アリアCD 新店舗へようこそ

新店舗トップページへ

お買い物の方法  
ページ内の商品チェック・ボックスをクリックし、最後に 「かごに入れる」ボタンを押してください(enterキーを押してもかまいません)。
新店内のほかのページのお買い物がありましたら、そちらもすませ、最後に「注文フォームへ」ボタンを押して注文フォームで注文を確定してください。
(チェック内容を変更したら、必ずもう一度「かごに入れる」ボタンをクリックしてください。変更内容がかごに反映されませんので)

注文フォームへ

第65号
お奨め国内盤新譜(1)


8/31までの紹介分


ALPHA



Alpha185
(国内盤・訳詞付)
\2940
シャルパンティエと聖週間
 〜さまざまな合奏曲とルソン・ド・テネブル〜

マルク=アントワヌ・シャルパンティエ(1643〜1704):
 ①オフェルトリウム(奉献唱)H.514
 ②アンティフォナ(交唱)H.532
 ③サンフォニー(合奏曲)H.529
 ④教区教会の儀式のための序曲 H.536
 ⑤詩編第110編に続くアンティフォナ(交唱)H.516
 ⑥幾多の殉教者のためのモテ(教会声楽曲)H.361*
 ⑦聖週間の祭壇のための序曲 H.523 〜
  城壁での行列に寄せて
 ⑧教区教会の儀式のための序曲 H.537
 ⑨まだ手をつけられていない捧げ物H.522
 ⑩教会のための序曲 H.524
 ⑪アンティフォナ(交唱)H.526
 ⑫バス独唱による第1ルソン・ド・テネブルと序章 H.120〜122
  (聖水・木・金曜日のための)*
   * 印は独唱入り、他は歌手抜きの器楽合奏曲
アレクシス・コセンコ(フラウト・トラヴェルソ、リコーダー)指揮
Ens.アルテ・デイ・スオナトーリ(古楽器使用)
ステファン・マクラウド(バス=ターユ独唱)
 巨匠リュリが必死で妨害せずにおれなかった、フランス・バロック最大の巨匠のひとり——
 シャルパンティエの偉業を「歌なし」で味わえる前半部は、きわめて貴重な珠玉の小品揃い。後半はBCJ定期などでもおなじみ、多忙をきわめる名古楽歌手の、静謐な歌い口が「絶美」!

 シャルパンティエ...名ばかりは有名でありながら、その偉業が声楽作品、なかんずく教会音楽中心だったためもあり、日本ではいまだ定着しているとはいいがたいフランス・バロック最大級の巨匠。誰もがその美しさに息をのまずにはおれない、そんな音楽の紡ぎ手であるにもかかわらず、シャルパンティエが長いあいだ不当な忘却にさらされていたのは、ひとえに「太陽王」ルイ14 世の王室音楽総監督ことJ-B.リュリが、その技量に地位を脅かされることを畏れたのか、この12 歳年下のすぐれた作曲家をひたすら妨害、決して国王のそばに近づけようとしなかったためでもありました。
 つまり、彼はそれほどまでにたぐいまれな音楽感覚を持っていたのです。
 フランス・バロック特有の「機微」と「繊細」そのままに、本場ローマ仕込みの新しいイタリア音楽の感覚をほどよくとりいれたシャルパンティエの音楽の魅力は、やはり、フランス語圏の演奏家であればこそ、隅々まで伝わるもの...と思っていたら・・・フランス古楽界の快進撃を音盤方面から支えてきた超・秀逸レーベルAlpha がていねいに、丹念な企画で新たなアルバムをつくりあげてくれました。
 この新譜、「フランス人の指揮者と歌い手さえいれば、シャルパンティエの絶美の音楽はその息吹そのままに甦らせることができる!」と、フランス人企画者たちが自ら強く裏書きしてくれる意外な演奏陣の名演。すでにAlpha レーベルではC.P.E.バッハのフルート協奏曲全集や圧巻のヴィヴァルディ作品集でおなじみ、欧州古楽界の先端をひた走るポーランドの俊英団体アルテ・デイ・スオナトーリ(日本では英国の実力派レイチェル・ポッジャーとの共演でもよく知られています)が、今回の演奏の中心。
 このアンサンブルとAlpha で名盤を連発してきたフランス人トラヴェルソ奏者アレクシス・コセンコが、自ら管楽器片手に指揮台に立ち、フランス人ならではの濃やか・細やかな感性で織り上げてゆくのは、シャルパンティエの貴重な器楽作品の数々と、教会音楽でこそ最大限の力を発揮するこの作曲家の至芸がきわだつ、聖週間(復活祭前の節制期間ですね)のために書かれた極少編成の「ルソン・ド・テネブル」。
 俗世の放埓を悔悛する旧約聖書の『エレミア哀歌』を歌詞にとる音楽に駄作はない!とよく言われるとおり、このシャルパンティエの傑作もまた、静謐な暗闇にひっそり一筋流れる滑らかな男声独唱がきわめて美しい、これぞバロック楽器ならでは!という魅力のきわだつ作品です。
 声楽が苦手な古楽ファンにとっても、トラヴェルソ、リコーダー、ガット弦...といった古雅な音色が引き立つ器楽曲を中心に組まれた本盤なら、すんなりシャルパンティエの世界に入ってゆけること間違いなし!
 解説適切&充実(全訳付)、もちろん歌詞日本語訳付。
 Alpha 特有のオーガニックな自然派録音も美しく、しっとりフランス・バロックの美質に浸れる傑作盤。さすがはAlpha!を再認識する逸品です。


Alpha605
(国内盤・2枚組)
\4200
ポール・メイエ
 シュポーア:クラリネット協奏曲第1〜4番(全曲)

ルイ・シュポーア(1784〜1859):
 1.クラリネット協奏曲第1 番ハ長調 op.26
 2.クラリネット協奏曲第2 番変ロ長調 op.57
 3.クラリネット協奏曲第3 番へ短調WoO.19
 4.クラリネット協奏曲第4 番ホ短調 WoO.20
ポール・メイエ (クラリネット & 指揮)
ローザンヌ室内管弦楽団
 初期ロマン派の隠れ重要レパートリー、ついに全曲録音セットが「あの名手」の名演で!
 シューベルトやヴェーバーと同じ時代、これ以上うつくしく微妙な陰影を出せた作曲家がいただろうか——解説も超・充実、シュポーアを知るうえでもとにかく貴重なリリース。
 管楽器不毛の時代...と大雑把に思われがちなロマン派時代ですが、そもそもオーケストラ芸術があれだけ発達した19 世紀に、作曲家たちが個々の管楽器を大切にしていなかったはずがありません。
 とりわけ、19世紀に入ってから大きく可能性を伸ばしたクラリネットには、数多くの傑作が捧げられています。たとえば大作曲家たちでもヴェーバーがこの楽器に着目して協奏曲や弦楽器との五重奏曲を書いているほか、シューベルト(歌曲や八重奏曲)、シューマン、メンデルスゾーン、後にはブラームス...と、ドイツ・ロマン派の大作曲家たちも案外、クラリネットだけはひときわ重視していたようです。
 ただ、そうした状況に達するのはおよそ1820 年代になってからのこと——それ以前、つまりモーツァルトが亡くなってから2、30年ほどのあいだにクラリネットを最も大切にした大作曲家をあげるとすれば、それは間違いなくヴェーバーと、(今ではうっかりすると妙に群小扱いされてしまう)シュポーアということになるでしょう。なにしろこの二人はロマン派周辺ではいち早く、クラリネットのための傑作協奏曲を複数書いているのですから。
 とくにシュポーアの最初の協奏曲は1808 年、あのベートーヴェンの「運命」「田園」「合唱幻想曲」などの歴史的初演失敗のあった年に書かれており、これはヴェーバーの作例よりも早い時期の協奏曲ということになります。そもそも当時はすでに「名手が自分で協奏曲を書く」というのが一般的になっていたので、腕利きのクラリネット奏者による協奏曲というのであればいくつかあったものの(たとえばクルーセルやルフェビュール)、シュポーアはヴァイオリニストとして活躍しこそすれ(ヴァイオリン協奏曲もたくさん書いています)、彼がヴァイオリン以外の楽器のために書いた独奏協奏曲というのは、それこそこのクラリネットのための4曲だけなのです。
 そして実際、作品内容の充実度においても4曲とも非常に高く、とりわけ(おそらくあまりに深くロマン派的だったため、当時楽譜出版がためらわれたと思われる)作品番号のない短調の2曲の深い味わい、美しい陰翳、堅固な曲構造といったら...ベートーヴェンが短調の協奏曲を1曲だけしか書いていないのが悔やまれるなら、断然シュポーアのクラリネット協奏曲を聴き深めるべきだと思います!
 そして何より嬉しいのは、ベルリンのカール・ライスターやスイスのエドゥヴァルト・ブルンナーらとともに間違いなく現代最高のクラリネット奏者であるところのフランスの名手ポール・メイエが、その芸術性がひときわ充実した今になって、満を持してこれらの傑作を録音してくれたということ。
 Alpha の現主宰者が先日「シュポーアは弦楽器の音楽でこそ輝く巨匠だと思っていたけれど、この演奏で4曲のクラリネット協奏曲があらためて傑作だったと認識を改めた」と言っていましたが、彼が言っていた意味がよくわかりました。Claves の名盤群でも活躍をみせてきた俊英団体ローザンヌ室内管の周到な演奏も実に頼もしく、作品美をじっくり味わえる名演になっています。そして嬉しいことに、解説も相当な充実度——シュポーアについて日本語で何かを読める機会などめったにないところ、きっちり全訳付でその内容をお伝えしてまいります!
 初期ロマン派の最も聴きごたえある作曲家のひとり、シュポーア...Alphaが自信満々提案するだけのことはある逸品です!

ARCO DIVA



UP0133
(国内盤)
\2940
マルティヌー四重奏団
 ドヴォルザークの真の傑作

ドヴォルザーク(1841〜1904):
 1.弦楽四重奏曲第14 番変イ長調 op.105/B.193
 2.弦楽四重奏曲第13 番 ト長調 op.106/B.192
マルティヌー四重奏団
ルボミール・ハヴラーク(vn1)
リボル・カニュカ(vn2)
ズビニェフ・パジョウレク(va)
イトカ・ヴラシャーンコヴァー(vc)
 「ドヴォルザーク晩年の絶頂」を、知らないでいるのがどれだけもったいないことか——!!
 本場チェコの超・実力派ヴェテラン集団が、シンフォニックなまでの壮大さを誇る。「チェロ協奏曲&アメリカ以後」の2傑作を、ひたすらに味わい深い名演でお届けします。

 ドヴォルザーク——チェコ国民楽派の優駿であり、チャイコフスキーと並ぶ中東欧ロマン派最大の人気作曲家のひとり。でありながら、この作曲家の作品はクラシック・ファンの方々にさえ、今でも限られた数の傑作ばかりしか広く知られていないのは、非常にもったいないことではないでしょうか?
 交響曲第9 番「新世界より」や「世界三大チェロ協奏曲」のひとつにも数えられるロ短調の傑作協奏曲、スラヴ舞曲集、ピアノ三重奏曲「ドゥムキー」、ヴァイオリンのためのユーモレスク、弦楽セレナード...2行でかたづく曲数です。あとはせいぜい合唱ファンにとっての至宝「スターバト・マーテル」と「レクィエム」、交響曲第7・8 番、室内楽演奏会でよくとりあげられるピアノ五重奏曲くらい——どうでしょう?そもそも彼が弦楽四重奏曲を何曲書いたかも、あまり知られていないのでは...「アメリカ」が第12 番なのはわかっていても、それ以降に彼がさらに2曲も、見過ごしがたい充実度を誇る傑作四重奏曲を書いていたことは、どのくらい知られているのでしょうか...?
 そう、彼はさまざまな事情とホームシックが重なり1895 年にアメリカからプラハに引き上げてきたあと、さらに数年作曲活動を続けていたのですが、帰国直後の不調を乗り越えて最初に仕上げた作品が、この作曲家の弦楽四重奏曲第14 番。そのあとニューヨークで書きはじめていた変イ長調の四重奏曲を猛烈な勢いで仕上げたのですが(このあたりの経緯は、本盤の解説(全訳付)にも詳述されています)、この2曲がまた、いずれも演奏時間30 分をゆうに超える長大な傑作(第13 番にいたっては、本盤の収録時間にして10 分を超える楽章が三つも含まれています)というのですから、これはもう、チェロ協奏曲以降の晩期の傑作としては見過ごしようのない重要作ではありませんか。
 弦楽四重奏曲大国のチェコでは、この2曲を定番レパートリーにしている団体も数多くあるそうですが、CD ではまれに片方ずつ別の曲と一緒になっているか、もう少し後期の曲を盛り込んで買いにくいBOX になっているか——ましてや国内盤は絶望的。作曲経緯からすれば2曲ペアともいえる重要な存在なのに、この見過ごされぶりは惜しい限り。
 そこへ出てきた本盤は、すでに数多くのレーベルで実績も積んできた創業40 年以上のチェコの名団体、マルティヌー四重奏団の本場感あふれる名演でこの両曲を(望むなら、双方通しで)じっくり味わい尽くせるというのですから、嬉しい話ではありませんか。
 ピアノ三重奏曲「ドゥムキー」にも通じるめくるめく変化、彼自身の交響曲群を凌駕するのは...と思われるほどの充実した主題展開、そして何より、あのドヴォルザーク特有の、ひとすじの切なさが漂う忘れがたい響きの美しさ——本場の名団体で聴けることを心の底から喜びたくなる傑作盤です。

CALLIOPE



CAL7648
(国内盤)
\2940
<メーカー在庫限り>
インゲル・セーデルグレン
 ベートーヴェン 最後のソナタ群

〜ピアノ・ソナタ第30・31・32 番〜
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770〜1827):
 1. ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 op.109
 2. ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 op.110
 3. ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 op.111
インゲル・セーデルグレン(ピアノ)
 これだけのアイテムで、「在庫限定」と言われると「超おすすめ」をつけざるをえない。

 1音1音、しっとりと——過剰さはなし、そこから一気に広がる、とほうもなく優しく豊かな小宇宙。
 フランス語圏を中心に、LP時代から根強く支持されつづけてきたCalliope レーベル屈指の名盤、枚数限定ですが押さえました。もちろん解説付仕様です!

 LP 時代から「興味津々、謎多き高嶺の花のフランス盤」の代名詞的存在のひとつだった名門小規模レーベル、Calliope(カリオープ。「カリオペ」は誤り。フランス人は一人もそう読みません)
 チェロのアンドレ・ナヴァラ、コントラルト歌手のナタリー・シュトゥッツマン、オルガンの名匠アンドレ・イゾワール、ロシア人ピアニストのヴァディム・サハロフなど、フランス人の、あるいはフランスを拠点に活躍してきた欧州屈指の大演奏家のなかには、このレーベルに歴史的傑作盤を刻んできた大物も少なくありません。また逆に、このレーベルでの録音が高く評価されたおかげで、その名を演奏史に刻み、今なお熱心な支持者がいる名演奏家も少なくないと思います。
 さきほどご紹介した、Indesens!レーベルでドビュッシー作品集が復活を遂げたテオドール・パラスキヴェスコ(p)などもその一人ですが、忘れられてはならないのはやはり、Calliope で不滅のベートーヴェン・ソナタ全集の傑作録音を残したスウェーデン出身の女性ピアニスト、インゲル・セーデルグレンの存在でしょう。
 彼女もまたパラスキヴェスコ同様、祖国スウェーデンからパリに出たあとは名教師ナディア・ブーランジェと(フルトヴェングラーの共演者としても名高い)イヴォンヌ・ルフェビュールの門下で腕を磨き、無数の名手が腕を競う1980 年代のパリで、超一流ホールを連夜湧かせ、あるいはフランス各地の音楽祭で大きな喝采を集めてきました。とりわけシューマン、ブラームス、ベートーヴェンといったドイツ19 世紀の作品解釈で高く評価されていたセーデルグレンですが、代表作であるベートーヴェンのソナタ全曲録音はフランスの由緒あるシャルル・クロ音楽大賞★に輝いたのを筆頭に、さまざまな批評誌から絶賛を寄せられている重要な録音。Calliope レーベルはCD 時代に入って以来、再発売のたびジャケットを新装してきたことでも有名ですが、このセーデルグレンのベートーヴェン全集をインターネットで画像検索すると、あれこれ違う「いくつもの正規盤ジャケット」が出てくるほど、つまり長年にわたって根強く支持されつづけてきた重要音盤なのですが、昨年Calliope 創設者がレーベルをいったん休止したさい、残念ながら最終プレス品番は全面的にひとまず廃盤扱いに。
 しかしレーベルを買い取り後続経営を買って出たIndesens!がうまくストックを集めてくれ、数量限定ながら「最後の三つのソナタ」だけは何とか一定数を確保できる運びとなりました。
 状況が状況だけに再プレス・仕様変更再発売などは当分見込めませんが、通常の強力新譜初回出荷分程度は入荷が見込めるようですので、解説付きの国内盤仕様でお届けいたします。
 セーデルグレンのベートーヴェンは、こともなげでありながら1音1音磨き抜かれ、聴き深めるほどにその高雅さと深みに驚かされる至高の銘解釈。それだけに、深遠さにかけては他の追従を許さない「最後の3曲」だけでもじっくり聴いておきたいところです。

CARO MITIS



CM007-2006
(国内盤/SACD ハイブリッド)
Multichannel SACD-Hybrid
\3360
シューマン(1810〜1856):
 1. 花の曲 op.19
 2. ピアノ・ソナタ第1番 嬰ヘ短調 op.11
 3. クライスレリアーナ op.16
 4. アラベスケ(アラベスク)op.18
ユーリ・マルティノフ(ピアノ)
 21世紀の今、「旧・東側」の伝統をひく精鋭奏者たちが「古楽器」を意識しはじめた——
 リュビモフ門下の異才マルティノフは、つい最近もフォルテピアノで『レコ芸』特選をもぎとった才人。現代ピアノでの抑揚あざやかな演奏解釈で、そのセンスをじっくり堪能。

 「古い音楽は、作曲家の知っていた楽器と奏法で」。そうした古楽器演奏の考え方がすっかり定着しつつある近年では、かつての“東側”こと中東欧の演奏家たちの考え方さえ大きく変わってきました。
 重厚な現代楽器での『マタイ受難曲』や、どっしり構えた大悲劇的な序奏で始まる巨大編成での『ドン・ジョヴァンニ』序曲などが“東側”の演奏というイメージだったのも今は昔。
 ポーランドのショパン協会が古楽器演奏を積極的に後押しし、チェコの古楽バンドが『サライ』誌で年間大賞を受賞する21 世紀にあっては、ロシア・ピアニズムの純然たる担い手であり、レフ・オボーリンの門下で学んだ俊才ユーリ・マルティノフのように、ロシアでのピアノ教育の賜物としての桁外れな技量と感性そのまま、古楽器録音で『レコード芸術』特選を勝ち取ってみせるようなケースも、もはや珍しくないのかもしれません。
 しかし嬉しいことに、このユーリ・マルティノフはロシア屈指の秀逸レーベルCaro Mitis で、現代ピアノに向かって素晴しいシューマン作品集も制作してくれたというのですから、ZZT レーベル盤が高評価を得たばかりの今、このアルバムには俄然注目したいところぱ選曲も絶妙で、有名曲『クライスレリアーナ』と『アラベスク』を軸におきつつ、ソナタ第2 番の影に隠れたシューマン屈指の意欲作である第1ソナタや、ピアニストの感性と技量を知るには絶好の傑作である『花の曲』も収録、このバランスの良いプログラムを通じ、稀代の異才ピアニストが(古楽器演奏を見据えての感性で)どのような音作りを現代楽器で聴かせてくれるのか、じっくり聴き深められる内容となっています。
 いつもどおりの解説の充実度(全訳付)、Caro Mitis レーベルの常であるDSD 録音・SACD ハイブリッドでの的確にして生々しい録音エンジニアリングは、こうしたピアニズムの妙味を味わい尽くすのにもうってつけ——ZZT でのフォルテピアノ盤との比較から、こうしたタイプのピアニストが楽器によってどう演奏姿勢を変えているのか、また両者のあいだでどう一貫性をつけているのかも、聴き深める鑑賞ポイントのひとつになるでしょう。


ユーリ・マルティノフ
レコ芸特選のベートーヴェン

ZIG ZAG
ZZT301
(国内盤)
\2940
ベートーヴェン/リスト編:ピアノ独奏による交響曲第2番・第6番「田園」
ベートーヴェン(1770〜1827)/リスト編
 1.交響曲第2 番 ニ長調
 2.交響曲第6 番 ハ長調「田園」
ユーリ・マルティノフ(歴史的ピアノ/
パリのエラール社1837 年製オリジナル)
 ユーリ・マルティノフ!
 オボーリン門下のヴォスクレセンスキーに師事してロシア・ピアニズムの魂を叩き込まれたあとパリに留学、古楽器奏法をすべからく吸収し、現在はチャイコフスキー音楽院の歴史的ピアノのクラスを担当しているそうですが、その縦横無尽のピアニズムは現代ピアノでも歴史的ピアノでも精妙かつダイナミック!そんな魅力的なピアニズムをもって、彼は19 世紀に製作されたオリジナルの歴史的ピアノに向かい、きわめて注目すべき企画をとてつもない名演で仕上げてくれました。
 かつて俊才カツァリスをはじめ、幾人かのピアニストたちも録音してきた「リスト編曲によるベートーヴェンの交響曲」——1837 年、つまりリストが凄腕ピアニストとして大活躍していた真っ最中に製作されたエラール社のピアノ(ご存知、リストが最も高く評価した工房のひとつです)に向かい、マルティノフはこのロマン派の天才芸術家がベートーヴェンの交響曲に聴き取った音、感じ取った精神を、19 世紀の響きそのまま、くっきりと鮮やかに甦らせてくれます。
 「田園」での嵐や鳥の声が、エラールの歴史的ピアノならではの瑞々しく煌びやかな音色で再現されるときの、思いもかけない新鮮な体験!「第2番」のスタイリッシュな構築感覚をコントラスト豊かに歯切れよく彫り上げてゆく、その音作りの設計の確かさ! 添付の解説には、リストが1865年に全9曲の交響曲編曲を楽譜出版したときの貴重な前書きをはじめ、編曲にまつわる貴重な情報やリストの創意についての考察など、読みどころもたっぷり収められています(例によって全訳付)。

CONCERTO



CNT2072
(国内盤)
\2940
マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ(1895〜1968)
 ① ギター協奏曲 第1 番 ニ長調 op.99
 ② ギター五重奏曲 op.143
 ③ ジプシー歌集 op.152〜
  フェデリーコ・ガルシア・ロルカの詩による(混声合唱とギターのための)
①ルイージ・アッツォリーニ指揮
ボルツァーノ・トレント・ハイドン管弦楽団
②同管団メンバーによる弦楽四重奏団
③アンナ・ペリッツァーリ指揮
カステルバルコ・ポリフォニコ合唱団
ジューリオ・タンパリーニ(ギター)
 現代イタリアを代表するギタリスト、名盤続出のタンパリーニが久々に録音した新譜はなんとファン垂涎のカステルヌオーヴォ=テデスコ合奏作品集! 傑作中の傑作2編はもちろん、ロルカの詩による合唱曲も絶妙——存在感たっぷりのギターの個性と、気鋭楽団の交錯ここに!
 「イタリアの音楽」といえば、何よりもまずオペラやカンツォーネなどの「歌」...かと思いきや、思えば教科書にも出てくる「クラシック音楽の代表作」にもヴィヴァルディの『四季』があり、ヴァイオリンを習えば必ずどこかでコレッリの『ラ・フォリア』と出会い...と、実は楽器だけのための音楽でもイタリア人は卓越したセンスを示してきたわけで。ベル・カント・オペラ全盛の19 世紀こそ器楽芸術は下火でしたが、20 世紀に入り、これもまた教科書レヴェルの名曲である「ローマ三部作」の作曲者レスピーギが活躍をはじめるあたりから、イタリア随一の器楽ブームが静かに沸き起こりはじめます(その流れで世紀半ばに世界的・爆発的人気を博したのが、ローマのイ・ムジチ合奏団をはじめとするイタリアの室内合奏団の数々)。
 そんな時代を代表するイタリア人作曲家といえば、なんといってもカステルヌオーヴォ=テデスコ——ヴァイオリンのヤッシャ・ハイフェッツやチェロのピアティゴルスキー、「ギターの神様」アンドレス・セゴビアなど世界的な名演奏家とも親しかったこの天才作曲家、ユダヤ系の家系だったため第2 次大戦を前にハリウッドへ渡ったのが幸いし、映画音楽の世界でも多忙をきわめる活躍をみせました(このあたりは同時代を生きたコルンゴルトとそっくりのキャリア)。しかし今日この作曲家の卓越したセンスを最もよく知っているのは、おそらくギターを弾く/聴く人たちではないでしょうか——セゴビアとの知遇がカステルヌオーヴォ=テデスコにもたらしたインスピレーションは、ロドリーゴの「アランフエス協奏曲」とは違う魅力をはらんだ壮大なギター協奏曲や、ボッケリーニやジュリアーニら古典派の巨匠たち以来の傑作ともいえるギター五重奏曲など思わぬアンサンブル作品まで生み出し、ファリャやプロコフィエフ、ホルスト、バーバー...といった同時代人たちにも通じるような、クラシカルな形式感覚を忘れず、エモーショナルな味わいとコントラストに満ちた自在な表現をギターその他の楽器で味あわせてくれます。
 まさに「知るべき作曲家」——本盤で嬉しいのは、これらの傑作を披露してくれる演奏陣の確かさ。なんとこのアルバム、日本でも確かな人気を誇るイタリア随一のギタリストG.タンパリーニの最新新譜(なんと2年ぶり!)であるうえ、共演は(あの芸達者な巨匠)グスタフ・クーンが音楽監督をつとめるイタリア北部の超・実力派集団(実は輸入盤に名盤あまたですよね)!タンパリーニの唖然とするほど確かな技量とのやりとりが逐一痛快な器楽作品2曲の他、文学愛好家でもあった作曲家のセンスを感じさせる合唱曲でもギターは大活躍。
 美麗ジャケットや詳細なライナー(全訳付)含め、隅々まで音楽愛が徹底した極上アルバムなのです。

COO RECORDS



COO-028
(国内盤)
\2940
〜人力ふいごを用いた全曲録音〜
 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
  オルガン小曲集(オルゲルビュヒライン)
   BWV599〜644(同一曲を除く全45 曲)
森武 靖子(オルガン/草刈オルガン工房)
 巨大楽器オルガンに、どうやって風を送っていたか——電力導入以前はもちろん「人力」。
 人の音楽感覚があるから、オルガン演奏は幾倍にも引き立ち「在りし日の味わい」を取り戻しはじめる。オーガニックな楽器の音色で、バッハ中期最大のオルガン曲集を。

 教会のパイプオルガン——かつて欧州人たちが町や主君の財力を惜しみなく注ぎ込んで建てた巨大な教会堂そのものを共鳴体にする、「楽器の王」とも讃えられた楽器。現在、この楽器のパイプが音を出すのに必要な空気は、ほぼ全面的に電動モータを使って送風することで供給されているわけですが、オルガン音楽の世界におそらく最大の貢献をなしたであろう「音楽の父」ことJ.S.バッハが生きていた18 世紀には、そんな装置があろうはずもありません。
 そう——バッハの時代には、人力でふいごを操る「ふいご手」という職業が立派に存在していたのであって、このふいご操作ひとつで、鍵盤を操るオルガニストの演奏は大きく趣きが変わってきたものでした。
 そのことを尊重し、現在も人力ふいごを使って音を得るオルガンを造っている見識の高い建造家がいます。日本では草刈オルガン工房というところで、欧州の伝統をふまえた素晴らしい人力ふいごオルガンが造られています。Coo-Records レーベルが新たにお届けする新譜は、この工房の楽器で全曲録音された、バッハの“前半生”のオルガン芸術の集大成ともいうべき壮大な曲集「オルゲルビュヒライン(オルガン小曲集)」。
 この曲集、「小さな」を意味する-lein がついているわりに、時にはCD2枚を要する長さにもなる充実した作品集。プロテスタントのカレンダーで1年分の讃美歌(コラール)をひとつひとつオルガンで前奏すべく、45 曲(通例通り本盤でも省かれている重複曲を数えると46 曲)もの小品が集められ、1曲1曲自体は本当に小さい珠玉の小品ぞろい。人力ふいごを使った小ぶりの楽器ならではの親密な音作りで、それらをじっくり味わえる本盤の演奏は、教会オルガニストとしてのバッハの日常をすぐそばで垣間見るような、生々しくも味わい深い魅力に満ちているのです。
 そのひとつひとつを、長い時間をかけて丹念に録音していったのが、ドイツのトロッシンゲンで名匠ロレンツォ・ギエルミ(現在バーゼル・スコラ・カントルムのオルガン科主任になりました)に、ウィーンで異才M.ラドゥレスクに師事してきた俊才・森武靖子——彼女と個人的な知遇があるという巨匠指揮者ヘルベルト・ブロムシュテット(ご存知の通り、ブロムシュテットはバッハとゆかりの深い町ドレスデンに長くいました)が、この録音のマスター音源を聴いて、感激のあまり激励のコメントまで寄せてくれました:

 (以下、外装帯コメントより抜粋)
 「バッハがこの傑作を書いていた頃に使っていたタイプのオルガンも、まさにこういう響きで鳴るのですよね[…中略…]バッハ演奏の伝統が必ずしもそれほど古くからあるとは言いがたいはずの日本で、日本人の若いオルガニストが、日本人建造家の作ったオルガンを使い、これほど完璧にバッハを弾いてみせたと知って、私はとても幸せです。いや、少し誇らしい気持ちにさえなった…と言わせてください。心からの祝辞を送ります!」

 巨匠の慧眼と感慨がどれほど的確なものか、ぜひ実感していただければと思います。

FUGA LIBERA



MFUG593
(国内盤)
\2940
セルヴェ:チェロ協奏曲、およびその他の協奏的作品
 〜ベルギーのロマン派、艶やかなチェロ芸術II〜

 フランソワ・セルヴェ(1807〜1866):
  1. 協奏的小品op.14〜チェロと管弦楽のための
  2. 「ヴェニスの謝肉祭」による荒唐無稽な幻想曲 op.9 〜
   チェロと管弦楽のための
  3. ラ・ロマネスカ 〜チェロと管弦楽のための
  4. チェロ協奏曲 ロ短調 op.5
ディディエ・ポスカン(チェロ)
パトリック・ダヴァン指揮
KBS交響楽団
 チェロのピンを本格的に使いはじめたのは、フランコ=ベルギー派のチェロの巨匠だったぱ艶やかな旋律、みなぎるロマン情緒、ヴュータンやサン=サーンスにも比しうる美質...
 チェロを好きな方、初期〜中期ロマン派の管弦楽曲が好きな方、見過ごせない1枚です。

 基本的な話、チェロという楽器にはファンが多いと思うのです。
 そしてロマン派音楽、なかんずく19 世紀の初頭から中盤までの音楽は、いわばクラシック音楽の王道。にもかかわらず、この時期のチェロ曲というのは意外と有名作がない。メンデルスゾーンのソナタ2曲、シューマンのいくつかの小品、アルペジョーネ・ソナタ...それに、シューマンの協奏曲。それだけ?
 いやいや、実はこの19 世紀中盤こそ、チェロという楽器が独奏楽器としてどんどん存在感を強めていた時代——ピアッティ、セルヴェ、ドッツァウアー、クマー、意外なところではオッフェンバック...と、チェロ奏者として活躍しながら知られざる傑作を書いていた異才は数多く存在します。にもかかわらず、その後の音楽史は基本的にドイツ=オーストリアの新古典主義かワーグナー主義ばかり称揚したため、こうしたベル=カント・オペラの歌いまわしに大きな影響を受けてきた作曲家たちは不当に扱われ続け、私たちの耳を魅了してやまない美しい音楽の多くが忘れ去られてしまいました。
 高度情報化社会のよいところは、そういった「図書館の片隅に楽譜が追いやられていた知られざる傑作」が発掘されやすくなったこと、そしてこうやってセンスあるレーベルが、それらの傑作をすばらしい演奏で録音し、世に残しやすくなったこと。
 そうした有意義な音盤制作を続けてきた芸術大国ベルギーのFugaLibera レーベルが新たに世に問うのは、「19 世紀中盤のチェロ芸術」の最も美しく、最もダイナミックな一節を切り取った、鮮やかな発掘プロジェクト。
 ベルギーやフランスなどのフランス語圏のみならず、諸外国でも多忙な活躍をみせ、ウィーン・フィルの創設記念演奏会にもソリストとして招かれたベルギーのチェロ奏者フランソワ・セルヴェは、チェロ音楽史上では「エンドピンを最初に使いはじめたソリスト」として有名ですが、彼の書く音楽はいつも流麗なメロディセンスと絶妙の抒情感覚に満ちあふれ、折々にみせる超絶技巧奏者らしいスリリングな一節も含め、同時代の同業者たちもきわめて高く評価していたのです。
 自作品の演奏も数多くこなしてきたセルヴェを称して、かのベルリオーズは「圧倒的」と驚嘆し、ロッシーニも「チェロのパガニーニ」との絶賛を惜しみませんでした。
 Fuga Libera が一昨年前にリリースしたセルヴェの室内楽曲集(MFUG561)はいまだに売れ行きが静かに続いている同レーベルの隠れ名盤ですが、今度は嬉しいことに、堂々の協奏的作品群——しかも待望のチェロ協奏曲までぱ同レーベルのヴュータン協奏曲全集(MFUG575)でも大活躍、すでに録音経験も豊かなベルギー新世代の俊才パトリック・ダヴァン率いるKBS 交響楽団の演奏もダイナミックかつ繊細さに事欠かず、ソリストの響きを幾倍にも引き立てます。
 独奏はさきの室内楽曲集でもソロをつとめた名手ディディエ・ポスカン。ベルギー人作曲家への同郷人としての作曲家への共感が最良の形で結実した、艶やかにして堅固なチェロの美音がたまりません。


旧譜
セルヴェの室内楽曲集
Adrien-Francois Servais - Souvenirs
MFUG 561
(国内盤)
\2940
セルヴェ:チェロのための四つの技巧的名品
 〜19世紀、フランコ・ベルギー派最大のチェロ芸術家〜
フランソワ・セルヴェ(1807〜1866):
 1. ロッシーニの歌劇『セビーリャの理髪師』による大幻想曲
 2. アントヴェルペンの追憶
 3. スイスの追憶
 4. スパの追憶
ディディエ・ポスキン(チェロ)
ロザムンデ・アンサンブル(弦楽四重奏+コントラバス)
 本盤の主人公、作曲家にして稀代のチェロ奏者だったフランソワ・セルヴェは、両足でチェロをはさんで弾くのがまだ主流だった19 世紀中盤にあって、近代式のエンドピンを誰よりも早く常用、新たなチェロ奏法を切り開いた名手。
 セルヴェはベルギーの首都ブリュッセルにほど近い、ハルという衛星都市の出身。終生ここに暮らしながらブリュッセルを拠点に大活躍、近隣のドイツやフランスや英国はいわずもがな、遠くトルコやロシア・北欧まで遠征し、行く先々ですばらしい演奏を聴かせて大絶賛されたヴィルトゥオーゾです。師匠はニコラ・プラテルというフランス人——そう!つまり彼こそは、ド・ベリオやヴュータンなど同郷のヴァイオリンの名手たちと同じく、正統的に「フランコ・ベルギー派」を名乗りうるチェロ芸術家だったのです!
 1840 年頃に作曲した「スパの追憶」(「スパ」は「温泉」という欧州語の語源にもなった、ローマ古代から続くベルギーの温泉街の名)はマインツのショット社から楽譜出版され、いまだに再版されつづけているベストセラー名曲。まるでヴェルディのオペラを15 分強の室内楽に凝縮したような、息をもつかせぬ展開、絶妙のカンタービレ、鮮烈な技巧性などが交錯する、演奏効果ばつぐんのチェロ独奏曲です。
 本盤はこの「スパの追憶」はもちろん、それぞれ10 分以上にもおよぶ壮麗・芳醇な技巧的チェロ作品を4作も収め、セルヴェ芸術の真髄をあざやかに浮き彫りにしてくれる1枚!
 「スパの追憶」のピアノ伴奏版以外は驚くほど知られていないその音響世界には、ヴュータン、ヴィエニャフスキ、エルンスト…といった、技巧と歌心がみごとな調和をみせるヴァイオリン作品群の魅力を、すっかりそのままチェロに引き写したような味わいが。こういうチェロ曲を聴きたかった!という方は、きっと多いことでしょう。
 セルヴェと同郷のベルギー・ブリュッセル出身、フルニエやシャフランに師事したポスキンの美音と技巧も実に頼もしく、ロザムンデ・アンサンブルの絹のような弦楽伴奏をバックに、陶然と聴き進めてしまうこと必至!各曲、聴き終えた時の充実感は桁外れです!



MFUG608
(国内盤)
\2940
ベルギーのピアソラ
 〜『タンゴの歴史』、およびその他の傑作さまざま

アストル・ピアソラ(1921〜1992):
 ①アレグロ・タンガービレ
 ②五重奏のための協奏曲
 ③幾年月の昔(タンティ・アンニ・プリーマ)
 ④タンゴの歴史
 ⑤孤独(ソレダー)
 ⑥乾杯 ⑦カリエーゴ調のミロンガ
マルク・グローウェルス(フルート)
クリストフ・デルポルト(アコーディオン、バンドネオン)
アンサンブル・アストリア
イザベル・シャルドン(ヴァイオリン)
エリック・シャルドン(チェロ)
レオナルド・アングラーニ(ピアノ)
サント・シンタ(各種打楽器)
クリストフ・デルポルト(アコーディオン、バンドネオン)
 歿後20年——ピアソラ芸術のユニヴァーサルな魅力、ベルギーという国の懐の深さ。無機質な線路に陽光がさしこむ美麗ジャケットが、そのサウンドの魅力を象徴しているかのよう。
 ヨーロピアンなアコーディオン、妖艶な弦、涼しげな打楽器の響き。そしてゲストは「あの巨匠」!

 ピアソラが亡くなってから、今年は早くも20 年目になるそうです。
 この間、日本では(というより、世界的に)タンゴの世界からクラシックへ、舞台芸術へ...と越境を続けてきたアルゼンチンの異才、アストル・ピアソラの芸術がどれほど国境を問わない、ユニヴァーサルな魅力をはらんでいたかということが、大いに理解されるようになってきました。
 バブル末期と今とでは「ピアソラ」という名前の響きが持つ妖艶な魅力のパワーが、まるで違ってきたようにさえ思われます。
 ヨーロッパ、とくにフランス語圏は、若きピアソラの才能を最初に見出したのがパリのナディア・ブーランジェだったこともあってか、独自のアプローチでこの天才音楽家の世界とコミットしてきている俊才が少なくないようです。諸民族の行き交う多民族・多言語国家ベルギーでも、それは同じこと。実はピアソラ自身もベルギーとは必ずしも無縁ではなく、稀代のフルート奏者マルク・グローウェルスに曲を捧げていたり、フランス語圏ベルギーの中心都市リエージュでのクラシック系ミュージシャンとの関わりから「リエージュに捧ぐ」というフルオーケストラ共演盤を録音していたりりするのです。
 ここにご紹介するのは、古楽から現代音楽・民俗音楽まで多元的な音楽芸術に開かれた感性をもつ人が多い国・ベルギーのFugaLibera レーベルが制作した、この巨匠が自国に注いでくれた愛に対する返礼ともいうべき秀逸盤。
 国内で活発な演奏活動を展開しているバンドネオン奏者デルポルトを中心とするアンサンブル・アストリアに、ゲストはなんと、ピアソラ自身との親交も深かった巨匠マルク・グローウェルスその人が!余裕綽々なのに深みを感じさせるフルートは、いかにも涼しく、しかし味わい深い。そこへラテンの情熱をはらんだ弦が、あるいは打楽器がからんで織り上げられるサウンドの、なんとノーブルかつエモーショナルなことでしょう...
 美食とアールヌーヴォー芸術、歴史的建築物の国ベルギーは、新しい音楽にもこれほど絶妙な適性をみせるものかと嬉しくなってしまいます。スタイリッシュな音楽を愛するクロスオーヴァー志向のファンに、是非届けたい逸品。

GRAMOLA



GRML98948
(国内盤)
\2940
ピアノ連弾によるブルックナーとリスト
ブルックナー:交響曲第3番 (マーラーによるピアノ連弾版)、
リスト:交響詩「レ・プレリュード」 (作曲者による連弾版)
マリアレーナ・フェルナンデス、
ランコ・マルコヴィチ(ピアノ連弾)
 若きマーラーの限りない敬意と明敏な作品分析から生まれた「ピアノ版」が、作品本来の「唯一のインスピレーション」を静かに浮かび上がらせてゆく。これぞブルックナー芸術の真髄。
 超絶技巧への配慮から解き放たれたリスト作品の、作曲者自身によるピアノ語法にも注目...!

 ピアノ連弾への編曲版——それはラジオやインターネットも、CD もレコードもない時代の人々にとって、壮大なオーケストラ作品を家で好きな時に味わえる、非常に貴重な手段でした。そして、その編曲のセンスひとつで、感じられる作品の魅力は大きく異なってくるのもまた事実...とは、ピアノの貴公子リストが自ら編曲した、ベートーヴェンの交響曲ピアノ版の楽譜に添えた前書きにある言葉でした。
 今で言えば昔の映画フィルムをデジタルリマスターする技術のように「機械的な作業に思われるが実は繊細な職人仕事」でもあった編曲作業ですが、つまらない編曲のせいで「しょせん編曲」と片づけられがちなジャンルとして見られていた側面もあったようです。
 しかし、はたせるかな——すでに録音技術が発達して連弾版などに頼らずとも大管弦楽の響きを手軽に聴き愉しめるようになった今こそ、この種の編曲の、それもとくにすぐれた作曲家や演奏家によるヴァージョンというのは、非常に大きな発見をもたらしてくれるものなのだ!ということが、この新譜で、あらためてよくわかりました。
 ブルックナーの交響曲、それも彼がワーグナーの“未来音楽”に大きく感化されながら後期のスタイルを確立してゆくうえでの、最も大きな転機にさいして書かれたというべき第3交響曲——発表当時は難解で理解者も少なかったこの作品に強い感化を受けたのが、ようやく少年時代を脱しようとしていた若きマーラー。彼が1877 年版の楽譜をもとに周到につくりあげた同作のピアノ連弾版は、オーケストラで錯綜する書法をピアノという均質なテクスチュアのうえで的確に整理し、結果的に「連弾による壮大・巨大なピアノ・ソナタ」ともいうべき充実した音楽に仕上げられています。
 それを演奏するのは、ウィーン市立芸大の学長たるクロアチア出身の名匠ランコヴィチと、「東洋哲学の国」インドからウィーンにやってきた侮りがたい異才ピアニスト、マリアレーナ・フェルナンデス!息をのむようなピアニシモの序奏部分から「只者ではない」と感じさせる、ダイナミックかつ精妙な解釈は、彼ら自身による解説(全訳付)でピアノ版編曲について「オーケストラという色鮮やかな風景を白黒写真にするのではない。オーケストラの音響に結実する、指揮者ひとりの脳裡のインスピレーションをピアノで表現すること」といった説明がなされていることの、このうえなく雄弁な証左になっているのです。
 そして併録作品は、上でも名前を挙げたピアノの貴公子リスト自身による、交響詩の傑作中の傑作「レ・プレリュード」の貴重な連弾版——彼の門下の鬼才タウジヒによる超絶技巧のピアノ独奏版編曲もある傑作が、作曲者自身による的確なピアノ版として、しかも超絶技巧に頼らなくては処理できないような音型も(手が4本、指が20 本あることで)より明瞭に、的確にピアノのテクスチュアに置き換えられている——この編曲版での彼らの名演もまた、編曲行為ということについての深い見識を感じさせてやみません。
 「音楽の都」ならではの充実企画と名演、くれぐれもお見逃しなく!

INDESENS!


INDE046
(国内盤)
\2940
ピアソラ 頭のおかしくなった男のバラード
 〜バンドネオンとピアノによるピアソラ傑作選〜

アストル・ピアソラ(1921〜1992):
 ①ミケランジェロ70 ②ブエノスアイレスの冬
 ③リベルタンゴ ④ソレダー(孤独)
 ⑤頭のおかしくなった男のバラード
 ⑥アヴェ・マリア ⑦デカリシモ
 ⑧バチン亭の少年 ⑨アディオス・ノニーノ
デュオ・インテルメッツォ
マリエル・ガール(ピアノ)、
セバスティアン・オトマユー(バンドネオン)
 大人の夜——そんな言葉が思わずこぼれる、スタイリッシュな音の交錯、痛烈なラテン的情感。
 ピアソラ自身の楽器だったバンドネオンは、クラシックの中心的楽器ピアノと、こんなにも相性がよかったのか!と唸らされるのも、弾き手二人が、絶妙の音の機微を知る達人だから。アストル・ピアソラ——故郷アルゼンチンの音楽タンゴの世界からクラシック界へと足を踏み入れ、そのノウハウを故郷で応用しながら「ヌエボ・タンゴ(新しいタンゴ)」と呼ばれる新境地を切り拓く一方、クラシックの演奏家や聴き手たちからも熱心なエールを送られるジャンル越境型の芸術家。タンゴという音楽がもともとナイトクラブや酒場で演奏されるものだったからか、ピアソラの作品はどれをとっても「夜の音楽」という言葉がしっくり似合う、辛口の抒情が宿っているようです。
 そんな作品美をきれいに浮かび上がらせるには、いたずらに賑やかでも、堅苦しくかしこまっていてもだめ——理知的に筋の通った、しかしその場で沸き上がるライヴ感や迸る思いを大切に。クラシックの演奏家たちは技巧こそ飛びぬけてすぐれているけれど、クラシックという枠を外したときのこういう「音楽ありき」のアプローチができる人となると、おのずと限られてくる、やはり相当な芸達者でなくては難しいところ。ましてやピアソラ自身が五重奏バンドで演奏するのが常だったところ、それよりも少ない演奏者数でその味わいを十全に生かすとなると——こういった「できない理由」をいちいちあげていてもきりがないのですが、百戦錬磨のジャンル越境型プレイヤーには事欠かないフランスのIndesens!レーベルから届いたこの新譜を聴いていたら、そういう言い訳なんてきれいさっぱり忘れてしまうかもしれません。
 デュオ・インテルメッツォはおもに南仏プロヴァンス地方で腕を磨いてきた若い異才ふたりのユニットですが、ピアソラ自身の楽器でもあったバンドネオンと、クラシックの中心楽器であり同時に「ナイトクラブの楽器」でもあるピアノという組み合わせから繰り出される音楽の妙は、ひとつひとつの楽器のポテンシャル、弾き手のたぐいまれな感性とあいまって「まるでピアソラ自身がこのデュオをイメージしながら曲を書き進めていたのでは?とさえ思わせる生々しさ」とライナーノート(全訳付)にあるとおりの仕上がり!
 空気が涼しくなり、何となく寂しさを感じる秋から冬にかけて、長い夜をじっくり過ごす良き伴侶になってくれそうな逸品です。


INDE041
(国内盤・4枚組)
\4620
テオドール・パラスキヴェスコ(ピアノ)
 ドビュッシー ピアノのための主要作品集
  〜Calliope の歴史的名盤 1976-80 〜

クロード・ドビュッシー(1862〜1918):

 《CD I》
  ①前奏曲集 第1集
   (デルフォイの舞姫たち/ヴェール、あるいは帆/野をわたる風/
    音と香りは夕暮れの大気に漂う/アナカプリの丘/雪の上の足あと/
    西風の見たものは/亜麻色の髪の乙女/遮られたセレナーデ/
    沈める聖堂/パックの踊り/ミンストレル(旅芸人)たち)
  ②前奏曲集 第2集
   (霧/枯葉/ビーノ門(ワインの門)/妖精たちは艶やかな踊り子/
    ヒースの荒野/ラヴィーヌ将軍、すなわち奇人/
    月の光が降り注ぐテラス/オンディーヌ/ピクウィック殿を讃えて/
    カノープ(エジプトの壺)/交差する三度/花火)

 《CD II》
  ①映像 第1集(水の反映/ラモーを讃えて/動き)
  ②映像 第2集
   (葉ずえを渡る鐘の音/そして、月が荒れた寺院へと降りてくる/金いろの魚)
 ③英雄たちの子守歌
 ④子供の領分
  (グラドゥス・アド・パルナッスム博士/象の子守歌/
   お人形に捧げるセレナーデ/雪は踊っている/小さな羊飼い/
   ゴリウォーグのケークウォーク)

 《CD III》
  ①ピアノのために(前奏曲/サラバンド/トッカータ)
  ②版画(パゴダ/グラナダの夕暮れ/雨の庭)
  ③ベルガマスク組曲
   (前奏曲/メヌエット/月の光/パスピエ/夜想曲)
  ④六つの古代碑銘 〜2台のピアノのための

 《CD IV》
  ①二つのアラベスク ②レントより遅く ③小柄の黒人
  ④喜びの島 ⑤練習曲集 第1集 ⑥同・第2集
テオドール・パラスキヴェスコ(ピアノ)
 真にフランス音楽を愛する人たちが支えてきた、フランスの名門Calliope レーベルの傑作選!
 イヴォンヌ・ルフェビュールとナディア・ブーランジェの薫陶を受けた、まごうことなき異才がフランス近代の、においたつようなエスプリの真髄を聴かせてくれる。傑作録音、BOX化!

 ドビュッシー記念年らしい企画が、続々と各社から届きます。今度はIndesens!レーベルから。
 フランスの老舗Calliope レーベルを受けつぎ、その音源を多数傘下に収めたこのレーベルから登場するのは、この名門レーベルの知る人ぞ知る名盤、ルーマニア出身のフランスの異才パラスキヴェスコによる体系的なドビュッシーのピアノ作品集!
 実質上ほぼ全集に相当するヴォリュームと内容ですが、とにかくその演奏がひたすらに美しい。
 パラスキヴェスコは1940 年ブクレシュティ生まれ、ルーマニアからパリに出てきた後は名教師ナディア・ブーランジェと、フルトヴェングラーの共演者としても名高いイヴォンヌ・ルフェビュール門下で研鑽を重ね、1971 年にはドビュッシー賞を受賞。Calliope レーベルの快進撃を知る玄人ファンにとって、パラスキヴェスコがこのレーベルに残したベートーヴェンの、ラヴェルの、フォーレ歌曲伴奏の名演の数々は、20 世紀輸入盤史に残る不滅の名盤に数え上げられていることでしょう。
 祖国フランスでもきわめて高く評価されてきたこの録音が、周到な解説(日本語訳付)そのまま、一挙にお求めやすい価格でCD として入手できるようになったのは、本当に嬉しい限りです。
 とほうもなく繊細かつ精確無比なタッチで綴られる「アラベスク」や「映像」の息をのむ美しさ、「沈める聖堂」や「オンディーヌ」での妖艶ともいえる静謐な響き、あるいは「ベルガマスク組曲」での軽妙なコントラスト、あるいは「レントより遅く」での深い息遣いに宿る、絶妙の客観性とかぎりない主情的共感の交錯——この4枚のCDの聴きどころをあげだしたら、きりがありません。
 Calliope 特有の、ほどよい残響感のなかで直接音がすっと耳に届いてくるような録音も美しく、「磨きぬかれたフランス70 年代のドビュッシー録音」としての果てしない魅力は、エリック・ロメールやフランソワ・トリュフォーら同時代の名作フランス映画にも通じる、この時代のフランス文化特有の「何者にも凌駕しえない魔力」に満ちているようです。
 フランス音楽が好きな方なら、一部を試聴機などで耳にしたら必ずや手にとって帰りたくなるであろう、フランス直送の逸品BOX です!仏Diapason金賞(ディアパゾン・ドール)

JB RECORDS



JBR012
(国内盤)
\2940
トリオ・ソリストゥフ・レオポルディウム
シューベルト(1797〜1828):
 1. 弦楽三重奏曲 変ロ長調 D 581
モーツァルト(1756〜1791):
 2. 弦楽三重奏のための断章(アレグロ)ト長調 KV562e/Anh.66
レーガー(1873〜1915):
 3. 弦楽三重奏曲 イ長調 op.77b
トリオ・ソリストゥフ・レオポルディウム
(レオポルド・ソリスト三重奏団)
クリスティアン・ダノヴィチ(vn)
ミハウ・ミツケル(va)
マルツィン・ミシャク(vc)
 収録曲3曲すべてがまさにそうした「見つからない傑作」!これらの曲が見つからないのはいわば必然で、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロからなる弦楽三重奏という、きわめて演奏しづらい形態で書かれた作品だから。弦楽四重奏から第2ヴァイオリンを省いただけで、ヴィオラの存在感は強烈に高くなり、全員がソリスト級の腕前と確かな室内楽的センスを持ち合わせていないと、素晴しい演奏には仕上げにくいらしいのです。
 そうした難題をまるで感じさせないくらい易々とクリアしてみせ、比類ない仕上がりの極上室内楽として聴かせてくれるのは、東の音楽大国ポーランドで活躍する名手3人——18世紀以来の音楽拠点として知られるヴロツワフ(旧ドイツ領、巨匠クレンペラーの故郷)のレオポルディウム室内管弦楽団でトップ奏者をつとめる三人の弦楽器奏者は、惚れ惚れするような完全無比の技量で(こういう突き抜けた腕前は「さすがポーランド!」というほかないところです)、ぬるいところが一切ない、隅々まで磨き抜かれたブレのないアンサンブルでこれらの何曲を味あわせてくれるのですが、とにかくその名演ぶりはもうため息もの!
 長大でありながら接しやすい絶美のフレーズに事欠かないレーガーの傑作三重奏曲(実にいい室内楽曲です)、ようやく20 歳になるかどうかという頃のシューベルトが仕上げた古典的かつ叙情あふれる逸品(もっと録音が出てもいい傑作)、そして秘曲中の秘曲は「モーツァルト晩年の弦楽三重奏曲」...あの有名&長大なディヴェルティメントKV563 と前後する頃に書かれたとおぼしきこの単一楽章の逸品、残念なことに後半が未完成のまま放棄されていたところ、稀代の研究家フランツ・バイヤーが補筆完成させてくれたおかげで全曲として聴けるようになったもの。伸びやかなメロディの美しさといい、晩期モーツァルト特有の「はかなさ」の漂う曲調といい、知らずに過ごすにはあまりに惜しい晩年の傑作(競合盤は滅多に見つかりません)。
 美麗Digipack のパッケージにはライナーがないので、日本語解説で作品紹介も完備致します。貴重な発見にあふれた逸品、お見逃しなく!

NCA



NCA60250
(国内盤)
\2940
<メーカー在庫限り>
ハーゼルベック&ウィーン・アカデミー管
 絶好調リスト第3弾!

リスト:交響詩『マゼッパ』・『ハンガリー』・『フン族との戦い』
  〜19世紀当時の楽器による〜
フランツ・リスト(1811〜1886):
 1. 交響詩第11 番「フン族との戦い」
 2. 交響詩第9番「フンガリア(ハンガリー)」
 3. 交響詩第6番「マゼッパ」
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー管弦楽団(古楽器使用)
 既存2作の大好評を受け、第3弾も国内仕様で登場。(輸入盤はご紹介済み)
 リストの故郷ハンガリーにちなむ演奏機会の少ない注目作2曲と、やはり“東”とかかわりのある伝説にもとづく「マゼッパ」。
 ロマン派ならではの審美眼は「当時のオーケストラ」でどう響いたのか。今回も解説は充実至極!
 NCA レーベルの待望企画、ついに第3弾も登場——リスト生誕の地であるオーストリア・ハンガリー国境付近の町ライディングで録音が続けられている精鋭古楽器集団ウィーン・アカデミー管弦楽団の「ヴァイマール宮廷楽団の編成と楽器による」リスト録音、第2弾が『レコ芸』準特選に輝いているさなかに登場する第3弾は、「東方の異文化」がテーマの3作を収録。
 いずれもさほど演奏機会が多いとはいえない作品ばかりですが、やや有名なのはやはり『マゼッパ』でしょう——古くから名演も少なくないドラマティックなこの逸品も、ガット弦使用の小編成弦楽合奏、強烈なコントラストで胸に響くティンパニ、オルガンにも比しうる当時の管楽器の音色の重なり...といった19世紀楽器特有のサウンドのなかでは、まったく新しい、まるで今そこで書かれたばかりであるかのようなみずみずしさで響き、興奮を禁じ得ません!
 さらに嬉しいのは、めったに聴く機会がないと言っても過言ではない、リストの「心の祖国」ハンガリーにまつわる2作が一堂に会しているところ。「戦いの活写ではなく、空想上の戦場を描いたロマン派絵画の音楽的再現」であるという「フン族との戦い」は、キリスト教化以前のハンガリーを荒らしまわっていたという異民族フン族と、欧州民族の祖先にして古代西ローマ帝国の事実上の後継国家である西ゴート王国との戦いにまつわる作品。
 コントラストの聴いた表現の的確さは、指揮者ハーゼルベックが自身オルガン奏者として「ひとりで音響総体の設計をしてゆく」という演奏スタイルに秀でているからこそ。まさに縦横無尽の整然とした解釈がたまりません。そして、同時代のハンガリー人詩人ヴェレシュマルティから捧げられた詩に対する“返歌”として作曲されたという、ハンガリー民族の自律性を音で描き出した交響詩『フンガリア』での、ロマ民俗音楽や抒情性あふれる響きに彩られた思いがけない魅力の諸相。
 今回もまた解説書が一段と充実しており、とくに1850 年前後のオーケストラ管楽器というものが実際どんなものだったか、前後の文脈をふまえて説き明かした小論はそれだけでも一読の価値があります(今回も解説全訳付)。
 周到な演奏設計、充実した作品解釈もさることながら、使用楽器、とくに管楽器はできるだけ「リストの知っていたものに近いオリジナル、もしできればリスト自身が指揮したオーケストラで当時使っていたオリジナル楽器」を揃える徹底ぶりが、今回も大きな実をむすんでくれました。



第1弾・第2弾

NCA60234
(国内盤)
\2940
リスト:ダンテ交響曲&システィーナ礼拝堂を想って
 (19世紀当時の楽器による)

フランツ・リスト(1811〜1886)
1. ダンテの『神曲』による交響曲(ダンテ交響曲)
2. システィーナ礼拝堂を想って
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー(古楽器使用)、
シネ・ノミネ合唱団
 「リスト生誕100周年」に、驚くべき企画が登場。これは、ぜひ解説までじっくり読むべきかも。
 長大な解説の完全日本語訳付、価格分の損はさせません。
 リストならではの管弦楽作法を知るなら、この古楽器録音はインマゼール盤と並ぶ必聴クラス。静かなる異才、炸裂。

 Membran 傘下、名盤・充実企画あまたのNCA レーベル、本年最大といっても過言ではない重要リリース盤。
 リストが生きていた19世紀、クラシックの楽器は彼自身が弾いていたピアノをはじめ、みな現代の姿へとたどり着く前の変化の過程にあったことは、御存じのとおり。ならば、ロマン派の時代にあって管弦楽音楽のあり方に驚くべき新機軸を盛り込んでみせたフランツ・リストが思い描いていた響きが、いったいどのようなものだったのかは、当時の楽器の状態や演奏法を知らなくては全くイメージできないのではないか。・・・そう考えていち早く「古楽器によるリスト管弦楽作品集」を録音してみせたのが、『レコード芸術』で特選盤に輝いたインマゼール&アニマ・エテルナの傑作盤だったとすれば、それからなお数年の研究期間をへて、リストの生地ハンガリーにより近い「ひそかな古楽拠点」ウィーンで静々と計画をあたためていたのが、この国屈指の古楽器奏者たちを育ててきた超・重要古楽オーケストラ「ウィーン・アカデミー」の主宰者、マルティン・ハーゼルベック。
 ハーゼルベックは自らオルガン奏者として、リスト芸術のもう一つ知られざる重要ジャンル、オルガン作品の原題校訂譜の監修にあたるなど、古楽器畑にいながら長年リストの音楽を思わぬ側面から見つめ続けてきた異才。ウィーン古典派と19 世紀ロマン派の息吹そのまま、オーストリア人にしか体得しえない独特のリズム感を古楽器演奏のノウハウと矛盾なくからみあわせ、充実した古楽器演奏を提案しつづけてきたウィーン・アカデミーは、今やArcana で大活躍中の異才バロック・ヴァイオリン奏者グナール・レツボールが一時コンサートマスターをつとめていたり、ハンガリー古楽界の俊才バラーシュ・ボザイがチェロを弾いていたりと、中欧の古楽シーン育成に大きく寄与した重要団体でもあります。リストの基本的な管弦楽作品の「19 世紀の響き」をインマゼール盤で実感したなら、今度は必ずやこちらを聴くべき。
 稀代の文学通だったリストが、欧州近代文学の曙を飾ったとも言えるイタリアの詩人ダンテの傑作『神曲』にインスパイアされて作曲した『ダンテ交響曲』は、その鮮烈かつダイナミックな音楽表現、涙をさそう感動的なカンティレーナ、長大な演奏時間、どれをとっても19 世紀の並居る傑作管弦楽曲にひけをとらない大作ながら、注目される機会が今一つ少ない不遇の傑作...それがぱリスト生前の楽器やオーケストラ編成、演奏解釈のあり方を徹底的に検証、管楽器の一部はリストが指揮していた頃のヴァイマール管弦楽団が実際に使用していたものまで動員してのこの録音を聴けば、本当のコントラバスの低音、本当の金管の咆哮、本当の木管のバランスや理想的なガット弦の透明感...と、『ダンテ交響曲』に秘められた周到な音響表現が納得できる・・・いや、痛いくらいに脳髄を刺激してくれるはず。そしてリストがいかに精緻な音響設計をしていたのか空恐ろしくなるはず。
 その秘訣は、ヴァイマール楽団の真実を解きあかした長大な解説(全訳添付)でさらに理解が深まり、いよいよ面白くなること請け合いです。圧倒される喜び、読み解く愉しみ——「古楽器演奏」の醍醐味が、この1作に詰まっています。漫然と聴き過ごしたくない傑作盤、ご注目ください!

NCA60246
(国内盤)
\2940
19世紀当時の楽器によるリスト交響詩
フランツ・リスト(1811〜1886)
 1. 交響詩第3 番「レ・プレリュード(前奏曲)」
 2. 交響詩第4 番「オルフェウス」
 3. 交響詩第1 番「山上で聞きし事」(山岳交響曲)
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー管弦楽団(古楽器使用)
 音楽性が飛びぬけていればこそ、企画のねらいが明確になる——作曲当時の演奏スタイル、当時の楽器を使うことで、リストの真意はあらためて明らかに。

 ほとんど交響曲のような「第1番」含め、選曲も解説も超・充実の新作!
 「古楽器によるリスト管弦楽作品」シリーズ、第2弾!
 すでに第1弾リリース『ダンテ交響曲』はさっそく注目の的となり、ハーゼルベック自身をはじめとする音楽学者たちの丹念な解説(全訳付)もさることながら、その桁外れな演奏、一部にリスト自身が指揮していた当時のヴァイマール宮廷楽団で使われていたオリジナルの古楽器まで登用し、弦楽編成を当時流で少人数に絞るなど徹底したこだわり、その結果として浮かび上がってくる作品美の「真意」などがさっそく注目を浴び、業界最大手誌に先駆けていくつかの雑誌にも充実した紹介がなされはじめています。
 巨匠アルノンクールのウィーン・コンツェントゥス・ムジクスとともにオーストリア古楽界を牽引してきたといっても過言ではない超・重要団体ウィーン・アカデミーと、その主宰者で自ら音楽学者・オルガン奏者としてリストの芸術世界に深く携わってきた古楽鍵盤奏者マルティン・ハーゼルベックは、この作曲家の管弦楽作品を「ダンテ交響曲」の録音と同じフィロソフィーのもと続々録音してゆくとのことで、このたび登場する第2弾リリースがこちらというわけです。
 選曲がまず憎いところ。
 超有名曲「レ・プレリュード」、録音があるようで意外に多くはない「オルフェウス」、そして何かと見過ごされがちなリストの交響詩「第1番」である「山上で聞きし事」、知名度の点でのバランス良いばらつきを意識しているのかもしれません。
 しかし何より、今回も演奏内容がとほうもない——弦セクションの一糸乱れぬ統率力、“自然素材”の存在感を強烈に漂わせて響いてくるティンパニ、迫力満点のピリオド金管、透明感あふれる木管の味わい、とにかく音符ひとつひとつ、和音ひとつひとつの存在感が「迫真」というほかないのです!おそらく、ハーゼルベックと演奏陣の意思疎通が完璧なのでしょう。演奏者ひとりひとりが、古楽器奏者として自分の楽器を知り尽くし、そのうえで各瞬間にどうすべきか理解してオーケストラを織り上げている、まさに知的俊英集団だからこその演奏クオリティ。ヒストリカル演奏や現代楽器演奏に慣れた方も、この迫力には理屈抜きに抗えないのではないでしょうか。
 今回も充実内容の解説書(全訳付)には、ハーゼルベック自身のリスト芸術との出会いも詳述。シリーズの「要」となる今回のアルバム、ちょっと見過ごせません。


第1弾・第2弾の輸入盤
(日本語訳はありません)
NCA 60246
\2000→\1790
ハーゼルベック&ウィーン・アカデミーによる
 リスト
第2弾
リスト:
 交響詩「前奏曲」、
 交響詩「オルフェウス」、
 交響詩「山上にて聞きしこと」
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー
NCA60234
¥2000→\1790
ハーゼルベック&ウィーン・アカデミーによる
 リスト第1弾

リスト:
 ダンテ交響曲
 システィーナ礼拝堂を想って
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー
シネ・ノミネ合唱団

輸入盤

NCA 60254
\2000→\1790
リスト:管弦楽曲集第3弾
 交響詩「タッソー、悲哀と勝利」  2011/3/25-27
 タッソーの輝かしき葬送   2011/10/24
 交響詩「英雄の嘆き」  2011/3/25-27
 交響詩「理想」  2011/3/25-27
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー
 最新作第3弾も輸入盤はご紹介済み。日本語解説がなくてもいいよ、という方はこちらをどうぞ。


PAN CLASSICS



PC10263
(国内盤・2枚組)
\4515
SYMPHONIAの名盤復活!
シューベルト(1797〜1828):
 1. ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調op.100/D 929(1827)
 2. ピアノ三重奏曲 第1番 変ロ長調op.99/D 898(1827)
メンデルスゾーン(1810〜47):
 1. ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 op.49(1839)
 2. ピアノ三重奏曲 第2番 ハ短調 op.66(1845)
アンサンブル“ヴォチェス・インティメ”
ルイージ・デ・フィリッピ(vn) (古楽器使用)
サンドロ・メーオ(vc)
リッカルド・チェッケッティ(fp)
 ただただ単純に、SYMPHONIAのメンデルスゾーンの名盤がよみがえったのが嬉しい。この典雅な響き。得がたい感慨。

SYMPHONIAのジャケット


 メンデルスゾーン、シューベルト。古楽器によるピアノ三重奏曲全集。
 ピアニストとしても活躍していた二人の大物ロマン派が残した、忘れがたい室内楽の傑作。
 その本物の味わいは、やはり「当時の楽器と奏法」でなくては辿りつけないものなのかぱとひしひし思わされる瞬間が多々。侮りがたい活躍をみせるイタリア古楽勢の傑作録音、登場。

 この2枚組、なんといってもジャケットに掲げられた落葉の写真が息をのむほど美しい・・・。
 すばらしく秋向けなパッケージですが、その魅力につられて手を伸ばしてみた方に、至高の満足感をもたらしてくれる演奏内容が圧巻なのです。
 もともと世紀の変わり目頃、今はなきSymphonia レーベルからリリースされていた2枚のアルバムを2CD アルバムに再編成したものですが、その演奏内容は決して見過ごされて然るべきものではないようです。初期ロマン派を代表する2巨星、シューベルトとメンデルスゾーンのひとつ残らず傑作なピアノ三重奏曲を、すべてこの1セットで味わえる。
 しかも、そのすべてが周到に考え抜かれた、とびきりの音楽センスを誇る古楽器奏者3人によって織り上げられた「当時の楽器と奏法による」名演というのですから、どうして見過ごしている手があるでしょうか?

 ご存知のとおり、シューベルトはベートーヴェンが亡くなった1年後に病歿するのですが、この楽聖の死と前後して、それぞれ大掛かりな規模をもつピアノ三重奏曲を2曲残しました。
 シューベルト晩年の創意の高まりが驚くほど高次元に結晶し、数多の名演奏家たちが気合の入りまくった名演を残してきた王道傑作ではありますが、シューベルト自身の知っていた楽器の演奏スタイルと響きをよく知る本盤の演奏家たちいわく、「そうした情念たっぷりの演奏では、この2曲本来の魅力にはとうていたどりつけない・・・・。当時のピアノの繊細な響き、当時の羊腸弦の調べと奏で方を知ってこそ、シューベルトがどうしたかったのか、どんな音楽としてこれらの傑作を綴っていたのか?という真相と向き合える」・・・とのこと。
 実際、本盤の演奏ではいたるところ、フォルテピアノの弱音がもたらす息をのむような美質が「こんな曲だったか」という嬉しい驚きに出遭えること必至。これら2曲は、彼がチェロという楽器にも開眼させられていたことを象徴する書法も見られるとのことで、エンドピンのない古楽器チェロでの演奏はその点でも示唆に富んだサウンドを聴かせてくれます。

 そして、メンデルスゾーン。
 あまりにも過小評価されている2曲のピアノ三重奏曲の魅力は、自身凄腕ピアニストとして活躍していたメンデルスゾーンの名演ぶりを思わせるピアノ・パートが美しさを「当時の楽器」で聴くとき、その真価が深い感慨と感動を呼びさましてくれるに違いありません。演奏の巧みさの点ではまったく文句なし。
 Alpha の超名盤、スホーンデルヴルトによる「初演時編成ベートーヴェン協奏曲」で突き抜けた第1 ヴァイオリン(の事実上ソロ)を聴かせ続けてくれたルイージ・デ・フィリッピの活躍も頼もしく、全編「ほんとうの初期ロマン派」の透明な美しさ、切ない情感の深まりを堪能させてくれます。
 解説充実(全訳付)、商品価値の高い1作です。

RAMEE



RAM1104
(国内盤)
\2940
ムートンと、ふたりのガロ〜
 太陽王ルイ14世の時代、フランス晩期リュート楽派の世界

 ジャック・ド・ガロ(1625頃〜1690頃):
  ①組曲 イ短調 ②組曲 ヘ短調/ハ長調
  ③プシュケの嘆き
 ピエール・ガロ(1660頃〜1715以降):
  ④組曲 ト短調
 シャルル・ムートン(1617〜1699頃):
  ⑤組曲 ハ長調 ⑥組曲 イ長調
アンスニー・ベイルズ(リュート/G.F.ヴェンガー1722 年製オリジナル)
 リュートが「最も高貴な楽器」でありつづけ、かつリュリが新しい「ルイ14世様式」を確立した頃。
 フランス・バロックの最も美しく繊細な芸術が、このほんの一時にだけ結実した—— リュート界の巨匠ベイルズが、羊腸弦と貴重なオリジナル楽器で描き出す、かそけき小宇宙。

 リュート独奏のCD というと、バッハやヴァイスの作品ばかりが注目されるのが世の常かもしれません。あるいはせいぜい、ダウランドのものがいくつか、とか...
 しかしご存知のとおり、この楽器はおよそ中世末期からルネサンス・バロック時代にかけ、ピアノの前身であるチェンバロなどよりもずっと高貴な、あらゆる楽器の王たる存在として重宝されており、その魅力が最もみごとに花開いた黄金時代といえば、それはやはり16〜17 世紀ということになってきます(そもそもチェンバロのための音楽は、フランスではとりわけ後発のジャンルにすぎず、リュートの音楽をまねするところからスタートしていたくらい)。
 そういった事情は、日本のリュート愛好家にとっては当然常識に近いことでしょうが、この分野のリュート音盤というのはどうしたものか、必ずしもたくさん出てくるわけではありません。ひとつひとつのリリースが非常に貴重になってくるところ、先入観なしに「ほんとうに美しく、かつ誰も知らなかったような」古い時代の響きを発掘することにかけては世界随一のRamee レーベルから、とてつもなく有難く素晴らしいアルバムが登場いたしました——
 リュートがとりわけ大事にされたフランスで、高貴で繊細な芸術に目がない宮廷人たちを相手に活躍した巨匠、ガロとムートンの組曲群。
 このふたりはフランス・リュート楽派の最後を飾る巨匠たちで、その後ド・ヴィゼーが現れる頃にはもはや衰退の一途をたどりはじめていたリュート音楽の栄光を、最後にひときわ強く輝かせた重要人物…古くはDHM やSEON ( どちらも現SONY/BMG)でドンゴワやユングヘーネルといった伝説的名手たちが制作していた貴重なフランス・バロック系録音にも、このふたりの名が燦然と輝いています。しかし、いずれも単体の作曲家としてこれほどおおきくとりあげられる機会は稀もよいところ...とくにムートンは、数年前にE Lucevan Le Stelle レーベルから出たアッコルドーネの俊才フランコ・パヴァンによる傑作録音がプレス切れになってしまったところ、このリリースの存在意義はひときわ大きいと言えます。
 さらに「老ガロ」として有名なジャック・ド・ガロの甥で、18 世紀(クープランの時代)まで生きたピエール・ガロの組曲まで含まれているのは快挙。
 かそけきリュートの調べで、17 世紀後半にフランスを魅了しつくしたリュリ作品の編曲まで聴けるというのは、本当にかけがえのない機会ではないでしょうか。しかも、演奏者は現代リュート界の最長老といってもよい超ヴェテラン、英国の巨匠アンスニー・べイルズ!! すでにRAMEE では2枚のアルバムで実績をあげているこの大御所が、めったに見つからない18 世紀オリジナルのリュートで、そしてアクィラ工房のつくる世界最高峰&音楽史最先端の羊腸弦でこれらのレパートリーを弾いてくれたのは感涙ものの大事件です。
 息をのむような繊細な表現、時に大胆なメリハリもいとわない解釈——フランス的洗練、弱音と空気感、リュートを聴く穏やかで深い喜びが、この1枚にすべて詰まっています。
 演奏者自身による長大な解説文(全訳付)も、例によって読みごたえたっぷり。アルバムとしての完成度に、ただただ驚かされる逸品です。

RICERCAR



MRIC308
(国内盤・訳詞付)
\2940
マテオ・ロメロ(1575頃〜1637)世俗作品集
 〜最後のネーデルラント楽派、スペイン音楽を動かした巨星〜

 マチュー・ロマラン、通称マテオ・ロメロ(1575 頃〜1637)
  ①4声のロマンセ「静かに流れる、二筋の小川のあいだ」
  ②2声のフォリア「花咲くローズマリー」
  ③3声のカンシオン「どこへ行ってしまった、わたしの心」
  ④器楽合奏「美しい女・怒れる女」
  ⑤4声のフォリア「夜明けはやさしく微笑んで」
  ⑥「ああ!わたしは死ぬ、嫉妬のあまり」〜器楽合奏による前奏
  ⑦3声のレトリーリャ「ああ!わたしは死ぬ、嫉妬のあまり」
  ⑧器楽合奏「メドーロが受けた傷」
  ⑨4声のロマンセ「クエンカの美しい村娘」
  ⑩3声のカンシオン「この寒い冬のさなか」
  ⑪4声のロマンセ「棘のある枝も、夏の終わりには実をつける」
  ⑫3声のカンシオン「いつか天へ上がってしまう、わが思慮よ」
  ⑬4声のロマンセ「古ぼけた小舟が一艘」
  ⑭3声のカンシオン「気持ちのよい海辺で」
  ⑮4声の歌「漁師よ、おまえは再び海へ」
レオナルド・ガルシア・アラルコン(オルガン)指揮
Ens.クレマチス&カペッラ・メディテラネア(古楽器使用)
 この巨匠を見過ごしていたとしたら、バロック・ファンもスペイン音楽ファンも、あまりに惜しい!
 モンテヴェルディと同じ頃、ビクトリア亡き後のスペイン楽壇に君臨したとてつもない異才——その至芸に、スタイリッシュ&エモーショナルな「ラテン古楽」で開眼を。

 いやー、本当に「古楽」という領域においては、作曲家の知名度などというものがいかに何の意味も持たないことか!
 送られてくる新譜に接していると、常々そう唸らされる瞬間ばかりなのですが、この1枚には本当に心底、驚かされました。
 マテオ・ロメロ。
 17 世紀初頭のスペインで、巨匠ビクトリア亡き後のバロック移行期を支えた偉大な作曲家。
 名前こそスペイン風ではありますが、これはあくまでスペイン語読みされているだけで、本名は「マチュー・ロマラン」とフランス語。
 そう、彼はベルギー生まれの音楽家(いわゆるネーデルラント楽派)がヨーロッパ中で最も才能豊かな音楽家と考えられていた時代、フランス語圏ベルギーの古都リエージュで生まれ、ネーデルラント地方を支配下に収めつつ「音楽はネーデルラント人に限る」と宮廷聖歌隊をことごとくネーデルラント(ベルギー)出身者で固めていたスペインの宮廷で活躍、後年はこの宮廷聖歌隊の監督として圧倒的な影響力を誇ったと言われます。
 しかしてその音楽は、これまで資料が少なかったせいもあり、ほとんど教会音楽ばかりが知られている程度でした。
 ところが、地中海周辺諸国の古い音楽にすばらしい適性をみせるラテン系古楽集団による本盤は、実に珍しく、このマテオ・ロメロの世俗曲ばかりを集めた内容。
 そのサウンドが、素晴らしいのです!
 「民俗風味をほんのり湛えたスリリングな古楽器サウンド!」といった路線が好きな方には、迷わずお勧めしたい音楽。
 ——ロメロはルネサンス末期のイタリア音楽にみられるようなマドリガーレ的重唱書法をベースとしながら、その実、各パートのソリスト的立ち回りを追求したバロック・オペラ風の書法あり、スペイン民俗音楽のテイストをたっぷり盛り込んだフォリアやロマンセあり、演奏者側でもバロック・ギターや地声風の歌い口をフルに活かして、ラテン民俗系なのか古楽なのか、そのぎりぎりの境界上で絶妙にノーブルなサウンドを仕上げてゆくのです。
 示唆に富んだ解説も、歌詞も全訳付。

MRIC322
(国内盤・訳詞付)
\2940
モンテヴェルディ:ミサ曲『そのときイェスは』
クラウディオ・モンテヴェルディ(1567〜1643)
 ①6声のミサ曲「そのときイェスは」
  (ミサ・イン・イッロ・テンポーレ)
 ②3声のモテトゥス「ごきげんよう皇后様(サルヴェ・レジーナ)」II*
 ③3声のモテトゥス「ごきげんよう皇后様(サルヴェ・レジーナ)」III*
 ④3声のモテトゥス「天の皇后」*
 ⑤6声のモテトゥス「新しき歌を主に向かって歌え」
ジャケス・ド・ヴェルト(1535〜1596):
 ⑥オルガンのためのファンタジア
 ⑦5声のモテトゥス「ラマで、声があがるのが聞こえた」
 ⑧6声のモテトゥス「イェスは小舟に乗り込み」
 ⑨6声のモテトゥス「お気づきください、わたしの苦しみに」
ニコラ・ゴンベール(1495頃〜1560頃):
 6声のモテトゥス「そのときイェスは」
Ens.オデカトン(古楽器使用)
パオロ・ダ・コル(指揮) リウヴェ・タミンガ(org)
 「バロック最初の巨匠」モンテヴェルディは、ルネサンスの伝統から浮かび上がってきた異才。
 『教皇マルチェルスのミサ』の圧倒的名盤に続くオデカトンの超・充実企画、録音場所はなんと、旧ゴンサーガ家の宮廷礼拝堂!世界初録音を含む精選プログラムで、「バロックの黎明期」の本質へ!
 昨年、パレストリーナ『教皇マルチェルスのミサ』という合唱界でも有名なルネサンスの傑作を、「本場イタリアの古楽集団が本気で研究検証し、正面から古楽アプローチで再現」した超傑作盤がArcana レーベルからリリースされました。この名曲が英国その他の一流合唱団のレパートリーになる前、ルネサンス最後の傑作のひとつとして400 年以上前の欧州人たちを感動させていた、という本来の事実に気づかせてくれ、古楽ユーザーに強烈な印象を残したその古楽集団とは、イタリアの精鋭男声古楽歌手が結集する超・実力派団体オデカトン。
 ゴンベールやイザークなど16 世紀ネーデルラント系の充実録音で実績をあげてきたこの集団が、欧州の古楽復興ブームを30 年以上にわたって支えてきたベルギーのRicercar レーベルで、さらなる傑作盤を制作してくれました。
 今度はルネサンスではなく、バロックの大家モンテヴェルディ!
 ルネサンスを得意とする集団があえてこの「バロック最初の巨匠」に臨んだか...なぜならモンテヴェルディは当初、マントヴァの宮廷礼拝堂という、ルネサンス・ネーデルラント楽派の伝統をふまえたイタリア北部屈指の音楽集団のあいだで揉まれ、音楽修業をした人物だったから。そう、16 世紀という時代を33 年も生きてきた彼は、その初期においては完全なルネサンス様式でも傑作をいくつか書いていたのです!
 本盤のプログラムの中心を占めるミサ曲も、まさしくそうした時代の産物と考えられている一編。
 16 世紀ネーデルラントの大家ゴンベールの傑作モテトゥス「そのときイェスは」のメロディを軸にして、自由闊達に織り上げられる多声の綾のうつくしさ(さすが、後年の飛び抜けた巨匠ぶりを予感させる腕前!)が飛びぬけて際立つ本盤の演奏は、なんとこれらの曲が初演された場所だった可能性も高い、かつてのゴンサーガ家の宮廷礼拝堂で録音されているのです!
 録音技師であり音楽学者であるJ.ルジュヌ氏自ら、その音響的特性を興奮気味に語るほど「初演場所の存在感」は強く、この録音に示されている——イタリア随一の古楽歌手たちによる突き抜けたクオリティあればこそ、そのような歴史的価値の高い場所での演奏にもひときわ意味が出てくるというものです。この礼拝堂のオルガンは最近、当時の状態に周到に復元されたことで関係者の間ではつとに有名なのですが、それを聴く機会があるのも本盤の嬉しいところ。というのも、ミサ本編やネーデルラント楽派の関係作など、アルバムの大半はア・カペラ曲が占めているものの、本盤には3曲の新発見モテトゥスが収録されていて、そこでは通奏低音のための楽器(ハープ、ヴィオローネ、テオルボ…)も演奏に加わっているのです。オルガン独奏曲も途中に配されており、私たちはまさに「若きモンテヴェルディが活躍していた当時の、ゴンサーガ家宮廷礼拝堂の響き」をありありと追体験できる。古楽関係にも明敏な耳を持つ批評家が多いフランスの批評誌がこぞって最高点をつけているのも納得できる、きわめて充実した意義深い名演の登場です。
モンテヴェルディ研究の専門家と録音技師による周到な解説も、そして歌詞も、すべて日本語訳付でお届け。

ZIG ZAG TERRITOIRES



ZZT305
(国内盤・訳詞付)
\2940
ダミアン・ギヨン(カウンターテナー)
 バッハ:オルガン独奏付の独唱カンタータBWV35・170
  〜オルガン独奏曲とともに〜
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 1.カンタータ「満ちたりた安らぎ、愛しき魂の喜び」BWV170
 2. オルガン独奏のためのトリオ・ソナタ第3番BWV527
 3. カンタータ「霊と魂はひとつに」BWV35
 4. ファンタジアとフーガ ト短調 BWV542
ダミアン・ギヨン(カウンターテナー)
モード・グラットン(ジルバーマン・オルガン)
Ens.ラ・バンケ・セレスト(古楽器使用)
バティスト・ロペス、
カロリーヌ・バイェ(vn)
デルドル・ドウリング(va)
アヘート・ズヴェイストラ(vc)
トマ・ド・ピエルフ(cb)
パトリック・ボジロー(ob, ob-d'amore)
ジャン=マルク・フィリップ(ob)
ロドリーゴ・グティエレス(t-ob)
ジュリアン・ドボルド(fg)
ケヴィン・メイネント(cmb)
 今やバッハ・コレギウム・ジャパンへのソロ出演でもおなじみ、俊才ギヨンはバッハに何をみるのか。
 フランス古楽界最先端をゆくオルガニストのモード・グラットンが大々的に活躍、極少編成で説き明かされる、ひたすらにみずみずしいバッハの音楽世界——お見逃しなく!

 ダミアン・ギヨン!
 すでにZig-Zag Territoires では昨年ダウランドの歌曲集をリリース、その美しい声と周到な古楽研究、多元的な解釈スタイルが日本でも高く評価されたフランス随一のカウンターテナー歌手。
 かつては古楽教育後進国だったフランスは、ここ20 年でヴェルサイユ・バロック音楽センターやパリ音楽院古楽科などが続々と充実しはじめ、いつのまにか全欧州に冠たる古楽先進国になってしまったわけですが、ギヨンはまさに、その飛ぶ鳥を落とす勢いの「フランス古楽新時代」の波に乗った世代。そもそも少年時代からヴェルサイユ・バロック音楽センターの少年合唱団で実践経験を積んできた、いわば映えぬきのフランス古楽界の寵児たる彼は今や、日本でもバッハ・コレギウム・ジャパンの重要な独唱者のひとりとして存在感を強めつつあります。
 そんな彼が新たに放つソロ・アルバムは、なんとバッハ——レ・フォリー・フランセーズ他のフランス最先端の古楽グループと華々しく活躍をみせるオルガニスト、モード・グラットンを迎え、自ら指揮をとるアンサンブル「ラ・バンケ・セレスト」(1パートひとりずつの極少編成古楽アンサンブル——弾き手は全員、意欲とセンスの塊!)とともに、バッハがアルト独唱のために書いた2編の傑作カンタータをあざやかに織り上げてゆきます。
 2曲ともオルガンのソロが弦楽器と華麗な交錯をみせる充実作で、完璧なコントロールで繰り出されるギヨンの美声が、バッハともゆかりの深いオルガン建造家ジルバーマンによる歴史的銘器の美音とともに綴ってゆく演奏の味わいは、まさにため息もの。
 カフェ・ツィマーマンのバッハ協奏曲録音(Alpha)と同じく、古楽器での絞り込まれた極少編成が、さながら極上室内楽のような、いや室内楽編成による協奏曲のような緊密度で、これら2曲の傑作の真価をいきいきと伝え、その至高の世界に浸らせてくれます。
 解説充実全訳付、歌詞訳掲載。嬉しいことに、プログラムには2曲の傑作オルガン曲も収録されており(グラットンのナチュラルな解釈がこれまた絶妙...)歴史的銘器の味わいや精鋭古楽バンドらしい演奏編成・プログラム構成とあいまって、オルガンや声楽になじみのない人にもすんなり受け入れられそうな鮮やかな名演に仕上がっているのも憎いところです。


ZZT100203
(国内盤・2枚組)
\4515
フランソワ・シャプラン
 ショパンの夜想曲全集(全21曲)

フレデリク・ショパン(1810〜1849):
 ①二つの夜想曲 作品48(1842年出版/第13・14 番)
 ②三つの夜想曲 作品15(1834 年出版/第4・5・6 番)
 ③二つの夜想曲 作品27(1837 年出版/第7・8 番)
 ④レント・コン・グラン・エスプレッショーネ(夜想曲第20番)
 ⑤二つの夜想曲 作品32(1837 年出版/第9・10 番)
 ⑥二つの夜想曲 作品55(1844年出版/第15・16 番)
 ⑦二つの夜想曲 作品37(1840 年出版/第11・12 番)
 ⑧三つの夜想曲 作品9(1833 年出版/第1・2・3 番)
 ⑨アンダンテ ホ短調 作品72-1(夜想曲第19 番)
 ⑩夜想曲第21 番(作品番号なし)
 ⑪二つの夜想曲 作品62(1846 年出版/第17・18 番)
フランソワ・シャプラン(ピアノ)
 Zig-Zag Territoires レーベル取扱移行期の徒花的名演が、ここに堂々国内盤登場——
 フランスでの評価は絶大、ドビュッシー弾きとしてもきわめて高い評価を誇る多芸な俊才シャプランが、満を持して臨んだショパンは「夜想曲」。多元的なピアノ世界、ご堪能あれ。

 2010 年より代理店が変更になったZig-Zag Territoires レーベル。その移行期の不遇なタイミングで登場した名盤というのが、いくつかあるのも事実。ちょうど前代理店が取扱休止を宣言する直前頃にリリースされたもののなかには、レーベルの故郷フランスをはじめヨーロッパで絶大な評価を得ているアルバムがいくつかあるのです。
 ここにお届けするショパンの新しい夜想曲全集も、そのひとつ。
 フランソワ・シャプラン。
 パリ音楽院でプルミエ・プリを取ったのが1987 年、すでにヴェテランの域にありながらも最も大切な録音の数々が現在たいへん入手しにくいため(Arion およびPierre Verany レーベル)、日本にも多くの門弟もいながら音盤界では驚くほど不遇なフランスきっての異才。この偉大なピアニストの録音界での最も重要な業績は、おそらく2007 年に全集のかたちでArion レーベルでまとめられたドビュッシーのピアノ曲録音でしょう。このドビュッシー録音は作曲家の故郷(そしてシャプランの故郷)フランスでも批評誌の高評価を総なめにしただけでなく、英国のBBC Magazine も絶賛した逸品でした。
 しかしシャプラン自身の引き出しはきわめて多く、すでに録音のあるシューマンなどでも独特の解釈を展開したり、本来チェンバロやクラヴィコードの方が似合いそうなC.P.E.バッハの作品まで独自のタッチの妙で忘れがたい演奏に仕上げてしまう異才ぶり。そんな音響の魔術師、ピアニズムの色彩画家ともいうべきシャプランが満を持して全集のかたちで世に問うたショパン録音は、意外にも近年あまり全曲録音に恵まれていなかった「夜想曲」。
 自由な形式感覚のなか、パリに来て以来のショパンの作風変遷が最も端的な形で現れた、ピアノ作曲技法の実験室ともいうべき一連の至芸を、シャプランはひとつひとつ克明に描き分け、千変万化のタッチでその芸術世界へと深く分け入っています。
 本人自ら解説に序文を寄せ、曲順配列について言及しているとおり、2枚のCD が必ずしも年代順の収録順序になっていないことにも注目——その周到なショパン解釈はフランスできわめて高く評価され、フランス・ショパン協会も2010 年の優秀音盤に選んだほど。日本でも見過ごされてはならない傑作、堂々の国内盤初出です!
 仏Telerama誌 ffff (4ポイント)受賞 フランス・ショパン協会 2010 年優秀録音賞受賞 !


ZZT030501
(国内盤・2枚組)
\4200
<メーカー在庫限り>
インマゼール&アニマ・エテルナ管
 モーツァルト(1756〜1791):

  1.交響曲 第39 番 変ホ長調 KV543
  2.ファゴット協奏曲 変ロ長調 KV191
  3.交響曲 第40 番 ト短調 KV550
  4.交響曲 第41 番 ハ長調 KV551「ジュピター」
ヨス・ファン・インマゼール指揮
アニマ・エテルナ管弦楽団(古楽器使用)
ジェーン・ガワー(ファゴット独奏)
 こちらも在庫限定という言葉の前に「超おすすめ」を献上。」

 限定数確保ながら、インマゼールZig-Zag Territoires移籍直後の超重要盤が待望の国内仕様復活。
 ピアノ協奏曲群ですばらしい実績を残した、あのインテンス&インスパイアドな古楽器解釈で、モーツァルト最後の傑作群に圧倒されてください。

 フランス随一の超強力小規模レーベル、Zig-Zag Territoires。このレーベルの名声を支えてきた最も重要な演奏団体が、鬼才古楽鍵盤奏者ヨス・ファン・インマゼール率いる古楽器集団アニマ・エテルナ管弦楽団(現在の呼称は「アニマ・エテルナ・ブリュッヘ」)であることは、まず間違いのないところでしょう。かつてはオランダのChannel Classics やSony/Vivarte で録音を続けてきたこの名団体が、Zig-Zag Territoires に移籍して間もなくリリースし、あの異色のシュトラウス・ワルツ集やチャイコフスキーの交響曲第4 番とともに注目を集めた初期の傑作盤のひとつが、このモーツァルト最後の交響曲3曲を収めた2枚組でした。
 ただでさえピアノ協奏曲の体系的録音(Channel Classics)で実績をあげてきたインマゼール&アニマ・エテルナが、モーツァルトの最重要曲目のひとつに挑んだわけです。そしてZig-ZagTerritoires に来て以来の古典派録音、解説にインマゼール自身のコメントも寄せられているあたりからも、当時の意気込みは十全に伝わってくる逸品(解説全訳付)。
 この2枚組で注目すべきは、他の収録曲目として意外にもファゴット協奏曲が入っているところ。このあたりが古典派管弦楽に通じたインマゼールらしい仕掛けで、他レーベルでも折々ソロを聴かせている異才ジェーン・ガワーの闊達なソロで古典派ファゴットの存在感を強く意識したあとにモーツァルト晩年の交響曲を聴くと、いかに低音部や管楽器(もちろん、なかんずくファゴット)がそこで重要な役割を負っていたかにもあらためて気づかされる仕組み。ト短調交響曲での不安げな「先の読めなさ」のスリル、わざとらしさのない冒頭部から絶美の盛り上げ方へと至る第39 番、そして壮麗なこと他の追従を許さぬ「ジュピター」。
 本盤も制作元の意向では「プレス切れ以降は再プレス予定なし」とのことですので、この機会にお見逃しなきようお願いいたします。
 インマゼールはただでさえベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ(ZZT307)が大好評のさなか、近日さらなるとてつもない話題盤2作がお目見えする予定——秋の深まりへ向けて「インマゼールここにあり」の布石を作ってくれそうな、貴重なカタログ復活。




ページ内の商品チェック・ボックスをクリックしたら、最後に 「かごに入れる」ボタンを押してください。
新店内のほかのページのお買い物がありましたら、そちらもすませ、最後に「注文フォームへ」ボタンを押して注文フォームで注文を確定してください。
(チェック内容を変更したら、必ずもう一度「かごに入れる」ボタンをクリックしてください。変更内容がかごに反映されませんので)


注文フォームへ


アリアCD 新店舗トップページへ



Copyright(C) 2012 ARIA−CD.All rights reserved.14