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第54号お奨め国内盤新譜(1)



AEON

MAECD1093
(国内盤)
\2940
ギヨーム・ド・マショー(1300頃〜1377):
 ①3声のモテトゥス「おとめたち、なぜ驚くのです/
 なんとたおやかな聖母の美/歓喜めされよ、祝福されたる方」
 ②オルガン独奏によるディミニュシオン*(ロバーツブリッジ写本より)
 ③3声のモテトゥス「わたしは恥知らずにも/
 あなたは誉れ高く/救世主をお育てになった母」
 (フィリップ・ド・ヴィトリ作曲)
 ④音楽のことわり、修辞のことわり
 (ブリュッヘのペトルス作曲 イヴレア写本より)
 ⑤モテトゥス「実り豊かな天上の統治/定められたる南極に」
 (ジル・ドルレアン作曲 シャンティイ写本より)
 ⑥3声のモテトゥス「洗礼を、偽りの神々の神殿にも/
 アポロンの輝きは/神のしるしが黄道を通るとき」
 (ベルナール・ド・クリュニー作曲)
 ⑦オルガン独奏によるディミニュシオン*(ロバーツブリッジ写本より)
 ⑧ノートルダム・ミサ(「キリエ」にファエンツァ写本のディミニュシオン* を含む)
 ⑨オルガン独奏によるディミニュシオン*(ファエンツァ写本より)
 ⑩バラード「武器、恋愛、貴婦人、騎士道/あらゆる旋律の真なる精華」
 (F.アンドリュー作曲 シャンティイ写本より)ジョゼフ・ラサン(オルガン独奏)
リュシアン・カンデル指揮
Ens.ムジカ・ノーヴァ
『レコ芸』特選、その前にもGrammophoneやDiapason など各誌大絶賛!ウワサの古楽集団、満を持して臨んだ超・有名レパートリーの決定的解釈! 理屈ぬきに美しい、もちろん理屈ありでも絶妙——専門研究の集大成と、ずばぬけた音楽性のあざやかな融合この日本でも、ア・カペラ教会音楽が何より似合うシーズン——クリスマスが近づいてまいりました。そんな折も折、秘曲から古楽・現代音楽まで「よい音」は隔てなく、専門家まで納得のすぐれた企画でとりあげてくれるフランスのaeon レーベルから、日本でのセールス的にも注目度の高い新譜が登場いたします! 2007 年にフランスの『ディアパゾン』誌や『ル・モンド・ド・ラ・ミュジーク』誌で最高の評価を受けたうえ、フランスとは全く評価体系の異なる英国『グラモフォン』誌でもエディターズ・チョイスに輝き、日本発売後は先々月の『レコード芸術』で特選を頂いたことで日本でも改めてセールスを伸ばした『オケゲム:いかなる旋法にもなるミサ』の決定的解釈で人気急上昇中の中世声楽集団、リュシアン・カンデル&アンサンブル・ムジカ・ノーヴァの最新盤…!しかも、曲目はこの種のレパートリーの最重要作品のひとつ、マショーのノートルダム・ミサ!作曲者が楽譜に名前を記載することさえ珍しかった中世末期、ミサ曲の全章を全て一人の作曲家が書いた最古の作例として、このミサ曲は20世紀の古楽復興ブーム初期から注目の的となってきました。が!何しろ原典楽譜は14世紀のもの、つまり五線譜式の現代楽譜の感覚では正しく再現しきれない部分が大いにあるため、音楽史研究が進んだ最近まで、「本来どおり」の形での演奏はなかなか望むべくもありませんでした。加えて、マショーは作曲家としてのみならず、詩人としてもきわめて高く評価されていた芸術家——その意味でも、フランス・リヨン音楽院で古楽科創設初期から中世音楽の研究を続けてきた音楽学者ジェラール・ジェーを研究顧問に、中世の文学や発音についても専門家の意見を仰ぎながら演奏実践を続けてきたムジカ・ノーヴァの演奏は、ひときわ説得力の高い最新解釈ということができます。また、古雅な響きを奏でるゴシック式オルガンを折々に加えて、奏楽を交えながら行われていたであろう14世紀の音楽礼拝のあり方の再現をめざしているところも注目のポイント。現存する中世絵画からも、教会でも楽器が使われていたらしいことは確かなのですから、彼らのように専門的な見識をふまえてこういった解釈を聴かせてくれるとなれば、がぜん玄人古楽ファンも見過ごせなくなるはず。半ば無批判にア・カペラでばかり歌われることの多い「ノートルダム・ミサ」の響きを問い直す、傑作企画!!

ALPHA

Alpha165
(国内盤)
\2940
D.スカルラッティ:チェンバロのためのソナタ(12曲)&
 ソレール:ファンダンゴ
ドメーニコ・スカルラッティ(1685〜1757):
 ①ソナタ ハ長調 KV420 ②ソナタ ヘ短調 KV462
 ③ソナタ ハ長調 KV132 ④ソナタ イ長調 KV65
 ⑤ファンダンゴ(アントニオ・ソレール(1729〜1783)作曲)
 ⑥ソナタ ト長調 KV144 ⑦ ソナタ ニ長調 KV119
 ⑧ソナタ ト短調 KV426 ⑨ソナタ ハ短調 KV115
 ⑩ソナタ ホ長調 KV206 ⑪ソナタ 嬰へ短調 KV25
 ⑫ソナタ 変ホ長調 KV475 ⑬ソナタ ト短調 KV30
ベルトラン・キュイエ(チェンバロ/イタリア式1段鍵盤)
チェンバロ芸術、ここに極まる——新世代の名手ベルトラン・キュイエはクラヴィコードの名手ジョスリーヌ・キュイエの息子!突っ走るだけが脳じゃない、この天性のセンスあればこそ、Alpha最初のスカルラッティ盤の演奏家に選ばれるというわけで。バッハとヘンデルが同い年で生まれているせいもあって、スカルラッティという作曲家は何かと「バロック」に括られることが多いようです。事実、彼は10 代の頃からナポリ准王の宮廷でオルガニスト兼チェンバリストに任命され、世紀初頭からオペラもばんばん書いていたわけですし、555曲あるソナタも基本的にはピアノ発明以前の「古楽器」チェンバロのための音楽(中にはオルガン演奏を見込んで作曲されたらしいものも含まれてはいますが)。とはいえ、彼がスペインの宮廷でチェンバロ教師として一連のソナタの大半を作曲していたのは18 世紀中頃。実のところ、チェンバロという楽器そのものが古典派くらいまで普通に使われていたわけで、スカルラッティのソナタも事実上は「ロココ」とか「前古典派」といった方がいいような、ファッショナブルで先進的な曲が多いのでした。で、この時期のチェンバロ音楽というのは「タッチいかんで音に強弱がつけられない楽器の特質をふまえ、どうニュアンス豊かな音楽を創るか」についての幾世紀にわたる経験が最も蓄積されていた時代だけに、楽譜をきちんと読み解ける演奏家が弾くと、音の強弱差がないという根本的な事実をすっかり忘れさせてくれる、驚くべき世界が開けてくるもの。いわば、黒一色の銅版画のような美質…。さて、スカルラッティのソナタでアルバム1枚作ろうというチェンバロ奏者は、概して腕に覚えがあるだけでなく、何かしら飛びぬけたセンスを持っているもので。アンタイ、バイアーノ、フィゲイレド…と昨今の名盤群を思い返してみても、それが匂いたつような色気であったり、エキセントリックなまでの存在感であったり、深い音楽性であったり色々ですが、古楽レーベルとして長年の実績を重ねてきたAlpha から(意外にも?)初めて登場するスカルラッティ盤の弾き手ベルトラン・キュイエの「プラスアルファ」は、ちょっといわくいいがたい格別なタッチの妙なのだと思うんです。何がすごいって、上に書いたような「末期チェンバロ芸術ならではの繊細さ」を完璧にふまえたこの名手、なんと、よりいっそう制約の多い1段鍵盤チェンバロ(つまり、フォルテ鍵盤とピアノ鍵盤を弾き分けられる2段鍵盤じゃない!)を使って縦横無尽、きわめてニュアンス豊かな響きを紡いでみせる——チェンバロという制限だらけの楽器から、これほど多彩な音を引き出せるからこそ、Alpha レーベルがこのスカルラッティという巨匠に初めて捧げたアルバムの演奏家に選ばれるのでしょう。レ・バッス・レユニで名手ランヌーの後継者になったのも彼でしたが、そういえば、Alpha が初めて英国ルネサンス鍵盤ものを出した時も、演奏者はやはりベルトラン・キュイエでした。ちなみにFugaLibera でクラヴィコードの名盤を2枚残しているジョスリーヌ・キュイエは、彼の実母で最初の師匠…妙に納得させられる背景事情ではありませんか。
Alpha166
(国内盤)
\2940
シューマン:ピアノ曲・室内楽作品集 Vol.10〜
 1. ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44
 2. ピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47
エリック・ル・サージュ(p/1875年製スタインウェイ)
ゴルダン・ニコリッチ、
樫本大進(vn)
リズ・ベルトー(va)
フランソワ・サルク(vc)
シューマンを記念する年に、驚くべき勢いで傑作盤が続々登場するル・サージュの好評シリーズ、最新盤はシューマン室内楽の目玉ともいうべき2曲——しかも共演陣には俊英ニコリッチや来日直後のF.サルクのほか、あの話題の日本人奏者も!シューマン生誕200 周年を記念する今年、この作曲家に対するさまざまなトリビュートが音盤シーンでも見られますが、なかでも特に注目すべきなのが、フランスの「いま」を代表する気鋭ピアニスト、エリック・ル・サージュによる、室内楽までを視野に入れたピアノ録音シリーズ。2006 年の第1 作リリースから早くも4年が経ちますが、この間すでに9作もの充実アルバム(しかも、そのうち7作が2枚組!)を発表しているというのは、やはり相当テンポのよいペースなのでは。にもかかわらず、1作1作、1曲1曲が驚くほど濃密・周到な解釈になっているのですから、ル・サージュがいかに満を持してこの録音に踏み切ったか、その決意のほども窺えようというものです。2010 年という記念すべき年に入ってからはリリーステンポが益々速まり、ここにご案内する「第10集」はなんと本年3作目!そしてその曲目は、シューマンの室内楽でも最も重要な2曲といっても過言ではない、「室内楽の年」の代表作たるピアノ五重奏曲とピアノ四重奏曲——いわば、室内楽作品の大本命なのです。師匠ヴィークにその娘クララとの恋路を阻まれ、苦難の日々を送っていた頃はピアノ曲ばかり書いていたシューマンですが、1840 年に晴れてクララと結婚してからは、1840 年に歌曲、1841 年に大規模管弦楽曲、そして1842 年には室内楽…とこれまで手がけたことのなかったジャンルに挑戦、次々と傑作をものにしてゆきました。「室内楽の年」に弦楽四重奏曲を3曲書いたあとに彼が相次いで完成させたのは、それまで殆ど前例のなかった演奏編成、ピアノと弦楽四重奏ないし弦楽三重奏による作品——その両者がどちらも音楽史に残る傑作になったのですから、驚くべき才能の開花というほかありません。本盤でル・サージュは(前回クリストフ・コワンらとのピアノ三重奏曲集で使い始めた)19 世紀製のスタインウェイの玄妙な音色を操り、気鋭のソリストたちとこれまで同様の(いや、それ以上に?)鮮烈なみずみずしさと絶妙の客観的理知性を兼ねそなえた濃密・充実の解釈をくりひろげてゆくのですが、注目すべきはその「気鋭のソリストたち」の顔ぶれ——同シリーズで高雅なロマン情緒をふりまいてきた名手ニコリッチ、先日来日したばかりの若き俊英サルクや躍進中のベルトーといった面子に混じって、五重奏曲ではなんと、ベルリン・フィルのコンサートマスター就任へ向けての活躍が話題となった名手、樫本大進の名が!えもいわれぬ高揚感で盛り上がり、稀有のバランスで織り上げられてゆく音響世界のインテンスさは、こうした豪奢な演奏陣の顔ぶれに負うところも大きいのでしょう。両作品の新たな決定的解釈となるであろう強力アルバム。シリーズ既存作とあわせ、ご注目ください!

ARCANA

Mer-A312
(国内盤)
\2940
テレマンと、ヴィオラ・ダ・ガンバ
 〜ソナタ、室内楽曲、協奏曲〜
ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681〜1767):
 1) 協奏曲イ短調 〜リコーダー、ヴィオラ・
   ダ・ガンバ、弦楽合奏と通奏低音のための
 2) ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ ホ短調TWV41:e5
 (『練習曲さまざまEssecizi Musici』より)
 3) 四重奏ソナタ 第1番 イ長調 〜
   フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ
    と通奏低音のための
    ( 『ハンブルク四重奏曲集』より)
 4) ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音の
       ためのソナタ イ短調 TWV41:a6
 (『練習曲さまざまEssecizi Musici』より)
 5) 無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ ニ短調 TWV40:1
        (『忠実なる音楽の師』より)
 6) 室内協奏曲 ト短調 〜
  オーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のための TWV43:g2
ローレンツ・ドゥフトシュミット(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
アルモニコ・トリブート・アウストリア(古楽器使用)
 マルク・アンタイ(フラウト・トラヴェルソ)
 アルフレード・ベルナルディーニ(バロック・オーボエ)
エドゥアルド・エグエス、グイード・モリーニ(通奏低音)
どんな楽器も自由自在——現代人を魅了してやまない バロック最大の巨匠テレマンの闊達な筆で、  ガンバが生きる!しかも弾き手は超・一流揃い!Naiveの前身であるAstreeレーベルを立ち上げた敏腕古楽プロデューサー、ミシェル・ベルンステンが最後に興したArcanaレーベルは、国を問わずヨーロッパ最前線の古楽アーティストを次々と起用している点でも注目度の高いところ——イタリアのビオンディやガッティ(下記) 、ドイツのドロテー・オーバーリンガー( リコーダー)、はてはベルギーのクイケン兄弟の最新録音まで残したこのレーベル、実はアルノンクールのコンツェントゥス・ムジクスのお膝元でもある「隠れ古楽大国」オーストリアにも顔が利き、バロック・ヴァイオリンの鬼才グナール・レツボールを世に送り出したり、バドゥラ=スコダのフォルテピアノ録音を出していたりするのですが。そんなオーストリア古楽界の押しも押されぬ大立者といえば、ジョルディ・サヴァールのすぐそばで長年活躍してきた異才ガンバ奏者、ローレンツ・ドゥフトシュミット。彼はアルノンクール以降最初の同国発の世界的古楽バンド、アルモニコ・トリブートの主宰者でもあり、Pan Classicsにも幾多の名盤を残していますが(たとえばフォルクレの全集)、ここではなんと!意外にも見過ごされてきた「テレマンのヴィオラ・ダ・ガンバ音楽」を集めてくれています。楽器ごとの特性を的確に踏まえた曲作りに秀で、弾きやすく演奏効果抜群の傑作を無数に残したテレマンは、自身あらゆる楽器を巧みに弾きこなしたそうですが、ガンバもその例に漏れず。室内楽でも合奏曲でもガンバ・パートが活躍する彼の作品は少なくないのですが、ソロ・ソナタの録音は意外に貴重—ーそれをドゥフトシュミットのような名手の秀演で(しかも無伴奏ソナタまで!)聴けるだけでも贅沢なのに、共演陣にも(上にみるとおり)古楽界きってのスーパープレイヤーが続々…!古楽の本場フランスでの超・高評価も頷けようというものです。ガンバは興味あるけど、あまりに本格古楽はちょっと…普通にバロックぽいサウンドで是非ガンバを、というクラシック・ファンにもおすすめの逸品なのです。
仏『ディアパゾン』誌5ポイント満点仏『ル・モンド・ド・ラ・ミュジーク』誌4つ星賞仏『レペルトワール』誌10点満点 仏『テレラマ』ffff(フォルティシモ4 !)賞
Mer-A402
(国内盤・2枚組)
\4515
コレッリ:12のトリオ・ソナタ 作品3、
 作曲者生前に出版されなかった作品群
アルカンジェロ・コレッリ(1653〜1713):
 1)『ソナタ・ダ・キエーザ集』作品3
       (1689・トリオ・ソナタ全12曲)
 2) ソナタ イ長調WoO.5
 3) ソナタト短調 WoO.9
 4) ソナタ ニ長調 WoO.8
 5) ソナタ ニ長調 WoO.7
 6) ソナタ ニ長調 WoO.6
 7) ソナタ ト短調 WoO.10
 8)ソナタ ニ長調 WoO.4*
エンリーコ・ガッティ(バロックvn)
Ens.アウローラ(古楽器使用)
*ガブリエーレ・カッソーネ(ナチュラルトランペット)
解説付き国内盤初出の「作品5」の人気にあわせ、こちらもやはり国内盤流通させなくては…!というわけで、出ます。 レーベル新体制のもと再発あいなった、ガッティの出世盤!
エンリーコ・ガッティ—ーそのむかし、harmonia mundi franceでC.バンキーニ&アンサンブル415の録音にレギュラー参加していたイタリアきっての古楽奏者。彼が世に出たのは、故郷イタリア初の古楽専門レーベルTACTUSで自身の古楽団体「アンサンブル・アウローラ」を率い、もう毎回注目するしかない鮮烈アルバムを連発しはじめたあたりからでしょう。その後Arcanaのベルンステン氏とのつながりで同レーベルに録音するようになって、前代理店の尽力で世紀の変わり目頃に解説付き国内盤がリリースされ、大いに話題をつくり日本でのガッティ認知に大きく寄与したのが、このコレッリのトリオ・ソナタ集だったものでした。(日本での評価は伊達ではなく、古楽にうるさい人の多いフランスでも非常な高評価を博し、しばしば以上ともいえるほど点の辛い批評雑誌の数々もこぞって最高評価を与えた傑作盤です。)これほどの重要リリースが、ベルンステン氏の逝去後、実に何年にもわたって入手不可状態でありつづけてきたとは、なんと残念なことでしょう…と思っていたところ、新レーベルオーナーであるイタリアのプロデューサーの手でめでたくジャケット仕様変更にて再発売の案内が! 同レーベルに録音されたもうひとつの「ガッティの傑作コレッリ録音」であるソロ・ソナタ集(Mer-A423)と相次いで、ようやく再登場してくれました。ヴィヴァルディ以前のイタリア最大のヴァイオリン芸術家で、トリオ・ソナタ形式の大成者でもあるコレッリは、楽譜出版には極度に厳しく、本当に傑作と思える作品しか出版しなかったそうですが、本盤には他ではめったに聴けない「生前未発表作品」もたっぷり収録(コレッリの審美眼は何と厳格だったのか…とあきれるほどの名品ばかり)。揺るぎない完成度を誇る出版曲集「作品3」(実は、これも意外と録音がありません)とともに、抗いがたく作品の美質を印象づけてやまない演奏を聴かせる面子をよく見れば、早世の天才リュート奏者K-E.シュレーダー、Alphaレーベルで大活躍のEns.レ・ウィッチズを主宰する異才バロック・ヴァイオリン奏者オディール・エドゥアール…と贅沢すぎるほど名手揃い! なるほどうまいわけだ、と改めて納得です。仏『ディアパゾン』金賞(ディアパゾン・ドール) 仏『ディアパゾン』1998年度年間大賞 仏『ル・モンド・ド・ラ・ミュジーク』誌  「CHOC(ショック!)」特賞 仏『レペルトワール』10点満点
Mer-A358
(国内盤)
\2940
パレストリーナ:教皇マルチェスのミサ
ジョヴァンニ・ピエールルイージ・ダ・パレストリーナ(1525/26〜1594):
 ①教皇マルチェスのミサ ②4声の詩編「涸れた谷に、鹿が水を求めるように」
 ③8声のモテトゥス「復活祭の生贄に、賛美を捧げます」(8声)
 ④グレゴリオ聖歌による奉献唱「大地はおののき」(1声)
 ⑤5声のモテトゥス「神に向かって歓喜せよ」
 ⑥8声のモテトゥス「キリストは死者たちの中から復活し」
 ⑦5声のモテトゥス「彼らが食事をしているあいだ」)
 ⑧8声のモテトゥス「兄弟たちよ、わたしは主から授けられた」
 ⑨グレゴリオ聖歌「我らが復活祭、キリストは不滅なり」
 ⑩5声のモテトゥス「おお、聖なる饗宴は」
 ⑪12 声のモテトゥス「主を誉め讃えよ」
  ※②〜⑪は①の前後および曲中で演奏
パオロ・ダ・コル指揮
Ens.オデカトン
イタリアに拠点を移した新生Arcana レーベルならではの、とほうもなく強力な傑作盤!ブラームスも尊敬してやまなかったルネサンスの大家、パレストリーナの飛びぬけて有名な(またそれゆえ不当に等閑視されかかっていた)超・傑作を、周到そのものの古楽解釈で!古楽ムーヴメントを音盤シーンから支え、Erato の古楽シリーズやAstree、Valois(いずれも現Naive)などの鮮烈な古楽レーベルを成功させてきた敏腕プロデューサー、ミシェル・ベルンステン氏が生涯最後に立ち上げ、幾多の名盤を世に送り出してきたArcana レーベル——氏の急逝による2007 年のレーベル休止後、2009 年からは音楽学者や古楽プロデューサーら超・少数精鋭で実績をあげてきたイタリアの会社に名義が移り、幸いにして彼らのすぐれた運営により、このレーベルはますます充実した古楽アルバムをリリースしてくれています。ベルンステン氏の遺志が、十二分に受け継がれていると言っても過言ではないでしょう。そのことを如実に示してくれるのが、レーベル拠点がイタリアに来てからならではの、あらゆる角度からみて注目するほかない傑作企画!後期ルネサンス最大の大家であり、ブラームスやヴェルディらロマン派の大家たちも高く評価していたためか、古楽などとは無縁の王道クラシック・ファンでさえ名前を知っているであろう16 世紀イタリアの名匠、パレストリーナの最も有名なミサ曲『教皇マルチェスのミサ』、なんなら通俗名曲と呼んでも差し支えない(つまり、ヘンデルで言えば『メサイア』の「ハレルヤ」、シューベルトで言えば『ます』の五重奏曲、ベートーヴェンで言えば「エリーゼのために」…というような、その作曲家を愛してやまない人からすると若干気持ちが萎えかねない)傑作を、 なんと最新の研究成果をふまえた古楽解釈で聴かせてくれるのです!パレストリーナはローマ教皇庁の聖歌隊長として活躍していたのですが、それは折しも、マルティン・ルターらのプロテスタント勢力が台頭しはじめた宗教改革の時代。ルター派らの糾弾を受け、確かに今の聖職者は腐敗している…と、ローマ教皇庁を頂点とするカトリック教会の内部でも綱紀粛正ムードが起こり、トレントの公会議が召集されます。あらゆる腐敗の根を絶とうとするあまり、教会音楽もあわや味気ないグレゴリオ聖歌だけに限定されそうになったところ、パレストリーナは「教皇マルチェスのミサ」を作曲し、そのあまりの美しさに教皇は芸術的な教会音楽の撤廃を思いとどまった、と伝えられています。この逸話ばかりが先行し、実際にすばらしい名曲なのに古楽シーンでは不当に見過ごされてきた感もある本作を、曲本来の「復活祭のミサ」としてとらえ、実際の音楽礼拝の式次第をふまえたプログラムに置きなおし、4声から12 声にいたるパレストリーナ随一の精緻なポリフォニーが冴えるモテトゥス(ア・カペラ多声による教会音楽小品)の数々と織り上げてみせたイタリア最前線の古楽合唱団の解釈は、もう圧倒的というほかない存在感!この曲がいかに素晴しい傑作だったかを改めて印象づけてやみません。解説も相当に充実(完全邦訳添付)、玄人古楽ファン垂涎の内容な上、演奏の美しさゆえ、初めてパレストリーナにふれる方への(本格的な)入門盤にも最適です!

ARCO DIVA

UP-0116
(国内盤)
\2940
ハープと弦楽四重奏〜凛とした音、しなやかな音〜
 ドビュッシー、バルトーク、トルネチェク、ルカーシュ...
 ヤン・ハヌシュ・トルネチェク(1858〜1914):
  ①スメタナの交響詩「ヴルタヴァ(モルダウ)」による幻想曲
 クロード・ドビュッシー(1862〜1918):
  ②神聖な舞曲、世俗的な舞曲〜
   クロマティック・ハープと弦楽合奏のための
 ベーラ・バルトーク(1881〜1945):
  ③ルーマニア民俗舞曲集
 ヤン・フランク・フィシェル(1921〜2006):
  ④ハープ独奏のための二つの練習曲
 ズデニェク・ルカーシュ(1928〜2007) :
  ⑤どこまでも弦で 〜
   ハープ、2挺のヴァイオリンとチェロのための五重奏曲....
 デイヴィッド・ワトキンズ(1938〜):
  ⑥ 炎の踊り
 シルヴィエ・ボドロヴァー(1954〜):
  ⑦神秘の隠者 〜
   ハープと弦楽合奏のための(以上、作曲者生年順に表記。
曲順は⑤・④・③・②・①・⑥・⑦です)
カテジナ・エングリホヴァー(ハープ)
ヴィハン四重奏団
「弦の国」チェコの最前線をひた走る超・実力派集団、ヴィハンSQの最新アルバムはあっという間に品切れになったフランス室内楽盤の立役者、エングリホヴァーが主役。ドビュッシーやバルトークの傑作をはじめ、緊迫感と優雅さの思いがけぬ交錯が美しい!ハープと、弓奏弦楽器——そしてハープとチェコ。一見意外な組み合わせと見えて、よく考えてみればスメタナの『我が祖国』にはあの印象的かつ長大なハープのソロがあるわけですし、ここにも収録されているとおり、ドビュッシーが傑作『神聖な舞曲、世俗的な舞曲』を弦楽器とハープのために作曲していたり、彼の秘書的存在だったカプレも非常にしばしばハープと弦楽器を一緒に使っていたり、この組み合わせを本格的に突き詰めてゆくと、キャラクターの異なるアルバムが数作できてしまうのではないか?と思われるくらい——で、ここでは「チェコのハープと弦」という切り口から、この中欧きってのクラシック大国の楽壇最前線で活躍するスーパープレイヤーと、「弦の国」と渾名されるくらい弦楽器演奏の伝統には定評のあるチェコきっての弦楽四重奏団が、この両者の組み合わせでどれほど多元的な音楽が紡ぎ出せるか、十分以上に教えてくれる充実したプログラムを提案してくれました。ヴィハン四重奏団といえば、弊社がArco Diva を扱い始めた当初リリースしたスメタナの弦楽四重奏曲集(UP0086)が『レコ芸』特選に輝いたのも数年前——実は、このアルバムのすぐ次にリリースされたのが本盤と、意外とじっくり企画を練ってから録音する頼もしいタイプだったのだ、ということを実感しました。そしてゲストか主役か(ジャケットに出ているくらいですから、やはり主役でしょう)、肝心のハープ奏者は現代チェコ随一のソリストで、かつてマルティヌー四重奏団とのフランス音楽アルバム(UP0104)で大活躍したものの、肝心の当該盤があっという間に日本市場で売り切れ、チェコでもプレス切れとなったほど「売り上げを作れる実績のある」ハープ奏者、カテジナ・エングリホヴァー!抑揚自在な弾奏は、しばしばはっと息をのむ美しさに彩られ、そこへきわめてドラマティック、きわめて変化に富みながら一糸乱れぬアンサンブルを聴かせるヴィハン四重奏団が絡む。バルトークの躍動感や「炎の踊り」でのロックな疾走感も痛快なら、ドビュッシーやルカーシュなどでの懐かしさ漂う響きも本当に傾聴に値するところ、ドヴォルザークの同時代人で同国きってのハープ奏者だったというトルネチェクの名品も聴きどころ。私たちの同時代人ながら古典的な形式感覚・和声感覚でほとんどマルティヌーやタンスマンあたりと変わらないような作風をみせる冒頭のルカーシュの作品からして、発見の喜びを深く感じさせてくれる逸品なのです!

ARS MUSICI

AMCD232-393
(国内盤)
\2940
ブラームス(1833〜1897)
 1. ピアノ三重奏曲 ロ長調op.8(1854年の初稿版)
シェーンベルク(1874〜1951)
 2. 浄夜 op.4
  (1899/1932年のエドゥヴァルト・ シュトイアマン編曲
   によるピアノ三重奏版)
トリオ・ジャン・パウル
ウルフ・シュナイダー(vn)
マルティン・レーア(vc)
エッカルト・ハイリガース(p)
アルテミス四重奏団、フォーレ四重奏団…だけじゃない、Ars Musici の「ドイツ楽壇最前線」文学と音楽が結びつく場は、声楽ばかりではありません。最上の意味で“理屈っぽい”ドイツ人の名手たち。理論武装あればこそ、「異版」は初めて説得力を持ち、美しくなる!ドイツ楽壇——それは日本のクラシック・ファンの多くが、そこにクラシックの真髄を見出してきた世界ではないでしょうか?北にベルリンやケルン、南にミュンヘンやシュトゥットガルト、世界有数のオーケストラの伝統と、そこで活躍してきた作曲家たちにまつわる証言、その後継者たちの活躍...何はともあれ、この国のクラシック界が時代を問わず大いに活況を呈していて、今なお世界第一級の演奏家たちを輩出していることだけは間違いありません。しかし、そこで指揮者やピアニスト、オーケストラなどの花形ジャンルのかたわら日本では見過ごされがちなのが、室内楽における気鋭グループの存在。かつてロマン派時代、それまで家庭やサロンで仲間うちが愉しむのが主流だった室内楽を、プロの演奏家が芸術音楽として鑑賞に足る演奏で聴かせるという習慣がいちはやく広まったのがドイツで、フランスもベルギーもイタリアも英国も、19 世紀後半には周辺諸国の作曲家たちが室内楽作品を書くと、必ず多かれ少なかれドイツ音楽を意識したような仕上がりになったもの——そうしたわけで、メロスSQ、ライプツィヒSQ、ハーゲンSQ、アルテミスSQ...と世代を問わず弦楽四重奏団は次々と気鋭団体が登場しつづけているほか、フォーレ四重奏団やこのトリオ・ジャン・パウルなどのようにピアノを交えたアンサンブルでも、世界的名声を誇る集団は珍しくありません。フライブルクの音楽研究機関を母体としたARS MUSICI レーベルは、そんなドイツ最前線の室内楽集団を早くから的確に嗅ぎわけ、素晴しいアルバムを制作してきたことが隠れた功績のひとつ...今なお好況を呈しているフォーレ四重奏団のシューマン・アルバム(AMCD232-394)や近日発売のアルテミスSQ 盤(AMCD232-322)などの傍ら、今回ご紹介するのは1991 年結成、今や押しも押されぬ超・実力派としてきわめて多忙な演奏活動を送るトリオ・ジャン・パウル! 超・有名作曲家の重要レパートリーの「異版」ふたつを集めた本盤、ひたすら硬派な企画のようでいて(解説書にはインタビュー(全訳添付)が掲載されており、3人とも活発に意見を出し、音楽と文学や社会のかかわりを非常に重視する彼らの知的なアプローチ姿勢がはっきり垣間見えます)、その実、サウンドはひたすらに甘美、それでいて引き締めるところはビシッと締めているあたり「夢見がちで理屈っぽいドイツ人」の美意識が最大限よいかたちで体現された結果を導き出しています。つまり本盤、ひたすら耳と心に心地よい、充実度満点の室内楽盤なのです。あまりに甘美になりすぎたがゆえ、ブラームス自身が改作、もとの形は封印していたという1854 年版の若書き傑作に織り込まれていた密かなメッセージとは? 本来は弦楽器だけの引き伸ばした音の重なりの美で聴かせる名曲だったはずのシェーンベルク初期作品『浄夜』が、まったく異なる魅力とともに新鮮な姿で立ちあらわれるピアノ三重奏版の聴き所とは?そのあまりの充実度ゆえに、本盤はドイツでのリリース後、確かな審美眼で選ばれる有名なシャルプラッテンプライス(ドイツ音盤賞) を受賞しているのでした。

CONCERTO

CNT2058
(国内盤)
\2940
フォリア三昧、変奏曲三昧
〜バロックのチェンバロ変奏曲さまざま〜
 ①フォリア(1708 年・スペイン)
 ②スペインのフォーリー(1685 年・英国)
 ③宮殿の調べ、フォリアス(1707 年・スペイン)
 ④「忠実な人」による変奏曲
  (アスカーニョ・マイヨーネ 1570〜1627)
 ⑤ラス・フォリアス(1709 年、スペイン)
 ⑥酔狂な協和音
  (ジョヴァンニ・マリア・トラバーチ 1575頃〜1647)
 ⑦「忠実な人」による変奏曲(トラバーチ)
 ⑧「スペインのフォリア」の調べによる変奏曲
  (ベルナルド・パスクィーニ 1637〜1710)
 ⑨フォリアの変奏さまざま(パスクィーニ)
 ⑩荘重なフォリア(1721 年・スペイン)
 ⑪ フォリアによる変奏曲
  (ジローラモ・フレスコバルディ1583〜1643)
 ⑫パッサカーリャによる100変奏(フレスコバルディ)
 ⑬これもまたフォリア(1709 年・スペイン)
 ⑭フォリア(ベルナルド・ストラーチェ 1637 以前〜1707 以前)
 ⑮チャコーナ(ストラーチェ)
 ⑯オクターヴ同度のチェンバロのためのトッカータ〜
  スペインのフォリアによる変奏曲
  (アレッサンドロ・スカルラッティ 1660〜1725)
ルッジェーロ・ラガナ(チェンバロ/
イタリアのG.バッフォ1574年モデル)
イベリア情緒、ラテン気質——けれども、勢いだけではここまで“味”は出ないもの。18世紀以前の知られざる「フォリア」の数々を、16世紀式のチェンバロひとつで多彩に弾き分けてしまう。筋の通った古楽企画、演奏者はなんと...現代作曲家!
そぞろ涼しくなりはじめる季節、しかし年末年始へ向けて盛り上がる機会は何かと多い秋冬シーズン——そんな折にミラノのConcerto レーベルから届いた新作は、ルネサンス・イタリア式のチェンバロひとつで、驚くほど精彩あざやかな変奏曲を聴かせてくれる充実盤。テーマは「フォリア」——ヴァイオリンを学んだことがある人なら必ずやご存知であろうコレッリの傑作で有名な、変幻自在の変奏曲の面白さ炸裂!です。
「フォリア」とは、バロック期に人気を誇ったイベリア半島起源の楽曲スタイル——もとはポルトガルで、お祭りの「乱痴気騒ぎ(フォリア)」のさなか、理性を吹っ飛ばして踊られた音楽だったそう。これがスペインをへてフランスやイタリアにもたらされ、宮廷音楽にも取り入れられていきます。低音部がずっと同じ音型をくりかえし、高音域でさまざまな変奏を自由に繰り返してゆく「オスティナート変奏曲」として書かれることが多く、本盤はそのあたりを軸に、同じくオスティナート変奏曲形式をとるパッサカーリャやチャコーナ(シャコンヌ)といった楽曲も集めているのですが、聴きはじめるや最後まで止まらない!一定の間隔でくりかえされる低音域の反復が麻薬的に気持ちよい周期性を打ち出し、長大な曲では10 分以上も続く変奏のめくるめく多彩さに、ついつい先へ先へ、と聴き進んでしまうこと必至!作曲者不詳の手書き楽譜だけで残っているフォリアも多数収録していますが、当時の演奏スタイルをふまえた解釈で聴いてみれば、なるほど、バロック期にこれほどたくさんのフォリアが書かれたのも納得の面白さです。使っているのは楽譜よりもさらに1世紀以上古いタイプのチェンバロなのですが、それがさながら「名家に代々伝わる銘器」のような高雅さを演出しているようにも感じられたり。大事な和音の純粋な響きを尊重して一部の和音にシワ寄せをもってゆくバロック式の調律ゆえ、その鋭角的なサウンドは作曲家たちが意図したであろう瞬間に絶妙の“味”を迸らせ、流し聴きでも耳を引っ張られるような興奮を誘います。こういったあたりを熟知しているらしいのが、本盤の演奏者R.ラガナ——古楽器奏者として研鑽を積んだだけでなく、その見識を反映させるようにして、チェンバロのための現代作曲家としても数々の実績を残してきた人とのこと。その細かなこだわりが、最上の結果に結びついているのです。

COO

COO-024
(国内盤)
\2625
バッハ、フルート、そしてチェンバロ
 〜無伴奏組曲、二重奏によるソナタ〜
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 1. フルートとオブリガート・チェンバロの
  ためのソナタ ト短調 BWV1020
 2. フルートとオブリガート・チェンバロの
  ためのソナタ 変ホ長調 BWV1031
 3. 無伴奏組曲 第5番 ト短調 BWV1011
  (無伴奏フルートによる演奏)
 4. フルートとオブリガート・チェンバロの
   ためのソナタ ロ短調 BWV1030
新谷要一(フルート)
新谷久子(チェンバロ)
現代フルートを、トラヴェルソ(バロック式フルート)のように吹きこなすということ——『無伴奏チェロ組曲』さえもフルート1本で、まるで違和感なく音楽にしてしまう名匠・新谷要一の解釈で、ついに聴ける!バッハの大本命・二重奏ソナタの静かな対話それは、2008 年早春のこと——バッハの『無伴奏チェロ組曲』を無伴奏フルートで、しかもライヴで収録するという大胆な企画を目前にして、私たちスタッフは「はたしてこの企画は本当に成立するのだろうか?」とあらためて懸念していました。しかし、一番強烈な不安に駆られていたのは、演奏者である新谷要一氏本人にほかなりませんでした——全く幸いなことに、この不安は最高の形で結実をみることになります。ジャケット内装を飾る演奏風景を撮影しようと構えていたスタッフが、その場のあまりの緊張感にたった3枚しか写真を撮れなかった(とはいえ、これも実に印象的な良いポートレートになりました)、そのくらい張り詰めた空気のなか、新谷氏が奏でた音は本当にたおやかで自然なものとなったのです(今でも覚えていますが、技師の方が編集作業を進めていた頃、プレイバックが遠くで鳴っているのが私の席にも微かに聴こえてきて、いつの間にか仕事の手が止まり、気がついたらスピーカーの前で1曲終わるまで聴き込んでしまったものでした)。現代式のフルートなのに、さながらバッハの知っていた簡素なフラウト・トラヴェルソのような、ひとの息吹と素材の振動がひたすら快いオーガニックな音で鳴る…19世紀フランスの幻の製作家ルイ・ロー(ロット)のスタイルを踏襲したという14K フルート(秋山好輝製作)の良さもあるでしょうが、やはり吹き手である新谷要一氏の揺るぎない音楽性があればこそ、あの「無伴奏」の名演は素晴しい音盤(COO-019)になったのだと思います。作品の美とは何か?を見据え続け、おのずから誰をも魅了せずにはおれない解釈へ…インスブルック響での活動をへて、祖国日本でクラシックを続ける意味を自問しつづけてきた新谷氏がいま新たに世に問うのは、そんな無伴奏アルバムの続編ともいうべきバッハ録音! 自筆譜も残っている壮大なロ短調ソナタ、バッハの真筆性に疑義が呈示されながらも、否みがたい作品そのものの美ゆえになお吹き継がれるBWV1031(有名なシチリアーナを含む曲)などの二重奏ソナタでは、フランス型のオーセンティックなチェンバロを弾く新谷久子氏のみずみずしいタッチの傍ら、そのポリフォニーの綾に寄り添うように音を紡いでゆくフルートの、なんと美しいことでしょう。そしてそんなプログラムに変化をもたらすのが、前作の続きでもある無伴奏組曲の録音——それも、あの長大な第5組曲!これほど充実した作品は、確かに、他の組曲から引き離してここに単独で収録して大正解だった、と唸ってしまう、鑑賞しごたえのある響きがそこに詰まっています。二重奏の対話と、ひとりの音楽家の小宇宙と。「現代フルート+チェンバロ」の通念を覆す名演です。
COO-012
(国内盤)
\2625
日本歌曲選 〜山田耕筰から團 伊玖磨まで〜
 山田耕筰(1886〜1965):
  ①鐘が鳴ります ②かやの木山の
  ③赤とんぼ ④この道 ⑤かえろかえろと
 橋本国彦(1904〜1909):
  ⑥お菓子と娘 ⑦落葉
 信時 潔(1887〜1965):⑧沙羅 ⑨行々子
 平井康三郎(1910〜2002):
  ⑩ゆりかご ⑪平城山 ⑫甲斐の峡
 團 伊玖磨(1924〜2001):⑬ひぐらし
 中田喜直(1923〜2000):
  ⑭こだまでしょうか ⑮たいりょう
  ⑯こころ ⑰さくら横ちょう ⑱夏の思い出
 弘田龍太郎(1892〜1952):
  ⑲叱られて
 石桁眞禮生(1916〜1996):⑳ふるさとの
小川明子(アルト独唱)
山田啓明(ピアノ)
日本史で言えば、対照ロマンから昭和前半。音楽史で言えば、ベル・エポックから近代へ。多忙なソリスト小川明子が、たおやかなピアノに乗せてじっくりと歌い上げるなつかしいメロディの数々と、金子みすゞや北原白秋の詩に宿る、うつくしい詩情...!鎖国を解き、明治時代を経て大正へ、そして昭和へ...欧米との交流がさかんになった20 世紀前半以降の日本で、洋画や洋食などと同じように、日本人の心に染むものとなっていった「洋楽」、西洋クラシックの潮流——ドイツやオーストリア、アメリカなどに留学し、ブルッフ(山田耕筰)やシェーンベルク(橋本国彦)など、音楽史に名高い巨匠たちに直接師事した作曲家もいます。彼らの留学先として、ドイツ語圏が多かったというのがポイント——そのことが端的に奏功したジャンルが、ピアノ伴奏による「歌曲」ではないでしょうか。壮大な芸術をうたいあげるというよりはむしろ、すぐそこにある日本の日常から限りない優しさを汲みあげ、歌い手ひとりと伴奏者ひとり、ごく近しい演奏者同士で味わう「うた」...これはまさしく、ドイツ・リート(ドイツ歌曲)という親密な音楽形態の系譜に連なる美質かもしれません。さて——そういった理屈はさておき、弊社マーキュリーの制作するレーベルCoo-Records から、日本語歌曲ばかりを集めたアルバムが改めてリリースされる運びとなりました(当初2002 年に制作された時には店舗流通なし)。歌い手は小川明子、日本中をまたにかけ演奏活動を続け、いたるところのオーケストラに客演を続ける多忙なアルト歌手。オペラの舞台やリサイタルでは、モーツァルトやベートーヴェンの王道作品はもちろん、R.シュトラウス、ヤナーチェク、ブリテン、リゲティなどの近現代作品にも絶妙の適性を示す多芸ぶりを印象づけてやまない方ですが、それは「うた」というものの芯を真摯に見つめ続けていればこそ——録音ではもっぱら日本語歌曲をとりあげ、微塵もおしつけがましさのない自然なアルバム作りを続けている(これ、日本語歌曲だと逆に難しい部分なのではないでしょうか)のも、そうした揺るがない音楽性の反映なのだと思います(実際、ライヴノーツで制作された山田耕筰アルバムは『レコード芸術』にて特選を獲得しています)。長く歌い慣わされ、誰もが知っている名曲となった「赤とんぼ」や「この道」などの山田耕筰作品に始まり、穏やかなテンポ設定で優美に歌い連ねられてゆく——ホールの残響を絶妙にすくいとった録音の巧みさ(歌い手との絶妙な心理的距離感で静かに音を添えるピアノの、何と美しいこと…!)とあいまって、20 世紀初頭に綴られた作品の数々はどこまでも懐かしく、懐かしいのに、古びていない。クラシックを聴き慣れた人なら、そこにロマン派以来の音楽言語を聴きつけるからかもしれませんし、五音音階など伝統音楽の語法がそこかしこに織り込まれているのが、鑑賞習慣を超えて日本人の心に訴えかけてくる要素なのかもしれません。クラシック楽曲として聴くもよし、心の故郷を感じるもよし——秋の深まる季節、しみじみ聴きたいアルバムです。
MVGK-001
(国内盤)
\2625
ファゴットのための傑作室内楽さまざま
 ミハイル・グリンカ(1804〜1857):
  ①ヴィオラとピアノのためのソナタ断章
    (R.ショットシュテット編)
 ポール=アグリコル・ジェナン(1832〜1903):
  ②ヴェニスの謝肉祭
 イサン・ユン(1917〜1995):
  ③無伴奏ファゴットのためのモノローグ
 ロジェ・ブートリ(1932〜):
  ④アンテルフェランス(干渉)I
 カール・マリア・フォン・ヴェーバー(1786〜1826):
  ⑤アンダンテとハンガリー風ロンド
 ジャン・フランセ(1912〜1997):
  ⑥ファゴットと弦楽のためのディヴェルティスマン
小山莉絵(ファゴット)
吉井美由紀(ピアノ)
シュトゥットガルト室内管弦楽団メンバー...ベンジャミン・ハドスン、
クラウス・フォン・ニスヴァルト(vn)
ペトラ・ヴォルフ(va)
ジェルジ・ボクナール(vc)
レンガー・ヴェルデリンク(cb)
コンサート連続出演、現在20連勝快進撃中! サイトウ・キネン・オーケストラのソロ奏者で名門・トロッシンゲン国立音大で教鞭をとる小山昭雄を父に、シュトゥットガルト室内管で早くも活躍をはじめる新世代奏者のファゴットは、いともなめらか、煌びやかにして流麗...。世の中は広く、才能あふれる演奏家は次から次へと世界中で登場しているもの——そんな若き天才たちが続々参加して腕を競う舞台としてコンクールというものがありますが、そんな熾烈な競争の場で、日本、ドイツ、ポーランド…と現在なんと20 連勝もの快挙を成し遂げている若きファゴット奏者が。さすがに他に類をみない快進撃と言えるのではないでしょうか? コンクールでの成功は才能ひとつではない、と言われるかもしれませんが、この小山莉絵の場合、その実績が現時点での実力をありありと示すものにほかならないのは、このアルバムを聴いて頂ければ十分おわかりいただけることと思います。変幻自在の中低音管楽器でありながら、ソロのレパートリーは意外と限られているファゴットの演目を、ロマン派から近現代まで非常にバランスよく集め、伸びやかな歌心から圧巻の超絶技巧まで既に思いのまま、その魅力を十全に愉しませてくれるアンソロジー!(私こと担当は一聴したとたん「ああ、ファゴットっていい楽器だな…」という思いを新たにし、その美音の多彩なニュアンスにじっくり聴き惚れました。ふだんは冷静な判断をしよう、と最初から一つのアルバムを通しで聴かないようにしているんですが、そうはいかなかった珍しい例…プログラムの妙も含め、こういう魔力がコンクールでの成功(あるいはステージでの魅力)に繋がる実力なのだと思います。)ロマン派初期の管弦楽法の天才、『魔弾の射手』の作曲者ヴェーバーによる有名な作例もあれば、これもまた管楽器奏者たちにはおなじみのツィゴイネルワイゼン的名品「ヴェニスの謝肉祭」でのスポーティな痛快さもあり、「管の国」フランスを代表する多芸な作曲家ブートリの当意即妙も聴きどころ。知る人ぞ知る謎めいた断章、グリンカのヴィオラ・ソナタのファゴット版も陰翳あざやかです。奏者の底知れない音楽性をじっくり味わえ、同時にファゴットという楽器の多彩な魅力を最も端的に感じられるのは、イサン・ユンの無伴奏作品でしょうか——えもいわれぬニュアンスの豊かさは、素材感あふれる現代彫刻の美にも似ているような。さらに、管楽器ソロ盤の盲点的弱点である「ピアノ伴奏での単調さ」をカヴァーすべく、弦楽の入るフランセ作品(映画音楽のような愉悦たっぷりの名品!)で締めくくられるのも憎いところ。妙に周到な設計だと思ったら、彼女の父はドイツ・トロッシンゲン音大で教鞭をとるサイトウ・キネンのソロ奏者、小山昭雄氏とのこと…最高のブレーンが背後にいらしたわけですね。ちなみに小山莉絵はまだ音楽院在学中なのですが、すでに現在、ミュンヒンガー亡き後も痛快名演を続けるシュトゥットガルト室内管と、音盤ファンには数々の名盤でおなじみの南西ドイツ室内管のメンバーを兼任中。在学中から本場の現場最前線で活躍を始めているわけで、「巨匠クラウス・トゥーネマンの登場を彷彿させる」との噂も伊達ではありません。他にもアンサンブル活動やリサイタル、協奏曲ソリストとしても活躍中とのことで、本当に将来がますます楽しみです。なお、このアルバムはHanssler、Claves、Accent…と ドイツ内外のさまざまな小規模レーベルと仕事をしているオランダ出身の録音技師テイエ・ファン・へースト氏(お手元のマイナーレーベル盤にも折々出てくる名前だと思いますよ)のスタジオで、的確なエンジニアリングにより収録された自主制作盤。演奏者ご本人よりお話を頂き、弊社で扱わせて頂くこととなりました。(マーキュリー)
COO-026
(国内盤)
\2940
ドビュッシー(1862〜1918):
 1. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
シューマン(1810〜1856):
 2. 三つのロマンツェ 作品94
タルティーニ(1692〜1770):
 3. ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト短調
   「悪魔のトリル」(初版稿)
ストラヴィンスキー(1882〜1973):
 4. ディヴェルティメント
  〜バレエ『妖精の口づけ』より
モーツァルト(1756〜1791):
 5. ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ト長調KV301
サラサーテ(1844〜1908):
 6. ツィゴイネルワイゼン(ロマの調べ)
ノエ・乾(ヴァイオリン)
パク・スミジャ(ピアノ)
ブリュッセル生まれ、パリ育ち——さらにカールスルーエで、ドイツの伝統も身につけた男。さまざまな様式をその弦に宿した名手が、みずみずしい感性のデュオ・パートナーと織り上げてゆく、二重奏の物語...静々と魅了されること間違いなし、この霊妙な感性!次から次へと出てくる新譜の海のなか、なぜ新たなヴァイオリニストに耳を傾けるべきなのか。ましてや若いヴァイオリニストのデビュー盤で、上記のような多岐にわたるプログラムを、それもドビュッシーのソナタなどという(あらゆる意味での)難曲で始めるとは、どういうことなのだろう...と。実は私もそんな感想だったのですが、聴き始めてすぐに、そういうことは全く問題ではなかったのだ、と気づかされました。ノエ・乾/パク・スミジャの二重奏は、何か驚くべきことで誰かを圧倒したい、というような音楽ではなかったのです。静々とドビュッシーのソナタが始まり、超絶技巧のアッチェランドで華やかにアルバムが締めくくられる瞬間まで、その流れに物語があり、六つの章それぞれに、とびきりの磨きぬかれた解釈がある。これら6曲がここに選ばれているのは、それがすでに耳を傾けるに値する名解釈になっているから。ヴァイオリンのノエ・乾が生まれたのはブリュッセルで(父は日本人、母はギリシャ人)、フランコ=ベルギー派の伝統に連なる研鑽を受けたのち、フランス語圏つながりでパリ国立高等音楽院へ。その後カールスルーエで知る人ぞ知る名匠ウルフ・ヘルシャーに師事し、確たるドイツ流儀も身につけました。パートナーのパク・スミジャとのアンサンブルは絶妙そのもの、ヴァイオリン一辺倒になることのない「室内楽」らしさは「ピアノ主役+ヴァイオリン」のかたちで作曲されたモーツァルト作品もよく引き立たせています。ドビュッシー、シューマンと玄妙なトラックが続いた後に現れるタルティーニは格別!原典主義的に18 世紀の初版稿に立ち戻り、クライスラーの華美なカデンツァを廃したその端正な解釈は、聴き手を凄味で脅かすというより、静かに忍び寄り心をざわつかせる悪魔のよう——気がつけばすっかり虜になっている、かなり独特な「悪魔のトリル」解釈になっています。めくるめく展開が痛快なストラヴィンスキー、オーボエ演奏でばかり知られているがシューマン自身はヴァイオリンでの演奏も指定している「三つのロマンツェ」、そして豪奢なアンコールのように末尾を飾る『ツィゴイネルワイゼン』...諸国を渡って人々に求められ、さまざまな民の生活を彩った更紗のように、活躍地も時代も違う6者の作品をひとつひとつ引き立たせながら、自身の個性を浮き彫りにしてみせる。

EARLY−MUSIC.COM

EMCCD 7769
(国内盤)
\2940
ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809)
 1. 交響曲 第41番 ハ長調 Hob.I-41
 2. 交響曲 第49番 ヘ短調 Hob.I-49「受難」
 3. 交響曲 第44番 ホ短調 Hob.I-44「悲しみ」
ガリー・クーパー指揮
アリオン・バロック・オーケストラ
爽快・痛快——久々にフランス語圏カナダから届いたアリオン・バロック・オーケストラの録音は、上り調子の若き宮廷作曲家だったハイドン“中初期”の傑作交響曲!過不足なし・絶妙のサウンド作りが本当に快い!じっくり付き合いたくなる味わい豊かな1枚古楽シーンが着実に育ちつつあるフランス語圏カナダですが、その古楽演奏のあり方は、ヨーロッパの感覚とは少し違う、アメリカの古楽シーンともまた違う、ユニークな魅力に満ちているようで。英語圏ふうのバランス感覚と中庸の美徳のようなものが一本筋の通った堅固さを全企画に与えている一方で、演奏家ひとりひとりは全くフランス的・ラテン的な自発性が演奏から滲み出てくるよう、弾く喜び・歌う喜びを全身で表現しながら、ハイクオリティな音楽を紡ぎ出してゆく...「歴史あるところでやってます」というようなヨーロッパ流の風格とは少し違った、伸び伸びと、聴く者に心からの喜びを与えずにはおかない演奏は、古楽演奏に関しても余計なしがらみに囚われることのない、新大陸ならではのアドバンテージゆえのことなのかもしれません。大西洋の東と西、どちらがすぐれている、というのではなく、どちらもかけがえのない特徴的な良さがあるのだなと、アリオン・バロック・オーケストラの新譜が届くたび、しみじみそう思う次第でございます。さて!このたび久々に届いた同アンサンブルの新譜は、バロック・アンサンブルにすぐれたホルン奏者が加わるなら必ず聴いてみたい「初期〜中期のハイドン」。交響曲を100曲以上残したこの作曲家、その大半はハンガリー近辺に所領を持つエステルハージ侯爵の宮廷楽団のために書かれていますが、本盤に収録されている3曲は1768〜72 年、つまり彼がこの名手ぞろいの楽団を自由に使って作曲できるようになってから数年後の、最も作曲意欲が乗り切っていた時期の傑作ばかり。いわゆる「疾風怒濤」と呼ばれる、古典派初期の痛快な短調交響曲(モーツァルトの「25 番」やC.P.E.バッハのハンブルク交響曲第5番などと似た路線)がハイドン好き・古典派好きの大本命だとすれば、本盤にはそのラインの短調作品が何と2曲も! 雨の日にしみじみ聴いていると深い感慨をもたらさずにはおかない「受難」、第1 楽章の冒頭からC.P.E.バッハ流儀の得体の知れない無調的メロディが聴き手を驚かせる「悲しみ」、どちらも録音があるようで少ない充実曲。アルバム冒頭を飾るのは、明快で愉悦たっぷり、弱音器つき弦楽をバックにトラヴェルソがきれいなソロを奏でる緩徐楽章も美しい「第41 番」——両端楽章の軽快さは、まさに古典派初期ならではの前向き感が聴いていて全く痛快、ナチュラルホルンの勇壮さも絶妙!それもみな、英国の古楽バンドでこの種の古典派作品を聴き慣れてきた日本の古楽ファンにしっくりくる、そのうえラテン的自発性がいたるところに滲み出ているアリオンの名演あればこそ、最高級に引き立つというもの。エステルハーザの演奏編成を忠実に再現しながら、「ヴィオラをもっと厚くできるなら...」というハイドンの手紙に応えるべく、ヴィオラだけは1挺増やしたという采配は経験豊かな古楽奏者たちならではの発想!当時の一般的な習慣に従い指揮者はチェンバロを導入、静かに響いてくるその音色も古楽的雰囲気満点です。

FUGA LIBERA

MFUG571
(国内盤)
\2940
ミハイル・グリンカ(1804〜1857):
 ①序曲 ニ長調 ②序曲 ト短調
 ③ロマンス「言うべきではない、彼女が神々しいなど」
 ④未完の交響曲断章 変ロ長調(補筆:P.クリモフ)
 ⑤ロマンス「子守唄」
 ⑥『皇帝に捧げた命(イヴァン・スサーニン)』のための三つの舞曲
 ⑦ロマンス「真夜中の閲兵式」
 ⑧カマリンスカヤ
 ⑨ロマンス「私のことは、すぐに忘れてしまうでしょうから」
 ⑩ワルツ幻想曲
アレクサンドル・ルーディン(vc)指揮
ムジカ・ヴィーヴァ室内管弦楽団
③⑨オリガ・センデルスカヤ(S)
⑤アリーナ・シャキロヴァ(Ms)
⑦ペトル・ノヴィコフ(B)
ぴりっと引き締まったピリオド系奏法で、ロシア楽壇に鮮烈な新風を呼び込んだタッグの最新作!“ロシア国民楽派”といえばチャイコフスキーより五人組より、彼らの大先輩グリンカが断然魅力的永遠の傑作・ワルツ幻想曲はもちろん、最新校訂による単独序曲や「幻の交響曲(!)」まで!「ピリオド奏法」——それは何もかも「現代式」に渾身・入魂の弾き方で塗りこめてしまうのではなく、演奏する作品ごと、その曲が作曲された当時にどんな演奏法が使われていたのかを踏まえ、当時流儀の弾き方をする事により作曲家たちが思い描いていた響きを再現しようとする、新しいスタイル。とはいえ、この種のムーヴメントが密やかに広まり始めて既に幾十年、今では使用楽器までは古楽器にせずとも、現代楽器を手に、こうした奏法を効果的に自分たちの演奏に取り入れている演奏家もすっかり増えてきました。それは何も、イギリスやフランス、ドイツなど古楽シーンが見過ごしがたく大きく育ってきた国々だけに言えることではありません——演目の作曲年代ごとに奏法を変える、というスタイルは今や、かつてムラヴィンスキーやオイストラフやリヒテルや...といった“往年の巨匠たち”が活躍していた国・ロシアでさえ広まりつつあるのです! それを実地の演奏でこれ以上ないほど鮮やかに証明してくれるのが、チェロ奏者としても卓越した技量を示すアレクサンドル・ルーディン率いるムジカ・ヴィーヴァ室内管。彼らの演奏スタイルは、国民楽派台頭前夜、ベル・カント全盛の頃のロシアで活躍した隠れ名匠、アリャビエフの管弦楽作品集(MFUG539)にみごとな結実をみせ、日本のファンからも熱烈な歓迎を受けたものでした(『レコ芸』特選)。そんな注目の実力派集団が次に世に問うたのは、アリャビエフの同時代人ながら明らかに彼よりも有名な、ロシア五人組が心の師匠と崇めた巨匠・グリンカの作品集! 躍動感あふれる傑作歌劇『ルスランとリュドミラ』の素晴しい序曲ばかりが有名なこの名匠、(ご存知の方には釈迦に説法でしょうが)故郷ロシアやスペインの民族音楽に刺激されながら、同時代のベルリオーズもかくや、というほど色彩感豊かな、きわめて効果的なオーケストラ書法をものにしており、ロシア五人組やチャイコフスキーにも大きな影響を与えました。晩年の比類ない傑作『ワルツ幻想曲』や『カマリンスカヤ』などは往年の巨匠たちも名演を残していますが(たとえばV.フェドセーエフ)、そんなグリンカの特徴的な器楽語法に、ロシア情緒を肌で知る演奏家たちが改めてピリオド奏法で正面から向き合ったとき、どれほど鮮烈な音楽が描き出されるか——とにかく、本盤の瑞々しさは「比類ない」の一言!さらにグリンカ管弦楽の何たるやを知る方も、めったに聴かれない単独序曲2編や、周到に復元補筆された幻の交響曲(!)断章などの秘曲には食指を動かされずにおれない筈。精妙・清廉な弦楽合奏が美しいロマンスなど折々声楽曲を織り交ぜ、プログラムに抑揚がついているのも、19 世紀の演奏習慣をよく踏まえた対処として非常に好感が持てます。玄人も大満足の仕掛けが満載、なんとなく聴き流すにも実に快い、本当に価値ある新譜なのです。
MFUG568
(国内盤・2CD)
\4515
ヴォルフ:メーリケ歌曲集より(45曲)
 〜ウィーン2009年ライヴ録音〜
ディートリヒ・ヘンシェル(バリトン)
フリッツ・シュヴィングハンマー(ピアノ...ブリュートナー)
※「少年と蜜蜂」「夜明け前のひととき」 「捨てられた女中」「アグネス」「庭師」 「四月の山黄蝶」「或る老女の忠告」 「人魚のビンゼフース」の6曲以外全収録
着々とドイツのリート世界を代表するヘンシェル、超・重要曲目でFugaLibera に登場!マーラーと同い年のウィーンの大家、ヴォルフも生誕150周年——最重要作品集を1曲1曲、濃やかに歌いこなした鮮烈ライヴ録音!(録音はAlphaのユーグ・デショー!)イ・ムジチ合奏団全盛の時代いらい現代楽器の録音ばかりだったアルビノーニのオーボエ協奏曲集の古楽器演奏(MFUG554)、ヴィーラント・クイケンの息子ピート・クイケンによるシューマンのフォルテピアノ録音(MFUG562)、フランス近現代を得意とするアリス・アデールの『展覧会の絵』(MFUG566)...ハードな現代音楽アルバムでレーベル発足を飾って以来、芸術大国ベルギーの地元感覚をつよく印象づけてきたFuga Libera レーベルが、昨年くらいから急速に「王道クラシック・ファンの守備範囲」を絶妙のセンスでくすぐる秀逸アイテムを連発するようになりました。ヴァルター・ヴェラー(指揮)、ゼーフェリン・フォン・エッカルトシュタイン(ピアノ)、パウル・ドンブレヒト(バロックオーボエ)...ヨーロッパ楽壇を牽引するアーティストも続々録音している当レーベルですが、今度はなんと「いま」のドイツ楽壇を代表するバリトン、ディートリヒ・ヘンシェルの最新録音が登場!アルノンクールの『マタイ受難曲』再録音でもユダを演じ、ヘレヴェッヘの『子供の不思議な角笛』やヤーコプスのハイドン『四季』などでも共演するなど見過ごせない名盤を彩ってきた傍ら、harmonia mundi france では『白鳥の歌』やコルンゴルト(!)の歌曲集を、Orfeo ではデッサウとアイスラー(!!)の単体アルバムをリリースするなど歌曲方面での活躍もめざましいあの名匠ヘンシェル、今回の曲目はなんとシューベルトの向こうを張るドイツ・リートの最重要作曲家、かのマーラーの同時代人フーゴ・ヴォルフの最重要曲集『メーリケ歌曲集』という王道中の王道。昨年ウィーンで行われたライヴで、大小さまざまな45曲もの歌曲を変幻自在、艶やかに歌いこなしてゆくヘンシェルの歌声は、温もりあり、静かな凄みあり、たおやかな流れのなかで実にドラマティック——歌曲はひとつひとつに小宇宙があるもの(とりわけ、ヴォルフならではの珠玉の傑作群は!)と思いきや、リサイタルの流れがこれほど音盤の上でも有効とは!と驚かされてしまいます。ライヴ収録ならではの、いわば小劇場でのモノドラマのような鑑賞体験...ウィーンにありながらピアノはブリュートナー、その独特の味わいあふれる音色を活かした伴奏者シュヴィングハンマーのピアニズムも絶妙です!

GRAMOLA

GRML 98824
(国内盤)
\2940
シューベルトの「秋」…楽興の時、即興曲集、グラーツの舞曲
フランツ・シューベルト(1797〜1828)
 1. 楽興の時 D780
 2. 四つの即興曲 D935
 3. グラーツのワルツ12 編 D924
 4. グラーツのギャロップ D925
シャルロッテ・バウムガルトナー(p/ファツィオーリ)
うつくしい晩秋の紅葉——ジャケットの勝利? いえいえ、選曲と演奏が、これまた絶品!オーストリアならではの伝統を見つめつづける本場の名手バウムガルトナーが艶やかに綴るのは、秋にぴったりの響き=シューベルトの人生の秋を彩った名曲・秘曲。音楽大国オーストリアの伝統を「いま」に伝える、この国の楽壇の最前線で活躍する気鋭奏者たちを次々と紹介してくれるGramolaレーベルは、ハイドンやモーツァルトともひとかたならぬ関係のある聖シュテファン大聖堂のすぐそば、ウィーンの観光名所でも特に重要な拠点のひとつグラーベン広場に、かれこれ1世紀近く店を構えている老舗レコード店がその母体。とにかく続々と注目アイテムを出してくるあたり、この音楽都市の老舗らしいネットワークの確かさを感じずにはおれませんが、そんな生粋のウィーンのレーベルから、深まりゆく秋にしみじみ聴きたいピアノ録音が届きました。原題に「シューベルト・秋の手紙」とあるこのアルバム、何はともあれ、ジャケットに掲げられた紅葉の森を描いた油彩画の美しさがあまりにも印象的で、担当は早くサンプルが届かないものかと真夏の折から気にしていたアイテムなのですが、その音楽内容を耳にしてみて、あらためて「これは純粋に“音”としても絶美の秋そのものだ」と、深い感慨を抱きました。そのタイトルから推察されるとおり、本盤に集められているのは、シューベルトが苦難の晩年へと至る直前、あの『冬の旅』を作曲する少し前の「人生の秋」にさしかかっていた頃の作品ばかり。1827 年、ベートーヴェンの逝去に際し「彼の後を追う者に乾杯!」との言葉をあげ、自身これまでになかったほど創意の深まりを見せていったのに、翌1828 年の秋(そう——まさに晩秋の入りです)に31 歳の若さで亡くなってしまったシューベルト。どんなに愉悦あふれる響きを綴っていても、必ず一抹の悲哀が折々に美しい陰翳を添えずにはおかないその晩期の作品のなかでも、本盤に選ばれた傑作『楽興の時』とD935の方の『即興曲集』は、彼がピアノ独奏のために書いた最も叙情的な瞬間をいたるところに含む傑作ぞろい。さらに録音機会の少ない「グラーツのワルツ集」と「グラーツのギャロップ」は、ウィーンの南、スロヴェニア国境にほど近いオーストリア第二の都市グラーツ(といってもこじんまりと美しい小都市ですが——ご存知、巨匠カール・ベームの故郷でもあります)にいた友人宅に招かれたさいの曲で、本来的には踊りを愉しむための娯楽音楽だったのでしょうが、あまりにも切なく心そそる瞬間がいたるところに影を落とすあたり、やはり晩年のシューベルトならではの美質がありありと反映されていて、息をのむばかりです。そうした感慨はしかし、それらを俗っぽい感傷だけに堕させず、一貫して高雅な響きのなかに結晶させてみせる演奏者の卓越した技量あればこそ。そう、弾き手のシャルロッテ・バウムガルトナーはウィーン生まれのウィーン育ち、この音楽都市ならではのリズムやニュアンスの妙を肌に刻んだ本場の名手!おそらく本番中最も有名な『楽興の時』第3曲の舞曲的リズム、即興曲第3番(変奏曲)のリート的歌心など、彼女の身に流れる「血」が作品解釈に比類ない個性と確かさを作る局面も続々。確かな本場直送の名演、ジャケットも本当に美しく、贈り物にもぴったりです。

INDESENS!

INDE020
(国内盤2枚組)
\4515
フローランス・ドラージュ(p)/
コルトー最後の門弟と、コルトーのピアノ
【Disque I】
スタインウェイD91814(1896/旧・コルトー所有)
 ショパン(1810〜1849)
  ①即興曲第1番op.29
  ②同 第2 番op.36 ③同 第3 番op.51
  ④幻想即興曲op.66
 シューマン(1810〜1856):
  ⑤子供の情景op.15
 シューベルト(1797〜1828):
  ⑥即興曲集D899
 フォーレ(1845〜1924):
  ⑦ピアノ小品op.84-5
 ショパン(1810〜1849):
  ⑧ワルツ第5番op.42
  ⑨同 第6番op.61-1 ⑩同 ホ短調(遺作)…録音: 2009年9月
【Disque II】スタインウェイD499495 (1986)
 J.S.バッハ(1685〜1750):
  ①半音階的幻想曲BWV903
 リスト(1811〜1886):
  ②愛の夢 第3番
 ワーグナー(1813〜1883):
  ③黒鳥館に到着して
  ④アルバムの一葉(ベッティ・ショット夫人のために)
  ⑤『タンホイザー』〜星空のロマンツェ(リスト編)
  ⑥『さまよえるオランダ人』〜亡霊たちの合唱(リスト編)
  ⑦『トリスタンとイゾルデ』〜イゾルデの愛の死(リスト編)
 フォーレ(1845〜1924):
  ⑧即興曲第3番op.34
 ラヴェル(1875〜1937):
  ⑨逝ける王女のためのパヴァーヌ
  ⑩噴水
 ドビュッシー(1862〜1918):
  ⑪『映像 第1集』〜水の反映
  ⑫『前奏曲集 第2集』〜前奏曲12番「花火」…録音:2009年3月
フローランス・ドラージュ(p)
ピアノの神様・コルトー最後の弟子が21世紀に伝える、フランス・ピアニズムの真髄——
コルトー自身が弾き込んだ、1896年製(ドビュッシーさえまだ若かった頃!)のピアノと現代のスタインウェイによる演奏で、えもいわれぬ薫り高い響きが「今、ここ」に広がる...!
アルフレッド・コルトー...あらためて紹介するまでもない、20世紀フランス最大のピアニスト。ミスタッチだらけの晩年の録音ばかり残っているというのに、いまだに「最高のショパン弾き」の座を不動のものとし、21世紀の今なお音楽通・批評家たちが絶賛してやまないピアノの神様。そのコルトーが生涯の最後に出会い、ただちにその才能を見抜き、自分の持てる全てを教え込んだピアニストが、21世紀になお現役でピアノを弾いていたとしたら?しかもこれまで録音を残さず、ヨーロッパ外では殆ど知られぬまま...?「管の国」フランスを代表する最前線の管楽器プレイヤーたちの名演を次々と録音してきたIndesens!レーベルの主宰者は、実は「フランス人演奏家たちの歴史的録音」のマニアでもあるそうですが、今度のこの新譜は歴史的録音ではなく、この「コルトー最後の門弟」フローランス・ドラージュの、歴史的名器を交えての完全新録音なのです。ドラージュは当初パリ音楽院にいて、フルトヴェングラーの共演者として名高いピアニスト、イヴォンヌ・ルフェビュールに師事していましたが、彼女があるときエコール・ノルマル音楽院のコルトーのところへこの若い天才を連れて行き、リストを弾かせてみたところ、コルトーはただちに魅了され、その場で門弟に迎えます(解説書(全文訳付)にはその経緯や、彼女がコルトーから何を叩き込まれたかについて、きわめて示唆に富んだ話題が満載です)。しかも、コルトー亡き後は(これまた日本で根強いファンの多い)天才的リスト弾きのジェルジ・シフラが次なる師匠に——かくてフローランス・ドラージュは、コルトーのもとでショパン特有のルバートやバッハの素晴しさ、あるいはフォーレやラヴェル、ドビュッシーなどポスト・ワーグナー世代のフランス近代音楽の魅力を発見するとともに、ハンガリーからパリに来て世界的名声を馳せたシフラの門下で「さりげない超絶技巧」にさらなる磨きをかけた、偉大な時代の空気を今に伝える名手なのです。このアルバムはCD2枚組、片方はコルトー自身が生前弾いていた1896 年(つまり、サティやドビュッシーがまだ若かった頃!)のスタインウェイ、片方は1986 年つまり現代のスタインウェイ(いずれも2009 年録音)による演奏なのですが…聴き始めれば必ずや1枚では物足りなくなる、魅力たっぷりのトラックの連続!古いピアノならではの低音の柔らかさ、高音域の眩し過ぎない煌びやかさがえもいわれぬ美を醸し出す1 枚目の後、何がこのピアノそのものの魅力で、何がこの人のピアニズムだったのかはCD2 で明らかに。コルトーが熱烈に愛したワーグナーの秘曲、コルトー流を彷彿させるショパン、バッハやラヴェルなどの注目録音...正直、これだけ聴き所の詰まったピアノ盤はめったに出ないと思います。読み物も充実した“幻の”リリース、ぜひ今を逃さず入手を!
INDE025
(国内盤・2枚組)
\3780
トランペットとオルガン、二重奏の可能性
《Disque I》
 ①トランペット・ヴォランタリー(クラーク)
 ②アヴェ・マリア(バッハ/グノー編)③G線上のアリア(バッハ)
 ④コラール「主よ、人の望みの喜びよ」(バッハ)
 ⑤管弦楽組曲第2番BWV1067より ロンドとバディヌリ(バッハ)
 ⑥アヴェ・ヴェルム・コルプス KV618(モーツァルト)
 ⑦アニュス・デイ(ビゼー)⑧天使のパン(グノー)
 ⑨黒人霊歌2題「アメイジング・グレイス」「ノーバディ・ノウズ」(エスケシュ編)
 ⑩クリスマス・メドレー(エスケシュ編)
 ⑪無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番BWV1004より
  アルマンド(バッハ)
 ⑫無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番BWV1001より
  プレスト(バッハ)
《Disque II 》
 ティアリー・エスケシュ(1965〜)
  ① 舞踏幻想曲(タンツ・ファンタジー)
 イヴァン・イェフティチ(1947〜)
  ②パッサカーリャのように アンドレ・ジョリヴェ(1905〜1974)
  ③バロック風アリオーゾ ニコラ・バクリ(1961〜)
  ④トランペットとオルガンのための幻想曲 作品48
 アンリ・トマジ(1901〜1971)⑤クスコの聖週間
 ⑥『サルヴェ・レジーナ』によるグレゴリオ聖歌風変奏曲
 ※①・②・③・④の間、⑤・⑥の間、⑥の後にティアリー・エスケシュの
 オルガン即興演奏あり(各1分半〜5分程度)
エリック・オービエ(トランペット)
ティアリー・エスケシュ(オルガン)
フランスは「管楽器の王国」にして「オルガン大国」——フランス楽壇揺籃の地、パリ・聖エティエンヌ・デュ・モン教会を舞台にくりひろげられる、巨匠ふたりの最上級二重奏!1枚目はポピュラー系、2枚目は超・硬派路線。音楽性はいずれも極上、贅沢な2枚組です「管楽器の王国」フランスの「いま」を世に伝えるIndesens!レーベルは、この国を代表する現代最高のトランペット奏者エリック・オービエが絶対の信頼を置いていることで有名——ジョリヴェやトマジといった、一見売りにくそうな近現代作曲家ばかりを集めた協奏曲アルバムさえ、好調な売れ行きをみせてしまうのがこのレーベルの侮りがたいところでございます(同時に、通念や先入観にとらわれない、管楽器マーケットならではの開かれた市場特性も感じ取れる売れ方ではありましょう)。さて、そんな秀逸管楽器レーベルIndesens が新たに世に問うのは、ある意味で本物のトランペット奏者だけが許された特権的な演奏形態、教会のパイプオルガンとの二重奏!オービエの師匠モーリス・アンドレと大御所マリー=クレール・アラン、あるいは名手ホーカン・ハーデンベルガーと巨匠サイモン・プレストン…とこの二重奏では驚くべき顔合わせでの名盤が時代ごとに登場していますが、今回のアルバムはいわば21世紀フランスを代表する天才二人の、そうした名盤群に連なる新たな傑作と言えるでしょう!というのも本盤、CD1枚ずつが別々のコンセプトで制作されていて、1枚目は「トランペット・ヴォランタリー」やクリスマスもの(もうすぐそんな季節ですね…)、バッハの編曲などイージーリスナー系の曲目を史上最高の演奏で聴かせる内容、2枚目はそれと打って変わって、近現代の秀逸な二重奏作品を、オルガンの即興演奏を間にはさみながら演奏してゆく…という実験的な試みを最上のかたちに結実させた内容、つまりこれ1セットで「トランペット+オルガン」の二重奏の可能性をことごとく汲み尽くす内容になっているのです!なにしろ天才オービエのパートナーは、即興演奏の達人にして自らフランス具象派の作曲家としても現代最高峰に位置する名匠、ティアリー・エスケシュ!彼自身の作品も含め、この編成がいかに柔軟な表現力に富んだものかを、極上の演奏でじっくり味合わせてくれる1作になっているわけです。

MELOPHONE

MEPH004
(国内盤)
\2940
バッハとホ短調 〜トリオ・ソナタ連作シリーズ1〜
 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
  ①前奏曲とフーガ イ短調 BWV543
  ②主なる神、今ぞ天の扉を開きたまえ(イ短調)BWV617
  ③イエスはわが喜び(ホ短調)BWV713
  ④オルガン独奏によるトリオ・ソナタ ホ短調 BWV527
  ⑤前奏曲 ロ短調 BWV869(平均律クラヴィーア曲集第1巻より)
  ⑥イエス・キリスト、我らが救い主(ホ短調)BWV665
  ⑦最愛の神にのみ統べられし者みな(イ短調)BWV642
  ⑧われ心より希わん(ロ短調)BWV727
  ⑨主なる神、汝われを憐れみたまえ(ロ短調)BWV721
  ⑩前奏曲とフーガ ホ短調 BWV548
国 分 桃 代 (オルガン)
使用楽器:サン=ルマクル教会(ベルギー南部スパ)のトマ・オルガン
演奏家が、強い音楽愛とともに接する作品こそ、おのずと引き込まれる演奏になる。芸術都市ブリュッセル、フィニステール聖母教会で正規奏者をつとめる名手がいま満を持してバッハと対峙!選曲の妙、銘器を自ずと歌わしめる感性、何と豊かな充実度…いかなる楽器の演奏家にもまして、オルガン奏者たちのバッハに対する思い入れは強いもの—— 弾き手の気持ちが強まる作品の演奏でこそ、作品の美質が最も輝くのでは、と常々思っていましたが、ベルギーのMelophone レーベルから届いたこの美しい紙ジャケット盤を聴いていて、あらためてその実感を強くしました。バッハの作品だけを収録したオルガン盤は数あれど、気負いまくって全曲録音というのではなく、また単に弾きたい曲だけを集めた単発アルバムでもなく、CD1枚ごと、バッハが6曲残した「オルガン独奏によるトリオ・ソナタ」の1曲ずつを核にプログラムを考え、6枚シリーズにする…という制作規模で、聴き手に過度の覚悟を強いることなく、安心してバッハの音楽に浸れる場(アルバム)を作ってくれたのは、ブリュッセルを拠点に活躍を続ける日本人オルガン奏者、国分桃代。ヨーロッパきっての諸芸術の中心地のひとつ、ブリュッセルの茶屋町か表参道かといったショッピング街・ヌーヴ通りの歴史あるフィニステール聖母教会で、グザヴィエ・ドゥプレ氏と夫婦で正規奏者をつとめている名手。今回はスパ(ベルギー南部にあるヨーロッパ屈指の温泉地…要人たちがヴァカンスを愉しむ保養地として、ブラームスが活躍したドイツのバーデンバーデンなどと同じく文化都市として栄えてきました)のサン=ルマクル教会での演奏です。演奏楽器を建造したのは、隣のオランダやドイツと並んで、すぐれた職人の多い国ベルギーで活躍するオルガン建造家、ドミニク・トマの工房(日本でも比較的有名なベルギービールの醸造で名高いレフ修道院のオルガンを建造した工房です)。そしてこのオルガンの持ち味は、プログラムの前・中・後に三つの大作を配し、その間に幾つかのコラール楽曲を織り交ぜた多彩な演目を通じ、じっくり引き出されてゆくのです。楽器の美質、作品の美質…そう、最初に書いた「弾き手の気持ちが強まる曲の演奏でこそ」とは、この点にこそ言える部分なのだと。彼女の演奏は、最初の1音目から聴き手を圧倒したりするものではありません。1小節ごと、1曲ごと聴き進めるうちに、その音楽や楽器の音色に引き込まれてゆく——演奏はしだいに静かに白熱していって、トリオ・ソナタの全体像が現れる頃には、その堂々とした響きが心底心地よくなるほど、聴き手の心も音楽になじみ、演奏者とともに我知らず、さらに音楽に没入してゆく。核となるのは、このソナタのホ短調という調性…他も(みなそこから近い調とはいえ)全て短調の作品なのに、なんと寛いで音楽に浸らせてくれるのでしょう!美食や美術と同じく、ベルギーは音楽でも「何気なく最上質」を送り出してくれるのですね。

PAN

PC10219
(国内盤・2CD)
\4515
J.A.シュテファン 驚くべきウィーン古典派の名匠
 〜フォルテピアノのための作品集〜
ヨーゼフ・アントン・シュテファン
(ヨセフ・アントニーン・シュチェパーン 1726〜97):
 ①ディヴェルティメント(ソナタ)変ホ長調 op.1-6
 ②ソナタ 変ホ長調 ③ソナタ op.3/II-1 ④ソナタ ト長調
 ⑤カプリッチョ 第5番(ハ短調/ト長調)⑥ソナタ変ロ長調
 ⑦カプリッチョ 第4番(イ長調)⑧ソナタイ長調
 ⑨カプリッチョ 第3番 ト長調
 ⑩ソナタ 変ホ長調 ソナタ ト長調/ト短調 op.3/I-1
エドアルド・トルビアネッリ(フォルテピアノ)
この名匠を知らずして、ウィーン古典派は語れない! おそらく鍵盤書法にかけてはハイドンもモーツァルトも、この先輩作曲家の“二番煎じ”とさえ言えるのでは——名手シュタイアーも一目置いた驚くべき境地を、縦横無尽のシュタイン・ピアノ演奏で!そもそも「ウィーン古典派」といえば、なんだかモーツァルトやハイドン、ベートーヴェンらのほかは「聴く価値がない」というような認識が広まっているようですが...いやいやいや!なにしろモーツァルトが飽きられてしまうくらい熾烈な競争社会になっていた18 世紀ウィーンの楽壇で、彼ら以外の作曲家たちがみーんな低レヴェルだったわけがありましょうか、と。ウィーンに限らなくても、たとえばスウェーデン宮廷には天才クラウスが、パリにサン=ジョルジュが、シュヴェーリンにロゼッティが...と、ヨーロッパ中に「21 世紀の日本でもマーケッタブルな古典派作曲家」が続々いるところ、「モーツァルトやハイドンを育てたウィーン」というタグで絞り込んだだけで、日本人が好きにならないはずのない名匠が他にも見つからない筈はないのです。熱心な古典派ファンの方々もその点はすでにお気づきでしょう——ヴラニツキー、ディッタースドルフ、クロンマー...そしてその極めつけが、本盤のシュテファンという人なのです。シュテファンは1726 年チェコ生まれ、ハイドンより6歳年上の作曲家——チェンバロや初期のピアノの演奏に長け、師匠ヴァーゲンザイルの手引きでウィーン皇室にも出入りできるようになり皇室音楽家となりました。1775 年に眼を患い失明寸前の状態になってしまい、職務を辞さなくてはならなかったにもかかわらず、皇室は彼に年金を送り続けたといいますから、彼がどれほど高く評価されていたかも自ずと知れようというもの。しかしその評価は、私たちも彼の作品に触れてみればたちどころにわかること——意外と知られていない古典派の名匠たちを次々と紹介してきたTELDEC 時代のコンチェルト・ケルンも、かの名手アンドレアス・シュタイアーをソリストに迎えてのフォルテピアノ協奏曲集で、モーツァルトの仇敵(?)サリエーリの協奏曲2曲とあわせ、このシュテファンの異形の協奏曲を収録していたものですが、モーツァルトもかくや、というほど実に自然にして艶やかな歌心、ハイドンの手法を上回ってみせる展開の意外さ(むしろC.P.E.バッハ/W.F.バッハ風?)はこのアルバムの独奏曲群で、よりいっそう明確に示されるのですから感動です! 独奏曲だからこそ、ひたすら深められる小宇宙——この境地は、18 世紀の(聴きやすい)センスをまとったベートーヴェン、とさえ呼びうるかもしれません。扱いづらいシュタイン型のフォルテピアノから驚くべき変幻自在の音を紡ぎ出してみせるのは、これまでもPanClassics でクレメンティ社やスタインウェイ初期などの難物ピアノを艶やかに弾きこなしてきた才人、トルビアネッリ!解説も充実(日本語訳付)、異能の名匠をすべからく紹介してくれる絶妙の逸品です!

PHI

LPH001
(国内盤)
\2940
マーラー:交響曲第4番 フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮
シャンゼリゼ管弦楽団(古楽器使用)
ローズマリー・ジョシュア(ソプラノ)
「古楽器演奏」が、ついにマーラーにまで...!よく見れば、ヘレヴェッヘと精鋭集団!!
ついに立ち上がったヘレヴェッヘ自主レーベルPHI(フィー)、第1弾はマーラーから。冒頭から桁違い、経験豊かな名歌手が盛り上げるフィナーレまで、終始聴きどころ満載!アーノンクール最後の来日が「あの巨匠の!」と盛り上がるこのご時勢、またアバドが古楽器オーケストラを率いる昨今、さらにガーディナーがブラームスの交響曲第4 番を脱・構築してみせる21 世紀——そこで静かに?独自の路線をじっくり煮詰めていたのが、harmonia mundi レーベルの黄金時代をウィリアム・クリスティやルネ・ヤーコプスと盛り上げてきた古楽合唱指揮者、フィリップ・ヘレヴェッヘ!古くはレオンハルトとアーノンクールのバッハ・カンタータ全集という、古楽史上の歴史的録音にも合唱指導で参加していたこの大御所、近年はharmonia mundi でブルックナーを古楽器録音、またPentatone やTalent といった地元ベネルクスの小規模レーベルで、王立フランデレン(ロイヤル・フランダース)管を率いて近代作品やベートーヴェン(!)を録音してみたり、その合間にルネサンスの大家ラッススの本格派アルバムを制作してみたり…と、メジャーレーベルとは離れた場所で驚くべき快進撃を続けているこの巨匠が、ついに自ら主宰する古楽器オーケストラ、シャンゼリゼ管弦楽団とともに自主レーべル「PHI(フィー)」を立ち上げました!シャンゼリゼ管弦楽団は、古楽器(作曲当時の状態にある楽器)でベートーヴェン以降のロマン派音楽を演奏するという挑戦を、前世紀からいち早く続けてきた充実団体。当初の録音にはメンデルスゾーンやベルリオーズら管弦楽法の改革者たちの作品が並び、近年では一連のブルックナー交響曲シリーズ、あるいは今年初頭にNaive から出たコパチンスカヤとのベートーヴェン・ヴァイオリン協奏曲など、折々に注目度の高いリリースを続けてきました。Harmonia mundi でマーラーの『少年の不思議な角笛』を古楽器録音したのが4年前——満を持して、この「第4番」から本格的に交響曲録音に乗り出します。1900年という時代の節目に完成をみた、終楽章に独唱が入るこの作品を最初に持ってきたのは、ある意味象徴的...ヘレヴェッヘはオペラこそ振らないものの、合唱畑出身ということもあり、声楽作品にあざやかな適性を示す人でもあります(独唱はヤーコプスやクリスティとの共演多数、ストラヴィンスキーやフンパーディンクなどでも確かな実績を残す名歌手)。サンプル未到着ですが、制作元から頂いたプロモーション動画(配信メール本文にURL を記載いたします)によれば、そりの鈴を思わせるあの冒頭部分から何やら明らかにユニークな雰囲気が...木管・金管とも見せ場が随所にあり、弦の響きのニュアンスいかんで印象もずいぶん変わってくるこの作品の「真髄」を、歴史的検証をへた独特の金管楽器、キィシステムが微妙に異なる100 年前の木管楽器、あるいは弦、あるいは打楽器が、どんな姿で示してくれるのでしょう?一つだけ言えるのは、ヘレヴェッヘという人が単なる学者ではない、桁外れの音楽性を誇る天才指揮者だという事実——周到な音楽史的考証が確かな感動へと変わる瞬間を、「送り手」側のメッセージを細やかに伝える解説の日本語訳(今後も同レーベル発売商品には徹底してゆきます)とともに、じっくりと。期待値満点の新レーベルです!(マーキュリー)

RAMEE

RAM1002
(国内盤)
\2940
モーツァルト(1756〜91):
 1.クラリネット、ヴィオラと
  ピアノのための三重奏曲変ホ長調 KV498「ケーゲルシュタット」
 2. 幻想曲 ハ短調 KV475(フォルテピアノ独奏)
 3. 大ソナタ イ長調 * 〜1809年出版 二重奏ソナタ版
 (原曲:クラリネット五重奏曲 KV581)
トリオ・ファン・ヘンゲル(古楽器使用)
ニコル・ファン・ブリュッヘン(cl/バセットcl*)
ジェイン・ロジャーズ(va)
アンネク・フェーンホフ(fp)
「誰も知らなかった素敵な音」を見つけてくるセンスは、超一流。Ramee レーベルはメジャー作曲家の有名作品でも、こうやって意外な「版」を見つけてきたり...古楽大国ベルギー最前線の名手たちが、モーツァルトの「当時の息吹き」を典雅に甦らせる主宰者自らがバロック・ヴァイオリン奏者で、ラ・プティット・バンドやリチェルカール・コンソートをはじめとする古楽バンドで活躍しながら、その明敏な音楽性と学究的見識、そして比類ない「耳」をもって録音技師もつとめている洗練された古楽レーベル、Ramee(ラメー)。主宰者自らが古楽に深く通暁していることもあり、多くの人が気づきもしなかったような音楽史上の「知られざる響き」を、明瞭なアルバム作りでさりげなく拾いあげてくれるセンスは絶妙で、近年は日本でもクラシック・ファンにとどまらない「別の層」からのニーズも静かに増えつつあります。そのRamee が近年、にわかにメジャー系作曲家の録音を出すようになってきました——それも、今書いたような「知られざる響き」への適性や入念な音楽学知識がぞんぶんに生かされた制作内容で! 今回の新譜の主役はモーツァルトで、彼が活躍後期にとりわけ愛したクラリネットのための作品集…とここまでは既に名盤あまたな領域ですが、まず注目すべきはその選曲。「ケーゲルシュタット・トリオ」は、古楽器で録音された例が驚くほど出ない盲点的曲目(現役盤ありましたっけ?)で、ベルギー新世代のホープたちによる磨きぬかれた解釈の国内盤登場は、その意味で非常に嬉しいところ。フォルテピアノの独壇場となるKV475の幻想曲をはさみ(モーツァルト後期の「光」と「影」を浮き彫りにする名品ですね)、併録はクラリネット五重奏曲…作曲家が意図した使用楽器である、通常より低い音の出るバセット・クラリネットを使っているところまではまだ競合盤もありますが、ここで演奏されるのは、作曲者歿後急速に高まったモーツァルト人気を見越し、1809 年、ウィーンのアルタリア社(ハイドン作品を多数出版している楽譜出版社)が刊行した「クラリネットとピアノのための大ソナタ」としての編曲版なのです!音楽内容は逐一原作と同じ、今とは違う当時のクラリネットを念頭に置いたのか、バセット・クラリネットでしか出せない低い音まで忠実に写してある(ちなみに、同時代に出版された本来の五重奏曲版の楽譜は、そうした局面を通常のクラリネット用に書き換えてあるのだとか)——音楽学的にも注目度の高い版ですが、そんなことより何より大事なのは、彼らの演奏解釈が実に美しく鮮やかなところ。あの幻想曲の独特な終止のあとに続き、原作では弦楽器だけで奏でられる冒頭の下降音型が、フォルテピアノ独奏の思わぬ美音でしっとり典雅に始まるところから心をひきつけられ、その後に立ち現れるバセット・クラリネットの素朴にしてニュアンス豊かな美しさ…全く別の魅力を放ち始めるこの版には、耳の肥えきったモーツァルト・ファンも感慨を新たにするでしょう。生音を生かした録音の妙もあり、美麗なパッケージを眺めつつ、純粋にロココの古楽器の典雅さを(絶妙の傑作演目で)堪能できる美盤でもあります。
RAM1001
(国内盤)
\2940
バッハ『鍵盤練習曲集 第2巻』
 +前奏曲、フーガとアレグロ/半音階的幻想曲
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)
 1. イタリア協奏曲 BWV971(鍵盤練習曲集第2巻)
 2. フランス序曲 BWV831(鍵盤練習曲集第2巻)
 3. 前奏曲、フーガとアレグロ BWV998
 4. 半音階幻想曲 BWV903
パスカル・デュブリュイユ(チェンバロ)
バロック奏法における“修辞法”のプロ、気鋭デュブリュイユの『パルティータ』に続くバッハ!バッハ鍵盤芸術の肝、2段鍵盤チェンバロのあり方を最も端的に示す2傑作のほか、それぞれに重要な二つの傑作も収録——自然にして雄弁、飛びぬけた名録音です!レーベル主宰者が録音技師を兼ねており、さらにその主宰者自身もバロック・ヴァイオリン奏者だったという「古楽のツボ」を押さえまくったレーベルRAMEE は、これまで徹底してメジャー路線を離れての秀逸な「知られざる音の探究」に邁進してきましたが、ここ近年になって、そうした経験を十全に活かしたうえでの王道路線レパートリーの録音が増えています。もうすぐ日本リリースとなるヴィオロンチェロ・ダ・スパッラによる『無伴奏チェロ組曲』(RAM1003・演奏はドミトリー・バディアロフ!)もそのひとつですが、なんと今回またしてもバッハの録音が——それも、演奏者はかつて同レーベル初の2枚組アルバムとなった2008 年作『六つのパルティータ』(RAM0804)で、周到そのもののバロック修辞法解釈を披露、この難曲に新たな傑作録音をつけ加えた気鋭奏者パスカル・デュブリュイユ!とくれば、これはもうシーンに敏感な古楽ファンなら注目せずにはおれないところ。しかし何より嬉しいのは、その選曲でしょう——さきの録音でデュブリュイユが聴かせた『六つのパルティータ』は、バッハが齢40を数えた頃、鍵盤楽器を自ら奏でる作曲家として練り上げてきた技芸を集大成すべく、鍵盤作法のすべてを周到に楽曲のなかに織り込んだ作品集のかたちで続々出版されていった『鍵盤練習曲集』なるシリーズの第1巻をなすものでしたが、ここに録音されているのは、その次に出版された『第2巻』の収録作2曲(イタリア協奏曲/フランス序曲)と、単独曲ながらそれぞれに充実した内容ゆえ、演奏機会も少なくない名品「半音階的幻想曲」BWV903 と「前奏曲、フーガとアレグロ」BWV998。特に後者はチェンバロ用の手稿譜も数多く残っているにもかかわらず、リュートの音に憧れ作曲した音楽、という触れ込みゆえ、ガット弦を張った特殊なリュート風チェンバロ(ラウテンヴェルク)やリュート、ギターなどで演奏されることの多い傑作で、通常のチェンバロによる録音という意味でも嬉しい収録となっています。アルバムの核をなす『鍵盤練習曲集 第2巻』の2作は、当時のヨーロッパ芸術音楽における二大潮流だったイタリア様式とフランス様式をテーマに、イタリア=協奏曲、フランス=序曲(つまり舞踏組曲)とそれぞれを代表する器楽形式を用いながら、2段鍵盤のチェンバロで両鍵盤を使い分ける演奏スタイルをじっくり学べる音楽に仕立てたもの。特に「イタリア協奏曲」は、弦を2列鳴らして大きな音量を得られるほうの鍵盤を大合奏に、また弦を1列だけはじく側の鍵盤をソロに見立て、チェンバロ1台で協奏曲を模した作法が絶妙な1編として有名です。もう片方の「フランス序曲」は古くから有名な曲のわりには録音が散発的にしか見当たらない充実作で、バッハの鍵盤曲でも特に長大な部類に属する一編です。演奏者デュブリュイユはケネス・ギルバートの門下生で、バロック特有の「ことばはこび」や作品にひそむ隠れた数理的メッセージを読み解く天才として知られる気鋭奏者——バッハの書法をどこまで見通せるか?が演奏の面白さと深さをこれほど左右する曲目において、彼ほど適任な演奏者はいないだろう、と随所で感服せずには周到解釈。自然派録音も絶妙で好感度大!です。

RICERCAR

MRIC207
(国内盤)
\2940
アルノルドゥス・デ・ランティンス
聖母のミサ「言葉は肉となり」
 〜15世紀、初期ルネサンスの降誕祭ミサ〜
アルノルドゥス・デ・ランティンス(アルノールド・ランタン ?〜1452):
 ①聖母マリアのミサ「言葉は肉となり」(ミサ・ウェルブム・インカルナトゥム)
 ②モテトゥス「おお、いと麗しき婦人」
 ヨハンネス・ブロサール(1400頃〜1455):
  ③モテトゥス「めでたしマリア/おおマリア」
  ④モテトゥス「天の皇后」
 ヨハンネス・セザリス(15世紀中盤に活躍):
  ⑤モテトゥス「美徳あふれる炎に/
   ゆえに喜ばしき御生誕」
 ※②〜⑤は①の前後および曲中で演奏、
   他にグレゴリオ聖歌によるミサ固有文含む
アンサンブル・カピーリャ・フラメンカ
アンサンブル・プサレンテス、
アンサンブル・クラーリ・カントゥリ
今年のクリスマスは、これで静かに、清らかに——誰が聴いても、この美には抗えないはず!フランドル派の祭壇画に描かれた、美しいマリア像のよう... 「本物」だけが放つたとえようもない「調和の美」。古楽大国きっての声楽集団による、ア・カペラ歌唱の白眉!1年のうちで、もっともア・カペラの響きが似合う季節——クリスマス。弊社がRicercar を取り扱い始めて以来、並居るクリスマス新譜に押されて?紹介できずにいた同レーベル屈指のルネサンス・アルバムを、今年こそはちゃんと国内盤リリースいたします!演奏はカピーリャ・フラメンカ——近日あらためて最新新譜もご紹介いたしますが、ヘレヴェッヘのコレギウム・ヴォカーレ・ヘント、あるいは老舗ナミュール室内合唱団、ウェルガス・アンサンブル…と少数精鋭の古楽合唱グループには枚挙に暇がない古楽大国ベルギーにあって、このグループが放つ独自の存在感、15 世紀ルネサンス作品を中心とした全くブレのない解釈姿勢は、メジャー系での録音がない(日本的に言えば「輸入盤一辺倒」)にもかかわらず、カルト的ファンが少なくない超・実力派!本盤のプログラムの中核は、ボローニャ市立図書館にある15 世紀ポリフォニー教会音楽の最重要資料のひとつ「Q15 写本」に収録されている、アルノルドゥス・デ・ランティンス(仏名アルノール・ド・ランタン)という作曲家のミサ曲——ワッフルなどの美食でも有名なフランス語圏ベルギーの中心地域・リエージュ地方で活躍した、いわばデュファイやバンショワらブルゴーニュ公国の一派とは異なる「裏ネーデルラント楽派」(?)の名匠で、ミサの各章をひとりの作曲家が通作するという習慣がまだ完全に確立されていはいなかった当時、「グローリア」と「クレド」の章だけをペアにし、両者にメロディなどの連関性を持たせるという独特のスタイルを多用した人でした。しかし、本盤の中核を占めるミサ「言葉は肉となり」は、彼自身の作曲した「おおいとも美しき婦人」というモテトゥスの楽想を全編にあしらって統一を取った、いわゆるパロディ・ミサに近い全5楽章の通作ミサという点で、音楽史的に注目すべき内容になっています。とはいえ学者ではない私たち音楽ファンにとっては、それはすなわち「絶美の本格ア・カペラ古楽歌唱に、少しでも長く浸っていられる」という意味においてこそ重要...とくに本盤での解釈は、単旋律になるグレゴリオ聖歌トラックがところどころ男声ア・カペラの妙なる味わいを引き立たせ、ルネサンスにしては意外なほどメロディラインを高音パートに起きたがる「非常に聴きやすい」ランティンスの美しい音楽をいやがおうにも強く印象づけ、この響きにもっと浸っていたい…と強く感じさせてやみません。これぞ本物、ベルギーの教会にみる美しくも古風なゴシック絵画をそのまま眼前で鑑賞するような、妥協のない美の清らかさ…一味違った極上クリスマス盤

SAPHIR

LVC1092
(国内盤)
\2940
エルネスト・ショーソン(1855〜1899)
 1. ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のためのコンセール 作品21
 2. 果てしない歌 作品37
 3. 弦楽四重奏曲 作品35(ダンディ補筆)
レジス・パスキエ(vn)
フィリップ・ビアンコーニ(p)
サンドリーヌ・ピオー(S)
パリジイ四重奏団
フランス世紀末——繊細と堅固のあいだを逍遥した早世の天才ショーソンの芸術性を、あらゆる角度から示す最後の代表作を、臨みうる最高のキャストで!巨匠パスキエ、名花ピオー...フランス随一の演奏陣だけが辿りつける、この空気!フランス19 世紀末——ワーグナーの『パルジファル』がバイロイトで1882 年に初演され、ドビュッシーの「『牧神の午後』への前奏曲」を発表したのが1894 年、このあたりのフランス音楽といえば、フォーレ、シャブリエ、デュパルク、デュカス...と、繊細をきわめるメロディや色彩感覚豊かな楽器法がドイツ流儀の古典派語法とあざやかに組み合わされた、ほんとうに美しく堅固な作風を誇る、忘れがたい作曲家が数多くいたわけですが、わけてもショーソンはフォーレと並び、ほとんど別格ともいえる存在感を放っているのではないでしょうか。20 世紀に足を踏み込むことなく、1899 年に僅か44 歳で亡くなるまで、彼が残した名品の数々は今もなお、フランス音楽を愛してやまない人たちにとって至高の存在でありつづけています。代表作としては、いわずもがなヴァイオリン音楽の至宝、あの儚げで細やかな「詩曲」をあげるべきなのでしょうが、そのかたわら、バロック音楽からの影響も指摘されながら明らかにフランス近代ふうの美質に彩られた「コンセール」も重要——ヴァイオリン、ピアノ、弦楽四重奏という異色の六重奏編成で描かれる濃密にして明瞭な響きの味わいは、フランス語圏の演奏家でなくては拾いきれない機微にも満ちているようで、既存の名盤群でもやはりフランスの演奏家のものが出色ではありますが、そんな「コンセール」にこのたび、およそ21 世紀の「いま」望みうる最高の面子による録音が届きました!ご覧ください、この面子——来日あまたのフランス・ヴァイオリン楽派の継承者レジス・パスキエに、室内楽がさかんなフランスのシーンで大活躍中のフィリップ・ビアンコーニに、カルテットはほかでもない、Naiveのミヨー全集で大いに存在感をあげた「知る人ぞ知る」最前線の多忙なる超実力派集団、パリジイSQ! さらに何が嬉しいって、本盤は傑作「コンセール」のきわめて濃やかな演奏だけでなく、ショーソン最晩年の何より重要な2作品、つまりこの作曲家の文学愛好気質を如実に伝える「果てしない歌」と、絶筆となったためフランクの一番弟子ダンディが補筆したことで知られる傑作「弦楽四重奏曲」をあわせて収録している、つまりショーソンの室内楽分野における芸術性のすべてが詰まったプログラムになっているという点! もう一度びっくりさせられるのが、何と、この弦楽四重奏が歌声を伴奏するという異色の傑作「果てしない歌」をうたうのが、ここ10 年ほどフランスで最も多忙かつ求められているパフォーマー、サンドリーヌ・ピオーであるという点!誰もがただちに耳を惹かれてしまう真っ直ぐな美声と独特の解釈で、古楽方面でも飛びぬけた実績を残しているこの異才が、恋に破れて身を投げる女性の長大かつ絶美なる歌を艶やかに、迫真の切なさでうたいあげる——圧巻です。「弦楽四重奏曲」における、堅固な形式感覚と繊細な和声センスをよく踏まえたパリジイSQの活躍も鮮烈。そう、ショーソンを知るなら、本盤はもう外せない1枚なのです!

TUTTI

TUT005
(国内盤)
\2940
18世紀トロンボーン協奏曲集
 ヨハン・ゲオルク・アルブレヒツベルガー(1736〜1809):
  1. トロンボーン協奏曲 変ロ長調
 ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1759):
  2. 協奏曲 ヘ短調(アンドレ・ラフォス編)
 レーオポルト・モーツァルト(1719〜1787):
  3. トロンボーン協奏曲 ニ長調
 クリストフ・ヴァーゲンザイル(1715〜1777):
  3. トロンボーン協奏曲 変ホ長調
ジャック・モージェ(アルト・トロンボーン)
ベルティルド・デュフール指揮
イ・ソリスティ・アッズーリ
知ってました? トロンボーン協奏曲は、古典派時代からオリジナルで作曲されていたんです。なのに意外とありそうでなかった「定番傑作を集めた」「スーパープレイヤーによる録音」がここに登場! 「管の国」フランスを代表するモージェが吹く、今後定盤になりそうな逸品。この仕事をしていると時々、予想だにしなかった領域に需要があるものだ…と驚かされることがあります。たとえばある種の合唱作品であるとか、管楽器ものの現代作品(ブラス系など)とか、意外に固定ファンのいる作曲家とか…そうしたものの一つが「バロックから古典派(ないし、マンハイム派など前古典派)のマイナー作曲家による協奏曲集」。そう、協奏曲——交響曲や室内楽曲などとは明らかに一線を画した、数割増のセールスが、ずーっと途絶えない。担当自身も18 世紀モノには目がないので個人的には嬉しい話ではありますが、それにしたって、単体ではセールスを作りにくいマイナー作曲家たちでさえ、オーボエ協奏曲集とかホルン協奏曲集とかでこうして登場すると、単体で出てくるより格段に売れ行きが違ったりするのは不思議だなあ、と。まあ確かにメジャー盤の感覚でも、たとえばハインツ・ホリガーによるオーボエ協奏曲集、ザビーネ・マイヤーのクラリネット協奏曲集、モーリス・アンドレのトランペット協奏曲集、ミカラ・ペトリのリコーダー協奏曲集…と、過去にそれぞれ何種類か同種のアルバムでセールスを作った演奏家たちもいたわけですし、そういったもののクオリティの刷り込みがユーザー様にもあるのかもしれません(何年前だったか、マンハイム楽派の協奏曲シリーズで見過ごしがたく堅調な売り上げをみせた廉価レーベルもありました)。そんなわけで、効率よく曲を集めている現役盤が意外とあるようでない?古典派トロンボーン協奏曲集であるところの本盤には、予想以上に確かな売れ行きが期待できるはず!なにしろ選曲は非常に的確、トロンボーン奏者たちには垂涎の的、古典派時代にソリスト楽器として重用されたアルト・トロンボーンのための協奏曲でも特に重要な作品を集めているうえ、もう少し広めのユーザーさまにも「届く」名前であるヘンデル(気持ち良い編曲です!)の収録も憎いところ。ハイドンの友人でベートーヴェンの先生でもあったアルブレヒツベルガー、かの天才の父親で「おもちゃの交響曲」以外にもこのとおり印象的な佳品多数・のレーオポルト・モーツァルト、あるいはウィーン古典派の先駆者でイタリアでも活躍したらしい重要作曲家ヴァーゲンザイル…この3人の協奏曲はトロンボーン奏者の誰もが憧れる定番名曲群でもありますが、上述のような古典派ファンにも十分訴求する、音楽史的にも意義ある隠れ大家たちでもあるのでした。しかし何より大きいセールス要素は、そのソリストにほかなりません!ジャック・モージェ——「管楽器の王国」フランスの押しも押されぬ大御所のひとり、パリ国立地方音楽院(パリ国立高等音楽院やエコール・ノルマルと並ぶパリ屈指の音楽院で、管楽器の名教諭多し)の重鎮であるほか、日本でも洗足学園で教えていたり、志賀高原サマーミュージックキャンプに登場したり(巨匠エリック・オービエ(tp)との軽く笑いを誘うデュオがYoutube にあり)。トロンボーン関係の方々がピアノ伴奏などで好んで吹く貴重な古典派作品をバランスよく集め、それが単に「集めた」というだけでなく、これほどのスーパープレイヤーの超・名演で聴けるのですから、ブラス関係の方々にも今後は「定盤」として定着しそう。トランペットのアンドレやオーボエのホリガーと違い、この楽器では従来なかった画期的なリリースなのです!

ZIG ZAG TERRITOIRES

ZZT050902
(国内盤)
\2940
C.P.E.バッハ:ヴァイオリンと鍵盤楽器のための二重奏ソナタ集
 1. ソナタ 変ロ長調 H.513/Wq.77
 2. ソナタ ハ短調 H.514/Wq.78
 3. ソナタ ト短調 H.545
 4. ソナタ ロ短調 H.512/Wq.76
アマンディーヌ・ベイエール(バロック・ヴァイオリン)
エドナ・ステルン(フォルテピアノ/ヴァルター・モデル)
いったいアマンディーヌ・ベイエールほど、濃やかで艶やかな情感表現のできるバロック・ヴァイオリン奏者がいま、他にいるでしょうか? その芸風が理想的なかたちで生きるレパートリーといえば、C.P.E.バッハの多感主義様式。フォルテピアノがまた絶妙!アマンディーヌ・ベイエール——Alpha で活躍するエレーヌ・シュミットと同じく、南フランス出身でパリに暮らす「古楽先進国フランス」きってのバロック・ヴァイオリン奏者。かつてはカフェ・ツィマーマンの超・中心的メンバーであり、今ではZig-Zag Territoires を代表するヒットメーカーの一人となっている彼女の重要アルバムは、このレーベルが弊社の取扱となったいま、次々と国内盤リリースして魅力を広めてゆかねばならない...!と考えている次第です(年内に、あと2点の重要リリースをご案内予定)。しかしなにぶんセンスの良いアーティスト選択に長けたZig-Zag Territoires だけに、急ぎ日本でも広く知られてほしい演奏家は彼女だけに留まらず——もうひとり、近日最新新譜(これがまた飛びぬけた異色の名盤...ご期待ください!)を発表する予定の才能豊かなフォルテピアノ奏者、エドナ・ステルンにもぜひ注目していただきたいのです。「フォルテピアノ奏者」と言っても実は現代ピアノにも通暁している彼女はベルギー生まれのイスラエル育ち、この2国をまたにかけながら研鑽を積み、ブリュッセルではアラン・ヴァイスに師事、さらにマルタ・アルゲリッチやクリスティアン・ツィメルマンといった巨星たちとも繁く共演を重ねているそうですが、何はともあれ彼女の個性が最も輝くのはやはり、こうした古典派以前のレパートリーを弾いているときなのだ、と痛感せずにはおれない演奏が、ここで次々と展開されてゆくのです。ご存知、エマヌエル・バッハといえば大バッハの次男で、生前は父親よりも広範な名声を誇った巨匠——「弾き手自身が感動していないのでは、聴き手を感動させることなど不可能だ」と自著のなかで語っている彼のスタイルは「多感主義」と呼ばれ、感傷的なものを愛した18 世紀半ばの人々の心を強く揺り動かしたその音楽は、今なお聴き手の気持ちにしっとり寄り添う魅力を放ってやみません。フルートのための作品が多いため、そして自身が鍵盤演奏法の権威でもあったため、鍵盤奏者やトラヴェルソ奏者は何かと録音してくれるのですが、結構な数が残されているヴァイオリンと鍵盤楽器の二重奏は、録音があるようで意外と出てこない...南仏気質?ゆえか、味わい深い情感表現では他の追従を許さないバロック・ヴァイオリン奏者であるアマンディーヌ・ベイエールの弾き方は、ヴァイオリンと対等のパートナーとして構想されている鍵盤パートの妙(モーツァルトも愛したヴァルター型のフォルテピアノを、なんと流麗・的確に操れるピアニストでしょう…!)とあいまって、弦楽器の豊かな表現というものが、この作曲家の作風と実によくマッチしていることを改めて痛感させてくれ、しみじみ味わい深く聴き惚れてしまう演奏になっています。憂愁鮮やかな短調作品3曲、晴天にもののあわれを想いつつ聴きたい長調のソナタ1曲…とにかく、ふたりとも実に美しい音、絶妙の呼吸感!
ZZT101102
(国内盤)
\2940
シューベルト:連作歌曲集『冬の旅』(全曲) トーマス・バウアー(バリトン)
ヨス・ファン・インマゼール(フォルテピアノ)
巨匠インマゼールのZZT最新録音は、やや“盲点”? 彼の「第九」を始め躍進めざましい古楽歌手トーマス・バウアーとの「冬の旅」! 絶妙のシーズンに登場してくれます。ヴァルター・モデルの銘器を前に、19世紀当時通りの憂愁と詩情がたくみに甦る...!ご存知、シューベルトが亡くなる前の年から綴っていた“畢生の作”たる連作歌曲集『冬の旅』は、『美しき水車小屋の娘』や『白鳥の歌』と並ぶシューベルト3大連作歌曲のなかで、最も注目度の高い傑作——今年もそろそろ、えもいわれぬ美しい孤独感に彩られたこの作品がひときわ似つかわしいシーズンが迫ってきました。自らピアノを愛してやまず、仲間内の舞踏会でも好んでピアノを弾く側にまわっていたというシューベルトが、独奏曲はもちろん歌曲でもピアノ・パートをことさら大切にしていたのは有名な話...というより、彼の歌曲を耳にすればたちどころに理解されるところでしょう。とくに『冬の旅』ではこれまでにもピアーズ/ブリテン、ディースカウ/ブレンデル(ゲルネ/ブレンデルもありますね)、クヴァストホフ/バレンボイム、ボストリッジ/アンスネス...と世界的・歴史的なピアノの巨匠たちが、時代を代表する歌手たちと対等以上のタッグを組み、どこまでも深く聴き込める名録音を次々と残してきたという事実が、そのことを何よりもありありと物語っているわけです。シューベルトに惹かれるピアニストたちは、この連作歌曲を手がけずにはおれなくなるに違いありません——それは、フォルテピアノ(現代ピアノとは違う、18〜19 世紀当時の現存楽器またはその再現楽器)の専門家たちも同じこと。来日間近のA.シュタイアーも、Alpha で活躍めざましいスホーンデルヴルトも、あるいは知る人ぞ知るミュンヘンの才人Ch.ハンマーも、みんなこの曲でかけがえのない名盤を作ってきたわけですが、よもや、Zig-Zag Territoires の看板的存在である大指揮者=古楽鍵盤奏者ヨス・ファン・インマゼールがこの曲を突然リリースしてくれるとは!実はインマゼールはかつて、この曲のフォルテピアノ盤が全くなかった頃、古楽歌手とともに世界初?のフォルテピアノ&古楽歌手による『冬の旅』録音を残しているのですが(Channel Classics/この時の共演はマックス・ファン・エフモント)、なにしろそれは今から20年(!)も前の話。むしろチェンバロ奏者というイメージが強かったであろう当時から今までに、彼は伝説的なモーツァルトの協奏曲シリーズやシューベルトの交響曲、さらにリストの交響詩や後期作品、ドビュッシーやラフマニノフのピアノ曲にチャイコフスキーやラヴェルの古楽器録音に…と実に多くの経験を積んできましたから、古楽奏者としての経験の反映としての「冬の旅」が全く別のものになっているであろうことは容易に想像できます(現時点でサンプルはまだ未到着)。Zig-Zag Territoires の弊社新規取扱スタートと共に店頭を賑わすであろう同レーベルの国内仕様盤(とくに近日ご案内予定のラフマニノフ二重奏曲集、あるいはインマゼール&アニマ・エテルナのラヴェル管弦楽作品集!)や、格好の競合盤となるAlpha のスホーンデルヴルト盤(独唱はテノールで、作曲者自身の指定した調性を遵守)などと展開すれば、ますます脚光を浴びることでしょう!
ZZT101001
(国内盤)
\2940
17世紀イタリア、艶なる二重唱マドリガーレ
 〜モンテヴェルディ、サンチェス、
 ストロッツィ、ロニョーニ…〜
 ①希望は次々潰えるとも(モンテヴェルディ)
 ②恋の竪琴に乗せて(メルーラ)
 ③貴婦人、もしもあなたの心が(モンテヴェルディ)
 ④恋するヘラクレス(ストロッツィ)
 ⑤デ・ローレのマドリガーレ「この別れに際して、なお」によるバスタルダ式演奏
  (ロニョーニ)
 ⑥もうこの星々を見ることも(モンテヴェルディ)
 ⑦略奪者にして暴君よ(サンチェス)
 ⑧お別れです、恋するひと(ヴァレンティーニ)
 ⑨涙が出るほど美しいひと(サンチェス)
 ⑩あなたに口づけをしたいけど(モンテヴェルディ)
 ⑪ひとたびわたしが歌い出せば(ダ・ガリアーノ)
 ⑫永久にとどまれ、平安のうちに(カリッシミ)
ドミニク・ヴィス(C-T)
アニェス・メロン(S)
アンサンブル・バルカロール(古楽器使用)
マリアンヌ・ミュレール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
マルコ・オルヴァ(リローネ)
エリック・ベロック(テオルボ)
ブリス・サイー(オルガン、チェンバロ)
Zig-Zag Territoires…あの名レーベルが、国内盤リリースになります!さっそく届いた最新新譜が、いきなりスーパースターふたりの「夢の共演」による最新盤!!日本でもおなじみ・桁外れの古楽歌手、豪華伴奏陣とのイタリア古楽は「別格」の一言!フランスで「クラシック・インディペンデントCD に革命が起こっている!」とAlpha レーベルが大々的に注目されはじめたのは、21世紀初頭のこと。今や日本でもAlpha はすっかりおなじみですが、当初フランスの大手全国新聞がインタビューしたAlpha 主宰者のジャン・ポール・コンベ氏が、最も気になるライヴァル・レーベルは?との質問に答えて名をあげていたのが、このZig-Zag Territoires。これまで輸入盤のみのリリースだった桁外れの充実盤も入手可となり、また続々と日本語解説付でもお届けしてまいります(益々レパートリー拡充中な名フォルテピアノ奏者=指揮者の名盤群も、3桁数字のついた名アンサンブルの傑作録音群も!)。しかし、まずは続々と届いている新譜リリース情報から「これはまっさきに!」というアイテムがありましたので、一足先にご紹介を——今や古楽界では熱狂的支持者が日本でも続出中、20世紀末のカウンターテナーブーム以来、すっかり大御所になりながら今だ美声を失っていない天才歌手、ドミニク・ヴィス…と、そのパートナーで妙なる歌声を自在に操り、日本にもしばしば教鞭をとりに来日、古楽界にこの人あり・とその名を知らしめてきたアニェス・メロン!かつてharmonia mundi france でクリスティやヤーコプスの指揮するバロック・オペラに無数の名演を生んできたこの二人、双方揃っての録音というのは実に10 数年ぶり!それだけでも話題性十分ですが、さらにル・ポエム・アルモニーク初期メンバーで現在はソロで活躍中の鬼才奏者マルコ・オルヴァ、Ens.クレマン・ジャヌカンの名リュート奏者ベロック、フランス古楽界の大立者ミュレール…と伴奏陣まで精鋭ぞろい!17世紀初頭のイタリアで、多声重唱からソロ重視へと様式が変わってきた頃の傑作マドリガーレ群から、モンテヴェルディの「第7曲集」からの4曲を軸に、歌手二人がきわだつ千変万化の名品群を堪能させてくれます。冒頭トラックから「只者ならなさ」全開、固執低音上での長大な変奏ものも絶妙、全編にわたり圧巻の説得力、においたつような存在感…「歌詞訳」も添えます。じっくり味わって頂きたい稀有の1枚!

ZIG ZAG TERRITOIRES
国内盤再発売

  代理店が変更となったZIG ZAG。今後は国内盤としてリリースすることに。今回紹介の100801と100802は輸入盤未紹介。

ZZT 100801
(国内盤)
\2940
ローゼンミュラー器楽声楽作品集
 〜ヴェネツィアのドイツ人、17世紀末に〜
ヨハンネス・ローゼンミュラー(1619〜1684)
1) 5声のソナタ第10番
2) モテット「もろびと歓呼して神を迎えよ」
3) モテット「神の憐れみが」
4) 4声のソナタ 第7番
5) モテット「天上の魂が」
6) モテット「主が建てて下さるのでなくては」
7) 4声のソナタ 第8番
8) モテット「わたしをお救いください、イエスよ」
1)4)7)『弦楽器その他の楽器によるソナタ集』
      (1682年ニュルンベルクにて出版)
2)3)5)6)8) ベルリン図書館所蔵の手稿譜より
アマンディーヌ・ベイエール(バロック・ヴァイオリン)
アンサンブル・リ・インコニーティ(古楽器使用)
ラケル・アンドゥエサ(S)
ヴォルフ・マティアス・フリードリヒ(B)
新体制になったZig-ZagTerritoiresからのリリース第1弾はカフェ・ツィマーマン出身→古楽教育の次世代大御所! 急速に注目が高まる超・重要作曲家の、知られざる魅惑。Zig-Zag Territoiresは、Alphaのライヴァル…、いろいろな演奏家がAlphaとこのレーベルとにまたがって録音を続けているのは事実。そのなかでも象徴的なのが、Alphaで『バッハ:さまざまな楽器による協奏曲集』という絶好調シリーズを録音しているカフェ・ツィマーマンの元・第2コンサートマスター、アマンディーヌ・ベイエールの存在でしょう!カフェ・ツィマーマンはああ見えてフランスの古楽バンドにしては結構“荘厳系”のサウンド作りなんですが、そこを脱退して独自のアンサンブル(その名は17世紀ヴェネツィアの「アカデミア・デ・リ・インコニーティ」(見知らぬ者たちの同好会)という知識人サークルから取られています)を興したベイエールの音楽性は、これぞまさしくラテン系古楽奏者!といわんばかり、しっとり情感あふれる音作りがどんな音盤でも作品美を鮮烈に引き立て、おかげでこれまでZig-Zagで発表してきたアルバムは全て、あの点の辛いフランス批評界でトップクラスの評価ばかりを博し続けています。そんな彼女のアンサンブルの最新新譜が、これ!なんでも最近、新しい声楽曲の楽譜が発見されたとかで、にわかに再評価が進んでいるローゼンミュラーは、バッハが生まれる半世紀以上前のライプツィヒで頭角をあらわした名手。卓越したヴァイオリン演奏の技量は、ビーバーやシュメルツァーらの傑作と並び称されるソナタの数々にも反映されていますが、しかしシュメルツァーが実際にそれらの曲を書くにいたったのは、ライプツィヒで同性愛が発覚して聖歌隊長の座を追われ、起死回生をねらって流れ着いた音楽都市ヴェネツィアで活動するようになってから。つまりヴィヴァルディの大先輩でもあるわけです。最新のイタリア様式をあざやかに使いこなした「コレッリ直前」の合奏ソナタに聴く古楽器の響きもいいのですが、本盤では数曲の新発見独唱曲が、卓越した技量を誇る器楽奏者たちの活躍とあいまって、きわめて美しい声の古楽奏者たちの美質をいやおうなしに高めてくれるのも聴きどころです。
ZZT 080301
(国内盤・2枚組)
\4515
フォルクレ:鍵盤のための組曲(全5曲)
ジャン=バティスト・フォルクレ(1699〜1782)
『[アントワーヌ]フォルクレ1世の作曲による
 ヴィオール曲集、フォルクレ2世により
  クラヴサン独奏のために編曲』(1747)
1) 組曲 第1番 ニ短調
2) 組曲 第2番 ト長調
3) 組曲 第3番 ニ長調
4) 組曲 第4番 ニ短調
5) 組曲 第5番 ト長調
ブランディーヌ・ランヌー(クラヴサン)
使用楽器:
パリのアンスニー・サイディ1988年製作、
リュッケルス=エムシュ改良モデルによる
こういう重要アイテムがしれっと出るあたり、このレーベルはやっぱりAlphaの最強ライヴァル。フランス18世紀最注目の チェンバロ芸術の全容、同国最高のヴェテランが瑞々しく。こちらも同じく、Alphaにも録音しているフランス古楽界の大ヴェテランの傑作盤——ブランディーヌ・ランヌーといえば、Alphaでは鬼才チェリストのブリュノ・コクセが主宰しているレ・バッス・レユニ(これもまたAlphaきってのヒットメーカー!)で、ブリュノ・コクセのチェロを支えるべく初期しばらく鍵盤を弾いていた俊英で、他にもいろいろなところで大いに活躍をみせていたものでした。Zig-Zag Territoiresとのつきあいはレーベル発足最初期からで、とくに重要なのは、4枚のCDに録音されたラモーのクラヴサン(チェンバロ)作品全集——こちらも来年には完全解説付でリリース予定ですが、その前にまずご紹介したいのが、彼女の最新ソロ盤でもあるこの超・充実盤!フランス・バロックでもっとも美しいもののひとつがチェンバロの独奏だとすれば、そして私たち現代日本人の感性によりしっくり寄り添うのが、17世紀の荘重なフランス様式よりもむしろ、若干イタリア風味が加味されてきたバロック末期〜ロココ期のチェンバロ音楽だとすれば、そのなかでも特に美しいのがこの「フォルクレの組曲」...18世紀初頭に、あのマラン・マレと並び称されたヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)の達人アントワーヌ・フォルクレの息子が、父の歿後、未発表だったヴィオール作品を集めて出版したさい、ヴィオールが廃れつつあった時流をかんがみ、鍵盤用の編曲譜も出した——それが、これら五つの組曲の正体です。元来がバス・ヴィオールの曲ゆえ全体が低音域で展開する曲も多いのですが、それが実に美しい陰翳を曲に添え、クープランより艶やか、バッハよりも繊細な独特の味わいを醸し出すのです。チェンバロ版の全曲録音というのは意外とあるようでなく、特にフランス人名手の録音となれば本当に貴重!典雅なチェンバロの響きが好きなら、じっくり付き合うのに最高の2枚組、このレーベルの底力を十全に感じずにはおれない秀逸な演奏に仕上がっています(そしてごらんのとおり、各国の批評誌(とくに本場フランスのそれ)も文句なく最高点をつけているあたり、その内容の素晴しさも予想できるでしょう)!
ZZT 020801
(国内盤)
\2940
ジョヴァンニ・ヴァレンティーニ(1681〜1753):
 『四つのヴァイオリンを伴う合奏協奏曲集』作品7
 1) 協奏曲第11番イ短調(四つのヴァイオリン、
        弦楽合奏と通奏低音のための)
 2) 協奏曲 第7番 ト長調(独奏:C.バンキーニ)
 3) 協奏曲 第2番 ニ短調(独奏:S.プフィステル)
 4) 協奏曲 第3番 ニ短調(独奏:D.プランティエ)
 5) 協奏曲 第1番 イ長調(独奏:O.エドゥアール)
 6) 協奏曲第10番イ短調(独奏:O.チェントゥリオーニ)
キアラ・バンキーニ(バロック・ヴァイオリン)指揮
アンサンブル415(古楽器使用)
VN独奏:ダヴィド・プランティエ、
オディール・エドゥアール、
ステファーヌ・プフィステル、
オリヴィア・チェントゥリオーニ
いつの間にか、ガンバにおけるサヴァール御大と同格の重鎮に。異才バンキーニが解き明かす、コレッリの不思議な 後継者の面白すぎる協奏曲。ソリストも何気に曲者揃い!キアラ・バンキーニとアンサンブル415!古楽といえばharmoniamundi franceこそが頂点にあった20世紀後半、ヤーコプスやクリスティの次の世代を担うアンサンブルとして彼らとの共演などで頭角を現し、かのレーベルでも幾多の名盤(ああタルティーニ、ヘンデル、コレッリ…昔はエンリーコ・ガッティがセカンド、エミリオ・モレーノも弾いていたり、実に豪華なメンバーでした)を世に送り出してきた彼女のアンサンブルは、古楽教育のメッカ、バーゼル・スコラ・カントルム出身の実力ある演奏家たちが次々と参入してきたグループ(この点、ブリュッセル王立音楽院とクイケンのラ・プティット・バンドの関係を思わせるものが)。そうしたことが可能なのは、主宰者バンキーニ自身が、優秀な古楽奏者がほとんど必ず通る道ともいえるこのバーゼルの音楽院でバロック・ヴァイオリン科の重要な教諭でありつづけてきたからです(先程書きもれましたが、その後継候補に指名されているのが前頁のA.ベイエールなのだそう)。Zig-Zagでの名盤は結構な数がありますが、その手始めに推したいのはヴィヴァルディでもモーツァルトでもなく、コレッリの後任としてローマ楽壇を支えた隠れ重要人物ヴァレンティーニの作品集!彼らのZigZag デビュー盤でもあります。比較的メジャー曲の録音のめだつバンキーニがあえてとりあげただけあって、同時代のヴィヴァルディとはまた違ったセンスには実に興趣がつきません。弦楽合奏の「緩」と「急」を意外な形でふりまわし、超絶技巧や予想外の展開もいたるところ。ソリストは1曲ごと交替で、しかもカフェ・ツィマーマン他で活躍するプランティエ、レ・ウィッチズの異才フィドラーでもあるO.エドゥアール…と曲者揃い!今や考えられない豪華な顔ぶれで、演奏の新鮮さも全く損なわれず。イキのいいバロック盤として大推薦です。
ZZT 060901
(国内盤)
\2940
〜作曲当時のスタイルによる楽器と奏法を用いて〜
 ラヴェル:
  1.ボレロ
  2.左手のためのピアノ協奏曲
  3.スペイン狂詩曲
  4.亡き王女のためのパヴァーヌ
  5.ラ・ヴァルス
ヨス・ファン・インマゼール指揮
アニマ・エテルナ管弦楽団(古楽器使用)
エレーヌ・シュヴァリエ(p/エラール1905年製)
異才インマゼールが問いただす「ラヴェルの真の思い」—— 解説日本語訳はこれが初!鮮烈サウンドの「理由」とは…?! Zig-Zag Territoiresというレーベルは、大半の日本のファンにとっては「インマゼール&アニマ・エテルナのレーベル」として刷り込まれているのではないでしょうか?そう、かつて蘭ChannelClassicsで驚異的なモーツァルト協奏曲録音を続け、その後このレーベル発足初期から、ヨハン・シュトラウス(!)、チャイコフスキー(!)、ボロディン(!!)…と、すべて「作曲家と同時代の状態にある楽器と奏法」を徹底的につきとめて使用するオーケストラを率い、作曲家の意図の見過ごされてきた側面に思わぬ光をあてながら、ただの学究的興味にとどまらない鮮烈な説得力あふれる「音楽」を紡ぎ出してきた、異才中の異才!その演奏に陶酔しながら、古楽奏者は理屈で弾いているんじゃない、理屈を肌で感じられるから、音楽になるんだ…と感服せずにはおれません。弊社取扱による国内盤リリース第1弾は、前代理店時代には輸入盤のみのリリースだったラヴェル作品集!! 目玉はもちろん「ボレロ」、作曲家と同時代の録音を徹底検証しながら矛盾点や参考点を洗い出し、楽器一つ一つの復元検証に多大な労力を費やした経緯は、本人解説(邦訳添付)でも詳述されています。1905年製のエラールが瞠目すべき演奏効果をあげる協奏曲、みずみずしい「パヴァーヌ」、そして古楽奏者ならではの天才的リズム感覚と驚異的な古楽器オーケストラのバランス感覚が、強烈というほかないインパクトを与える「スペイン狂詩曲」や「ラ・ヴァルス」には、初演時の驚きとはこうだったに違いない!と圧倒されてしまいます。たとえばトスカニーニやクーセヴィツキーや、ブルックナーに対するシャルクにしてもそうですが、同時代人だからこそ、作曲家の目と耳が生きていたからこそ、違ったふうに解釈されてしまう点もある…「正しい解釈」など所詮幻想にすぎないとはいえ、インマゼールの演奏がこれほど聴き手の脳を刺激してくれるなら、少なくともそれは「強い存在意義を放つ名演」にほかならないのだと思います。
ZZT 100802
(国内盤)
\2940
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ(全3曲)
 1. 第1 番 ト長調 作品78「雨の歌」
 2. 第2番 イ長調 作品100
 3. 第3番 ニ短調 作品108
ジュヌヴィエーヴ・ロランソー(ヴァイオリン)
ジョアン・ファルジョ(ピアノ)
Zig-Zag Territoiresは、現代楽器による室内楽でも抜群のセンスを発揮してくれます——Alphaでも活躍するロランソーの最新新譜は、およそ類例をみない繊細さで綴られながら精緻・堅固な解釈で、揺るぎなく聴き手の心をさそう——そんな、鮮烈なブラームス!アマンディーヌ・ベイエールのローゼンミュラー盤(当info3ページ目)、ドミニク・ヴィスとアニェス・メロンの驚くべきデュオ(先週のご案内100930)に続いて、Zig Zag Territoires 待望の最新アルバムをもうひとつ。このレーベルが古楽器録音だけでなく、現代楽器方面でも驚くべき成果をあげ続けていることを、なにより雄弁に示してくれる素晴しい演奏なんです、これが。曲目は誰もがアクセスしやすい?王道中の王道、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ3曲——そして、これが一度耳にしたら(そう、たとえば試聴右機や店頭演奏でも…)まず虜にならずにはおれないような、ほんとうにユニークな美に彩られた演奏なのです!すぅーっと引き伸ばして、限界まで長く、もう極度に細くなって、今にも切れてしまいそう、しかし決して切れることなく、どこまでも繊細に、しなやかにメロディを描き続ける、このかそけき美音...!かたやピアノは、それほど弦がか細くあるにもかかわらず、決してそれを邪魔することなく、みごとなバランス感覚で協和し、支え、語らいあう。ひたすらにうつくしい、このユニークな演奏の弾き手はいったい...?と思って演奏者名をよく見たら、なんとなく謎も解けました。ジュヌヴィエーヴ・ロランソー...それはかつてAlpha レーベルで、作品をいっさい発表しなかったがゆえにフランス人たちでさえ存在を知らなかった20 世紀初頭の「幻の作曲家」、デュロゾワールの作品集を録音した、あのヴァイオリニストだったのです!ベル・エポックのガラス細工や装飾品のような繊細な美をたたえた、フォーレやドビュッシーもかくや、という繊細さを作品から十全に引き出してみせたロランソーの運弓は、ブラームスの細やかさとなんて美しくマッチするのでしょう!そしてピアニストは、これまた先日日本でも意外なほどセールスを伸ばしたブルッフのヴィオラ&クラリネット作品集(Cypres)で好演をみせた俊才J.ファルジョ...フランス気鋭の名手だったのです。
ZZT 100102
(国内盤)
\2940
シューベルト:二つの即興曲集 D899&935
フランツ・シューベルト(1797〜1828)
 1. 四つの即興曲op.90 / D899(1827)
  使用楽器:マティアス・ミュラー1810 年製作
 2. 四つの即興曲 op.142 / D935(1828)
  使用楽器:ヨゼフ・シャンツ1830 年製作
アレクセイ・リュビモフ(フォルテピアノ)
待望の来日を控えたロシア・ピアニズム随一の鬼才、やおらZZT レーベルに登場!それも曲目は超・王道、シューベルトのあり方を根本から問い直すフォルテピアノ録音——大気を泳ぐかのようなピアニシモ、この自然な抑揚…静かに紡がれてゆく、稀有の瞬間。アレクセイ・リュビモフ!きら星のように偉人・名匠・俊才が名を連ねるロシア・ピアニズムの世界にあって、この人ほどの異才はなかなかいないのではないでしょうか?リヒテル、ギレリス、ヴェルデニコフ、ラドゥ・ルプーらを門下から輩出した巨匠ゲンリヒ・ネイガウスと、その高弟でもあったレフ・ナウモフに師事した、いわばモスクワ音楽院系の正統的なロシア・ピアニズムの担い手でありながら、西側でさえまだ古楽奏法への認識が低かった時代からチェンバロや古い音楽への興味をしめし、モーツァルトのソナタ全曲をフォルテピアノで録音するという、当時のメジャーレーベルでは信じられない快挙をERATO でやってのけた怪物——その演奏結果の素晴しさは、近年ようやく再発された当該録音に触れればすぐにわかることでしょう。その後も現代曲やロマン派のレパートリーに取り組み、たびたび来日公演で密かにファンを増やしながら、近年ではアンドレアス・シュタイアーやヴィーラント・クイケンといった古楽器界のスーパースターたち、あるいはエイジ・オヴ・エンライトゥンメント管のような一流古楽器バンドとも日常的に共演をみせるなど、「古楽」という言葉で差別化するのも奇妙なほど、ごく自然にフォルテピアノで名演をくりひろげてきた、不思議な巨匠といえましょう。「あの頃、ソ連にはフォルテピアノなんてなかった」——と本盤解説にあるとおり、リュビモフは東西冷戦時代にロシア国内ではフォルテピアノなど弾ける環境もなかったそうで、1991 年に上述のモーツァルト録音の準備でフランスに来て以降、彼はそれまでの渇を癒すがごとく、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト…といった作曲家たちの知っていた、今のピアノとはさまざまな点でまったく違う当時の「フォルテピアノ」をどんどん再発見してゆきます。この種の歴史的ピアノはひとつ征服するのに何年もの年月を要する、と言う人もいるくらいですが、2種のピアノを使い分け、すっかり聴き古してきたはずの8曲の「即興曲」ひとつひとつ、本当はこんな響きだったのだ…!とまったく初めて聴くかのような瑞々しさで甦らせてみせるリュビモフの演奏を聴くにつけ、これはやはり才能であり、適性であったのだな…と感慨を深めるばかり。そしてそれはまた、自分が慣れている奏法に寄りかかることなく、作曲家の意図というものを妥協なく見つめつづけようとするリュビモフ自身の真摯な解釈姿勢ゆえのことなのでしょう。何はともあれ、そんな理屈をすべてさておいたとしても、孤独と死の影に怯えながら、その優しき心の奥に驚くほど深い世界を培っていた晩年のシューベルトが綴った稀有の美を、タッチの軽いフォルテピアノで、独特の、大気をなでるような弾き方で奏でてゆく、その響きに触れたなら、どんな人もこの演奏の虜にならずにはおれないと思います。今から早くも来年の来日公演が待たれる(なんという奇遇!演目はまさにこのシューベルトの《即興曲集》だそうです)ところ、このアルバムをじっくり聴きながら期待感を募らせるのも一興。どうぞご期待くださいませ!




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