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第45号お奨め国内盤新譜



ALPHA

Alpha135
(2CD)
(国内盤)
\4515
シューマン:ピアノ曲・室内楽作品集 6
 1) クライスレリアーナ op.16
 2) 四つのフーガ op.72
 3) 幻想小曲集 op.12
 4. アンダンテと変奏 〜2台のピアノ、2面のチェロとホルンのための
 5) カノン形式の六つの練習曲 op.56
  (原曲:足鍵盤付ピアノのための/
   ドビュッシー編曲による2台ピアノ版)
 6) 六つの即興曲「東方絵画」op.66
 7) 森の情景 op.82
エリック・ル・サージュ(ピアノ/スタインウェイ)
4) ブルーノ・シュナイダー(hr)
フランソワ・サルク、ヴィクトル・ジュリアン=ラフェリエル(vc)
4)5) フランク・ブラレイ(p)
超好評企画、いいテンポで第6 弾が登場——しかも、なんて豪華なプログラム!目玉が「クライスレリアーナ」「森の情景」「幻想小曲集」と三つも!秘曲群も垂涎ものばかり、珍曲中の珍曲ともいえる室内楽もひとつ収録。霊妙と客観のあいだに息づく、絶品解釈 !!シューマン記念年はもう1年先とはいえ、すでに大きな盛り上がりをみせ、Alpha きっての大好評シリーズとして継続しているエリック・ル・サージュのシューマン体系録音——第5弾もそろそろレビューされるこの時期、いいペースで、待望の第6弾が登場いたします!いずれもスマートな出足でバックオーダー相次ぎ、さらに少し遅れて雑誌露出時にまたもう一波、あわせて先行タイトルも売れ行きが伸びる…というパターンを繰り返し、第3弾以来ずっと2枚組リリースとは思えないほどの注文数を頂いているところ、またもや2枚組たっぷり聴きどころが詰まってます!何しろ今回、目玉ともえいる有名曲がなんと大曲「クライスレリアーナ」、傑作「幻想小曲集」そして待望!絶美の名品「森の情景」...と3曲もあるうえ、当然のようにすべてが各作品の演奏史を塗り替えんばかりの名演! ル・サージュのピアニズムは一貫して「うっすら客観的」なのに「詩情たっぷり」、あふれんばかりの激情を奥底に秘め、それをみごと統率する...といった感じで、今回も「クライスレリアーナ」の壮麗・雄大な構築センスに、「幻想小曲集」の磨き抜かれた小宇宙、そして「森の情景」のダイナミズムと息をのむ神秘性、と、とほうもない魅力が隅々まで感じられます。さらに嬉しいのは、タッグ・パートナーとして共演あまた、こちらも人気急上昇中のフランク・ブラレイが参加、あの「足鍵盤付ピアノのための」練習曲のドビュッシー版と、シューマンが方々から「やめとけ」と言われて出版は見合わせたという珍妙編成の室内楽変奏曲で(なんと、こちらはオリジナル編成で!)あざやかな共演を聴かせてくれているところ!他の共演者(ホルンは「第3弾」でも共演した、ルツェルン祝祭管の名手シュナイダー!)もル・サージュの解釈をよく汲んで絶妙アンサンブルを編み上げ、この秘曲の価値を幾倍にも高めてくれています!今回も、聴き逃せない...!
Alpha137
(国内盤)
\2940
バッハ:さまざまな楽器による協奏曲 4
 〜BWV1041・1044・1047・1061〜
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)
 1. ヴァイオリン協奏曲 イ短調 BWV1041
 2. 2台のチェンバロと弦楽合奏のための協奏曲 ハ長調 BWV1061
 3. 三重協奏曲 イ短調 BWV1044
 4.ブランデンブルク協奏曲 第2番 ニ長調BWV1047
1)3)4) パブロ・バレッティ(ヴァイオリン)
2)3)セリーヌ・フリッシュ(チェンバロ)
2) ディルク・ベルナー(チェンバロ)
3) ディアナ・バローニ(フラウト・トラヴェルソ)
4) ミヒャエル・フォルム(リコーダー)
カフェ・ツィマーマン(古楽器使用)
いうまでもなく、これはこの冬きっての話題盤でしょう!! やっと出してくれました、鉄板へヴィヒッター「カフェ・ツィマーマンのバッハ」第4弾! 対抗配置の二重協奏曲、やっと入った2つの短調曲、そしてBWV1047 のトランペットはコンチェルト・ケルンの名手!実はまだサンプルが到着していないのですが、これはもう一刻も早くリリースをお知らせしなければ!と、レーベル側からのinfo シートを頼りにガツガツお知らせさせていただきます。Alpha レーベル全商品のなかでも、日本市場でダントツ、何よりも飛びぬけて売れ続けているヘヴィヒッターシリーズ「カフェ・ツィマーマンのバッハ協奏曲」、実に約4年ぶりの新タイトル登場でございます!! 2006年にも「まだまだやるよ。いい金管楽器奏者みつけなきゃね」と主宰者も語っていたものの、鳴かず飛ばずで新タイトル登場にいたらぬまま時は過ぎ、2007年夏のラルク=バタイユ音楽祭ではオランダの名古楽CD ショップオーナーが「まだかよ!」とALPHA 企画陣をせかしていた、待望すぎる「第4弾」——例によって1パートひとりずつの極小編成は健在、録音技師もいつもどおりAlpha きっての名技師ユーグ・デショー&アリーヌ・ブロンディオ、とくれば、もう間違いがあろうはずもありません。このシリーズはいつも必ず「ブランデンブルク協奏曲」(原題はフランス語でSix Concerts a Plusieurs instruments…シリーズタイトルはここからきています)から1曲入れていますが、今回のトリは「ブランデンブルク協奏曲第2番」!ヴァイオリンやリコーダーやオーボエ(メーカー情報ではなぜかオーボエ奏者名が欠けていますが、そのうち判明するでしょう)とともにトランペットが大暴れするこの曲、気になるソロはハンネス・ルクス——ご存知ですか?そう、あの精鋭集団コンチェルト・ケルンやレ・スタジョーネで大活躍中のスーパープレイヤーなんです!国境を越えての共演で舌を巻く結果を生むこと必至——他のソロ陣営はおなじみの名手たちで、いかんなき名手パブロ・バレッティの弾くイ短調協奏曲のソロも気になれば、ブランデンブルク第5番とほぼ同じ編成の秘曲「三重協奏曲」での、あるいはセッション写真によると対抗配置らしいチェンバロ二重協奏曲での、精鋭フリッシュのみごとなタッチも期待度大。
Alpha131
(国内盤)
\2940
フランス初期ロマン派の歌曲王 ベランジェ傑作集
ピエール=ジャン・ド・ベランジェ(1780〜1857):
 なにもかも小さい(老人政治)/錬金術師
 婚礼の夜 /わが習慣/悪魔の死/教皇はイスラム教徒
 もはやリゼットではなく/醜さと美しさ/わたしの埋葬
 老上等兵/底辺の人々/年寄り浮浪者
 1階から6階まで/すてきな婆さま/我らの地球
アルノー・マルゾラティ(Br)
イヴ・レヒシュタイナー(ハルモニウム=足踏式室内オルガン)
フレディ・エシェルベルジェ(ピアノ/プレイエル1845 年製)
フランス歌曲のミッシング・リング、19 世紀初頭の「うた」の世界をきれいに暴くはル・ポエム・アルモニークの名歌手マルゾラティ、そしてAlpha が誇る多芸鍵盤奏者ふたり!ユーモアと皮肉、ベルカントめいた旋律美——これはちょっと、クセになりますよ!
いうまでもなく、ヨーロッパ音楽は声楽がすべての基礎。というわけで各時代の声楽作品をできるだけ聴くようにしていたら、なぜか19 世紀初頭のフランス語圏の(確かに歌われていたはずの)小規模声楽曲は、さっぱり録音が見当たらない。オペラの時代だからでしょうか? たまにあるのはケルビーニやらスポンティーニやらマイアベーアやら、外国から来たオペラ作曲家の作品ばかり。下手をすると、バロック時代のカンタータのあと、ベルリオーズあたりの歌曲まで、フランス語の歌なんてまるでなかったかのような印象さえ与えかねない音盤社会——そこへすばらしい一石を投じてくれたのは、またしてもAlpha!パガニーニと同じ1780年生まれの知られざる「フランスの歌曲王」ベランジェをクローズアップ。

ベランジェという人は革命期のパリを暮らした人で、その時代の、人間の猜疑心や苦労を肌で知っている市民階級を顧客に、シャンソン(世俗歌曲)の作曲でとほうもない人気を博した詩人=作曲家。歌詞はウィットと皮肉たっぷりのユーモアに富み(曲のタイトルから、なんとなくおわかりでしょう)、有節形式を頑迷に守っての作品群は、どれも絶妙にメロディアス。ちくり社会風刺の針をしのばせた、人間的な温もりある詩を、古典派〜ベルカント風に近代シャンソンみたいなテイストを含ませた、愛らしくも聴き応えある音楽に乗せてきます。有節形式なのにリフレインがあまりに旨味たっぷりで、つい聴き進めてしまうのです!

主役はル・ポエム・アルモニークの大黒柱のひとり、変幻自在の名古楽歌手マルゾラティ! 中世以来の伝統歌だろうとコスマのシャンソンだろうと軽やかに歌いこなしてしまうこの才人、まさにベランジェの“味”を伝えるにはうってつけ、老若男女の喜怒哀楽をニュアンスたっぷりに歌いあげてゆく・・・伴奏者2人は各々Alpha で水際立った活躍をみせる、多芸なる古楽鍵盤奏者たち。静かにBGM にしても独特の雰囲気が醸し出されるのは、ハルモニウムとプレイエルpの、古雅でなつかしい響きあればこそ、です。
Alpha140
(国内盤)
\2940
パーセル(1659〜95):
 歌劇『ダイドーとアエーネアス』(全曲)
ダイドー:ジモーネ・ケルメス(S)
アエーネアス:ディミトリス・ティリアコス(T)
ベリンダ:デボラ・ヨーク(S) 他
ニュー・シベリアン・シンガーズ (ノヴォ
シビルスク国立アカデミー歌劇場室内合唱団)
アンサンブル・ムジカエテルナ(古楽器使用)
指揮:テオドール・クルレンツィス
ちょっとびっくり !! ロシア古楽界、いつのまにシベリアまでこんな強烈に高水準??とにかくAlpha という古楽レーベルの慧眼を信じ、そしてそこに驚かされていただきたい!
エキサイティング&エモーショナルにもほどがある…しかも独唱は「キテる」大物ケルメス !!いやもう、ただただビックリです! フランスの古楽レーベルとして斬新な名盤を次々と世に問いシーンに風穴を開けてきたAlpha ですが、ここへきて「初パーセル」と思いきや、なんと演奏陣がロシア、しかもシベリアの楽団という。資金不足か何か?・・・といぶかしがりながらかけてみて、いやあ納得いたしました! 冒頭の序曲からすごい強烈な緩急のコントラスト! ブンブン唸る2本のコントラバス(あ、弦編成は4・3・3・3・2です)、歌にぴったり寄りそい伸縮する精妙なるオーケストラ、ダイドー役があまりに迫真の表現力で迫ってくるのでふと解説に目を転じれば・・・いや、ジャケットに堂々「SIMONE KERMES」の文字が躍っているではありませんか! そう、言わずと知れたヴェニス・バロック・オーケストラの共演者であり、ヴィヴァルディのオペラ「アンドロメダ」上演で2005 年にマルコンらと来日、とんでもないヴィルトゥオジックなパッセージで聴衆を魅了しつくした“今が旬”の名花ジモーネ・ケルメスさまというから驚いたもの! さらにアエーネアス役には百戦錬磨のバッハ歌手デボラ・ヨーク!! そうしたとんでもないソロ陣営を向こうに回し、精力ふりまく古楽器バンドをみごと操る指揮者は、どうやらテオドール・クルレンツィスなるギリシャ人という——CaroMitis「古典派時代のロシア音楽」シリーズのベレゾフスキー盤で「ロシア最初の交響曲」を指揮しているのはほかでもない彼なのですが、調べてみたら、モーツァルトからストラヴィンスキーまで何でもござれのオペラ指揮者としてフランスとロシアで大活躍中、しかもクープランやバッハも平気でこなす才人とのこと。西シベリアのノヴォシビルスク歌劇場で、小編成の合唱団をみごと鍛え上げ、さらに独自のアンサンブル「ムジカエテルナ」とともに、同地を根城に着々と地盤を固めていたのだとか。ドラマの緩急つけかた、クライマックスの盛り上げ、スケールの大きさと精妙な細部へのこだわりが併存するその音楽センスは、古楽界にぜひとも欲しかった逸材といえそうです。「知らない人たちだから」とか「競合盤あまたの曲目だから」と素通りするのは、あまりにももったいなすぎます——Alpha というレーベルを信じて、ぜひお試しを。耳を疑う壮絶な名演が待っていますから…MusicaNumeris の腕っこき技師ニコラ・ド・ベコがわざわざシベリアまで録音しに行った理由が、たちどころにわかりますよ。
Alpha136
(2CD)
(国内盤)
\4515
クープラン:クラヴサン曲集 第1・2巻より
フランソワ・クープラン(1660〜1733):
 『クラヴサン曲集 第1巻』(1713)より
  第1組曲(英国の貴婦人、森の精たち、ラ・マノン、
 サン=ジェルマン=アン=レーの愉しみ、他 全19曲 )
  第5組曲(ラ・ダンジェリューズ(危険な女)、
 ラ・バディヌ、ラ・フロール、波、他 全14曲 )
 『クラヴサン曲集 第2巻』(1717)より
  第6組曲(刈入れをする人々、神秘のバリケード、
  羊飼いたち、羽虫、他 全8曲 )
  第7組曲( メヌトゥー、ミューズ生まれる、
  裾飾り、シャゼー、他 全7曲 )
  第8組曲(女性画家、上流詩人、風変わり、
  パサカーユ、他 全10曲 )
 『クラヴサン奏法』(1713)より
  プレリュード 第3・5・6・7番
フレデリク・アース(cmb)
 古楽大国ベルギーが21世紀に誇る、まごうことなき名匠アースがAlphaにソロ登場!満を持してのクープラン体系録音、新時代のフランス語圏人として新たな地平を拓く——ひたすら明晰にして繊細。どこまでも高貴。21世紀の、新たな金字塔的録音ここに誕生!
 「フランソワ・クープラン(…)誰もが敬意をもってその名を発音し、その響きにはそれにふさわしい威光が感じられる。しかしどうだろう、その敬意なり威光なりというのは実のところ(…)ごくあいまいな「文化的風景」を構成する細部のような存在になっている(…)クープランの名には“お金持ちの気晴らし”というレッテルが強力な接着剤で貼り付けられ、“雅びで俗っぽい音楽”というファイルにしまわれたまま...」(演奏者の解説文より抜粋)——よくぞいったものです。スコット・ロスがSTIL に、ケネス・ギルバートがharmonia mundi に、オリヴィエ・ボーモンがERATOに、ブランディーヌ・ヴェルレがASTREE に残した全集も今は昔。クープランのクラヴサン(=チェンバロ)作品総体という貴重な音楽遺産と、新世代のフランス語圏人たちが今こそ新たに対峙すべき時ではないでしょうか?
 そんな今、フランス随一の——いや世界随一の古楽レーベルであるAlpha が、画期的な体系的録音をスタートさせました。自らライナーノートまで執筆(全訳添付)、長年にわたる綿密なアプローチを経て、飛びぬけた霊感あふれる解釈でこれら無数の傑作群に望むのは、ベルギー古楽界の誇る現代の名匠フレデリク・アース。インマゼールやヘレヴェッヘ、サヴァールらのそばで着実に腕を磨いた「新進気鋭」時代も今は昔、21 世紀に入ってからの彼はみるみる風格をつけてきて、アンサンブル・オーゾニア(Alpha076)の共同主宰者として活躍しながら、驚くほど豊穣・広大なクラヴサン独奏の小宇宙をつちかってきたのでした。なんといってもこの録音、ほんとうに瑞々しく、肩に力の入ったところがまるでない(リキむとすぐにガタガタになるか、つまらなくなるのがクープラン…)、自然体でよどみなく、しかしだれたところは皆無——エムシュ1751 年製オリジナル楽器の豊穣な響きも美しく、かつてのスコット・ロスのような端正さ・明晰さを打ち出しながらも、えもいわれぬタイミングで弾き崩す、まさにフランス語圏人特有の繊細なエスプリが隅々まで徹底して打ち出されているのです!
 昨年Ricercar から出たフォクルールのブクステフーデ全集(MRIC250)に続く、古楽鍵盤界における新たな金字塔的体系録音の登場といえましょう。まさにAlpha の面目躍如!

ARCO DIVA

UP 0103
(国内盤)
\2940
ピアノ三重奏曲、近代から現代へ
 〜シュニトケ、マルティヌー、ショスタコーヴィチ〜
 マルティヌー(1890〜1959):
  1. ベルジュレット H.275(ピアノ三重奏のための五つの小品)
 シュニトケ(1934〜98):
  2. ピアノ三重奏曲(1985/92)
 ショスタコーヴィチ(1906〜75):
  3. ピアノ三重奏曲 第1番 op.8
プエッラ・トリオ
(エヴァ・カロヴァー(ヴァイオリン)
マルケータ・ヴルプコヴァー(チェロ)
テレズィエ・フィアロヴァー(ピアノ))
チェコ最前線は、女性グループでも容赦なしに本格派——スラヴ系近代作品を説得力豊かに“いま”に息づかせるアンサンブルは、とても2003年結成とは思えない!ショスタコーヴィチ若き日のロマン、マルティヌーの色彩感、シュニトケのスタイル、みな絶品!チェコという国はやっぱりクラシック大国だなあ、と、同国の重要音楽事務所が企画運営するArcoDivaレーベルを扱っているとつくづくそう思い知らされます。新世代の演奏者が次から次へと登場し、そのほとんどが技巧・音楽性とも申し分なく、際立った個性の持ち主ばかり——逆に「だめな演奏家」を見つけるほうが難しいくらい!ヤナーチェクやマルティヌーの故郷モラヴィア地方の音楽都市ブルノから今回登場したプエッラ・トリオも、実はその名のとおり(プエッラとはラテン語で「少女」の意)若い世代の女性奏者3人によって、つい5年前に結成されたばかりのトリオなのですが、音だけを聴いていたらまず、そうとは気付かないでしょう。3人それぞれ良い意味で鼻息荒く自己主張し(中欧らしい渋く多彩な弦の美音、一本筋の通ったフレーズ感覚...)、べつだん聴きあう、というのでもなさそうなのに、なぜか一糸乱れぬアンサンブルを編み上げてしまう——ほんのささいな一瞬のタメにスラヴ的な「味」を乗せて、それがまったくイヤらしくなく、ぴたりと曲の美に嵌まるのはやはり、本盤で演奏されている3曲がすべてスラヴ系諸国の作曲家たちによるものだからでしょうか?弦楽三重奏曲から編曲されたというシュニトケのトリオにも、先鋭的な現代感覚だけではなく、彼を育てたソ連に息づく「良くも悪くもスラヴ」な空気がふわりと漂う...けだし絶品の充実解釈になっています。ショスタコーヴィチ初期の三重奏曲第1番でも(ここはやっぱり、弾き手が若いがゆえの良さなのでしょうが)脂ぎった近現代的重さより、意気揚々たる若き作曲家の颯爽としたロマンが気持ちよく伝わってきます。そしてマルティヌーの「ベルジュレット」——フランス・ルネサンスの世俗声楽曲に触発されたこの小品、形式面をつよく打ち出すと世にもつまらぬ似非バロック風に陥ったりしてしまうマルティヌー中期の典型例みたいなスタイルなのに、プエッラ・トリオの解釈はひたすら瑞々しく、まさにラヴェルの後継!といった色彩感を漂わせ、五つの小品それぞれをきわめて味わい深く仕上げてしまうのです!なにはともあれ、妙にヴィジュアル面を打ち出したジャケットからは想像もつかぬ本格サウンドの詰まった、玄人にも初心者にもお奨めの室内楽盤です!
UP0067
(国内盤)
2940
ドヴォルザーク:ピアノ連弾による
スラヴ舞曲 第1 集op.46・第2 集op.72
ドヴォルザーク(1841〜1904):
 1. スラヴ舞曲集 第1集 op.46
 2. スラヴ舞曲集 第2集 op.72
マルティン・カシーク&
クリスティナ・クルカフツォヴァー(ピアノ)
「本場チェコ」のセンスで「連弾ヴァージョン」! めくるめくピアニズム、滋味あふれる響き、これぞ本場の最先端——ライジング・スターだった時代も今は昔、もはやチェコのシーンを牽引する立場となったカシークらによる、絶妙至極の「スラヴ舞曲」をご堪能あれ!ドヴォルザークの「スラヴ舞曲集」をピアノ連弾版で聴くと、思いのほか先進的、けっこうバルトークやコダーイにさえ近い民謡的異色感がきわだって、それこそどの国の人でも興味深くエキサイティングな名演が生まれたり——昨今もシュトロッセ&デセールのデュオがMIRARE でクールな名演を聴かせてくれましたし、ちょっと前では旧ユーゴのタル&グローテュイゼンやベルギーのデュオ・クロムランクなど、大御所デュオたちも絶妙の名盤を出しています。しかし、本場最先端の名手カシークとそのパートナー、クルカフコヴァーの「チェコ出身」デュオであらためて聴いてみると、まあ、じわじわと心に響くこと…めくるめく色彩感が立った「ピアノ版スラヴ舞曲」ももちろん素敵ですが、こちらはまさしく本場ならではの、風格というか余裕というか、そうしたものの漂う「うまみたっぷり」のサウンドが魅力! テンポも強烈にはとらず、現代のセンスからすると?ほんの少しだけ遅めなのでしょうけれど、この設定がすごくぴたりとくるわけで。秋から冬にかけて、じっくり聴くには絶好だと思います——どれも5分ほどの曲だけに、つい次へ、また次へ…と曲集全体を聴きたくなってしまう(アップテンポだと、わりと1 曲きいて「あーおもしろかった」と満足しちゃったりするものですが)。カシークは他にも室内楽版をいくつかArco Diva に録音しており(最新録音はスメタナ&ドヴォルザークの名品トリオ…近々こちらもご案内します!)若いながらに室内楽に意欲を燃やしてくれているのは嬉しい限り!逆にコンチェルトもそろそろ聴きたいところですね。クルカフコヴァーも同じくチェコの若手で、Supraphon などに名盤あまたの巨匠クラーンスキー(ご存知ですよね?)の門下生。カシークとの息もぴったり、“同郷人ならではの共感”なんていう陳腐な言葉もつい出てこようというもの——何しろケレンを狙わずここまで「聴かせる」っていうのは、やっぱりそういうことなんじゃないかと。チェコ勢ピアニストのイキのいい競合盤、意外とありません。ぜひご注目を!
UP0104
(国内盤)
\2940
フルートと、ハープと、弦楽と
〜フランス音楽、ロマン派から20 世紀へ〜
 ヴァンサン・ダンディ(1851〜1931):
  1. 組曲 作品91
 シャルル・ボルド(1863〜1909):
  2. バスク組曲 作品6(1887)〜フルートと弦楽三重奏のための
 ガブリエル・ピエルネ(1863〜1937):
  3. やさしい心の国への旅
 アンドレ・ジョリヴェ1905〜1974):
  4. リノスの歌
 ジャン・フランセ(1912〜97):
  5. 五重奏曲 第2番(1988)
(2. 以外は フルート、弦楽三重奏とハープのための作品)
マルティヌー四重奏団,
カルロ・ヤンス(fl)
カテジナ・エングリホヴァー(hrp)
チェコの演奏家は、フランスの“粋”とこんなに相性が良い——ルクセンブルク随一のフルート奏者と、繊細なるハープ奏者とともに、弦楽器がいとも心地よく絡みあう!19 世紀末に逸早く民謡をとりいれたボルドの傑作から、フランセの猥雑さまで、千変万化!その昔、フランス随一の指揮者ジャン・フルネがチェコ・フィルとともに素晴しいオネゲル交響曲全集を録音していたり。あるいはそれよりもっと昔、巨匠ターリヒがルーセルの交響曲を指揮したさい、第2 ヴァイオリンを弾いていたマルティヌーが感激のあまりパリ留学を決意したり。さらにそれから少し遡れば、チェコ出身の画家ミュシャが描いたポスターが、世紀末のパリを彩ったり、逆に近年ではチェコ随一の作家クンデラが、もっぱら母国語ではなくフランス語で創作を続けていたり…。かたや中欧の伝統をまもる文化大国、かたや時代の最先端をゆくエスプリの国、チェコとフランスは一見かなり離れているようでいて、折々に互いの文化にふかく影響を与えあっています。そのひそやかな相性の良さときたら...と、このアルバムを聴いたら思わずにはおれないでしょう! ドビュッシーやラヴェルお気に入りの楽器であるフルートとハープを軸に、弦楽三重奏とのアンサンブルのために書かれたフランス音楽の歴史をたどる好企画、演奏陣はルクセンブルク(れっきとしたフランス語圏です)から来た百戦練磨の実力派カルロ・ヤンスのフルート、ハープは室内楽大国チェコ随一の名手エンゲルホヴァー、そして弦楽セクションはなんと、録音シーンでも世界のレーベルで名盤あまた、今こそ旬の気鋭集団マルティヌーSQ! 全員完璧に息の合ったアンサンブル、しっとり落ち着いた表現語法を通じて、古典主義や動かしがたい荘厳さが大好きなフランス人たちにも歓迎されそうな安定感ある音楽が作られてゆき、フルートの縦横無尽な表現が、きらびやかなハープの響きが、精気を押し込めて揚々と弾き進む弦楽セクションからすうっと立ち昇る——絶美のセンスで綴られてゆくのは、ドビュッシーやラヴェルの同時代や後継者たちの素晴しい「隠れ名曲」。変幻自在のめくるめくドラマ作りがたまらないピエルネやジョリヴェの音画的中篇も、19 世紀後半にいち早く民謡を作品に編み込んだボルド(C.フランクの弟子)の秘曲もまた絶品——「クラシックの伝統に根ざした、フランス音楽のエスプリ」をじっくり堪能できる1 枚です!
UP0036
(国内盤)
\2940
ヤナーチェク(1854〜1928):
 弦楽四重奏曲 第1番「クロイツェル・ソナタ」
 弦楽四重奏曲 第2番「内緒の手紙」
マルティヌー四重奏団
ルボミール・ハヴラーク(第1ヴァイオリン)
ペトル・マチェヤーク(第2ヴァイオリン)
ヤン・イーシャ(ヴィオラ)
イトカ・ヴラシャーンコヴァー(チェロ)
 正統派にして、現代的——チェコの息吹はいま、こんなに素晴しい音楽を生んでいる!
 “弦の国”ならではの伝統を感じさせる音色の妙、そして強烈すぎるほどの求心力。ヤナーチェクの2傑作に真正面からぶつかって、至高の境地をみせてくれる快演ここに!ヤナーチェクの弦楽四重奏曲といえば、つい先日(もとアルディッティSQ の)ガース・ノックスがヴィオラ・ダモーレ(!)を担当したディオティマSQ の「ベーレンライター新校訂版」がAlpha から出たところですが(Alpha133)、チェコのシーン最先端をゆくArcoDiva でも、この新校訂版が刊行される少し前、きわめてインテンス&クールな「本場のヤナーチェク」が旧校訂版使用で録音されています。演奏はマルティヌーSQ…と聞いて「これは期待できそう!」と思われた方、まさにそのとおりでございまして——“弦の国”チェコだけにカルテットは新旧無数にいるわけですが、マルティヌーSQは実のところ1976 年、つまりプラジャークSQや隣国ハンガリーのタカーチSQと同時期の結成なわけで(今をときめくハーゲンSQやカルミナSQよりずっと先輩格!)いつのまにか押しも押されぬヴェテラン団体になりつつあり。でご存知のとおり、NAXOSでのマルティヌー全集をはじめ、チェコ・ローカルのPanton やTonusでも名盤をいくつも残してきた玄人垂涎の名団体なのです。近年はArco Diva と関係良好のようで、こちらでも渋い名演を聴かせてくれていますが、いかんせん無名古典派や現代音楽ものにも臆せず取り組むタイプゆえ、こうした超メジャー曲目のリリースは諸手をあげて歓迎したい、彼らの実力のほどを知る絶好のチャンス——担当も、あらためて“思い知らされ”ました。ディオティマSQは旧校訂版の「第2 番」を「数多の名演を生んだ版」としつつも「説得力に欠ける局面が多く、あらためて作曲者の創意に立ちもどってみようと思った」と新校訂版の必要性を説いていましたが、本盤での解釈はさすが同郷人の老舗団体だけあって、まさに前者の好例——つまり、旧校訂版に文句なしの説得力と求心力を与える至高の名演となっています。室内楽にうるさい英国で高く評価されたというのも頷けるその解釈、音色はあくまでチェコらしい「うまみ」を感じさせながら、どこまでも徹底してシャープな現代感覚に貫かれており、まさに「チェコ最先端!」をひしひしと感じずにはおれない本格派。おそいところは甘美な歌が聴かれるのに、決してダレないこの緊張感!
UP0108
(国内盤)
\2940
リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949):
 1. 交響詩「ドン・ファン」op.20
コルンゴルト(1897〜1957):
 2. ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
マーラー(1860〜1911):
 3. リュッケルトの詩による五つの歌曲
マルティン・トゥルノフスキー指揮
ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団
独奏:フランティシェク・ノヴォトニー (vn)(2)
独唱:カルラ・ビトナロヴァー(S)(3)
 単独来日でもおなじみ、チェコの“隠れ御大”トゥルノフスキーが贅沢なプログラムで登場!
 祖国の名楽団をたおやかに歌わせ、中欧らしい滋味あふれる音作りを披露——管弦楽・声楽・協奏曲と、晩期ロマン派の充実作ばかりが結集。ファン垂涎のリリース!!

CARO MITIS

CM003-2006
(SACD Hybrid)
(国内盤)
\3360
ヴェルフル:3つの弦楽四重奏曲op.30(1805)
 ヨーゼフ・ヴェルフル(1773〜1812)
  1. 弦楽四重奏曲 ハ長調 作品30-2
  2. 弦楽四重奏曲 ニ長調 作品30-3
  3. 弦楽四重奏曲 変ホ長調 作品30-1
プラトゥム・インテグルムo.(古楽器使用)のメンバー
ドミトリー・シニコフスキー、
セルゲイ・フィリチェンコ(ヴァイオリン)
セルゲイ・ティシチェンコ(ヴィオラ)
パヴェル・セルビン(チェロ)
「ベートーヴェンと引き分けた男」、瞠目すべき天才ヴェルフルの四重奏曲が、3曲も!ライヴァルが「熱情ソナタ」を書いた年、こんなに堅固でエキサイティングな名品を生んでいたとは——ピリオド楽器による演奏も充実度抜群、聴き逃す手はない傑作群!CARO MITIS レーベルの大黒柱、ロシア初の常駐ピリオド楽器アンサンブルであるプラトゥム・インテグルムのメンバーは、さりげなく名手ぞろいでございまして。アルノンクールのウィーン・コンツェントゥス・ムジクスからモザイクSQ が、カフェ・ツィマーマンからリンコントロSQ が生まれたごとく、このアンサンブルの弦セクションのリーダーたちが、実にあざやかなカルテットで登場してくれました——それは何より、作曲においてもピアノ演奏においてもベートーヴェンのライヴァルとして人気を二分したという「知られざる巨匠」、ザルツブルクに生まれたモーツァルトの弟子、つまりウィーン古典派きっての重要人物である作曲家ヴェルフルの傑作四重奏曲を、21 世紀に蘇らせるためにほかなりません!ヴェルフルの名があがるのは、実はCaro Mitis レーベルではこれが初めてというわけではありません。2年以上前になりますが、プラトゥム・インテグルム・オーケストラが長調と短調の交響曲を一つずつ録音、その並々ならぬ作曲センスを愉しませてくれています(CM002-2005)。モーツァルト最後の2作にも比すべき充実度と、ベートーヴェン最初の2作にも比すべきエキサイティングな展開は、古典派ファンやベートーヴェン・ファンにたまらない愉悦をもたらしてくれたわけですが、今回の弦楽四重奏曲3曲でも、その充実した書法は聴きごたえ抜群! 早くもロマン派を先取りしたような瞬間がいたるところに潜んでいるうえ、漂う詩情はえもいわれぬニュアンスをはらみ、4パートの絡み合いはまったく精緻、ごく自然なメロディ展開なのに、驚くほど複雑かつ周到な対位法展開を愉しませてくれるのです! なんの誇張もなく、この5 年前に作曲されたベートーヴェンの「作品18」の四重奏曲6曲とじゅうぶん互角に渡り合える、とさえ言えると思います。こういうこと書くと、権威主義・巨匠主義サイドから即ブーイングなんでしょうけど…そのくらい挑発的にアオりつつ「楽聖のライヴァル登場!」とベートーヴェン棚の傍で展開して、ぜひとも多くの方の耳に入れていきたい、そんな傑作が3曲も入っているわけですよ。ロシア古楽器勢の演奏は実に明快かつ滋味ぶかく、ガット弦ならではのオーガニックな旨味たっぷり。

CONCERTO

CNT2009
(国内盤)
\2940
ユダヤ教徒たちのバロックと古典派
 S.ロッシ、グロッシ、カツェレス、ヘンデル、リダルティ
サロモーネ・ロッシ(1567〜1628)
 1. 8声の雅歌「我らが神に似る者なし」
 2. 5声のシンフォニア
 3. ガリヤルダ「ヴェントゥリーノ」
 4. 詩篇第124 篇
 5. 4声のシンフォニア
 6. ガリアルダ「アンドレアジーナ」
 7. 詩篇第100 篇
カルロ・グロッシ(1634〜88)
 8. ヘブライ語カンタータ「友たちよ、幸あれ」
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル (1685〜1759)
 9. オラトリオ「エステル」より 合唱とアリア
アヴラハム・カツェレス(18 世紀前半に活躍)
 10.おお、わが欲望よ
 11. 汝、語れぬ者に言葉を与え
 12. カンタータ「神を讃え」
 クリスティアーノ・ジュゼッペ・リダルティ(1730〜93):
 13. おお、わが欲望よ
 14. カンタータ「安らかに、汝の花婿を」
 15. ベフィ・イェサリム〜4声のための
 16. オラトリオ「エステル」より アリアと合唱
Ens.サロモーネ・ロッシ(古楽器使用)
エキゾチックな響きのヘブライ語歌詞、ゆたかな音響と馴染みぶかい音作り...身近なのにどこか異国情緒。バロックと古典派の語法を、ヨーロッパのユダヤ人たちはどう取り入れていったのか——イタリア新世代の気鋭アンサンブルが、教えてくれます!民俗情緒と古楽の融合…といえば、Alpha レーベルの「白シリーズ」の得意芸ですが、意外なところから不思議な音響体験をもたらしてくれるイタリアのConcerto も負けてはいません——今回世に問うたのは、ヨーロッパのユダヤ人たちが、17 世紀から18 世紀にかけて自分たちのことば、つまりヘブライ語の歌詞で綴った芸術音楽の数々! シナゴーグ(ユダヤ寺院)で歌われていたような「教会音楽」もあれば、器楽伴奏のカンタータ、立派なオラトリオからの抜粋もあります…が、総じて言えるのは、意外にもバロックそのまま、古典派そのままの音楽スタイルであること。なのに、歌詞はイタリア語でもドイツ語でも東欧諸語でもない——母音よりも子音が豊かな、どこか中近東ふうなヘブライ語の響きから、醸し出される異国情緒はなんともエキゾチック!類例としてはボストン・カメラータ「ユダヤのバロック音楽」(hmf)なんて録音もありますが、こちらはもう35 年も前のもの——イタリアのシーンでバリバリ活躍中のEns.サロモーネ・ロッシによる演奏は最先端のみずみずしさで一線を画します!しかもボストン・カメラータ盤は17 世紀前後のバロックものに限定されていたのに対し、こちらは近年再評価めざましいピサの作曲家リダルティ(hyperion の絶品協奏曲集、ご存知ですか?)をはじめ、古典派周辺までレパートリーが広がっているうえ、ヘブライ語聖書「エステル記」にもとづくヘンデルの有名オラトリオ抜粋のような、感覚的に馴染みぶかい作品も交えて音楽史の王道との近親性を打ち出すなど、なかなか周到なプログラム。ヴェネツィアで活躍したロッシのマドリガーレふう作品には静謐美、リダルティの初期古典派ふう旋律美…と、聴きどころはさまざま盛りだくさん!違った角度から古楽を新鮮に見直せる、注目リリースです!
CNT 2005
(国内盤)
\2940
踊るアレグロ 〜イタリアのクラリネット室内楽〜
ロータ、ブゾーニ、モリコーネ、カステルヌオーヴォ=テデスコ…
ニーノ・ロータ(1911〜79):
 1. 踊るアレグロ
 2. クラリネット・ソナタ ニ調(1945)
フェルッチオ・ブゾーニ(1866〜1924):
 3. エレジー 〜クラリネットとピアノのための
マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ (1895〜1968):
 4. クラリネット・ソナタ 作品128
エンニオ・モリコーネ(1928〜):
 5. 「仮説」〜クラリネットとピアノのための
ヴィットリオ・フェッレガーラ(1927〜):
 6. 子守唄 〜クラリネットとピアノのための
ラファエレ・カッチオーラ(1965〜):
 7. 物語さまざま 〜クラリネットとピアノのための
ミケーレ・ダッロンガロ(1957〜):
 8. まわり道 〜クラリネットとピアノのための
ロッコ・パリージ(cl)ガブリエーレ・ロータ(p)
オペラの国ならではの——否、「映画のような」ロマンティシズムと、芸術音楽の間にかくもおしゃれで聴きごたえある音響世界が息づいていた!旋律美、ロマン的詩情...クラリネットの美がきわだつ八つの物語を、絶品のブロウで!イタリアの音楽は、オペラばかり——なんて今じゃ誰も思わないでしょうが、100年くらい前まで、大半のイタリア人は、オペラ以外の音楽がまともな鑑賞に足りうるものだなんて、信じていませんでした。けれども、そのあいだに培われた比類ない歌心のおかげで、20世紀初頭に堰を切ったように「芸術音楽にめざめた」イタリア人たちの器楽曲には、必ずといっていいほど、忘れがたい旋律美が息づいています(“歌心”のない曲は、やっぱり音楽と認められないんでしょうね)。イタリアの「知られざる音楽美」をさらりと掘り出し、さりげなく「回る」アイテムを打ち出してくるミラノのConcerto から届いた新譜は、イタリアの音楽界に、20世紀を通じてそうした歓迎すべき風潮があったことを如実に示してくれるクラリネット・アルバム! ブゾーニやカステルヌオーヴォ=テデスコといった比較的知られた巨匠たちの傑作もさることながら、そこにエンニオ・モリコーネやニーノ・ロータといった、映画音楽の領域で名を売ってきた作曲家たちの作品がごく自然に居並び、一貫性ある音楽シーンの現出に一役買っているのは嬉しい驚き——なにしろロータはフェリーニ映画で名が知られる前、レスピーギやマリピエロとともに「オペラだけじゃないイタリア音楽」を最初につくりあげた巨匠ピツェッティのもとで学んだ本格派の作曲家だったわけですし、モリコーネも新古典主義の巨匠ペトラッシの門下から出た人で、じゅうぶんクラシックの文脈で語れる作品も残しているのです!とくにロータ初期のソナタは、まるでシューマンのような詩情ただようロマン派風...モリコーネ作品も「映画のような」オシャレで高雅なサウンド、かつクラシック領域の小品としても通用しうる感じ(ピアソラをもう少しクラシック寄りにしたような感じでしょうか)。ブゾーニのロマン情緒、フェッレガーラら新世代のセンスともしっくりマッチする絶妙サウンドが広がります。ちょいと澄まして芸ひけらかさず、といった感じでオトナのサウンドを紡いでみせるソリストは、ベリオのセクエンツァ9cの初演者でもあるバス・クラの名手パリージ!バスの達人ゆえか?表現力には天才的な冴えが…ピアノのからみぐあいも絶妙、BGM にも傾聴にも向く味わい深い室内楽盤に仕上がってます!
CNT 2031
(国内盤)
\2940
プラッティ:鍵盤のためのソナタ全集 3
 ジョヴァンニ・ベネデット・プラッティ (1697〜1763):
  「チェンバロのためのソナタ集」op.4より
   1. ソナタ イ短調 op.4-4(ソナタ第10 番)
   2. ソナタ ハ短調 op.4-5(ソナタ第11 番)
   3. ソナタ ハ長調 op.4-6(ソナタ第12 番)
  ダルムシュタット図書館の手稿譜より
   4. ソナタ ヘ長調(ソナタ 第13 番)
   5. ソナタ ハ長調(ソナタ 第14 番)
フィリッポ・エマヌエーレ・ラヴィッツァ(チェンバロ)
バロックと古典派の「つながり」を鮮やかに示す、知られざる巨匠の全貌を明かす好企画もついに第3弾、後半に突入——曲集の形で知られていないソナタ2曲も収録、さらに数少ない短調作品も2曲収録。多彩な充実作ばかり5曲も集めた、名演・第3弾!「バロック時代の、多楽章のチェンバロ・ソナタ」...何か思いつく曲はありますか?バッハもヘンデルも、あるいはクープランも、チェンバロのために書いたのはみんな「組曲」ばかり。かろうじて「ソナタ」の名のつくスカルラッティの555曲は、基本的にみんな単一楽章の曲ばかり——ロココ・新古典派の時代になるまで、チェンバロのソナタなんてなかったのか?と思われても不思議はないかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。1720年代から60年代にかけて、つまりまさにヴィヴァルディやバッハの時代からハイドンの初期くらいにかけてドイツで活躍したイタリア人作曲家プラッティは、およそ1720年代から40年代頃と推察される時期に、3楽章または4楽章からなる、つまり古典派のピアノ・ソナタを予見するような先進的なチェンバロ独奏ソナタを次々と書き残しています。プラッティの作品といえば、通奏低音つきソロ・ソナタやトリオ・ソナタ、あるいはほんの一部の協奏曲がちょこちょこ録音されている程度と思いきや、このところ復古ブームが静かに進行している作曲家でもあったりして、ドイツで古楽器によるトリオ・ソナタ集が相次いでリリースされたり、今やDHM を中心に活躍中の世界的バロック・オーボエ奏者ベルナルディーニもロシアのプラトゥム・インテグルムo.を率いて協奏曲集を出していたり(CM005-2006)。その隠れ復古ブームのなかでも特に重要なのが、ロココ前後のイタリア鍵盤音楽のプロフェッショナル、F-E.ラヴィッツァによるチェンバロ・ソナタ全曲録音!従来散発的にしか録音されてこなかった(しかもその一部は現代ピアノ録音…)プラッティのソナタを、デュルケン復元モデルの銘器によって、18世紀流儀を思わせるあざやかなタッチで仕上げてゆきます。全4巻で完結するこのシリーズ、「レコ芸」準特選に輝いた第1弾(CNT2026)の演奏クオリティは後続巻にもそのまま反映されていますが、今回お届けするこの「第3弾」は何より、収録曲のバランスが絶妙なためある意味シリーズ随一のお奨め度!たまに録音されている「作品4」の曲集の後半3曲には、なんと長調びいきの18世紀半ばにしては珍しい、古典派の「疾風怒濤」風作品をも予感させる短調の曲が2曲も含まれているのです!さらに、おそらくはこれが世界初録音となる、曲集の形で出版されたことがないらしい手稿譜現存のソナタも2曲収録!3楽章3曲+4楽章2曲と楽章構成もバランスよく、ハイドンの初期などとの比較も面白い内容。演奏の素晴らしさは太鼓判もの、過渡期ならではの不思議な魅力をぜひ!!

COO RECORDS

COO-019
(国内盤)
\2940
J.S.バッハ:フルートによる無伴奏組曲 BWV1007・1008・1010
ヨーハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)/パウル・マイゼン:
 1. 無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007
 2. 無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調 BWV1008
 3. 無伴奏チェロ組曲 第4番 変ホ長調 BWV1010
新 谷 要 一 (フルート)
使用楽器製作:秋山好輝(Akiyama Flute 14K Gold/ルイ・ロット・モデル)
低音楽器から、高音楽器へ。音楽は変わらないのに、おどろくべき瑞々しさ!すばらしい編曲の妙がこれほど生きるのも、演奏の旨味あってこそ——楽器を越えたバッハの創意まで垣間見える、泰然自若、ひたすら美しい響きのひととき。バッハの『無伴奏チェロ組曲集』といえば、いうまでもなく、本家本元チェロの演奏で無数の名録音のある定番名曲...でありながら、作曲者の自筆譜が残っておらず、第6組曲が通常のチェロ調弦ではまず弾けない音楽になっているなど謎も尽きない不思議な作品。昨今では“新たな復元楽器”ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラでのめざましい演奏解釈も出て話題となりましたが、もともとバッハ自身がいたるところで自作品を再利用、当初意図したのとは違う楽器のために編曲したりしているところから、本来別の楽器のために作曲されていたのでは? などという説もあるくらい。それは彼の他の無伴奏作品にも言えることで、1曲だけ残されている無伴奏フルート組曲BWV1013 も、冒頭からしばらく息継ぎらしき箇所がまるで見当たらない、など、いかにも編曲作品らしい要素はいろいろ指摘できるとか。そうした状況をかんがみつつ、唯一のフルート作品がそのような成立事情なら、他の組曲を無伴奏フルート用に編み換えてみるのも一興...と、リヒターのミュンヘン・バッハ管で首席フルートをつとめていたパウル・マイゼンが『無伴奏チェロ組曲集』を現代フルートのために編曲したヴァージョンがあるのですが、今回Coo Records がお送りするのはまさにその楽譜を使用しての、自身トラヴェルソもこなす名匠・新谷要一氏による抜群な名演!たった1本の旋律線で織りなされる対位法の綾、というのはチェロで弾いた時も同じですが、それをさらりと解きほぐしてみせる、えもいわれぬブレスとアタックの妙といい、いぶし銀ともいえる倍音ゆたかな音色で、あるときは急速に、あるときはカンタービレに、描き上げられるメロディの、なんと自然でうつくしいこと...腕達者なればこその境地です。ふわり空間に息づくホール録音の残響も実にやさしく、理屈ぬきに惹き込まれること請けあい。

CYPRES

MCYP0604
(国内盤)
\2940
ファブリツィオ・カソル(1964〜):
 「ピティエ(憐れみ)」〜J.S.バッハの『マタイ受難曲』による再構成
セルジュ・カクジ(カウンターテナー)
ラウラ・クレイコンブ(ソプラノ)
メリッサ・ジヴァン(ソプラノ) 他
アカ・ムーン …sax/ds/bs
エレル・ベソン、サヌ・ファン・ヘク(tp)
アレクサンドル・カヴァリエール、
チャ・ベリンガー(vn)
フィリップ・テュリオー(acc)
ロード・フェルカンプト(vc)
バッハ「マタイ受難曲」の心うつ音楽は、エスノ=ジャズ的アレンジでもこんなにクールに!大好評の2006 年来日公演に続き、2009 年もアラン・プラテル・バレエ団はやってくる前作は意外なユーザーから反響大!現代音楽棚に、古楽棚に、革命をもたらす問題作 !!「ジャズ=ワールド的クロスオーヴァー」なのか?「聴きやすい現代音楽」なのか?それとも、21 世紀流儀の新機軸バッハ解釈なのか——ギドン・クレーメルのプロデュースによる「バッハ・ヴァイブレーションズ」(GRML98794)が静かなヒット継続中の今、ベルギーからも意表つく新作が登場!『マタイ受難曲』の再構成アレンジによる、現代バレエのための音楽です。作曲者ファブリツィオ・カソルはブリュッセル王立音楽院出身、サックス奏者として自らのトリオ「アカ・ムーン」でも活躍、ベルギーでは絶大な人気を誇るパフォーマー&コンポーザーで、同じくシーン最先端で次々と話題をふりまいている異才バレエマスター、アラン・プラテルとのコラボレーションはつとに有名。2006 年にはプラテルのバレエ団の来日公演にさいし音楽担当としてアカ・ムーン名義で来日、モンテヴェルディの『聖母マリアの晩課』をベースに古楽器バンドとジャズバンドが絡む新作「VSPRS」で絶妙プレイを聴かせました。このときのサントラ(CYP0602)は会場で飛ぶように売れたのはもちろん『エスクァイア』誌の音楽欄でもレビューされたり、公演後にも余波を残し客注相次ぎ、輸入盤扱いの現代音楽とは思えぬ売れ行きをみせたものです。そして今回の「ピティエ!」も、実はアラン・プラテル・バレエ団のための音楽——しかも、2009 年4月には、アカ・ムーンもろとも当のバレエ団が、まさにこの演目で日本公演を行うのです!バレエ&演劇ユーザーへのプラテル人気は日本でも絶大ですから(騎馬サーカス団ジンガロのような…といったところでしょうか)4月前後はかなり聞かれるアイテムになるでしょう。「VSPRS」と違い、今回の「ピティエ!」は音楽だけでもじゅうぶん自立した作品になっていて、スピーディなジャズ・コンボ風のノリの良さで始まる冒頭からして「ああ、バッハはどうアレンジしても美しい…」と深く実感するカッコよさ!バレエは「マタイ受難曲」のストーリーから普遍的に通用する物語を抽出、母(マリア)と子(イエス)の結びつきに光を当て世界的な愛をうたいあげる、というもの。「西欧に限られない、普遍的なメッセージ性を」とのカソルの想いは、古楽歌手・オペラ歌手・セネガル民俗歌手…とルーツの違う3人の歌い手で織りなされるヴォーカル・トラックの妙味にも現れています——バッハのレチタティーヴォ(!)が、ジャンルの枠を超えてこんなに自然に響くとは…バッハ・ファン必聴!!
MCYP1654
(国内盤)
\2940
〜「レクィエムと七つの世紀」vol.3/19&20 世紀〜
ブルックナー(1824〜1896):
 1. レクィエム(1849)
デュリュフレ(1902〜86):
 2. レクィエム(オルガン伴奏版)
ギィ・ヤンセンス指揮
ラウダンテス・コンソート
1) エルケ・ヤンセンス(ソプラノ)
ペネロープ・ターナー(メゾソプラノ)
ルール・ヴィレムス(テノール)
アルノー・マルフリート(バス)
2) ブノワ・メルニエ(オルガン)
これは超・大目玉!ブルックナー・ファンご存知?の秘曲に、おもわぬ絶妙新録音!古楽大国ベルギー発、ピリオド楽器&A=438Hz の鮮烈&たおやかな「レクィエム」!!オルガンのみ伴奏版の精妙なデュリュフレ解釈も美しい、極上解釈の好評シリーズ第3 弾。
第2弾が出てきたあたりから、がぜん第1 弾も売れはじめた「レクィエムと七つの世紀」シリーズ。古楽大国ベルギーきっての「ルネサンス教会音楽から古楽器オケ・現代楽器まで何でもOK」な才人ギィ・ヤンセンス率いるラウダンテス・コンソートの面目躍如!なこの企画、日本市場ということを意識したら、いわばこれまでの2作は布石にすぎず(市場効果はともかく、どちらも演奏内容は桁外れですよ?)なんといっても今回の「第3 弾」こそが、ちょっと別格的な威光を放っているとしかいいようがありません!理由は明白——ごらんのとおり、曲目ゆえのことです。ブルックナーの秘曲と、定番の売れ線レクィエム!ブルックナー・ファンの多い日本では釈迦に説法かもしれませんが、いちおう説明を…ブルックナーは9曲の交響曲を書く前から、敬虔な宗教音楽作曲家として活躍しており、比較的有名な三大ミサ曲や「テ・デウム」など大管弦楽を要する大作のほかにも、ア・カペラやそれに順ずるルネサンス=バロック風の編成で意外な宗教曲をたくさん書いています。「レクィエム」はリンツの聖フローリアン教会学校の主任助教授になった25 歳頃の作で(…つまり、ショパンもシューマンも在命中です)なんと「合唱+弦楽+トロンボーン3+オルガン」と、まさにシュッツかモンテヴェルディか?というような編成で展開する秘曲——もちろん幾つかの既存盤はあるわけですが、本盤のすさまじいセールスポイントは、これを1)ピリオド楽器で演奏してしまって、しかも 2)とんでもなくウマい!というところ! ドラマティックな対比が、鋭いピリオド金管の吹奏と精妙なガット弦陣のあいだに打ち出され、ベルギーならではの少数精鋭の合唱が一糸乱れぬ、緻密なアンサンブルで悲哀をうたいあげる——尖鋭性と情感のあざやかな融合で、この若書きの秘曲を極限まで面白く聴かせてくれます!さらに、デュリュフレの作品がまたうつくしい仕上がり——ラッススやオケゲムなどで発揮された、ルネサンスのプロフェッショナルならではの精緻なポリフォニー唱法は、古雅な作法によるこの近代の傑作を、なんと濃やかに響かせるのでしょう!いちばん簡素なオルガン伴奏版にしたのも、この歌唱を際だたせるためか、と納得。新譜が出れば必ず「動く」デュリュフレのレクイエムだけに、これは要・注目!
MCYP2618
(国内盤)
\2940
ショスタコーヴィチ:交響曲第4番 ハ短調 作品43 ユーリ・シモノフ 指揮
ベルギー国立管弦楽団 (ブリュッセル)
現代ロシアきっての“音盤少なき”巨匠シモノフ、ベルギーきっての老舗楽団との金字塔的録音がついに国内盤仕様で登場! 精妙にして豪放、巨大編成をみごとに操り圧倒的なドライヴ感で聴かせる音楽の素晴しさは、同曲の演奏史に残る完成度!!ベルギー国立管弦楽団の最新新譜にあわせ——いや、本当は11 月のシモノフ来日にぶつけたかったのですが、諸般の事情により少し遅れて国内盤化とあいなりました。ショスタコーヴィチ通の方々にはもう、言わずと知れた?同楽団きっての超・名演! Cypres レーベルの弊社(代理店)取扱スタートから3年、「遅すぎる!」とのお声も聞こえてきそうですが...なにしろユーリ・シモノフといえば、押しも押されぬ現代ロシア最高の指揮者のひとり、モスクワ・フィルなど祖国のゴージャス・オケとの来日、単独来日での客演指揮やフジコ・ヘミングとの共演なども含め、とにかく「オペラ含め、ロシアものを本格的に強烈に振れる大物」として日本でもきわめて高く評価されているにもかかわらず、意外にも長期流通する「音源」がどういうわけか少ないのが嘆かれるところ。その数少ない録音のなかでも、このベルギー国立管とのショスタコーヴィチ第4番は輸入盤リリース以来根強く支持されつづけてきた1枚で、同曲のベストディスクと推す方も少なくないとか——事実、解説なし輸入盤状態でも静々と売れた異例の盤でして。曲について軽くおさらいを。ショスタコーヴィチは1935 年、オペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』が大成功をおさめ一躍「時の人」となり、意気揚々、今度は交響曲というものの概念をくつがえす新作を書こうと思い立ちます。しかし運悪くソ連書記長スターリンが『ムツェンスク郡の〜』の上演に接してキナ臭いものを感じ、手をまわして日刊紙『プラウダ』に罵倒だらけの批評を掲載、これによりショスタコーヴィチの国内評価は一転、前衛的な作品の公表など望めぬ状態になってしまいました。「第4 番」は初演リハまで順調だったのにお蔵入り、かわりに革命讃美ともいえる「第5番」が先に発表され、作曲家は信用をとりもどします。その後の宥和政策のなか「第4番」が初演されたのは、ようやく1961 年のこと...。それぞれ巨大な両端楽章のあいだにスケルツォが挟まる、そして緩徐楽章で終わる...という異例の形式を、6管編成くらいの巨大オケが壮大に練り上げてゆくこの作品、周到なスコア解釈と強力なドライヴ感なくしてはカタチにならないでしょうが、そこへいくとシモノフの音楽作りはまったく完璧! もうどんどん引き込まれる、終楽章のうむをいわせぬ流れなど、抵抗しようもありません——しかも楽団はベルギーの老舗、どこをとってもソリストだらけの同楽団が、その解釈を幾倍にも引き立ててくれるのです。キメるべき瞬間をすべてビシッとキメる、この楽団の不思議さ…、ぜひご注目を!
MCYP8601
(国内盤)
\2940
ブリテン(1913〜76):
 1. 歌劇「ねじの回転」より
  ヴァリアシオン1〜花〜なんと美しい
 2. 歌劇「ピーター・グライムズ」より
  子供の頃の刺繍〜真実、慈悲、そして真実
   〜間奏曲1〜浜辺にて
ヴェルディ(1811〜1901):
 3. 歌劇「オテッロ」より 柳の歌〜アヴェ・マリア〜
  すでに漆黒の夜〜おお大地よ!
  (オテッロ:ヴラディーミル・ガルジン(T))
リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949):
 4. 歌劇「ナクソスのアリアドネ」より
  このすてきなお嬢さんは誰?〜すっかりちゃんとしなくては!
  (音楽教師:デイル・デューシング(Br))
フィリップ・ブスマンス(1936〜):
 5. 歌劇「冬物語」より 我らが神々
スーザン・シルコット
アントニオ・パッパーノ指揮
王立モネ劇場o.
“ブリュッセルの英国婦人”王立モネ劇場のスーザン・シルコット。ドミンゴが惜しんだ、大野和士もマッケラスも絶賛した、パッパーノとは深い信頼関係——亡くなって5年、なお思い出される英国きってのソプラノ、スーザン・シルコットがモネ劇場時代に残した、かけがえのない歌唱がいま、丹念に拾い上げられる...!!大野和士氏が王立モネ劇場の音楽監督に就任するかという頃、この劇場のオーケストラとマーラーの『復活』を録音していますが、あのCD の鮮烈なソプラノこそ、当新譜の主人公であるところの英国人歌手、スーザン・シルコットにほかなりません。2003 年にガンで早世、しかし当時の彼女はグラインドボーンやコヴェントガーデンで次々とヒットを飛ばし、飛ぶ鳥を落とす勢いで名声を高めていた最中でした——早世を惜しむ声は多く、間もなく映画「アンジェラの灰」(1999)のアラン・パーカー監督やプラシド・ドミンゴらの出資で「スーザン・シルコット基金」が発足、新世代の歌手育成のために運営されています。数々の役柄にぴたりと合った歌唱と演技、迫真の表現力はベルギーや英国を中心に次々と注目の的となり、モーツァルト作品や現代ものでも巨匠歌手たちと舞台上で対等にわたりあいましたが、とりわけヴェルディ後期やヤナーチェク、ブリテンなどの近代ものに「当たり役」が多く、絶賛を博しています。英国に愛された天才歌手、シルコット——しかし彼女の名声は何より、ブリュッセルの王立モネ劇場に所属していた1994 年から2000 年の間にこそ爆発的に高まったのでした。ベルギーのCypres レーベルと王立モネ劇場の連携によるこの記念アルバム、この劇場での名演を集め、シルコットが(いわば、チェロのデュ・プレのように)たびたび追憶すべき、かけがえのない歌手であったことを如実に示してやみません!来日公演の記憶も新しい大指揮パッパーノがあの精鋭集団オケを全編にわたり率い、迫真の歌唱をドラマティックに、ガッチリ支えます。数々のブリテン役での神がかり的なハマり具合、3分程度の現代作品での絶美のリリシズムもさることながら、メインはやはり30 分以上たっぷり収録のヴェルディ「オテッロ」!パッパーノの棒も冴えわたり、近くて遠い、在りし日の舞台を強く惜しませてやみません。
MCYP2614
(国内盤)
\2940
シャルル・トゥルヌミル(1870〜1933):
 1. 音楽の礼拝像 op.61(1933)
エルネスト・ショーソン(1855〜99):
 2. 弦楽四重奏曲op.35(1899・未完)
  補筆:ヴァンサン・ダンディ
ガブリエル・フォーレ(1824〜1896):
 3. 弦楽四重奏曲op.121(1923)
ガッジーニ四重奏団
イェニー・スパーノゲ(vn1)
バルト・レメンス(vn2)
ベアトリス・ドロレ(va)
リホ・メセンス(vc)
フォーレの「弦楽四重奏曲」?! そう、それは巨匠最後の知られざる傑作——印象派時代に生まれた至高の秘曲3篇、フランク派最後の巨匠トゥルヌミルの名品まで!ベルギー気鋭のカルテットが深々と織り上げる...知らずに過ごすは、あまりに惜しい!録音がもっとあってもおかしくない?という曲、音楽史上けっこうあるものですよね。本盤に収録されているのは、まさにそうした「隠れ傑作」ばかり——これほど美しいなのに?これほど精緻に書かれているのに?なぜかめったに録音が出てくれません。うち2曲は、それぞれ大作曲家の「最後の1作」なのに...フランス印象派前後、あまりにも忘れがたい美を秘めた弦楽四重奏作品を、3篇——その大トリを飾るのは、高雅さと繊細さ、古典形式と色彩感のあいだを逍遥しつづけた巨匠フォーレが、作曲人生の最後に、とくに公表するつもりもなく自分なりの総決算として書きあげた全3楽章の四重奏曲。フォーレにとって最初で最後の四重奏曲ですが、思うがままの筆致から生まれた充実の響きには、他の晩年の室内楽作品とはやや一線を画し、濃やかな構成ながら肩の力の抜けた溌剌さが。同じく「辞世の句」となったショーソン作品は、残念ながら「志半ばに」3楽章で筆の絶えた曲——しかし残された3楽章の精緻さは驚くべきもので、ショーソンらしい風雅さと白熱の展開が同居する素晴らしい音楽です。完成に至らなかった第3楽章も、友人の名匠ダンディの補筆できれいに仕上げられています。そして本盤で何よりの「発見」なのは、フランクとピエルネに師事したフランス世紀転換期最大のオルガニストで、若きデュリュフレの師でもあった幻の名匠、トゥルヌミル唯一の弦楽四重奏作品「音楽の礼拝像」が収録されていること! 絶えずうつろうリズムと曲調の妙、神秘的な静けさから迫真のクライマックスまで変幻自在の響きは、まさにポスト印象派屈指の名品というにふさわしい美しさ...!演奏はベルギー・フランダース語圏の気鋭集団で、色彩感もさることながら、ふかい情感の織り上げ方はちょっと、若い世代とは思えない味わい——充実した聴き応えで迫ります。フランス音楽ファン、室内楽ファン必聴の1 枚!

EARLY MUSIC.COM

EMCCD7767
(国内盤)
\2940
フレスコバルディ:鍵盤のための作品集
ジローラモ・フレスコバルディ(1583〜1643):
 1.『カプリッチョ集 第1巻』(1624)より:
  ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラのカプリッチョ/
  ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ドのカプリッチョ
 2.『トッカータとパルティータ集 第2巻』(1627)より:
  カンツォーナ第1・2・3・4番/
  トッカータ第1・7番/ガリアルダ第2・3番/コルレンテ第1番
 3.『トッカータとパルティータ集 第1巻補遺』(1637)より:
  パッサカーリャによる100の変奏
 4. 『フランス風カンツォーナ集』(歿後刊、1645)より:
  アリア“バレット”
ハンク・ノックス (チェンバロ)
ケネス・ギルバート門下の天才が、正統的なイタリア楽器で奏でる至福の15トラック——純正調律ならではの特質を活かした不協和音のニュアンスは、なんともセクシー!これぞバロック、これぞチェンバロ! じっくり聴きたい、フレスコバルディ芸術の精髄!フランス語圏カナダの古楽シーンは近年ますます盛り上がっており、ご存知・名門ターフェルムジークとEarly-Music.com でおなじみのアリオン・バロック・オーケストラ、ふたつの気鋭団体が合同で交響曲演奏会を行うような大規模な催しも、もはや珍しくないとか。パリで同郷の巨匠ケネス・ギルバートに師事、アリオンの通奏低音を支える名手ハンク・ノックスも、今や同アンサンブルとともにすっかり「地元の名匠」として地盤を築きつつあるようです(末はバークリーのダヴィット・モロニーのように、ヨーロッパからも頼られる存在になるのでしょうか)。数年前にも、録音が意外に少なかった“リュリの通奏低音奏者”ダングルベールのクラヴサン作品集を録音、フランス語圏人ならではの適性と端正な表現のみごとな均衡でファンを驚かせてくれました。この「弾き崩しすぎない絶妙のライン」をどこに定めるかによって、チェンバロ音楽の印象はがらりと変わってくるもの——そういう意味で、今度新たに登場したこのフレスコバルディ作品集は出色の仕上がり、といえるでしょう! モンテヴェルディの同時代人、イタリア・バロック最初の世界的鍵盤奏者にして、ある意味ではルネサンス最後の巨匠ともみなしうるこの偉人が手がけた数多い鍵盤のための傑作群から、舞曲・トッカータ・変奏曲...と各ジャンルの逸品をバランスよく収録したこのアルバム、作曲者の精緻な設計を周到にふまえつつ、古い1/4 コンマ・ミーントーン調律の特性を完璧に掌握、随所にひそむ不協和音や音程進行の妙をさりげなく際立たせる「絶妙のライン」はおそらく、英国流儀のチェンバロ演奏に慣れながら近年フランス流儀の弾き崩しにも興味津々、といった日本のユーザー様たちにこそ強くアピールするに違いありません(担当もすっかり魅了されました)!もしCD1枚で端的にフレスコバルディ芸術を堪能するなら、今は迷わずこのアルバムがお奨め!

FUGA LIBERA

MFUG 532
(国内盤)
\2940
シュニトケ(1934〜1998):
 1.ピアノと弦楽合奏のための協奏曲op.136
 2. ひとつの和声上の変奏曲op.39(p独奏)
 3. 即興とフーガ op.38(p独奏)
ヴィクトリア・リュビツカヤ(ピアノ)
マルク・ゴレンシテイン指揮
ロシア国立交響楽団
モスクワ音楽院の伝統をひく名手が、「21 世紀の新しいシュニトケ像」を圧倒的な求心力でつむぎだす——宝玉のように輝き匂いたつピアノの美音を、スヴェトラーノフの衣鉢をつぐ名門楽団&気鋭指揮者が、重層な弦の大波で迎える!シュニトケが亡くなってから、もう10 年の歳月が過ぎ去ってしまいました——歿後10年にあたる2008年が終わる前に、FugaLibera から、モスクワ最前線をゆく名手&名指揮者によるクールな1作が登場!ドイツ系ソ連人として生まれ、冷戦から雪解けへの時期におけるロシアきっての前衛作曲家として、東西両陣営の多くの人々を熱狂させてきたシュニトケの作品群は、バルトークやショスタコーヴィチらのような近代的明確さと迫力、ペルトやタヴナーにも相通じる比類ない詩情、バロック的・古典的なスタイルのうまい採り入れ方などによって、21 世紀以降もなお異例なまでに広い聴衆を獲得しつづけています。歿後10 年を経た今でもこうして新録音が出てくるわけで、20 世紀最後のユニヴァーサルな大作曲家として、その名は今後も歴史に刻まれ続けてゆくのでしょう。ここで録音されているのも、決して初録音というわけではない1979 年のピアノ協奏曲——しかしどうでしょう、その演奏結果の瑞々しさ! 壮麗・重層な弦楽合奏の波をくぐるようにして、ひとつひとつが宝玉のような美を秘めた、ニュアンス豊かな音符を結晶させてゆくピアノ。ふたつの感性はぶつかりあい、対話をかわし、やがてひとつに溶け合ってゆく…作品構造をよく咀嚼したうえで、ひとつの新境地がここに打ち出されているのです。ゴージャスな弦楽サウンドの紡ぎ手は、巨人スヴェトラーノフと幾多の名演を残してきたモスクワ国立響の弦楽セクション。率いるはスヴェトラーノフの後任として、2002 年から長年にわたり同楽団の監督でありつづけている名匠ゴレシテイン! スケールの雄大さ、渋ーい音色の味わい、いずれもロシア好きにはたまらない響きではないでしょうか。対するピアニストは、モスクワ音楽院直系の新世代奏者リュビツカヤ——おそらくこれがデビュー盤のようですが、ドミトリー・リスやアレクサンドル・ルーディンら「ロシアの国際派新世代」たる気鋭指揮者たちが彼女を共演者に選んでいることからも「将来嘱望されっぷり」は推して知れようというもの。2曲のソロでも強烈な求心力をほとばしらせ、作品の面白さを印象づけてみせるあたり(シュニトケで、ですよ?)只者じゃない将来性を感じさせます。これぞ21世紀のシュニトケ像、必聴ですよ!
MFUG546
(国内盤)
\2940
R.シュトラウス(1864〜1949):
 1. ブルレスケ 〜ピアノと管弦楽のための
 2. 交響詩「英雄の生涯」
 (ヴァイオリン独奏:アレクセイ・モシコフ)
ヴァルター・ヴェラー 指揮
ベルギー国立管弦楽団
プラメナ・マンゴヴァ(p)
ウィーン・フィルの元コンサートマスターたる巨匠ヴェラーに流れる、偉大なウィーンの伝統。ブリュッセルの老舗ベルギー国立管ならではの、古雅さとみずみずしさの並存——そしてゲストは異才マンゴヴァ! 王道ファン必見、これぞ本物の「ヨーロッパ最前線」!ヴァルター・ヴェラーといえばご存知のとおり、1964 年から70 年までウィーン・フィルのコンサートマスターをつとめる一方、室内楽奏者として精力的に活動、あの伝説的なヴェラー四重奏団の名録音の数々によってディスク・ファンにも馴染み深い存在。その後は指揮者として、スコティッシュ・ナショナル管やロイヤル・フィル、リヴァプール・フィルなど英国の並居る名門オーケストラで音楽監督を歴任、録音シーンでも「知る人ぞ知る」本場ウィーン出身の名匠のひとりでありつづけています。2007 年シーズン以降は創設1936 年の名門ベルギー国立管弦楽団に音楽監督として、フランス語圏・オランダ語圏・ドイツ語圏のはざまに位置するブリュッセルを本拠に、この伝統と新鮮さを兼ねそなえたオーケストラと新たな境地を切り開きつつある——シーンに敏感なユーザーさまなら、就任直後にリリースされた、ドイツの気鋭エッカルトシュタイン(p)をゲストに迎えてのグラズノフ盤(MFUG521)や、精密なスコア読解のもとフランス的色彩感まで描出してみせたマルティヌー盤(MFUG531)などFuga Libera 盤もご存知でしょう。もっとも、マーケット的にはグラズノフもマルティヌーも、誰しも手に取るメジャー性がないのは事実——そこへ、ようやく出てくれた! もろに王道ど真ん中、R.シュトラウスの『英雄の生涯』! オーケストラの機能性と総体としての構成感、そして圧倒的なスケール感やロマンが問われるこの大作、まさに指揮者のセンスをためすにはうってつけの「誰しも気になる」レパートリーではありませんか!ましてや、その指揮者がオーストリアの名匠、楽団はクリュイタンス、シモノフ、ミッコ・フンラク…と折々多彩な巨匠たちに育てられてきたフランス語圏の老舗楽団とあれば...ヴェラーの常どおりスコア読解はきわめて緻密、その細密な解釈にソリストぞろいのオーケストラもみごと応え(引き締まった高雅なソロは、同楽団の現コンサートマスター、コーカサス生まれのソ連系鬼才アレクセイ・モシコフ!)六つの楽章を通じて静々と募ってゆく充実した感動はまったく比類ない——独墺系オケとの聴き比べもがぜん楽しく!そして本盤のもうひとつの目玉は…フォン・ビューロー御大が「演奏不可能!」と叫んだほどソロパートもオケも技巧的な『ブルレスケ』!メロディアスな主題旋律をティンパニが(!)提示するこの秘曲、意外と競合盤もあるのですが、ゲストが2008 年のフォル・ジュルネ以来がぜん「見られている」新世代の異才マンゴヴァ——これはもう注目しないでいろというほうが無理でしょう(しかも、彼女の初の協奏曲録音ですし)。この人の不思議なところは、わりとゴツゴツ弾くにもかかわらず音楽の流れがきわめて説得力にあふれている点(アーノンクール的?)。精妙なヴェラーの指揮との組み合いっぷりは必聴ものですよ!

GRAMOLA

GRML98833
(国内盤)
\2940
ウィーン、19 世紀のたそがれ
〜ゴールトマルク、ツェムリンスキー、他〜
 カール・ゴールトマルク(1830〜1915)
  1. ヴァイオリンとピアノのための組曲 第1 番 ホ長調 op.11
  2. バラード ト長調op.54〜vnとpのための
  3. エール 〜ヴァイオリン協奏曲 op.28より
 アレクサンダー・ツェムリンスキー(1871〜1942)
  4. ヴァイオリンとピアノのための組曲=
   セレナード イ長調(1896)
 エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト
 (1897〜1957)/ロジカ・レヴァイ編:
  5. 幻想的奇想曲「小人たち」
  (原曲:ピアノのための「おとぎの絵本」op.3より)
 アルノルト・シェーンベルク(1874〜1951):
 6. ヴァイオリンとピアノのための小品 ニ短調
トーマス・アルベルトゥス・イルンベルガー(vn)
エフゲニー・シナイスキー(p・ベヒシュタイン1905 年製)
「こだわりあり」の名手イルンベルガーが、祖国オーストリアらしさに立ち返るとき——ゴールトマルクの端正なロマンティシズムから、シェーンベルク初期の軽妙さまで、自由自在伴奏ピアノは、1905 年製のベヒシュタイン。本格派の薫り漂う、これぞ世紀末の響き!去年から今年にかけ、モーツァルトからパガニーニ、はてはブラームス中後期にいたる幅広いレパートリーを、折々ピリオド・アプローチを交えながら、筋の通った解釈で、誰も聴いたことのない響きを傑作群から引き出してきたザルツブルク出身の気鋭、トーマス・アルベルトゥス・イルンベルガー。名手デームスの弾くフォルテピアノとのタッグもさることながら、最近では気鋭ソリストのエフゲニー・シナイスキーが弾く“現代前夜”のピアノとのデュオでも旺盛な活躍を続けているもよう。本盤でもパートナーはシナイスキーで、使われているのは1905 年製の古雅なるベヒシュタイン!そんな“時代”を感じさせる伴奏の上でくりひろげられるのは、1900 年前後の“世紀末 fin de siecle”とか“世紀転換期 Jahrhundertwende”と呼ばれる時代のウィーンに花開いたヴァイオリン音楽の数々。クライスラーの、親しみやすいが通俗的な作風にウィーン全体が染まる直前、とでも申せましょうか、芸術方面ではやれ「ウィーン分離派」だのクリムトだのアールヌーヴォー建築だの新芸術がもてはやされはじめた当時のウィーンにあって、音楽はまだまだ(良い意味で)晩期ロマン主義の伝統的な調性感覚・形式感覚がきっちり護られていました。プログラムの中核を占めるのは、ゴールトマルクの中〜後期と、ツェムリンスキーの初期作品!1860 年代と90 年代、つまりブラームスのヴァイオリン・ソナタと前後するようにして書かれた作品群。ゴールトマルクはリストと同じく、ハンガリー出身でドイツ語圏で活躍した名匠、傑作ヴァイオリン協奏曲のかたわら、金字塔的通俗曲「田舎の結婚式」のせいで評価を下げたきらいもありますが、他の作品は室内楽からオペラまで名作だらけ——本盤の「組曲」はCPO にも録音がありますが、本場オーストリアの香気を漂わせたイルンベルガーの解釈はやはり出色の仕上がり、けだし絶品!ふわり、ひと弓でフレーズを作ったりする瞬間に、他の追従を許さぬ味わいが宿ります。ツェムリンスキー初期でもその芸風はみごと生きていますが、コルンゴルトの小品におけるジャズ風な?カッコ良さや、シェーンベルク初期のキャバレーソングめいた掌編での軽妙なタッチなどを聴くと、その表現力の多彩さに唸ってしまうはず!
GRML98835
(国内盤)
\2940
ベートーヴェン:三つのピアノ・ソナタ「悲愴」・「月光」・「テンペスト」
ベートーヴェン(1770〜1827):
 1. ソナタ 第8 番 ハ短調「悲愴」
 2. ソナタ 第17 番 ニ短調「テンペスト」
 3. ソナタ 第14 番 嬰ハ短調「月光」
マティアス・スーチェク(p/ベーゼンドルファー)
ウィーン新世代、ベーゼンドルファー使いの名手、とうとうベートーヴェンに着手——!かっちり安定した構造把握力も頼もしく、ピアニシモからフォルテシモまで絶美のタッチが初期3名曲を、どこまでも興味ぶかく聴かせる——後続シリーズも気になる、注目リリース!シューベルト、ラフマニノフ、チャイコフスキー...いかなるプログラムにもベーゼドルファーの銘器をみごと適合させ、しなやかなタッチの美音で聴き手をからめとり、確たる楽曲構造を静々と、しかしはっきりと浮き彫りにする新世代の名手——マティアス・スーチェクもまた、オーストリアの“いま”を代表する注目の気鋭奏者。1978 年生まれということは、早熟の才人も多いピアニストの世界では「これからが正念場」なのでしょう。先日SACD ハイブリッドでリリースされたチャイコフスキーとラフマニノフの協奏曲といい、実際このこところのスーチェクの録音はそうした気負いを感じさせる、王道レパートリーへの“ウィーンの音楽家からの挑戦”となっているように思われます。なにしろ今度の新譜は「ついにやったか」という感じのベートーヴェン! ライナーノートは彼自身へのインタビューなのですが(全訳添付)、そこでスーチェクは「他の誰かと比べられてどう、とかではない、私は私の音楽をするだけです」と言いつつも、影響を受けてきたベートーヴェン弾きとして「ブレンデルとアラウ」をあげつつ、さらにグルダやバドゥラ=スコダといったウィーン派、ヨアヒム・カイザーの大著などにもふれたあと、結局いつも最も示唆的なのが「シュナーベル」…と、歴代の名盤を次々とあげてくるあたり、かなり気負ってるじゃん!というのが伝わってきて頼もしい限り——そして演奏を聴いてみて納得、いかにもシュナーベルやバックハウスの世代を思わせる渋さ!曲の造形は、いかにも戦前派のような硬派さなのです! それでいてタッチは実にみずみずしく、ベーゼンドルファーからキラキラと透明な響きを引き出してゆく——この硬質の響きが「月光」や「悲愴」のあの緩徐楽章にしずかな深みを与え、「テンペスト」の“音楽そのもの”にじっくり傾聴させてくれるのです! この調子で「ヴァルトシュタイン」や「田園」あたりもやってくれたら…どんな効果が上がるのだろう?と想像力過多になってみたり。べつにどこにも「全集その1」などとは謳ってないのだが、いやおうなしに期待感も高まろうというもので。ご注目いただければ幸いです!
GRML98837
(国内盤)
\2940
ショスタコーヴィチ(1906〜75):
 1. ピアノ三重奏曲 第1 番 ハ短調 op.8
 2. ピアノ三重奏曲 第2番 ホ短調 op.67
イヴァーン・エレド(1936〜):
 3. ピアノ三重奏曲 第1 番 op.21 (1976)
エクナー・トリオ ゲオルク・エクナー(vn)
フロリアン・エクナー(vc)
クリストフ・エクナー(p)
力まず、しなやか、優美さをさえ漂わせ——しかし、なんという緊密さ、なんという求心力!“クラシックの祖国”オーストリアの伝統のなせるわざか、ひたすら自然に響く、このショスタコーヴィチの“気高き軽妙さ”に酔うべし! エレドのネオ=ロマン的作品も、絶美!“クラシック音楽の祖国”オーストリアは今もなお、次々と才能あふれる気鋭の名手たちを世に送り出し続けています。ソリストたちもさることながら、アンサンブルでも驚くほど——いや、あっけにとられるほどの天才たちが続々よどみなく登場するわけですから、さすが本場というほかありません! 今回登場するエクナー・トリオなる兄弟ピアノ・トリオは、1997 年に結成されたばかりの若手アンサンブルには違いないのですが、その音作りには早くも個性が感じられるとともに(ちょっと矛盾するようですが)伝統に裏打ちされた、得体の知れない求心力を強烈に感じさせてやまない注目グループ!ピアノはスコダらウィーン勢のほかパリ音楽院でベロフやエンゲレールにも師事、ヴァイオリンもベルクSQ のピヒラー門下生で英語圏でも修業を積んだ国際派。チェロはクロップフィッチュ(!)とクレメンス・ハーゲン(!!)門下とのこと、まあ時の流れは早いもので…エクナー・トリオはLiveClassics からベートーヴェン盤でデビューしたそうですが、このたびGramola から本格的に商業録音の世界へ乗り出すにあたり(それもウィーンの団体が)ショスタコーヴィチを選んでいる時点で、なかなか曲者らしさが漂ってきたり…しかし驚きのポイントは、そこではなくて。個性的にしようとリキめばいくらでもリキめるし、そうしたかたちでキッチュな音楽性を打ち出すこともできるはずのショスタコーヴィチ2編を、きわめて自然に、誰も簡単に到達できないくらいの自然さで、しなやかなトリオの傑作に仕上げてしまっているのです!そう、まるでシューベルトかドヴォルザークでも弾いているような自然さで…冒頭いきなり弦が端麗なフラジオレットを聴かせる「第2番」なんて、もう絶美の極致ですよ!ショスタコーヴィチが意外な美的メロディメーカーだったことを如実に印象づけるその解釈は、この作曲家を苦手とするユーザーさまにも強烈におすすめできます!で、もうひとつの聴きどころは、併録されているハンガリー人作曲家エレドの新古典的佳品。なにしろ演奏陣がそんなセンスの持ち主たちなのと、1960 年代にはセリー理論の擁護者だったエレドが1970 年代には新技法をことごとく廃した、ブラームスやラフマニノフもかくや、というクラシカルな作風に立ちもどったていたことのおかげか、ひたすら明晰・流麗にして滋味たっぷり、“現代臭”のいっさいない美がはっきり打ち出されています。まさに“発見”!筋の通った、玄人にもおすすめの極上室内楽盤です。
GRML98832
(国内盤)
\2940
シューマン:ヴァイオリンとピアノのための作品集
 1. 幻想小曲集 作品73
 2. ピアノとヴァイオリンのためのソナタ イ短調 作品105
 3. ヴァイオリンとピアノのための大ソナタ ニ短調 作品121
 4. インテルメツォ(「FAE のソナタ」より)
ブラームス(1833〜97):
 5. スケルツォ(「FAE のソナタ」より)
トーマス・アルベルトゥス・イルンベルガー(vn)
イェルク・デームス(fp/シュトライヒャー1868 年)
ピリオド奏法のきめこまやかさが、ロマン派の心の機微を、きれいに引き出してくれる19 世紀の古雅なるピアノ、ガット弦のえもいわれぬ響き——名手イルンベルガー、巨匠デームスと組んでの好評シリーズ最新作は、19 世紀も半ばに切り込む絶妙解釈!昨年80歳の誕生日をむかえた“ウィーンの顔”のひとり巨匠イェルク・デームスが、同市きっての若獅子ヴァイオリニスト、イルンベルガーとデュオ活動を展開、あらためて端々しい音楽をつむぎ続けているのはご存知のとおり——Gramola ではモーツァルト(GRML98789)とシューベルト(GRML98828)の二重奏アルバムをリリース、とくに前者は『レコード芸術』特選に輝いて以来、好調な売れ行きをみせてくれています。このデュオが新たに問うた最新盤は、なんとシューマン! 19世紀も半ばの音楽をピリオド楽器で、という企画。「音楽の本場」オーストリア流派の不思議なピリオド楽器サウンドはなんとも滋味深く、楽器の古雅なる持ち味を十全に引き出す巧みな19世紀奏法は、ヴァイオリンもピアノも「ぜひとも、こういう弾き方でなくてはならなかった!」と感じさせる説得力、自然な親密さを醸しだしてやみません。イルンベルガーという人は実のところまだ20代なのですが、みずみずしいサウンドは確かに(最上の意味で)若々しくありつつ、決然とした弓さばきといい、曲構造を完璧に見据えたフレーズのとり方のたくみさといい、おそろしい感性を感じさせてやみません——デームスのみならず、かのイヴリー・ギトリス御大も大推薦!というのも全くうなずけます。その若さに触発されてか、デームスのピアニズムもますます冴えをみせ、老境ならではの凄味まで迸らせてみせる——弾いているのはブラームスが愛奏していたタイプのシュトライヒャーで、きらびやかさと丸みが自然に折り合う美音は(適度に残響を含めた録音エンジニアリングとあいまって)なんとも心地よく「ありのままの19世紀」を堪能させてくれます(こんなふうに古いピアノを弾きこなせる人って、滅多に出ないんですよね…)。本盤の選曲もちょっとしたポイントで、クラリネットで演奏される機会が圧倒的に多い「三つの幻想小曲集」作品73をヴァイオリンで聴けるのも嬉しいところ——シューマン自身が「クラリネットまたはヴァイオリンで」と指示したのがよく解る、一味違った魅力が楽しめます(演奏は絶品だし…)。ブラームスやディートリヒら後続世代の作曲家と共作した「FAE ソナタ」からの抜粋(CD を華麗に締めくくるブラームスの「スケルツォ」!)も嬉しいオマケです。

INTRADA

INTRA030
(国内盤)
\2940
ムソルグスキー(1839〜81):組曲「展覧会の絵」
ラフマニノフ(1873〜1943):
 前奏曲集 作品23より 第2・3・4・5・7・10番
 前奏曲集 作品32より 第5・10・12番
ロヴロ・ポゴレリチ(ピアノ)
まったく方向性の異なる「イーヴォの弟」、待望の新譜登場!なんのことはない開始部から、深遠・壮大な展開へ——圧倒的な、この鑑賞体験!!異色のテンポ感・ピアニズムで聴き手をからめとる、ラフマニノフの小宇宙がまた堪らない…Intrada から待ちに待ったアルバムのリリース情報が届きました! 兄イーヴォと同じピアニストという道を選びながら、兄とはまったく異なる音楽修業を続け、祖国である旧ユーゴスラヴィア圏内を中心にひたすら腕を磨き続けてきたもうひとりの異才、ロヴロ・ポゴレリチ! かつてリストのロ短調ソナタという大作(INTRA026)で、静々と内側へ沈み込むような、とほうもない深遠な小宇宙を味あわせてくれたこのピアニスト、実に2年ぶりくらいのセカンドアルバムとなるが、今回は前作よりもさらにスケールアップ、メイン曲目はなんと大本命の傑作『展覧会の絵』というから嬉しい限り——しかも併録はラフマニノフの前奏曲が9曲も! より広いユーザー層に訴求できるプログラムで、ロヴロここにありき、を強烈にアピールしてくれます。ロヴロ・ポゴレリチのピアニズムは、技巧は完璧・しかもありきたりでない...という点においては兄イーヴォと一緒なのですが、感性のあり方はだいぶ方向性を異にしていて、おおまかに言えば「内に沈んでゆく、深さ」において他の追従を許さない人だと思います。「展覧会の絵」でも、冒頭はごくなにげなしに始まるのに、色々な瞬間に思わぬアゴーギグが潜んでいたり、ふと立ち止まる瞬間が思わせぶりだったり、雄弁にうたう瞬間にスラヴ民俗の土臭さをふわり感じさせてみたり...と、いたるところで弾ける個性が容赦なく聴き手をその「内に沈む」パワーで引きずり込んでゆくのです。そうした体験の末に待っているクライマックス、そして聴き終えた後の充足感——!何度もじっくり聴き極めたい遺憾なき名演です!さらに嬉しいポイントは、併録作品としてラフマニノフの個性豊かな前奏曲を9曲も聴けること——ロヴロの音楽性を端的に知るなら、これら前奏曲を少しじっくり傾聴するのが一番でしょう。各小品のいたるところに周到な作品解釈が忍ばせてあり、それぞれ5分もないくらいの掌編が、とほうもなく壮大な宇宙として広がる...
INTRA040
(国内盤)
\2940
シューマン(1810〜56):
 1. 「謝肉祭」作品9
 2. 「色とりどりの小品」作品99
エマニュエル・スヴィエルチ(ピアノ)
香り立つようなフランスのピアニズムが、壮大なスケール感をそなえたら——ラフマニノフの大作群で圧巻の解釈をみせたシヴィエルチ、今度はシューマンの世界へ大作「謝肉祭」と、いくつもの小組曲からなる小品集で、雄大さと繊細さを同時に堪能!エマニュエル・スヴィエルチといえば、つい先日デビュー盤となるラフマニノフ・アルバムが日本でも発売されたばかり——ゴージャスさ一辺倒だけでなく、『音の絵』に息づく細やかなニュアンスの妙をみごとに汲んでの名演ぶりで、とても最初の録音とは思えない風格を印象づけてくれました。その彼女が、今度の録音にシューマンを選んだという…しかし、彼女はやはり「詩情」を知る人なのだ、とあらためて思い知らされる、またフランスならではの「香り」にあふれた、すばらしい演奏結果となっているのです!ラフマニノフの録音では、彼女の「スケールの大きさ」がなにより作品とうまく合致して、うむを言わさず聴き手の心をつかみとったうえで、詩情にみちた演奏によって恍惚とさせてくれたものでした。しかし、今度はいわばその反対の流れ——なにしろ「謝肉祭」はご存知のとおり小曲の連続、もうひとつの収録作「色とりどりの小品」は言わずもがな小品集ですから、ひとつひとつの楽節を豊かに、繊細に彫り上げるほど、その美はきわだってくるわけで、スヴィエルチの「細やかさ」はみごとな完成度、えもいわれぬニュアンスでそうしたひとつひとつの「小宇宙」を際立たせています。しかしその一方で、シューマンは「連作」「曲集」としての設計にも配慮しつづけた人——ともすれば難解ともいえる、幾通りの解釈も許すようなその曲構造から、スヴィエルチは「これ!」とラインを見きわめ、周到な解釈のもと、曲集全体としてもひとつの有機体として成立するような、理路整然、雄大そのものの音楽を現出させてみせます。とりわけ(いかにも、前頁のロヴロ・ポゴレリチの「展覧会の絵」と同じように)長大な細部の連続たる「謝肉祭」が、全体としてつながって聴こえてくるクライマックスの充足感ときたら・・・! Intrada から登場するピアニストはみな一筋縄ではいかない才人ばかりですが(デルフィーヌ・リゼ、ヴァハン・マルディロシアン…)このスヴィエルチもさらに先が楽しみな逸材だということを、この「2枚目」が実証してくれました!
INTRA039
(2CD)
(国内盤)
\4515
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 1. ライプツィヒ・コラール集BWV651〜668(全18 曲)
 2.プレリュードとフーガ ハ長調 BWV547
 3. カノン風変奏曲 BWV769
 4.プレリュードとフーガ ロ短調 BWV544
ヴァンサン・ヴァルニエ(オルガン)
デュリュフレの後継者ヴァルニエ、満を持してのバッハ録音は、こんなにも素晴しい!バッハ最晩年の傑作コラール集、全18 曲をチクルスとして聴くときのたとえようもない壮大さ——晩年の秘曲「カノン風変奏曲」など、併録曲も充実!!パリの聖エティエンヌ・デュ・モン教会といえば、前頁でも登場した20 世紀フランスきっての天才作曲家デュリュフレが正規オルガニストをしていた教会——そこでデュリュフレ夫妻の後継者として正規奏者をしているヴァンサン・ヴァルニエは「フランスもののプロフェッショナル」として、日本でもひろくその名が知れ渡ってきた偉人!2009 年4月には待望の来日公演も企画されていますが(すみだトリフォニーホールでのユニット公演ほか、いろいろ大舞台が待っているとのこと)、その先駆けをなすタイミングで、オルガン・ファンのみならず一般ユーザーにもひろくアピールできる王道ど真ん中の録音を世に問うてくれました——なんと、バッハです!それも、あの、晩年の大曲集「ライプツィヒ・コラール集」!!チェンバロ曲や弦楽器のための作品に比して、バッハのオルガン作品はその概要すらあまり知られていないかもしれませんが、たまさかに2枚組録音で登場するこの『ライプツィヒ・コラール』だけは、ちょっと別格なのではないでしょうか。もともとヴァイマールにいた頃に書いていたオルガン独奏のためのコラールを、ライプツィヒ時代後期の1740 年代に改めて抜本改訂、最晩年まで手を入れていたともいわれる傑作オルガン独奏曲集で、教会カンタータにも多数使われている、ルター派プロテスタントの伝統的な賛美歌たるコラールのメロディを、バッハ随一の対位法技法と鍵盤作法であざやかに料理した傑作を18 曲おさめています。ピアノ編曲版でもよく聴かれる「いざ来ませ、異教徒の救い主」BWV659などを含むこの曲集、オルガニストたちにとって「ゴールトベルク」か「無伴奏チェロ組曲」かというくらい重要な意味をもつバッハ作品というわけで、日本ではまったく知られていないドイツの名手が幾多のアルバムを出していますが、ここへきてキャリアの充実を感じたのか、ヴァルニエのようなスター奏者が堂々これを全曲録音してくれたのは嬉しい限り!シュヴァイツァーを生んだ「フランスのドイツ語圏」的地域たるアルザスで、名匠アルフレート・ケルン製作の銘器のパイプを縦横無尽に使いこなし、古雅なゴシック的サウンドからフルート管による神秘的演出まで自由自在…この曲の決定的名盤のひとつとして認知されてゆくでしょう。最晩年の「小・フーガの技法」たる「カノン風変奏曲」や、長調・短調各1曲ずつの壮麗な「前奏曲とフーガ」が併録され、磨きぬかれたタッチで聴けるのも嬉しい限り!

PAN CLASSICS

PC10208
(国内盤)
\2940
天におられる神に祝福あれ(ギッゾーロ)
神は偉大な光を二つ、お造りになった(マロッタ)
讃えよう、かの人を(カリッシミ)
トッカータ*(ランバルディ)
大海原、風は逆巻き(ストロッツィ)
ヴァニタス・ヴァニタトゥム(カリッシミ)
もろびと、喜び沸きあがれ(ギッゾーロ)
誰が、あなたをわたしの兄弟に(マロッタ)
沸きあがれ、もろびと(トレヴィゾ)
わたしを放っておいてください(カプアーナ)
第2トッカータ*(M.ロッシ)
口づけせよ、祝福されたる罪人よ(ディンディア)
眠る時間がやってきた(メルーラ)
第2ストラヴァガンツァ*(ド・マック)
第1ガリアルダ*(ド・マック)
いとしい人がわたしに言う(ディンディア)
わが心は焦がれています(サンチェス)
今日この日、天の諸聖人は喜びに沸く(ロヴェッタ)
アンサンブル・サヴァーディ(古楽器使用)
ウルリケ・ホフバウアー、
クリスティーネ・ヤウナルクスネ(S)
マリー・ブルニジアン(hrp)
心ふるわす繊細さの、トリプルハープをひとつだけ——オーガニックな響きのうちに左右からうたいかわす、ほんのり神秘をはらんだバロック歌唱がうつくしい...モンテヴェルディやフレスコバルディと同時代の、イタリア南北の知られざる名品群!17 世紀前半といえば、複雑な多声のマドリガーレ芸術がすたれ、カッチーニやモンテヴェルディらが独唱や二重唱などソロ性の高い新芸術を発展させていった時代であり、フレスコバルディやその弟子たちが、鍵盤楽器のための独奏音楽を飛躍的に進歩させた頃——そんな時代にあって、イタリアではローマを中心に、ハープという楽器がさかんに愛奏されていたのをご存知でしょうか? かのカッチーニもハープをよく奏したほか、ミキ・デッラルパなるハープの名匠も登場、さらにダブルハープやトリプルハープなどが改良・開発されていたとか。さらに、ハープが立派に通奏低音楽器として通用していた世紀半ばには、ローマのカリッシミを中心に「宗教的な物語による音楽劇(イストリア・サクラ)」つまりオラトリオがさかんに作曲されるようになるのですが、本盤のプログラムはまさにそうした17 世紀前半のイタリア楽壇を彷彿させるような、ハープ1台と歌声ふたつだけで展開してゆく独唱&二重唱作品集——曲目は基本的に、オラトリオの誕生を促した「語り歌」、つまりキリスト教の物語なり教訓なりを音楽に歌い込めたアリア的楽曲ばかりを集めています。が!なにしろ伴奏がハープ1台というあたり、そして基本的に「物語る」スタイルの歌が多いため、さながら宗教的吟遊詩人?とでもいうような、イタリア的でありながらケルト風にも聴こえる、なんとも玄妙な音響体験が詰まっているのです!演奏は名門バーゼル・スコラ・カントルムで出会った3人の女性、とくにホフバウアーはドイツ語圏きっての古楽歌手として多忙に活躍中ですが、白眉はやはりフランス陣ブルニジアンの弾くトリプルハープのうつくしさ!金属的なのにオーガニック、さそいかけるような繊細典雅な響きを、両側から絡みつく美声とともに、『レコ芸』レコード・アカデミー賞2009 録音部門を受賞した名匠・服部光一郎氏が、ごく自然な音響で収録してくれました。
PC10211
(国内盤)
\2940
ヴァイオリン、バスと通奏低音
 〜17 世紀後半、ドイツ中期バロックのすべて〜
ニコラウス・ブルーンス(1665〜97)
 1. 神よ、わが心は揺るぎません
ディートリヒ・ブクステフーデ(1637〜1707)
 2. ソナタ イ短調 BuxWV272
フランツ・トゥンダー(1614〜67)
 3. オルガン独奏のためのカンツォーナ
 4. めでたし、慈悲あふるる天の父よ
ハインリヒ・シュメルツァー(1623〜80)
 5. ソナタ 第9番 イ短調
ヨハン・パッヘルベル(1653〜1706)
 6. おお主よ、わたしには敵がなんと多いのでしょう
作者不詳
 7. ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ
ヨハン・ローゼンミュラー(1649〜84)
 8. イェルサレムよ、主を讃えよ
ヨハン・クリーガー(1651〜1735)
 9. チェンバロ独奏のためのファンタジア ハ長調
ヨハン・フィリップ・クリーガー(1649〜1725)
 10. 第1ソナタ ハ長調
ビーバー(1644〜1704)
 11. ニジ・ドミヌス(主が家を建てるのでなければ)
Ens.コルダルテ(古楽器使用)&ペーター・コーイ(B)
ダニエル・ドイター(vn) マルクス・メルクル(cmb, org) ハイケ・ヨハンナ・リントナー(vg)
なんと、名古楽歌手ペーター・コーイがゲスト出演! 古楽都市ケルンで最先端をゆくスーパー器楽集団コルダルテが、声楽曲までカヴァーできてしまったら...ヴァイオリン・ガンバ・鍵盤、全員ソロあり器楽7曲&声楽4曲。大事な作曲家はすべて網羅!ムジカ・アンティクヮ・ケルンやコンチェルト・ケルン、カントゥス・ケルンにカペラ・コロニエンシス…大作曲家たちの故郷たるバロック大国ドイツのなかでも、最高の「古楽のメッカ」であり続けてきた街、ケルン——ここでは幾多の重要アンサンブルから、次々と新世代の古楽器奏者が巣立ってきました。この古楽都市で競争社会を生きぬき、着実にCDリリースを続けているのが、百戦錬磨の国際派バロック・ヴァイオリン奏者ダニエル・ドイター率いるコルダルテ——これまでのアルバムで器楽一辺倒だった彼らは今回、なんとゲストに重鎮レヴェルの偉大な古楽歌手を招き、声楽作品まで含めたきわめて豪華なプログラムを愉しませてくれます。なにしろ演奏陣もさることながら、CD1枚で、「バッハ以前」の17 世紀後半の大事なドイツ・バロック作曲家をすべて網羅、周到なプログラムとクールな名演で、その精髄を堪能させてくれるのです! 北はデンマーク国境から南はチェコ近辺まで、ブクステフーデ、ビーバー、シュメルツァー…とドイツ語圏の重要作曲家はみんな出揃っています(17 世紀前半のシュッツら「三大S」周辺を網羅するRicercarの2枚組(MRIC254)とあわせて聴けば「バッハ以前のドイツ」がすべて理解できるといっても過言ではありません)。曲種も声楽率3.5 割と、器楽好み&声楽もちょっと気になる日本市場にぴったり、ヴァイオリン、ガンバ、チェンバロ、オルガンすべてに独奏(または低音付ソロソナタ)を収録!演奏抜群、録音周到(本年レコード・アカデミー賞受賞、服部光一郎氏の録音!)、Digipack 外装も美麗——古楽器特有の「味」、ドイツ・バロックの「粋」を十二分に味わえる逸品、どうぞご注目を!
PC 10193
(国内盤)
\2940
ヨーゼフ・ラウバー(1864〜1952):
  1. 単一楽章のソナタ(1933)
  〜フルートとピアノのための
パウル・ユオン(1872〜1940)
 2.フルートとピアノのためのソナタ(1923)
ラファエーレ・ダレッサンドロ(1911〜59)
 3.フルートとピアノのためのソナタ(1942)
 4. フルートとピアノのための五つの掌編(1942/45)
トーマス・シュトレースレ(クラリネット)
クリスティアン・ツァウク(ピアノ)
オネゲルやマルタンだけじゃありません——フランス近代を補いながら、ドイツ語圏との親近性のなかで独自の近代音楽シーンを築いてきたスイスの、忘れがたい3名匠。とくにダレッサンドロは、デュロゾワールにも比肩しうる“発見”!極上フルート&ピアノでどうぞ。ロマン派末期から印象派前後の、スイスの音楽——と聞いて、何をイメージするでしょう? ワーグナーのスイス逃避時代(ロマン派“末期”ではないけど)?「フランス6人組」のひとり、オネゲル? それともアンセルメが1918 年に創設したスイス・ロマンド管? あるいは20 世紀の新音楽を育てた、パウル・ザッハーのバーゼル室内管?・・・でも、 “スイスで活躍した作曲家”となると、なかなか思い当たらないのでは(かろうじてフランク・マルタンと、ドイツ語リートの名匠シェックくらいでしょうか)。しかし実のところ、上にあげたいくつかの例はある意味、スイス音楽関係事情を代表するものとなっています。ドイツ語とフランス語が双方とも広く使われているこの国では、ドイツ楽壇の流儀をふまえつつ、折々にフランスの近代音楽の語法をうまく吸収、時には(オネゲルやザッハーのように)両国のシーンに影響さえ与えながら、まさに近代音楽の“キーポイント”たるべき立ち回りをみせる音楽家が続出したのでした。そんな知られざるシーンの魅力を絶品演奏で端的に教えてくれるのが、スイスのPan Classics から届いたこの新譜!ヨアヒムに呼ばれてベルリン音大を地盤に活躍した“ロシアのブラームス”ことモスクワ生まれのスイス人ユオンや、マルタンの師匠でハープ作品でも知られるラウバーらは、20 世紀初頭にあってなおロマン派末期の形式感を守りつつ、そこに近代音楽のテイストをひとたらし、懐古的ながら形式主義的無味乾燥とはおよそほど遠い作風を示した名匠たち。秘曲探しの達人の方々からすれば「なるほど、知ってる」名前でしょうが、真の“発見”は何といっても早世の天才、ダレッサンドロ!パリ音楽院でナディア・ブーランジェに見出されながらも、内気な皮肉屋で世間的な成功から背を向け、ローザンヌで細々と音楽活動を続けたというこの作曲家、クラシカルな様式にラヴェル的な色彩感とバルトーク的リズム遊戯をあざやかにかけあわせ、すばらしいソナタと小品群を書き上げているのです!Alpha が昨年から紹介に尽力しているフランスのデュロゾワール(1878〜1955)同様、知らないでいるのはもったいなすぎる近代の名匠といえましょう! なにしろ本盤、演奏のクオリティもきわめて秀逸なんです——ブルーノ・マイアーとオーレル・ニコレの両巨頭から独系・仏系の奥義を受け継ぐ気鋭シュトレースレの吹き口は、まさにヴァイオリン並みの表現力の豊かさ!色彩感とリズムの妙に長けたピアノも、絶妙です!
PC10209
(国内盤)
\2940
ウェーバー(1786〜1826)
 1. クラリネット協奏曲 第1番 op.73-1
 2. クラリネット五重奏曲 変ロ長調 op.34
ハインリヒ・ヨーゼフ・ベールマン(1784〜1847)
 3. クラリネット五重奏曲 変ホ長調 op.23
シャーリー・ブリル(クラリネット)
テレプシコルド四重奏団
パトリック・ランゲ指揮
ジュネーヴ室内管弦楽団
余裕綽々にして隆々・端麗。マイヤーの充実度とストルツマンのウィットをみごと受け継ぐ美しき新星、ジュネーヴから登場! 初期ロマン派の愉悦とドラマを鮮やかに織り上げる——弦は気鋭集団テレプシコルド、オケも鮮烈・ジュネーヴ室内管!ジュネーヴ国際コンクールと、スイス随一の老舗時計メーカー・ブレゲの協賛で制作されるPanClassics のコンクール入賞記念アルバムは、毎回ただの「技巧お披露目」に終わらない企画性、演目の面白さ(サン=サーンスのヴァイオリン・ソナタやシュールホフのジャズ組曲が聴けたり…)、クールに充実した共演陣(これまで、指揮者として注目企画を連発しているコンチェルト・ケルンのW.エーアハルトや気鋭バロック・オーボエ奏者P.グッドウィンらが指揮に立ったり、ピアノ伴奏に気鋭ソリストのS.クドリャコフが登場したり…)そして彼らも含め全員まったく手を抜かない名演ぶりで、どれも末永く聴き続けたい充実盤となっています——そして今回の新作は、さらに輪をかけた充実度! 何しろプログラムの2/3 を占める室内楽作品では、先日ピリオド楽器によるシューベルトの弦楽四重奏曲集(MRIC272・まさに日本発売されたばかり!)をリリースした新世代集団、テルプシコルド四重奏団が登場! むしろこちらが主役でもおかしくないくらいの抜擢で、立派な立ち回りをみせてくれます。指揮はベルリン・コーミシェ・オーパーの音楽監督、マーラー室内管でアバドのアシスタントも務めた新進パトリック・ランゲ——2008 年シーズンからジュネーヴ室内管の音楽監督となった彼のタクトも端正かつドラマティックで、年を追うごとに緊密な音作りをするようになってきた同室内管のうまみを引き出して絶妙!おっと、主役の紹介が遅れました——シャーリー・ブリルはイスラエル出身、ザビーネ・マイヤーとリチャード・ストルツマンのもとで腕を磨いた才色兼備の気鋭。これがまたクセモノで、初めて聴いたら若手とは思えないくらい堂々、貫禄たっぷりの音作りをしてみせる人で! おどろおどろしい協奏曲1番の静々とした歌い出し、強烈にあばれまわるソロ部分での危なげなさが醸し出すインスピレーション、室内楽作品での余裕綽々な楽しみかた・・・考えなしに吹くと凡庸の極致となるウェーバーの「俗っぽさと浪漫のはざま」を、かくも周到に読み解き、絶妙の音楽にしてしまうとは! さらに嬉しいのは、ウェーバーにこれらの曲を書かしめたクラリネットの名手ベールマンの隠れ名作が聴けること。新盤のなかなか出ないこの佳品を、すばらしく切なげに、艶やかに仕上げてゆく手腕に、曲への愛をひしひしと感じました(これもマイヤー譲りの開拓精神?でしょうか)。自己主張に終わらぬ新世代の才能、期待できますね!

RAMEE

RAM 0803
(国内盤)
\2940
フリードリヒ大王と、ロココの響き
 〜古典派前夜のヴィオラ・ダ・ガンバ〜
 ルートヴィヒ・クリスティアン・ヘッセ(1716〜72):
  1. パンクラス・ロワイエの歌劇『グラナダの女王ザイード』〜序曲とエール
  2. フィリドール&モンシニーの歌劇『王様と庭師』 〜
   エール「ああ、おばさま」、アンダンテ・アレグロ
  3. ラモーの歌劇『カストールとポリュクス』
   〜ユピテルの降臨
  4. ラモーの歌劇『エベの饗宴』〜エール「さあ、笑う若さよ」、ロンド風タンブラン
 ゲオルク・アントン・ベンダ(1722〜95):
  5. 鍵盤のための6つのソナチネ(第1〜6番)
 クリストフ・シャフラート(1709〜63):
  6. 二つのガンバのための二重奏曲 ニ短調
 ヨーハン・ゴットリープ・グラウン(1702〜71):
  7. 協奏的トリオ ニ長調
 作者不詳(18 世紀中盤):
  8. スケルツァンド ヘ長調
  9. ロンド ハ長調
イレーネ・クライン&ヤーネ・アハトマン(vg)
レベッカ・ルソー(vc)
バールバラ・マリア・ヴィッリ(FP/cmb)
「モーツァルト前夜」になおドイツで人気のあったヴィオラ・ダ・ガンバ。して、その音楽とは?ぽってり素直で叙情的なロココ風あり、荘厳なバロック風あり、フランス歌劇の編曲まで——演奏はもう文句なしに極上、録音もみごと。チェロとの対比やピツィカート奏法も絶妙!年季の入った古楽ファンさえ知らなかったような「すきま」を突き、それがいちいち絶妙な企画ばかり——そぞろ5周年を迎えようとしている新鮮なる古楽レーベルRAMEE から、またもや「これしみじみいいよなあ・・・」という傑作リリースが登場!エマヌエル・バッハの君主として知られるフリードリヒ大王の宮廷で愛奏されていた、ロココから古典派初期頃の、つまり“最晩期の”ヴィオラ・ダ・ガンバ音楽!18 世紀音楽が好きな方々であれば、フリードリヒ大王の音楽趣味の古めかしさはよくご存知でしょう。啓蒙主義にかぶれたこの君主、“前衛思想家”ルソーを宮廷に招くなどフランス贔屓にもひとかどのものがあったようですが、ここでもラモーのような「往年の巨匠」の、あるいはフィリドールやモンシニーといった当時最先端をゆく流行作曲家のフランス・オペラから編曲された作品などが興を添えているのですが、基本は「ヴィオラ・ダ・ガンバ(二重奏)で綴る前古典派作品」。ロココふうの小品はフランスのクラヴサン小品のように多種多様、対するソナタの数々は、歌心たっぷり&きれいな叙情の香るメロディアスなガンバが美しく、リズミカルな伴奏進行はまさに古典派の到来を予言するかのよう——なんといっても、新世代のドイツの名手イレーネ・クラインらが奏でるガンバがきわめてウマく、絶妙の間合いで重なりあい、うたいかわす「ガット弦の中低音」の渋ーいカッコよさ、えもいわれぬ美音は、古楽器ファンすべて、いやあらゆる人を魅了せずにはおかないでしょう!

RICERCAR

MRIC277
(国内盤)
\2940
ハイドンとパリ、三つの交響曲
 〜交響曲第45 番「告別」・第85 番「王妃」 &
 クラウスのニ長調(伝ハイドン)〜
ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809)
 1. 交響曲 第85 番 変ロ長調「王妃」
 2. 交響曲 第45 番 嬰へ短調「告別」
ヨーゼフ・マルティン・クラウス(1756〜92)
 3. 交響曲 ニ長調 VB143
ギィ・ヴァン・ワース指揮
アンサンブル・レザグレマン(古楽器使用)
ハイドンの年、始まる——古楽器レーベルRicercar が、さっそくクールな新譜をリリース!ソリスト揃いのレザグレマンだからこそできる「告別」の古楽器演奏は、痛快・の一言!18 世紀当時、パリで「ハイドン作」として通用していた、天才クラウスの傑作まで収録!ご存知のとおり、2009 年はハイドン歿後200 周年にあたる年。音盤シーンの盛り上がりに期待していた矢先、まずはRicercar レーベルがやってくれました。古楽大国ベルギー発、演奏は同国でいまいちばん多忙な名手たちの集うレザグレマン。どのくらい精鋭揃いかというと、AAMとイングリッシュ・コンサートとイングリッシュ・バロック・ソロイスツのメンバーがほぼカブっていた時代の英国古楽バンドみたいな...って、わかりますかね、こんな喩えで?まあとにかく、腕利き揃いってことです。で、曲目はハイドンがパリでとんでもなく人気だった頃、1780 年代にこの“花の都”で愛奏されていた3曲の交響曲——18世紀も後半になると、パリでもオーケストラ演奏会が流行しだすのですが、意外と外国人びいきなこの街の人々が演奏会の「大トリ」として好んだのが、フランス人ではない、シュターミッツやハイドンやシュテルケルやロゼッティ...といった「ドイツ語圏」の作曲家たちによる「交響曲」だったのでした。とりわけハイドン人気はすさまじく、有名なコンセール・スピリチュエルでは1780年代に演奏された交響曲といえば8割くらいがハイドン作品だったほど! モーツァルト顔負けのシリアスさで疾走する短調作品「告別」も長く愛されましたが(家族から離れての離宮暮らしにうんざりし、早く帰りたい楽員たちの意見を君主に代弁するため、終楽章で楽器がひとつずつ消えてゆく...という仕掛けのある、例の有名曲ですね)、王妃マリー・アントワネットは端正な編成でフランス民謡も出てくる「第85番」がお気に入りだったとか。ハイドン人気にあやかって、他人の楽譜も「ハイドン作」として流通したほどで、「スウェーデンのモーツァルト」ことクラウスの曲も、パリっ子たちはハイドン作と信じ込んで愉しみました——もっともこの最後の作例、何しろ真の作者があの天才作曲家だけに、コントラスト鮮やか、絶妙のスピーディさで迫る世界は絶妙そのもの! この曲も含め競合盤には事欠かないようでいて、実はどの曲も(ピリオド・アプローチの現代楽器オケはともかく)古楽器演奏では新しい録音が久しく出ていません! 神業的ナチュラルホルン奏者ふたりと弦楽器群の団結力なくしては始まらない「告別」などは、ベルギー古楽器演奏の桁違いっぷりを印象づけずにはおかない名演ですし、「王妃」やクラウス作でのたおやかな「味」は、他国の古楽集団にはないベルギー独自のもの。古典派ファン必携の一枚です!
MRIC 273
(国内盤)
\2940
〜Ricercar 知られざる古楽器シリーズ 5〜
ファゴットの前にあったもの
〜ルネサンス&バロックの“プレ・ファゴット”さまざま〜
 4声のバレット第168番(プレトリウス)
 第6カンツォン(バンキエーリ)
 低音部独奏のためのパッセジャート「襟立をつけたら」(セルマ・イ・サラベルデ)
 2部の楽隊のためのカンツォーナ「ルッカの小娘」(グヮーミ)
 わが婦人、わたしはあなたを崇めよう(ヴェルドロー)
 古風なパッセメッツォとサルタレッロ(マイネリオ)
 汝、父なる神の生まれたる(バッサーノ)
 「ラ・ファゴッタ」にもとづくドゥレッツァによるトッカータ(グラモンテ)*オルガン独奏
 ファゴットで(スザート)
 「ラ・ファゴッタ」によるカンツォーナ(グラモンテ)*オルガン独奏
 バス・ダンスとトルディオン(モデルヌ)
 第14リチェルカール「神よ、平安を」(パラボスコ)
 「とある若い小娘が」による三つのファンタジア(デュ・コーロワ)
 「ラ・モニカ」によるソナタ(ベーデッカー)
 神よ、わが賛美をお聴きください(シェレ)
 「甘い想い出」による第2レセルカーダ(オルティス)
 中音域2声のためのカンツォーナ(セルマ・イ・サラベルデ)
 2声のためのコレンテ、バレットとガリアルダ(セルマ・イ・サラベルデ)
 模倣によるトッカータ(グラモンテ)*チェンバロ独奏
 第7ソナタ=パッサカーリャ(ベルトーリ)
ジェレミー・パパセルジオー (ドゥルツァイナ、fg)
Ens.シンタグマ・アミーチ(古楽器使用)
かつては「ソプラノ・ファゴット」まであった? 謎に包まれた、ファゴット以前の低音リード楽器ドゥルツァイナのめくるめく音響世界は、ソロもあればコンソートもあり。仕掛人は、ベルギー古楽界の超絶的名手。研究と音楽美のみごとな調和、お愉しみあれ!古い楽器の起源を解き明かし、最盛期にどんな音楽に使われていたかを、最上級の古楽器演奏で愉しませてくれるRicercar の好企画シリーズに、うれしい最新巻が登場! 今回の主役は、実は意外とちゃんと知られていない、ファゴットの前身楽器が主役です。それは英語でカータル、ドイツ語でドゥルツィアンなどと呼ばれる、ファゴットとバス・リコーダーの中間めいた形状の楽器。しかしイタリアでは「ファゴット」、スペインでは「バホン(=バスーン)」と呼ばれており…どうも厳密に研究してみると、各国語で名前が違うのは、起源も用途も別だったからだそうで。近年の研究書では「ドゥルツァイナ」と総称されるこの楽器、17世紀に今のファゴットの初期形態楽器がメジャーになってゆくまで、教会合唱の低音伴奏や、管楽合奏の低音パートとして愛奏されました。しかも低音のみならず、中音、高音のためのドゥルツァイナも取り揃えての合奏まであったとか…17世紀初頭にはスペイン出身のセルマ・イ・サラベルデのように、超絶技巧の名手も登場しました。本盤ではそんなドゥルツァイナの多彩な魅力を、ソロから同属合奏、また異種楽器との合奏まで含め、きわめて面白く愉しませてくれます。プログラムの大半は17世紀初頭、まさに器楽音楽が栄えはじめた時代の作品群!演奏は「ラ・フェニーチェ」をはじめ、古楽大国ベルギーのさまざまな団体で多忙な活躍をつづける“ドゥルツァイナの申し子”パパセルジオー!あっけにとられるほど流麗な超絶技巧から、吹奏の困難さをものともせぬ甘〜い表現まで自由自在、コルネットのB.ディッキーのごとき闊達ぶりに、つい「もう1トラック」と聴き進めてしまうこと請け合い!ラザン=ダドルやエシェルベルジェら、共演陣も名手揃い。古楽ファン、ファゴット・ファンなら外せない1枚!
MRIC 266
(国内盤)
\2940
〜ネーデルラント楽派の初期バロック〜
 1. 導入曲(アレッサンドロ・オロロージョ作)
  ランベール・ド・セーヴ(1549〜1614)
 2. 『サクレ・シンフォニエ』(1612)より
  アレルヤ唱と三つのモテット
 3. 2台のオルガンによるシンフォニア「神は治めぬ」
 4. 「神は治めぬ」によるミサ曲(同曲集より)
  (ミサ・スペル・ドミヌス)〜16声部4重合唱のための
 5. 2台のオルガンによるシンフォニア「栄光あふるる君子」
ジャン・チュベリー(木管コルネット)指揮
ナミュール室内合唱団&ラ・フェニーチェ(古楽器使用)
12 声の3重合唱、16 声の4重合唱...! イタリアの音楽家たちに強く感化されたネーデルラント楽派晩期の巨匠、その音楽はまさに「ルネサンスとバロックのはざま」!明快なるリズムと対位法の交錯を、ベルギーきっての古楽集団たちによる鮮烈解釈で!国土はせまいが歴史と文化は豊かそのもの、古楽大国ベルギーのRicercar は、折々に自国の忘れがたい音楽遺産を掘り起こすことに尽力しています——今回登場したのは、2号続きで「レコ芸」特選をいただいた作曲家グレトリー(MRIC234・MRIC268)と同郷、ワッフルで有名なベルギー南部リエージュの出身者、ランベール・ド・セーヴ(1549〜1614)の貴重な作品集! 何が貴重かといいますと、この作曲家は15〜16世紀にヨーロッパ随一の「音楽の本場」だったネーデルラント(今のベネルクス3国)の出身者でありながら、本格的なキャリア形成はすべてウィーンで、すぐ近くのヴェネツィアで花開いていた多重合唱様式から強烈な感化をうけた、まさにルネサンスとバロックのはざまを生きた人なのです。精妙なポリフォニー作法がしっかと根底にあり、ミサ曲も既存のメロディをもとにふくらませてゆくルネサンス・スタイルでありながら、その音楽はあくまで「対比」を旨とするバロック風——とくに当アルバムの主要曲目である「ミサ・スペル・ドミヌス」にいたっては、なんとそれぞれ4声部からなる楽隊を四つも揃えた、16 声4重合唱(金管合奏つき)がうたい交わす壮麗な音楽! それも当然といえば当然で、唯一の曲集「サクレ・シンフォニエ」が出版されたのは1612 年、モンテヴェルディの「オルフェーオ」(1607)や「聖母マリアの晩課」(1610)の初演より後のこと——しかしヨーロッパ全土的にはまだまだイタリア・バロック様式など珍しかった時代、ランベール・ド・セーヴのイタリア様式への感化は1580 年代に始まったようですから、その先取の精神には驚かされずにおれません(少し先輩のラッススと、ほぼ同じ道程)!そしてその演奏が、名盤あまたの超絶コルネット吹きにして稀代の合唱指揮者、今こそ旬の巨匠・ジャン・チュベリーとあっては…!バロック金管の鋭いアタックとたおやかな和声を担当するのは、この古楽大国きっての気鋭陣。合唱はもういわずもがな、バロック歌唱のスペシャリストが集う少数精鋭の超実力派集団、ナミュール室内合唱団! 全員が全身でインテンスに表現する音楽のぶ厚い強烈さに、いわば「バロック初期のブルックナー」といったフレーズも想起され・・・興奮と充実の連続、どうぞご注目を!
MRIC275
(国内盤)
\2940
ウォルシンガム・コンソート・ブックス
 〜1588 年、ブロークン・コンソートとその周辺〜
 ダニエルのアルメイン *(バチラー)
 ダニエルの挑戦*(バチラー)③ラヴェッキア *(作者不詳)
 暗闇こそわが喜び (作者不詳)
 レディー・ウォルシンガムの思いつき *(バチラー)
 タールトンのジグ*(作者不詳)
 およそ私の知るかぎり、鳥のなかでは(バートレット)
 サー・フランシス・ウォルシンガムの御挨拶 *(バチラー)
 エライザはすてきな女王さん/またおいで(ジョンスン)
 ドロローザのパヴァン *(アリスン)
 ジェイムズ・ハーディングのガリアード *(ハーディング?)
 リードのアルメイン *(ホルボーン&リード)
 プリメーロ(作者不詳)
 思ヒ残シタマフナ(ウィルビー)
 ユダヤ人の踊り *(ニコルスン)
 バチラーの喜び *(アリスン)
 フラット・パヴァン(作者不詳)
 幸運はわが仇敵(作者不詳/原曲:ダウランド)
 レディー・フランシス・シドニーのアルメイン *(アリスン)
 レディー・フランシス・シドニーの「おやすみなさい」*(アリスン)
  五月も盛りはじめる頃に(作者不詳)
 ナツメグとジンジャー(作者不詳)
  * は「ウォルシンガム・コンソート・ブックス」の収録曲
パトリック・ドゥネッケル(bfl)
Ens.ラ・カッチャ(古楽器使用)
モーリーの「コンソート・レッスン」(1599)よりもさらに古い、ブロークン・コンソート最古の曲集ベルギー古楽界の精鋭が揃ったラ・カッチャの、芳醇な響きと機敏な立ち回り——本場の名歌手ハミルトンの絶妙歌唱で、バラッド・チューンも併録。これぞ英国ルネサンス!英国16 世紀のエリザベス王朝といえば、世界に冠たる先進国イギリスだけに、大衆がいちはやく豊かになり、劇場文化を盛り上げた時代——芸術の需要が王侯貴族や教会関係者だけでなかったせいか、大陸とは一線を隠した「雑多な高貴さ」とでもいうべき英国世俗音楽独特のテイストも育まれました。俗人と貴族の入り乱れるシェイクスピア劇もそうですが、高貴整然一辺倒、という訳ではないんですね。そんななか、ホール・コンソート、つまりヴィオラ・ダ・ガンバ属だけ、リコーダーだけ・といった合奏のかたわら人気を博したのが、種々雑多な楽器が多彩な音色をたたかわせる「ブロークン・コンソート」という合奏形態(リコーダー、高音&低音ガンバ、リュート、シターン、パンドーラという6楽器の組み合わせ)。しかしどうしたものか、音盤シーンではホール・コンソートばかりもてはやされ、ブロークン・コンソートの録音というのは意外と貴重だったり・・・そんな状況にブレイクスルーをもたらしたのが、本盤のEns.ラ・カッチャによる、モーリーの「コンソート・レッスン集」をとりあげた先行盤(MRIC251)。しかし今回、彼らは1599 年出版のこの作品集よりもさらに古い「ウォルシンガム・コンソート・ブックス」を復元してしまったのです!パート譜集ゆえ「ブックス」と複数形なこの曲集、英国のハル大学とカリフォルニアのミルズ・カレッジに計4パート分の分冊のみが現存していたのですが、ライナーノートによると、モーリーの作例を参考にすれば他のパートの復元も比較的容易だとか。六つのパートが絡み合い、協和するなか、時にヴァージナル(演奏はギィ・パンソン、「シュザンヌ・ファン・ソルトの鍵盤音楽帳」(MRIC264)でおなじみ!)までも加わって織りなされる響きは、文字通り古楽器ならでは、古楽大国ベルギーの最先端奏者たちならではの絶妙さ! さらにスコットランドの実力派歌手ハミルトンが、同時代のバラッドをたおやかに歌い上げ“民衆的にして貴族的”なムードを盛り上げます。英国ルネサンスの真髄ここにあり、の名盤です!

SAPHIR

LVC1091
(国内盤)
\2940
ラフマニノフ(1873〜1943)
  ピアノ三重奏曲第1番ト短調(1892)
 ピアノ三重奏曲第2 番ニ短調 op.9(1893)
ジャン=クロード・ペヌティエ(p)
レジス・パスキエ(vn)
ローラン・ピドゥー(vc)
フランス現代最高峰。パリの伝統をひく名手3人、今春とれたての「堂に入った」最新録音!むせかえるほどの薫り高さ、それでいて強烈に「芯の強い」構造把握の確かさ——甘美だけれど甘ったれぬ、極甘強烈ブランデーのような「オトナのラフマニノフ」をどうぞ!上に居並ぶ、このやんごとなき三人の名前——パリから世界に羽ばたいた、とほうもない巨匠たち。後ろに残してきた名演・名盤は数知れず、近年ではラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンにも例年参加、新しい聴き手へもアピールしつづけるこの巨匠たちが、21 世紀のいまSaphir で、至高の境地に入りつつある熟練の名演を惜しみなく録音しつづけてくれているのは、なんと幸いなことでしょう! Transart での一連のプルーデルマッハー録音とも比肩しうる(そしてメジャー各社でのポリーニやシフらの“総決算的再録音”とも比すべき)室内楽における金字塔的偉業…しかし、今回はなんとラフマニノフという。どちらも「悲しみの三重奏曲 Trio elegiaque」と副題されているこれら2 曲、いずれも若書きなためか、はたまた外面的構成にいちじるしい落差があるためか(かたや単一楽章、かたや巨大な3楽章…どちらも内容の充実度は比類ないのに…)質に比して注目度が今ひとつのような。ロシアでなくパリ音楽院の巨匠3人が、音楽性の満ちきった今、あえてこれら「天才の若書き」に臨んでくれたことは、全く喜ばしいことで——ヘンな弾き方をすると安っぽくなるのがラフマニノフでしょうが、彼ら3 人の演奏はその対極ともいえる「匠の名演」。冒頭静々と入るあたりでは「いきなり何か違う」とは感じない、くつろいで聴ける、と感じさせる——しかしそれこそ、この巨匠たちならではの極致なのです!くつろがせる、いきなり聴き手の心の中核にすいすい入ってゆく・・・その響きがゆっくり音楽を形成してゆくとき、聴き手の心には(じっくり傾聴していようと、「ながら」で耳に入れていようと)静かに感動がたくわえられ、知らず知らず、充実至極の豊穣な音世界を味わうのです。濃厚だが決して濃さを感じさせぬ、この音作りの妙——完璧なアンサンブルと構築性のなかで続く音楽は、むわっと「甘い!」と感じた瞬間、すぐに強烈なアルコールが心を酔わす極上ブランデーのごとく、心を揺さぶってやみません。フランス人的な「客観性」と「繊細さ」が、ラフマニノフ初期の感性に隠れた「アク」をすべて「うまみ」へと昇華させてゆく...この2 曲の録音史に残りうる、じっくり聴き極めるに足る傑作盤です!
LVC1090
(2CD)
(国内盤)
\4515
タファネル:フルートのための作品集
ポール・タファネル(1844〜1908)
 1.アンダンテ・パストラルとスケルツェッティーノ
 2. ラモー「恋するインド」による幻想的編曲
 3. ウェーバー「魔弾の射手」による幻想曲
 4. チャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」のアリオーソ
 5. トマ「リミニのフランソワ」による大幻想曲
 6. シシリエンヌ=練習曲 op.7
 7. トマ「ミニョン」による大幻想曲
 8. アレグレット・グラツィオーゾ
 9. アレグレット・スケルツァンド
 10. ドリーブ「ニヴェルのジャン」による幻想曲
 11. 木管五重奏曲
カミーユ・サン=サーンス(1835〜1924)
 12.タランテッラ op.6 〜フルート、クラリネットとピアノのための
 13. ロマンス op.37 〜フルートとピアノのための
 14. 前奏曲「洪水」op.45 〜フルートとピアノのための
 15.デンマークとロシアの歌による奇想曲 op.79
〜フルート、オーボエ、クラリネットとピアノのための
ガブリエル・フォーレ(1845〜1924)
 16. 劇付随音楽『ペネロプ』より「笛吹きの女たち」
フィリップ・ベルノルド(フルート)
アリアーヌ・ジャコブ (ピアノ)
ジャン=ルイ・カペザリ(オーボエ)
フィリップ・ベロ(クラリネット)
ローラン・ルフェーヴル(バソン)
ブノワ・ド・バルソニ(ホルン)
これ、絶対注目されますよ! フルート関係者ならもう“マスト”、待望の「タファネル作品集」!大前提として「演奏はすばらしくウマい」。フランス派の正統なる継承者が旨味たっぷり、絶妙の音楽仲間と奏でる19世紀フランスの美——ロマン派好き・フルート嫌いにも、是非!今年から弊社新規取扱となったSaphir の新譜予定を眺めていて、いちばん驚かされた1 枚——もし貴店に吹奏楽棚があるなら、これはぜひとも常備をおすすめします! M.モイーズの師匠ゴベール「の師匠」で、彼とともにフランス・フルート楽派の基礎をしっかと作った名奏者=作曲家タファネル、稀有の作品集 !!! 競合盤などありません。なにしろこの作曲家、それほど重要な存在で作品も結構残しているにもかかわらず、音盤シーンでは不遇もいいところ、かろうじて数曲が往年の巨匠たちの録音に混じっていたり、稀に木管五重奏曲が録音されるかどうか...といったくらいでして。だいたい19 世紀フランスの管楽器音楽ときたら、ベルリオーズの先生レイハ(ライヒャ)が古典派時代に残した木管五重奏曲群の後、世紀末の印象派周辺まで録音が皆無に等しく、タファネルはその間をつなぐ非常に重要な作曲家なのに...ともやもやしていたファンは(とくに吹奏楽・フルート関係者など)絶対に私だけではないはず!! その作風はショパンや同時代のサン=サーンスに似て、うつくしいロマン情緒、えもいわれぬ和声推移が、確たる形式感覚に裏打ちされた絶品ばかり。オペラの編曲でも(同時代のトマなどはともかく、19 世紀後半で早くもラモーに注目しているのがニクいですね)原作の持ち味を残しながら、ほとんどオリジナルのフルート曲のように仕立ててしまう!「魔弾の射手」など、原作が有名なだけに結構おどろかされます。本盤はそんなタファネル作品をCD2枚いっぱい、彼に触発されて書かれたフォーレやサン=サーンスの曲も、さらに「フランスの“管”」特有の味わいたっぷり「木管五重奏曲」まで収録!(フランス勢の録音は多分はじめて!)A.マリオン門下の超・実力派ベルノルドは、A.タローの共演者として、あるいは京都芸大の常連としてご存知の方もおられるでしょう。太く優美な音色にヴァイオリンばりの表現力と香気があふれ、ブレスも俗っぽさとはまるで無縁! ピアノのA.ジャコブとの息もぴったり、ちょい共演者たちもエスプリ&ロマン全開!全曲解説付(邦訳添付)、お値打ち度充分の注目リリースです!
LVC1016
(国内盤)
\2940
巨匠たちのヴィオラ・ソナタ
〜ショスタコーヴィチ、エネスク、ヒンデミット〜
ジェオルジェ・エネスク(1880〜1943)
 1. ヴィオラとピアノのための演奏会用小品
 (コンツェルトシュトゥック)
ショスタコーヴィチ(1906〜75):
 2. ヴィオラとピアノのためのソナタ 作品147
ヒンデミット(1895〜1963):
 3. 無伴奏ヴィオラ・ソナタ 作品25-1
 4. ヴィオラとピアノのためのソナタ 作品25-4
ブルーノ・パスキエ (ヴィオラ)
クリスティアン・イヴァルディ(ピアノ)
フランスから世界に羽ばたく現代最高のヴィオラの巨匠、ブルーノ・パスキエここにあり!どこをとっても、明らかに風格が違いすぎるー—端正にして艶やか、高貴にして人間味豊かヴィオラ音楽の至宝たる名品群、パリ音楽院の名匠イヴァルディとの丁々発止な名演!!「稀代のヴィオラ奏者」と聞いて、誰を思い浮かべるでしょう?バシュメット? カシュカシャン? ヴォルフラム・クリスト? 今井信子? それともダヴィド・オイストラフ? あるいはパウル・ヒンデミット?そういった世界的名手のひとりとして、20 世紀以来ずっと現役として名を残し続けているのが、このブルーノ・パスキエであることはもう、誰も依存のないことでしょう。世紀半ばにデビューし、パリ管とフランス国立管の首席奏者を歴任、ソリストとしても、伝説的なパスキエ・トリオの一員としても、世界的に認められたこのフランス派随一の偉大なヴィオラ奏者が満を持して世に問うた、充実至極のソロ・アルバムがこれ! 自らヴィオラ奏者としても活躍したヒンデミットの二大傑作、ヴァイオリンの名手であるとともにヴィオラにも通暁したエネスクのパリ時代を代表する小品、そして20 世紀最大の作曲家のひとりショスタコーヴィチの、あの金字塔的名作...20 世紀初頭にあらためてその魅力に注目が集まり、次々と作曲されていったこれらの王道名曲、ヴィオラ奏者たちの憧れの的たるこれらの傑作群を、パスキエはなんと堂々と端正に、高貴に、しかし人間味たっぷりに解釈してゆくのでしょう! 確かにフランス的、しかしなんと国境を選ばぬ、この「格の違い」...!渋い中音に艶やかなコブシを聴かせ、ヴァイオリンでは到達しえぬあの境地を、どこまでも高雅に描きあげてゆく...ジャケットは実はロートレックのパステル画で、踊り子の後姿、肩から腰にかけてのアップなんですが、フランス語で「腰の辺り」を意味する「ターユtaille」という単語はまさに「中低音域」という意味でもあって。人間くさいのに高邁そのもののパスキエの解釈を聴いていると、いかにも、演目群と時代的にも遠からぬロートレックの描いた「にんげんたち」の雰囲気も想起されようというものです。 対するピアノは、知る人ぞ知るパリ音楽院の名教師、D.ボールドウィンやG.ムーアに比肩するフランス随一の名伴奏者(ってことになるのでしょうね)、来日あまたの名匠イヴァルディ——この人が加わって、名盤にならなかった例を担当は知りません。むせかえるような薫り高きピアニズムが、独特のオーラを作品に纏わす…けだし必聴、極上ヴィオラ・アルバムです!
LVC 1008
(国内盤)
\2940
ドビュッシー:三つの最後のソナタ
 1. チェロとピアノのためのソナタ
 2. フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ
 3. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
パトリス・フォンタナローザ(vn)  
ロラン・ピドゥー(vc)
ジャン=ピエール・ランパル(fl) 
ブルーノ・パスキエ(va)
マリエル・ノルドマン(hrp)
エミール・ナウモフ(p/ファツィオリ)
はいっ、この曲目と演奏者一覧で、この新譜のすべては語りつくされているようなもの。録音1999年。フルート入り三重奏ソナタは、ランパル最晩年の録音としても貴重きわまりありませんが、それより何より、演奏に参加しているのが全員、20世紀末における並ぶ者なき「フランス楽派の生き証人」であることにご注目いただきましょう——貴店のユーザーさまも、必ずやそこを見逃さないはず!弊社の日本語オビでもその点を強力にプッシュすることになると思いますが、新旧世代のフランスを代表する、現代最高の名手たちが思う存分ドビュッシーを弾くと、かくも高雅にして完璧な解釈になるのか、と息をのむばかり。本場奏者は(特にフランスものの場合)やはり強いですね。 「あつらえられたエスプリ」じゃなく、「堅固な表現なのに自ずと香り高い」。これはフランス外の演奏家にはほぼ不可能な気がするのですが、それは曲の性質によるところもあるのでしょう。収録されているのは、ドビュッシー最後の連作「さまざまな楽器のためのソナタ」——晩年の作曲家が第一次大戦中、ドイツ=オーストリア系の古典主義とは違う、フランスならではのソナタのあり方を模索した傑作群で。つまり「フランス人からみたドイツ系古典派コンプレックス」の機微が肌でわかるから、自然にドビュッシーの真意に肉薄できる。ガチガチ杓子定規ではない「匂いたつ堅固さ」が自然と立ち現れるわけです。ファツィオーリ・ピアノから絶妙なフランス派の響きを引き出す、ナウモフの精緻なタッチも聴きどころ! 同様にフランス最高峰の名手たちが結集してのラヴェル作品集(LVC1044)が『レコ芸』発売中号で特選を頂き、ばんばん動いている実績は、必ずこのアイテムでも踏襲されるハズ(ましてや、こちらは2枚組じゃありません)! 火がつかないわけがない鉄板の強力盤、ぜひともお早めに確保のほどを。
LVC 1063
(国内盤)
\2940
モーツァルト:ピアノ愛奏小品集
 1.メヌエット ト長調 KV.1
 2. 「ああ、もうお母さん…」による12の変奏
  (キラキラ星変奏曲)KV.265
 3. ソナタ 第10番 KV.330
 4. メヌエット ニ長調 KV.355
 5. カプリッチョ ハ長調 KV.395
 6. 幻想曲 ハ短調 KV.396
 7. 幻想曲 ニ短調 KV.397
 8. アルマンドとクラント KV.399-2/3
 9. ロンド イ短調 KV.511
 10. アダージョ ト短調 KV.540
 11. ちいさなジグ ト長調 KV.547
 12. アンダンティーノ KV.588b
イェルク・デームス(ピアノ)
泣けます、このモーツァルトは・・・かつては「ウィーンの三羽烏」などと呼ばれたイェルク・デームス御大も今では重鎮中の重鎮ながら、昨年の一連の来日公演でもその健在ぶりを日本のファンに印象づけてくれたようで。このモーツァルト・アルバムはそんな老練なるウィーンの巨匠が、21世紀に入ってもなお健在どころか、老境に入ってますます深まってきた滋味深い音楽性をいかんなく発揮して新たな境地をきりひらいてゆく、そのさまをまざまざと見せつけてくれる内容となっています。モーツァルト好きなら必ず偏愛せずにはおれない、しばしばソナタ録音の余白やアンコール小品としてちょろっと登場する珠玉の小品群が本盤の主人公——こういう小さな曲の可愛らしさ、「モーツァルトは子供には簡単すぎ、大人には難しすぎる」という名言を何よりも印象づける名品群を、デームスは静々と、ゆったりと、独自のテンポで、しかし聴き手をさりげなくひきつける深々とした求心力で綴ってゆくのです!鍵盤楽器コレクターとしても知られ、モーツァルト時代のフォルテピアノをも弾きこなしてきたデームスが、あえて今、現代ピアノで、というのが、すごくいい(録音2004年)。音のひとつひとつの説得力が、ハンパじゃないんです。冷静に聴くとテンポも時にまばらですらあるのに、呼吸するように自然なルバートになってしまう不思議さ...短調に転じたときの、はっとするほどの深さも、簡素な小品での飾らない純朴さも、晩年の作品での諦念的晴朗さも、すべてがあまりにうつくしい。音楽好きなら、もうジャンルを問わず必ず一度は聴いてほしいとさえ思うこと必至の、しみじみ良いモーツァルトが、ここに詰まってます。例年の来日で「ディアベッリ変奏曲」(LVC1064)も売れ行き好調——本盤でも「デームスここにありき」を強烈にアピールしてくれることでしょう!
LVC1040
(国内盤)
\2940
プーランク:さまざまな楽器のための5つのソナタ
 1. クラリネットとピアノのためのソナタ
 2. フルートとピアノのためのソナタ
 3. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
 4. チェロとピアノのためのソナタ
 5. オーボエとピアノのためのソナタ
レジス・パスキエ(vn)    ロラン・ピドゥー(vc)
ミシェル・モラゲス(fl)    エリ・エバン(cl)
フランソワ・メイエール(ob)   エミール・ナウモフ(p)
ドビュッシー盤(LVC1008)のところでも書きましたが、「本場奏者」でなくては曲の最も微妙なエスプリまで表現できないのが、フランスもの——それも、とくにフランス近代のソナタ。彼らにとって、ソナタ形式とはおよそ古典派以降ずっとドイツ語圏からの輸入物だったわけで、「ベートーヴェンかっこいい!でもフランス的なソナタもあるはず!」というコンプレックスを肌で理解しているフランスの演奏家たちがそういった近代ソナタを手がけると、がぜん曲が精彩を帯びはじめ…うむを言わさぬ説得力、いとも甘美な陶酔をさそう高雅さで聴き手をからめとってしまうのです!ソナタや交響曲といった充実形式を愛する日本のユーザー様たちを「フランス音楽、聴きごたえある!」と唸らせられるのは、やはりフランスの演奏家たちなわけです。それも、とびきりの名手たちだけ…。 この点で、ドビュッシーよりもさらに事情がシビアなのがプーランクかもしれません。この作曲家が晩年に順次手がけた五つの傑作ソナタは、曲中いたるところで「ふざけているのか、詩的表現なのか」フランス語話者にしか判断のつかなそうな場面の連続——たとえば、詩人ガルシア・ロルカの死に寄せて書かれたヴァイオリン・ソナタの終幕など、真剣にやりすぎると不愉快なゲンダイオンガクになりかねないところ。そこへ行くと本盤、あらゆる瞬間が清々しいくらいにぴたりと決まる——あまりの香気にゾクゾクします! 名手モラゲスの吹くフルートの表現の幅、ル・サージュとの共演でも知られた俊英メイエールのたおやかさ、もはや紹介不要のフランス派の弦楽器奏者たち、百選練磨のエリ・エバン、そして彼らと絶妙の呼吸でわたりあう本盤のまとめ役は、フランス近代もののスペシャリスト、エミール・ナウモフ!演奏陣の豪華さが完全にそのまま演奏内容に反映された、まさに極上の室内楽アルバムがここにあります。
LVC1022
(2CD)
(国内盤)
\4515
ベートーヴェン:チェロとピアノのためのソナタ(全5曲)
 1. ソナタ 第1番 ヘ長調 op.5-1
 2. ソナタ 第2番 ト短調 op.5-2
 3. ソナタ 第3番 イ長調 op.69
 4. ソナタ 第4番 ハ長調 op.102-1
 5. ソナタ 第5番 ニ長調 op.102-2
 6. ヘンデルのオラトリオ「マカベウスのユダ」の
   主題による変奏曲 WoO.45
 7. モーツァルトの歌劇『魔笛』の
   「恋を知る男たちは」の主題による変奏曲 WoO.46
 8.モーツァルトの歌劇『魔笛』の
   「娘さんか奥様か」の主題による変奏曲 op.66
ローラン・ピドゥー(チェロ)
ジャン=クロード・ペヌティエ(ピアノ/ファツィオーリ)
Saphirの豪華絢爛なフランス巨匠たちは、お国物だけでなく、ドイツ=オーストリア王道系でも本当にすばらしい演奏を残してくれています。その代表ともいえるのが、このベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集!! ごらんのとおり、フランスの批評誌がこぞって絶賛を浴びせかけたこの2枚組、ローラン・ピドゥーという人が今や名実ともにフランス随一の巨匠となり、師匠アンドレ・ナヴァラの衣鉢を継ぐ偉人であることを印象づけてくれます。なにしろ自然体の弓さばき、しなやかに繰り出される音色にはしかし、色気むんむんの響きが宿り、それが甘々に堕さないのは、解釈の組み立て方がさりげなく入念精緻だから——奇数番号ソナタの長大さは深く充実した鑑賞体験をもたらし、幻想曲めいた偶数番号ソナタでは、優美な音楽性がぴたりとハマり、えもいわれぬ香り高さがたまりません!いま、チェロ奏者は世界的に若手に恵まれていると思いますし、フランス勢もケラス、コッペイ、ドマルケット、ガイヤール…と多士済々ですが、こうした「格」はやはり年季の入った名匠でないと出ないもの。しみじみ、良いです。最高です。 で、当然のごとく?ピアニストは熟練の名手、長年のトリオ共演者であるペヌティエ御大——さまざまなピアノを弾きこなしてきたこの実力派の弾くファツィオーリはなんともクリスピー、小気味よいとはこのことでしょう。2人でしっかり合わせて来たのだな、と深い信頼感を感じさせる、何も言わずともぴたりと息の合ったアンサンブルは「これぞ室内楽の醍醐味!」といった感じ!ピリオド解釈寄りのベートーヴェンもかなり増えてきた昨今、この手の滋味深さを愛する日本の玄人ユーザーさまに安心してお薦めできる、21世紀の新・銘録音——さりげなく圧倒的な風格、好感度絶大でございます!
LVC1101
(国内盤)
\2940
レーガー:チェロとピアノのための作品全集 1
 アリア 作品103a(編曲:レーガー)
 ロマンツェイ短調(編曲:R.ランゲ)
 奇想曲 ロ短調 作品79e-1
 心の契り 作品76-5(編曲:V.レンギン)
 菩提樹の花さくとき 作品76-4(編曲V.レンギン)
 マリアの子守唄 作品76-2(編曲V.レンギン)
 奇想曲 イ短調
 ちいさなロマンツェ 作品76e-2
 ロマンツェト長調
 子守唄 作品79d-1
 チェロとピアノのためのソナタ第1番 ヘ短調 作品5
 チェロとピアノのためのソナタ第2番 ト短調 作品22
アレクサンドル・クニャーゼフ(チェロ)
エドアルド・オガネシアン(ピアノ)
ロシア最高峰のチェリスト、いきなりSAPHIR に登場! 演目はなんと、レーガー!!ひたすら多彩、聴けば聴くほど深い味わい、クラシック・ファンを魅了せずにおかないその音響世界の「粋」を、ロシアきってのオルガニスト=ピアニストとじっくり味あわせますアレクサンドル・クニャーゼフ! このとほうもない名手の名を、フランスのSAPHIR で見るとは思いも寄りませんでした。いわずもがな、メジャーでのベレゾフスキーやルガンスキーの室内楽盤でも、来日公演(キャンセルがあったり、突如フォル・ジュルネに現れたり…)でもおなじみ、現代ロシアを代表する最高のチェリストでございます。その彼が、こともあろうにドイツ晩期ロマン派〜近代の隠れ名匠、バッハ作品の編曲などで知られるあのマックス・レーガーを、この作曲家に深く通暁したオルガニスト=ピアニストとの共演で聴かせてくれるというのですから、なんと贅沢な話でしょう! それも「全曲録音その1」という…音盤シーン、まだまだ元気じゃねえか!と思ってしまう豪華な企画でございます。レーガーといえば、ワーグナー全盛の頃に生まれ、マーラーやR.シュトラウスと同時代のドイツで活動しながら、バッハ、ベートーヴェン、ブラームスらの系譜をひく伝統的な書法をまもり、滋味深い作品を無数に残した「夭逝の多作家」。本盤のメインを占めるソナタ2曲は、実は10 年ほど前にもクニャーゼフ=オガネシアンのタッグで録音され、評価の辛いフランスのRepertoire 誌でも絶賛されたことがあるのですが、もう久しく廃盤状態だったところ、まさにその音源が今回の「全曲録音」企画に組み込まれ、めでたく復活した次第。名演ぶりは折り紙つき、というわけです。かたやアルバムの大半を占める10曲の小品は最新録音——マックス・レーガーを「晩期ロマン派の、長大な管弦楽変奏曲や重厚なオルガン曲を書く人」として認識されている方も多いでしょうが、そうした方々には、この小品群こそまさに「発見」ということになりましょう。クライスラー風あり、フォーレ風あり、ポッパー風の技巧曲あり…と19 世紀末〜20世紀初頭の粋をあつめたような多彩な作品群の華麗さ・甘美さ・充実度は、この作曲家がいかに幅広い音楽言語を誇っていたかを如実に印象づけてやみません。ピアニストのオガネシアンはモスクワ出身の名手で、オルガニストとしても幅広く活躍しレーガー作品の録音も残している人——両者の息はぴったり、甘美にして濃厚な表現はこれら小品群をひとつひとつ丁寧にみがきあげ、2作の大作ソナタのすばらしさを圧倒的な響きで印象づけます。唸る美音チェロ、迫真のピアノ…極上室内楽が、ここにも!




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