んだわけだ。納得。・・・これは優勝するよ。





スヴェトラーノフ「鳥」&「海」復活!
オクタヴィア/OVCL 00286 & OVCL 00287 各1CD¥3000

 先日「哀−Sorrow」がVENEZIAから復活して歓喜したが、今度はオクタヴィア(エクストン)から「鳥」と「海」が復活!
 「鳥」と「海」と題されたこれらのアルバムは、スヴェトラーノフが自らプログラミングしたモスクワ音楽院でのライヴ録音。そのサウンドが重戦車のようと賞される両コンビの特徴として、ラヴェル、ドビュッシーは、発売当時賛否両論で大きな話題となった。スヴェトラーノフの没後5年にあたる今年、不朽の卓越した強大な音楽性とカリスマ性を再認識するアルバムとなるだろう。
 しかし、では残りの「和−アダージョ」はどうなる!?

OVCL 00286
\3000
「鳥」
 ラヴェル:マ・メール・ロワ
 レスピーギ:組曲「鳥」
 ストラヴィンスキー:組曲「火の鳥」(1945年版)
スヴェトラーノフ指揮
ロシア国立響
録音:1992年12月27日 モスクワ音楽院大ホールにて収録
OVCL 00287
¥3000
「海」
 チュルリョーニス:交響詩「海」
 グラズノフ:管弦楽のための幻想曲 ホ長調「海」
 ドビュッシー:交響詩「海」(3つの交響的スケッチ)
スヴェトラーノフ指揮
ロシア国立響
ロシアの巨匠、エフゲニ・スヴェトラーノフの幻のアルバムが再登場!!ロシア最高の指揮者の一人に数えられるスヴェトラーノフの2つのアルバムが久々の再発売となる。録音:1993年2月13日 モスクワ音楽院大ホールにて収録



渡邊暁雄&日本フィル/シベリウス:交響曲全集
日本コロムビア COCQ 84283 (4CD)¥3675


 1982年ヘルシンキ・フィル初来日公演。
 四国の片田舎に海外の大きなオーケストラが来ること自体が珍しいのに、少年が最も愛したオーケストラがやってきた。・・・しかし少年には不満があった。指揮者が日本人だったのである。ベルグルンドであれば一番いいのだが、オッコ・カムでも十分である。・・・しかし初来日のヘルシンキ・フィルを連れてきたのは日本の指揮者だった。ちょっと調べたら、その人はシベリウスで有名な人らしく、2回も交響曲全集録音を入れていて、その最初の録音は世界最初の全集録音として話題になったらしい。・・・でもシベリウスは、しかもヘルシンキ・フィルで聴くシベリウスは、やはりフィンランド人の指揮者で聴きたい。・・・などと、生意気な不満を抱きつつ、その少年はオーケストラの登場を、そして日本人指揮者の登場をちょっと生意気な格好で待っていた。
 そしていよいよオーケストラの団員がステージにやってきて、そしてその日本人指揮者も登場した。

 おや、思ったような人じゃないな。なんかかっこいいな。・・・その指揮者はすらっとしたスマートな体躯、きりっとしながらも穏やかな表情。なんとなく日本人離れした雰囲気を持つ。
 そして曲が始まった。1曲目はなんだか訳がわからぬうちにおわってしまったが、続いてヴァイオリン協奏曲が始まる。「所詮、日本人指揮者」とか言っていたが、聴いているうちにだんだんその熱い演奏に引き込まれ始める。ヴァイオリニストがまた日本人で癪に障ったが、その日本人ヴァイオリニストがいやにうまい。そのうえ観客を引き込むのが上手というか、こりゃあ大変な曲なんだなあ、とみんながごくりとつばを飲んでしまうような演奏だった(古沢巌だったのか?)。そうして最後のメインの交響曲第2番。もっと暴れてほしいとか、もっと極端なことをやってほしいとか最初は思っていたのに、だんだんその穏やかな抒情に引き込まれていく。その指揮者の人間的な魅力があふれているかのような温かで雄大で優しい演奏。日本人だからどうとかこうとか思っていた自分がだんだんいやになってくる。ゴリゴリと押し付けがましく攻めてくる演奏ではないのに、心の中にはなんだか熱いものがこみ上げてくる。・・・いったいなんなんだ、これは・・・。一体誰なんだこの人は・・・。
 渡辺暁雄。
 ・・・その名を忘れまい、と少年は思った。

 その渡辺暁雄が、実はフィンランド人の母親と牧師の日本人の間に生まれたハーフであることを少年が知ったのはそのコンサートから10年後。渡辺暁雄が70年の生涯を閉じた後だった。なるほど、そういうことだったのか・・。彼はずっと心に引っかかっていたものが取れたような気がした。
 1990年、秋。ちょうど彼が働くCDショップではその指揮者の2度目のシベリウス交響曲全集が大ベストセラーとなっていた。

COCQ 84283
(4CD)
\3675
シベリウス:
 交響曲全曲/交響詩「トゥオネラの白鳥」/悲しきワルツ
渡邊暁雄(指揮)
日本フィル
戦後、日本のオーケストラの成長、発展に大きな功績を残し、多くの音楽家・聴衆から敬愛されてきた指揮者、渡邉曉雄。フィンランド人の声楽家を母に持つ渡邉にとってのシベリウスは、まさに血筋として流れる内なる声であった。その渡邉は1962年に世界初のステレオ・レコーディングによるシベリウス交響曲全集を完成させているが、今回再発の音源はその約20年後に行われた2度目の全集録音(デジタル)。1981年にレコード・アカデミー賞を取っている。前回にも増して音楽の内面を深く掘り下げていく姿勢が強く表われ、思索的な味わいが彫り深く描き出された感動的な全集。まさに渡邉の遺作&ライフワークと呼ぶにふさわしい内容。
90年、96年にも発売されたが、久しぶりのリリース。今回ライナーノーツは生前の渡邉を知る人によるエッセイを(一部差し替え)新たに掲載しての再発売。



フェルツマン最新作
バッハ:イギリス組曲(全曲)
カメラータ東京 CMCD 20068/9(2CD)\4200

 ロシア出身のピアニスト、ウラディーミル・フェルツマンによる久方ぶりのソロ・アルバム。
 前作では、ウクライナの作曲家、ヴァレンティン・シルヴェストロフの作品を中心に選曲された、大変にロマンティックなコンピレーション・アルバム「ポストリュード」をリリースしたが、今回はフェルツマンの真髄ともいえるバッハ。
 バッハは、生涯に渡り合計3 つの鍵盤楽器のための組曲を残した。初期に「イギリス組曲」、中期で「フランス組曲」、そして最後が「6 つのパルティータ」。どれも、全6 曲から構成され、各曲はさらに「アルマンド」、「クーラント」、「ジーグ」といった舞曲の題が付けられている。すでに、「6 つパルティータ」はリリースされているが、音色の美しさ、作品解釈の深さ、などフェルツマンらしさが随所に溢れ、フェルツマン・ファンはもちろんのこと、多くのバッハ・ファンを唸らせている。今回は、初期に作曲された「イギリス組曲」。当時、バロック時代では即興的に様々な装飾を付して演奏するスタイルが主流でしたが、そのスタイルをフェルツマンはどのように魅せ、聴かせてくれるのだろうか。残すフランス組曲もすでに収録を終えたとのこと。バッハのこれら3 つの組曲を聴いた時にようやく、フェルツマンの音楽観、世界観に少しだけ近づくのかもしれない。

  復活してからのフェルツマンの録音は、当初メキシコURTEXTが発売してカメラータが日本盤を出している、という感じだったのに、ここへきてカメラータからはぞくぞく新譜が出るのに、URTEXTからは出る気配がない。どうやら「ポストリュード(28098)」からカメラータだけの発売になった模様。フェルツマン、カメラータ単独アルバム第4弾、今回のアルバムについてもURETXTから出るという予定は今のところきていない。価格もそう高くないのでこれからはフェルツマンに関してはきちんと入るカメラータ盤で販売していきたい。

CMCD 20068/9
(2CD)
\4200
J.S.バッハ:イギリス組曲(全曲)/フェルツマン
 イギリス組曲 第1番 イ長調 BWV806
 イギリス組曲 第2番 イ短調 BWV807
 イギリス組曲 第3番 ト短調 BWV808
 イギリス組曲 第4番 ヘ長調 BWV809
 イギリス組曲 第5番 ホ短調 BWV810
 イギリス組曲 第6番 ニ短調 BWV811
ウラディーミル・フェルツマン(P)

【旧譜】

 先年からリリースされ始めたURTEXTのアルバムを聴いた人なら、世界中のピアニストの中で今フェルツマンが最も魅力的なピアニストであることを否定しないと思う。これまでショパン、バッハ、ムソルグスキー、とリリースしてきてそのいずれもがおそろしく高い水準をクリアしてきた。今年ようやく久々の来日を果たし、さまざまな感動をファンに与えてくれた。

 フェルツマンは1952年モスクワ生まれ。「ソビエト最後のヴィルトゥオーゾ・ピアニスト」と呼ばれ、19歳でロン・ティボー・コンクールで優勝。しかしその後イスラエルへの移住申請が当局にばれてソビエトでの演奏活動を停止される。そのときレーガン大統領じきじきの援助によってアメリカに亡命、世界中の大きな話題となった。そして国際的関心の中SONYと契約、衝撃的なアルバムを連発した。・・・プロコフィエフ、ラフマニノフ、チャイコフスキーの協奏曲、そしてリストのピアノ・ソナタである。評論家はこぞって絶賛、多くの音楽ファンがその才能を褒め称えた。宇野功芳氏も「ほとんど魔術的といっていいほどの音の生かし方や抜群のテクニック、音楽への共感」、「技術、音楽性ともに将来のピアノ界を背負って立つべき実力者」と手放しの大絶賛。それら3枚のアルバムはいずれもレコ芸では特選扱いだったことを思い出す。宇野氏の言葉ではないが、間違いなくこれからのピアノ界の大御所となるべき人だと思っていた。
 ところがその後ほとんど消息を絶ち、何年かしてこっそりとメルダックから国内盤で1枚出て(それもすごいラフマニノフだった!)、輸入盤ではMUSIC MASTERSから何枚か出たが日本ではほとんど無視された。そうして現在は彼のCDは国内盤は全滅、輸入盤もSONYに1枚あるだけ。・・・てっきりもう音楽界を去ったものと思っていた。
 そんなフェルツマンが生きていて、しかもメキシコのマイナー・レーベルURTEXTから名盤を次々と生み出した。最初はそのリリース自体に驚いたが、演奏を聴いてもっと驚いた。その変貌ぶり、その急激な進化に愕然とした。



第1弾ショパン

カメラータ東京
CMCD-15040/1
(2CD)¥3150
ショパン:夜想曲全集、舟歌、子守歌 ウラディミール・フェルツマン(P)
 抜群だった。
 どちらかというとかつてはバリバリ弾きこなす人だったが、ここでは明らかな転身を見せる。
 光り輝いていたヴィルトゥオーゾの若き騎士から、情緒と内面を重視する賢者へ。しかし音楽全体のイメージは「賢者」や「哲学者」なのだが、その音色の瑞々しいこと。潤いに満ち、エレガントでぜいたくな響き。そしてノクターンのややもすると少女趣味的な装飾音符のひとひらひとひらにまで、フェルツマンの細かな神経はいきわたる。即興的なセンスも忘れない。間違ってもベタベタしたロマン過剰の演奏ではないが、感情の奥深いところでの繊細な変化まで音楽は表現する。フー・ツォンやピリスといった非常にレベルの高い演奏とともに語られるべき記念碑的な録音。すごい。(発売当時のインフォより)

第2弾 バッハ

JBCC 054-055
(2CD)
¥4600→¥4180
J.S.バッハ:
 パルティータ第1番 変ロ長調/同第2番 ハ短調/同第3番 イ短調/
 パルティータ第4番 ニ長調/同第5番 ト長調/同第6番 ホ短調/
 2声のインヴェンション
ヴラディミール・フェルツマン(P)
CMCD-15042〜3
(2CD)¥3150
これのみURTEXT輸入盤の在庫が3つあるので、高くてもURTEXT盤が、という方はどうぞ。
このバッハの「パルティータ集」もまた、20世紀の“名盤”として長らく君臨してきた、あのグールド盤の存在すら色褪せてしまうのではないか、と言っても大袈裟ではないほど、フェルツマンの破格の音楽性が発揮されている。
1999年9月/モスクワ。

第3弾 展覧会の絵

CMCD-20051
¥2100
ロシアン・スーヴェニア(ロシア土産)
 ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》
 チャイコフスキー:
  《子供のためのアルバム》Op.39/
  《18の小品》より〜〈ひなびたこだま〉Op.72-13
ヴラディミール・フェルツマン(P)
サンプルCD−Rを聴かせてもらったが、かつてのフェルツマンを髣髴とさせる豪華絢爛、きらびやかなピアニズム、そして明瞭なダイナミズム。フェルツマン以外誰もやったことのないようなかなり個性的な音の強弱にはちょっと眩暈すら覚える。ショパンもそうだったが、この人のピアノには人を幻惑させる何かがある。ラストでは下手なオケの演奏の数十倍の高揚感&幸福感を覚えることは間違いない。
そして驚いたのが続くチャイコフスキー。きっとおまけで入っているんだろうと思ったこれらの作品の、なんと美しく装飾されていることか。やさしく、はかなく、けなげ。新生フェルツマンの今の姿を思い知らされた。ラストの余韻は聴きもの。
いずれにしても過去のことはもう忘れていいかもしれない。今こそ彼の全盛期だと断言できる。

第4弾 小品集スピーク・メモリー

CMCD-20052
¥2100
スピーク・メモリー
 ラフマニノフ:
  《絵画的練習曲集》より<第2番ハ長調op.33-2>、
  《10の前奏曲》より<第6番変ホ長調op.23-6>、Daiseis
 ショパン:マズルカ第17番、ワルツ第9番、第7番
 シューベルト:アダージョ ホ長調、
 シューベルト(リスト編曲):祈祷、献呈
 シューマン:
  《子供の情景》より<トロイメライ> & <詩人のお話>、
  《森の情景》より<孤独な花>
 ブラームス:間奏曲変ホ長調op.117-1
 メンデルスゾーン:
  《無言歌集第3巻》より<デュエット変イ長調op.38-6>
 ドビュッシー:
  月の光がそそぐテラス、ヒースの草むら
 スクリャービン:《3つの小品》より<アルバムの綴りop.45-1>
 グリーグ:アリエッタ、孤独なさすらい 
 J・S・バッハ(マイラ・ヘス編曲):
  《カンタータ第147番》より<主よ、人の望みの喜びよ>
ウラディミール・フェルツマン(P)
 フェルツマン自身によるプロデュース。
 光り輝いていたヴィルトゥオーゾの若き騎士から、情緒と内面を重視する賢者へ。しかも音楽全体のイメージは「賢者」や「哲学者」なのに、その音色の瑞々しいこと。潤いに満ち、エレガントでぜいたくな響き。ショパンなどの、ややもすると少女趣味的な装飾音符のひとひらひとひらにまで、フェルツマンの細かな神経はいきわたり、心の奥底の変化まで生き生きと表現していく。
 このアルバムは彼の復帰第4弾。
 ただのピアノ小品集と侮るななれ。こんな「トロイメライ」を、こんなショパンのワルツを、こんなラヴェルの「パヴァーヌ」を聴いたことがありますか?
モスクワ音楽院コンサート・ホールでの録音(2000年2月)。
その後フェルツマンの意志でラヴェル:パヴァーヌ ト長調は削除された。

第6弾 ポストリュード

CMCD-28098
\2940
ポストリュード
−時を超えたピアノ・ストーリー/
ウラディーミル・フェルツマン
 C・P・E・バッハ:
  アンダンテ・コン・テネレッツァ イ短調
 シューベルト:ピアノ小品 イ長調
 シューベルト/ヴァレンティン・シルヴェストロフ:
  マリッジ・ワルツ
 ヴァレンティン・シルヴェストロフ:キッチュ・ミュージック
 D・スカルラッティ:ソナタ ロ短調 K.87
 ショパン:練習曲 作品10-6 変ホ長調
 ヴァレンティン・シルヴェストロフ:2つのメロディー
 ワーグナー/ヴァレンティン・シルヴェストロフ:
   ポストリュード
 ヴァレンティン・シルヴェストロフ:2つのワルツ
 シューマン:ダヴィッド同盟舞曲 より
 ヴァレンティン・シルヴェストロフ:メッセンジャー
ウラディーミル・フェルツマン(P)
フェルツマン・セルフ・プロデュース・アルバム。
「ここにある音楽は誰のものでもありません。終わりもなければ始まりもなく、その前もその後もありません——純粋に存在しているだけです。ここで語られているのは1つの言語体系です。私はこのCDの録音を、それ自体で連続して展開していく作曲行為と考えました。過去4世紀の間に生存した作曲家たちが集うお茶の会と考えてもよいでしょう。そこで作曲家たちはお互いに自分のことを語り合いますが、まもなくその話は全て同じもので、その表現の方法が異なっているだけであることが明らかになります。ここにある音楽は作曲されたというよりも、思い出の中からふと聞こえてきたものです。それは沈黙から生じて沈黙へ還って行くのです。」〈ウラディーミル・フェルツマン〉

第7&8弾 ブラームス/コンチェルト

CMCD 25034
\2625
ブラームス:ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 作品15 ウラディーミル・フェルツマン(P)
ハンス・フォンク指揮
ケルン放送響
CMCD 25033
\2625
ブラームス: ピアノ協奏曲 第2番 ウラディーミル・フェルツマン(ピアノ)
ハンス・フォンク(指揮)
ケルン放送交響楽団
 1995 年に放送用として収録された音源を再編集。
 今は亡き名指揮者、ハンス・フォンクが首席を務めていたケルン放送交響楽団を率い、フェルツマンとの共演を果たしている。ドホナーニやベルティーニ、ビシュコフまた、若杉弘等が首席をつとめたドイツの名門オーケストラ、WDR ケルン放送交響楽団。艶やかな弦、深みのある管、重厚感溢れる響きは、まさに王道。フェルツマンのクリアーかつ色彩豊かな音質は、フォンク率いるオーケストラと見事に呼応し、高揚感あふれるブラームスを聴かせてくれる。


<番外盤/カット盤>

MUSIC MASTERS
67132
¥1290
完売
バッハ:ピアノ協奏曲第1,2,3番 ウラディミール・フェルツマン(P、指揮)
セント・ルカ響
1993年、7月録音。
 SONYから離れたフェルツマンが録音をしたのはアメリカMUSIC MASTERS。日本に流通がなかったわけではないが、さすがにSONYの頃のように注目されることはなくなり、このアルバムもほとんどファンに知られることはなかった。SONYでの超ヴィルトゥオーゾ的扱いから一息ついて自分を取り戻したフェルツマン。SONY時代の彼が「陽」だとしたら、この頃の彼は「陰」。この時期彼がリリースしたのが、ゴールドベルクだったり、平均律だったり、ベートーヴェンの後期ソナタだったりすることからも、彼がピアニストとしてベクトルを内に内に向けているのがわかる。なのでこのバッハ、単純に聴けば突き抜けきれていないもどかしさを感じるかもしれない。しかしここにはフェルツマンの生の苦悩がある。この録音には、ピアニストとして人間として、何かを崩そう、あるいは何かを造り出そうという彼の生々しい闘いを感じることができる。

「カット盤」。・・・レーベルの倒産やショップの閉店などで在庫が廃棄され、今後市場に流通しないよう目印のためCDケースにカッターなどで傷をつけた商品のことである。なので市場には出ないはずなのである。が、どこにも妙なルートがあるもので、そのカット盤を売り買いする業者が存在する。CDのケースには痛々しいようなカッティングが為され、それはブックレットやバック・カードに及ぶ。ただCDに被害はない。なのでそれなりの覚悟は必要だが、このMUSIC MASTERS 盤も現在はどの店でも入手不能なものである。



アンソニー・コリンズ/シベリウス:交響曲全集
国内ユニバーサル UCCD 3806/8 (3CD)¥3000

 別コーナーで「シベリウス没後50年」のひとつとして紹介しているもの。これだけはここでも取り上げないと・・・。
 数多くのシベリウス交響曲全集の中でも特別な存在。10年ほど前まではBEULAHレーベルから出ていたが、すぐに廃盤、その後全集では手に入らなかった。コリンズはロンドン響のヴィオラ弾きをしていたが、その後アメリカで映画音楽作曲家として活躍した。1950年代初めに再びイギリスに戻り、ロンドン響をはじめとする世界中のオーケストラを指揮した。このシベリウスの全集録音もそのころのもので、素朴で力強い表現が話題となった。ベタベタロマンではないが、その迫力満点の音楽作りはまさにハリウッド。映画音楽畑で活躍した彼のポピュラー感覚がいい方向に出た、変り種のシベリウス演奏・・・といいたいところだが、コリンズは作曲家自身とも交流があり、その演奏は作曲家のお墨付きだったというのだから、ひょっとしてシベリウスの頭にはこんなダイナミック演奏があったのかもしれない。いろいろな意味で興味深い全集録音である。
 おそらくあっという間に廃盤になると思われるので興味ある方はお早めに。 

UCCD 3806/8
(3CD)
\3000
アンソニー・コリンズ/
 シベリウス:交響曲全集
アンソニー・コリンズ指揮
ロンドン響
録音:1952年-1955年 ロンドン モノラル録音 往年のイギリスの名指揮者(兼作曲家)でシベリウスの第一人者として知られたコリンズによるシベリウス。第1と第2以外はこれがインターナショナルでは初CD化となる貴重な音源。



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