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第68号
お奨め国内盤新譜(1)
2012.12.18〜2013.2.8



CALLIOPE



CAL1207
(国内盤・2 枚組)
\3835
カルロ・テッサリーニ(1690 頃〜1767 頃):
 『12 つの協奏曲』作品1(1724 年/
 アムステルダムのル・セーヌ楽譜出版社より
 刊行・全12 曲、世界初録音)
ルコ・ペドローナ(ヴァイオリン)指揮
アンサンブル・グィダントゥス
 イタリア・バロックの一番おいしいところには、まだまだ天才的な作曲家がいるもので…
 南はナポリから北はドレスデンや遠くアムステルダムまで、欧州中の音楽愛好家を熱狂させた異能の作曲家の輝かしい「第1歩」を、エッジの効いたイタリア勢の名演で。

 さすが音楽の国イタリアです。まだまだたくさんの偉大な作曲家の楽譜が眠っている、ほんとうに汲めど尽きせぬ音楽遺産の数々——私たち日本のバロック・ファンが最も「バロック的」と感じるのが1720〜40年頃の音楽(つまり、バッハやヴィヴァルディらの協奏曲が続々と書かれた時期)だったとすれば、ここにご紹介するテッサリーニという作曲家はまさにその時期のヨーロッパで、イタリア半島のみならずドイツ語圏やパリでも熱狂的に迎えられたという人気作曲家でした。
 そう——だからなのでしょう、ここに全曲録音された「作品1」、ヴィヴァルディの『四季』が楽譜出版された翌年に同じアムステルダムの名門楽譜出版社ル・セーヌが刊行を引き受け、テッサリーニの協奏曲作曲家としての輝かしいスタートを彩ったこの曲集には、思わず「これはいったい誰?」と興奮せざるを得ない、創意あふれるハイ・バロックの協奏曲が集められている...!と、私たち21 世紀日本に生きるバロック・ファンも感じずにはおれないわけです。
 テッサリーニの才覚については、すでに演奏家たちのなかにはかなり前から気づいている人も多く、Hungaroton にも古楽器録音で少し後の作品集があったり(ハンガリー古楽界、いつも侮れません)、Brilliant にセンスの良いトラヴェルソのためのソナタ集が録音されていたり…といった先例もあるにはあるのですが、実はそれらはかなり後年、テッサリーニが欧州全域に知られるようになってからの作で、同時代のタルティーニなどのように前古典派的な趣きもほんのり感じさせるところが魅力。それに対し、ここに収められた「作品1」はさすが処女出版作だけあって、キレのよい冒険的な感覚に事欠かない、作品3〜4あたりでのヴィヴァルディの新種の機運を思わせる意欲的な作風が痛快!ヴィヴァルディに師事しにきたドレスデンの名手ピゼンデルが、当時ヴェネツィアにいたというテッサリーニの協奏曲のクオリティに驚き、わざわざ楽譜を見つけてドレスデンに持ち帰った...というのも頷けます。
 その記念すべき世界初録音たる本盤、演奏がまた痛快な仕上がり——このところイタリアやドイツではおなじみになりつつある「現代楽器でピリオド奏法」タイプの団体ですが、18 世紀風の演奏スタイルの身に着け方は本当に堂に入ったもので、短く持った弓の使い方も絶妙、クリスピーでスリリングなバロック・サウンドを堪能できるうえ、カンタービレの上品な歌心はまさにイタリア人ならでは。12 曲では物足りなくなること必至の名演の数々、どうぞご注目を!



5年前の店主ラスコルの視聴記より
テッサリーニ:4声のためのイントロダツィオーニ
HUNGAROTON HCD 32303 1CD\2300→\1990

 バロック末期。もう古典派の匂いもちらほらし始めてる時代。
 1690年にイタリアのリミニで生まれたテッサリーニ。宮廷の音楽監督を務めていたらしいが、作曲にかなりこだわっていたようで、「ハイドンが交響曲の父なら、テッサリーニこそ交響曲の祖父だ」という意見もある。下にも書いている生涯に残した膨大な数の作品を見ると、まあまあわからなくもない。ただ、ここで聴く音楽はまだまだバロック。・・・なのだけれど、ヴィヴァルティ的なヴェネツィアの香り漂う第7番、第9番、第10番、そして脱バロック的でときおり古典派の息吹を感じさせるかっこいい第4番など、予想以上に楽しませてくれる。
 ジャケットはぶりっ子しているテッサリーニ翁なのだが、ちょっとこわい。これを見たら買いたくなくなってしまうかもしれないけど、そんなこといわないで。

C. Tessarini-Introducioni a 4
HCD 32303
\1990
テッサリーニ:4声のためのイントロダツィオーニOp.11(第2-4巻) アウラ・ムジカーレ(ピリオド楽器使用)
バラージ・マーテー(芸術監督)
生前は卓越したヴァイオリニストとして名を馳せながら、いまやほとんど語られることがなくなってしまったカルロ・テッサリーニ(1690-1766)。作曲家としては目をみはるほどたくさんの作品、70曲ほどの交響曲と管弦楽曲、90の協奏曲、室内楽曲も140曲を残した。1748年に出版され、それぞれ3曲づつ全4巻からなるイントロダツィオーニ。マーテー率いるアンサンブルによる演奏は、同じく第1巻を収めた6年前の録音(HCD.32025)の続編にあたるものでこのたび完結となる。第11番ただひとつを除いてすべて3楽章形式による12のシンフォニアは、ヴィヴァルディの影響があるともいわれる数多くの作品の中心に位置するもの。ようやくすべてを音で確かめられる時がやってきた。録音:2006年4月ハンガリー、トルダシュ、ルター派教会



COO RECORDS

COO-033
(国内盤)
\2940
『至高のハーモニー』
 〜心に深く静かに沁みわたる、二つのミサ〜

 1.グレゴリオ聖歌 年間第6 主日のミサ
 2.グレゴリオ聖歌 年間第8 主日のミサ
ゴデハルト・ヨッピヒ指揮
カペラ・グレゴリアーナ ファヴォリート
 凛とした調べのなかに、限りない温もりが息づく。「ことば」に息吹きが与えられ、詠唱が音楽になるとき...

 祈りを唱える抑揚に、音楽としての美しさがある—ことばでありながら歌である、西欧声楽のひとつの原点、グレゴリオ聖歌。 南独バイエルンのザンクト=オッティリエン修道院に集まった9人の精鋭歌手(実はすべて日本人)による、まさに心に深く静かに沁みわたる聖歌です。
 9人の美声をあざやかにまとめあげ、ひとつの「響きの巻物」のように、たおやかな合唱美を描き上げたのは、ドイツを代表するグレゴリオ聖歌研究の権威、ゴデハルト・ヨッピヒ(1932年生まれ)。
 1970年から90年までミュンスター=シュヴァルツァハのベネディクト修道院で首席カントルをつとめたのち、ルールとエッセンを中心にさまざまな組織でグレゴリオ聖歌や古文書学を教えてきたヨッピヒの指揮は、典礼文・祈祷文の「ことば」そのものの響きの音楽性を意識しながら、その意味をあざやかに「音」(=音楽)と化してゆきます。
 長年にわたる古記譜法解読によって確立された、ヨッピヒならではの、ある意味古風なグレゴリオ聖歌の響きではありますが、礼拝の現場における精神をしっかと実体験してきた人だからこその、おだやかで、静かでありながら、説得力のあるのうまみは、ブルックナーの大ミサや交響曲を聴いているような充実度が息づいています。
 歌われているのはローマ・カトリックが定めたグレゴリオ聖歌のうち、年間第6主日(日曜日)と、年間第8主日に歌う曲。
 教会歴の特別な祝日ではないため、あまり知られていない2曲を、原文ラテン語に、ドイツ語、英語、日本語の訳詞付きで。解説のドイツ語,日本語訳付きです。 2010 年に発売して好評を博した「究極の音楽」(COO-030)に続く第2 弾。
 
COO-500
(国内盤)
\2940
14本のサクソフォン
1.ヴィヴァルディ:合奏協奏曲 作品3-11
 (『調和の霊感』より)
2.ウェーベルン:変奏曲 作品27
3.ハイドン:トランペット協奏曲 変ホ長調*
4.R.シュトラウス:メタモルフォーゼン(変容)
5.カッチーニ:アヴェ・マリア*
 *北村源三(トランペット)
家田厚志指揮
リエゾン サクソフォン アンサンブル
+ 北村源三(tp)
 しなやかに、切々と。14本のサクソフォンの色調の重なり、そして滋味あふれるトランペットの輝き。
 管楽器のなかでも比較的新しく登場したサクソフォン。単体での表現力が桁外れに広いこの楽器が集まれば、すぐれた弦楽合奏のような一体感と表現力を持った、なめらかな美しい響きを誇るアンサンブルに——その魅力をさまざまな角度から味あわせてくれる、バロック・古典派・ロマン派・現代…とバランスよく集められたプログラムには、サクソフォンとは逆に長い歴史を誇る管楽器・トランペットもゲスト出演。その吹き手は百戦練磨の名匠・北村源三——しなやかに伸縮するサクソフォンの響きの重なりから一閃、輝かしい存在感で耳に届くその滋味あふれる音色もまた、このアルバムのかけがえのない聴きどころとなっています。
 <リエゾン サクソフォン アンサンブル>
 2008 年、国内外で活躍中のサクソフォン奏者により結成されたアンサンブル。指揮者に家田厚志氏を迎え、古典から現代まで幅広いレパートリーと真摯に向き合い、クラシック・サクソフォンの表現の限界に迫る。

CYPRES



MCYP1665
(国内盤・訳詞付)
\2940
カンプラ:さまざまなプティ・モテの至芸
 〜1700年前後のフランス・バロック、いとも甘美な声の世界〜

 アンドレ・カンプラ(1660〜1744):
  ①おお、最愛のイエス(二重唱、第2モテ集(1699)より)
  ②祝福あれ、主を畏れる者すべてに
   (独唱、第4モテ集(1706)より)
  ③主よ、あなたは永遠に(三重唱、第2モテ集(1699)より)
  ④あなたの聖像台はなんと心地良く
   (三重唱、第1モテ集(1695)より)
  ⑤お救い下さい、神よ(三重唱、第4モテ集(1706)より)
 ジャン=フランソワ・ダンドリュー(1682〜1738):
  ⑥オルガン独奏のための「マニフィカト」ニ短調
   (第1オルガン曲集(1739)より)
  ⑦トリオ・ソナタ 第1番 ニ短調(1705)
   ※実際には、ダンドリューのマニフィカトの各楽章が
   カンプラ作品1曲ごとに挟まる曲順。
   ソナタは③と④の間
Ens.レ・フォリー・フランセーズ(古楽器使用)
ジャン=フランソワ・ロンバール(A/T)
ジャン=フランソワ・ノヴェリ(T)
マルク・ラボネット(Br)
フランソワ・サン=ティヴ(org)
 びっくりするくらい新譜の出ない大家のひとり、ルイ14世時代の超人気作曲家カンプラ——待望の新録音が、フランス古楽界屈指の俊英陣でみごとな名盤に結晶していることの喜び。
 静かでオーガニックなオルガンとガット弦が彩りを添える、清らかな3筋の歌声。至福のとき!

 バロック期の作曲家というのは、結局「どう発掘されてきたか」で知名度や順列が決まってしまうところがあって、生前はたいへん高く評価されていたにもかかわらず今ではさっぱり。
 しかし発見される作品はどれも名曲ぞろい!という大家はかなりたくさんいますから、副読本的に音楽史の本などを読んでいると「これは間違いなく名盤!」というものを、見つけにくい輸入盤の海のなかから拾い出すセンスも磨かれてゆくわけですが——とかく新譜が出ない!という作曲家のフランス・バロックにおける代表格といえば、これはもうなんといってもカンプラとド・ラランドが2大巨頭と言っても過言ではないでしょう。
 フランス・バロック好きのするあの独特のもやもやした美質が最も典型的に示されているのがシャルパンティエの作品群だから、ついみんなシャルパンティエに気持ちを傾けがちなのか...いずれにせよ、ルイ14 世の治世も終わりに近づいてくると、イタリア音楽の明朗さをほどよく取り入れた、センス抜群のユニヴァーサルな魅力を誇る(そして、まずフランス人でなくては不可能な音の並べ方をする)大家が続々あらわれるのですが、カンプラはまさにそうした時代のフランスを代表する巨頭。
 生前はパリのど真ん中にあるノートルダム大聖堂で楽長をしていたのに、手すさびで書いたオペラがあまりに次々とヒットするもので「俗世の劇場にみだらな音楽を提供しているのがバレたら...」と、不祥事を避けるためにいつしかオペラは弟の名前で発表するようになった...という有名なエピソードもあるくらいですが、この南仏生まれの大家、なぜか録音には恵まれず。そうした数少ない新譜のひとつとして、ヴェルサイユ・バロック音楽センターの弦楽関係プロジェクトでも活躍をみせる異才、レザール・フロリサンやシャペル・ロワイヤルのコンサートマスターとして活躍してきたコーエン=アケニヌ率いるレ・フォリー・フランセーズの名演が登場してくれたのは、まったく行幸というほかありません。
 同じく録音に恵まれない鍵盤の大家ダンドリューの貴重なオルガン作品(「怖い系のオルガン」ではない、実に清廉で叙情的なトラックが多いです)を交えながら、
めらかな男声の高音域(オートコントル…かなり高めの音まで出せるテノール)に心癒される、3筋の独唱がバロック・ヴァイオリンやガンバと折々に音色をからませあうプティ・モテ(小規模モテトゥス)の世界はまさに「絶美!」の一言。たまのカンプラ新譜ということか、解説にはヴェルサイユ・バロック音楽センターの碩学トマ・ラコントが詳細なテキストを寄せており(訳詩と併せて全訳添付)、資料的にも価値の高いアルバムになっています。お見逃しなく!

GRAMOLA


Alkan: Grande Sonate - 3 Grandes Etudes
GRML98961
(国内盤)
\2940
アルカン ピアノのための大ソナタ「四つの年代」、
 ピアノのための「三つの大練習曲」
  〜19世紀フランス、先進性と超絶技巧〜

シャルル=ヴァランタン・アルカン(1813〜1888):
 1. ピアノのための大ソナタ「4世代」作品33
  〔20 代〜30 代〜40 代〜50 代〕
 2. ピアノのための三つの大練習曲 作品76
  〔左手のための幻想曲〜右手のための序奏・
  変奏・終章〜両手のための、似たような
  絶えざる動きの練習〕
アルバート・フランツ(p)
 指廻りは桁外れ、創意も常軌を逸していた——19世紀フランスの異才アルカンが残した壮大そのもののソナタと、もはや練習曲の域を大いに外れかかっている異色の練習曲!
 よどみないテクニックでたたみかけるように、新世代名手フランツの腕が冴えわたります!

 今でも一部のピアノ・ファンが熱狂するのも不思議はない、19 世紀ロマン派の作曲家たちのなかでもとりわけユニークな芸術家、アルカン——“ピアノの貴公子”リストとほぼ同時代を生きたこの異才中の異才は、超絶技巧的なピアノ演奏が流行していた当時、とてつもない技量でピアノを弾きこなすだけでなく、あるときは哲学的、あるときはセンセーショナル、あるいは思索的、ないしは酔狂...とさまざまに耳目を驚かす表題を作品に付し、いわばサティを大きく先取りしてみせた芸術家だったのです。日本でも過去、何度かその異色の芸術性に注目が集まってきたりもしているのですが、いかんせん作品の演奏じたいが桁外れに難しいためか、ピアノ系に特化した一部のレーベルで散発的にリリースがある以外、アルカンの作品の新録音というものはそう簡単に出てくるものではありません——しかし、もしアルカン作品の録音が見つかったとすれば、それはかなりの高確率で痛快な名演である場合が多いもののよう。
 今回、ウィーンでローランド・バティックやバドゥラ=スコダらに師事している俊才アルバート・フランツが同市の中心に拠点をかまえるGramola レーベルから世に問うたアルカン録音にも、まさにそのことが充分すぎるくらいあてはまります。
 人生の四つの世代ひとつひとつにソナタの1 楽章をあて、独特の楽章配列で人間の一生をたどってみせた大ソナタ「四世代」、さまざまな演奏テクニックをピアニストの左手と右手それぞれに託し、片方ずつに長大な練習曲を配したのち両手でも大掛かりな楽章を弾かなくてはならない「三つの大練習曲」、アルカン作品の例にもれず通り一遍の腕前ではまず演奏すらかなわない、そのうえ入念な作品解釈なくしてはその魅力が半減以下になってしまいそうな作品像をそなえた、とびきりピアニストに意地悪な二つの傑作(それゆえ、録音物もめったに見かけません!)を、フランツは実に堂々、悠々と弾きこなしてしまうのですから大したもの——それも絶妙のニュアンスを細かくつけながら、スケール感あふれるヴィルトゥジックな仕上がりで、いかにアルカンという人がたんに風変わりなものごとを好きなだけで終わるタイプではないか、いかに高い芸術性を誇った異才だったかをつくづく思知らされる結果に...
 奏者フランツは筆も立つ人で、アルカンと演奏作品についてのかなり充実した解説を寄せてくれているのも嬉しいところ(全訳付)。じっくり耳を傾け、あらゆる瞬間から刺激を受けてほしい異色の名盤。

INDESENS!



INDE048
(国内盤)
\2940
パリ管弦楽団のソリストたち〜シューマン作品集
 シューマン(1810〜1856):
  ①三つのロマンツェ op.94(ob, p)
  ②幻想小曲集 op.73(cl, p)
  ③民謡風の五つの小品 op.102(fg, p)
  ④アダージョとアレグロ op.70(hr, p)
  ⑤おとぎの絵本 op.132(cl, va, p)
フィリップ・ベルロー(cl)
アレクサンドル・ガテ(ob)
マルク・トレーネル(fg)
アンドレ・カザレ(hr)
ダヴィド・ガイヤール(va)
エレーヌ・ティスマン(p)
 “管楽器の王国”の最前線、シューマンを愛してやまないフランス人たちの名演、続々!
 ホルンのふくよかな響きとメリハリの効いた歌、歌うドイツ式ファゴット、艶やかなクラリネット…どこをとっても聴きどころばかり。絶美の響きの味わいで、シューマンの幻想世界の内奥へ。

 「管楽器の王国」ことフランスの最前線を代表する名手を集め、サン=サーンス、プーランク、メシアン...と一筋縄ではゆかない作曲家たちの室内楽曲をまとめて録音してきたIndesens レーベル。パリ管の名手たちが集うシリーズ、次は何かと期待していたら、意外にもフランス外の作曲家が...しかし、シューマンというのは絶妙の人選!
 ピアノ曲しか書かなかった青年時代から一転、結婚してからは交響曲や管弦楽付き合唱曲、オペラなども手掛けるようになったシューマンが、1849 年に突如として書きはじめた管楽器のための室内楽曲を集めたアルバムなのですが、クラリネットもオーボエもホルンもファゴットも、集まるのが全員名手だからこそ、こういう選曲でもアルバム作りができてしまうわけです。
 シューマンのこの種の作品は、たとえばオーボエ奏者やホルン奏者らの室内楽アルバムを賑わす曲目として録音されることは多くとも、管楽器のための室内楽だけを集めるとなると、楽器ひとつごとに相当の手練を呼んでこなくてはならないところ、本盤のようにパリ管のソリスト・アンサンブルでの企画とあれば、まさに問題なく名手ばかりが集まる——そして当然ながら、演奏は素晴しいの一言。オーボエとピアノ、クラリネットとピアノのための名作ふたつはいわずもがな、「アダージョとアレグロ」では名手カザレの吹くホルンが逞しくも深みのある浪漫的憧憬の世界へと聴き手をいざない、「おとぎの絵本」(この曲だけ少し後、1853 年頃の曲)では中音域でのアンサンブル作りが聴いていて実に心地良いところ。そして本盤を特徴的なものにしている重要な要素のひとつが「民謡風の五つの小品」…たいていチェロで奏でられることの多いこの作品を、ここではフランス式バソンの奏法にも通じた名手トレーネルが、あの独特の美音を誇るドイツ式ファゴットの絶妙コントロールで聴かせてくれるのです!
 作品と楽器の音色との、なんという思わぬ相性...この5トラックを聴くためだけでも本盤を手に取る価値があろうというもの。管楽器ファン必携の充実盤でございます。

NCA



NCA60251
(国内盤)
\2940
チャイコフスキー/ラフマニノフ編:
  バレエ音楽『眠りの森の美女』〜連弾版全曲
オリガ・ホテーエヴァ、
アンドレイ・ホテーエフ(p)
クラシック・ファンよりもむしろ、バレエ・ファンが黙ってはいられないような...こういうのがCD というフォーマットのよいところだと思います。
かわいすぎる絶美のDigiPack ジャケットにくるまれているのは、リヒテル直系のロシア人奏者による“妥協なしのロシア・バレエ音楽”!

 バレエ女子ならかつて一度は憧れたチャイコフスキー『眠りの森の美女』を、絶妙のフェミニンなデザインのDigipack でくるんで送り出してくるあたり、センスの良さにドキドキします。
 演奏内容は「いっさい妥協なしの生粋ロシア芸術」!かつて巨匠フェドセーエフとのチャイコフスキー協奏曲全集(Koch)で度肝を抜いたロシア・ピアニズム直系の超実力派ホテーエフ(!)と妻ホテーエヴァによる、ひたすら堅牢でありながらどこまでも優美、隅々まで抜かりのない絶妙解釈で織り上げられてゆくこの編曲版を手がけたのは...なんと『眠り』初演時にはまだ10 代の若者だった未来の巨匠、天才少年セルゲイ・ラフマニノフ(!!)なのです!チャイコフスキーは『眠り』を当時自らのバレエ音楽の最高傑作と自認しており、その普及のため連弾編曲を名手ジロティに依頼したのですが、ジロティは多忙なため、よい研鑽になるとの考えから門下の有能な若者ラフマニノフを紹介。
 彼が巨匠の叱咤激励を受けながら完成させた編曲版は、最終的にその未来を嘱望させる才覚をチャイコフスキーに強く印象づけることとなったのでした。抜粋盤ではたびたび演奏される機会もあるものの、このような全曲盤での録音はまさに画期的!
 容赦ない超絶技巧をものともしない編曲の妙をじっくり鑑賞するもよし、もちろんバレエ教室時代をなつかしめる絶妙のギフトアイテムとしてもばっちり活躍してくれそうな、外面的にも内容的にもセールスポイントに事欠かない優良盤なのです!

PAN



PC10273
(国内盤・3 枚組)
\5040
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1759)
 歌劇『アレッサンドロ』

  (1733 年、ロンドン王立歌劇場にて初演)
  全3幕(全曲)
ミヒャエル・フォルム指揮
カールスルーエ・ドイツ・ヘンデル合奏団(古楽器使用)
ローレンス・ザッツォ(C-T/アレッサンドロ)
イツァベル・アリアス・フェルナンデス(S/ロッサーネ)
ラファエッラ・ミラネージ(S/リザウラ)
マルティン・オロ(C-T/タッシーレ)
アンドルー・フィンデン(Br/クリート)
ゼバスティアン・コールヘップ(T/レオナート)
レベッカ・ラフェル(A/クレオーネ)
 ヘンデル歌劇の至宝ともいうべき傑作、日本語解説付で堂々登場!
 1726年、この大家の最も脂がのっていた時期の筆致が見事に生きるダイナミックなオペラを、ドイツ古楽界の飛び抜けた水準を示す名演で。

 指揮はカフェ・ツィマーマンでもおなじみM.フォルム!ヘンデルのオペラ——今から10 年ほど前までHarmonia Mundi France やVirgin、DeutscheHarmonia Mundi などから続々と注目すべき新録音が現れたこのジャンル、昨今では国内仕様で新譜が出ることもめったにないところ、あまりに痛快な名演がPan Classics 届いた。
 先日あの大雪のなか浜離宮朝日ホールで行われたヘンデル・フェスティヴァル・ジャパンでの『アルチーナ』公演もたいへんな注目度でしたが、この『アレッサンドロ』は昨年2月、かねてから注目公演を連発してきたカールスルーエ州立歌劇場で行われた公演にさいしてのライヴ収録をまとめたもの。とはいえ、とてもライヴとは思えない完全な全曲盤として愉しめる仕上がりに、興奮を禁じ得ない アレクサンダー大王の東方遠征時を題材にしたこのオペラ、1726 年にロンドンの王立歌劇場で初演されて以来たいへんな人気作となり、1740 年代にいたるまで折にふれて再演がくりかえされたとのこと——再演回数では「わたしを泣かせてください」で有名な『リナルド』に次ぐと言いますから、その人気のほども窺い知れるところですが、そんな史実はともかく、実際に耳にすれば「なるほど!」と強く頷くこと必至。
 冒頭で序曲からなだれ込むように主役格のアレッサンドロ(アレクサンダー大王)が登場、舞台狭しと立ち回るさまがみごと精彩あざやかな音楽にも反映されていて、のっけから引き込まれること請け合いです!恋
 のさや当て、主人公をめぐる謀略、怒れる英雄のたくましさ、そうした登場人物たちの人間的な魅力を逐一、ダ・カーポ・アリア形式に落とし込んでいるにもかかわらず、どこまでも興奮と感動をさそってやまない名曲が連続する、実に聴きごたえある一編なのです。
 また充実したレチタティーヴォ・アコンパニャートあり、オーケストラ編成も豪華なもので(オーボエやファゴットを1パート2本にしているのもまさに当時流!)ホルンやトランペットなど金管もここぞというところで大活躍、ファゴット2本とコントラバス2本入りの通奏低音パートにはリュートも加わり、創意豊かなオーケストラ・サウンドに、台本をいっさい追わずに流し聴きしていてもじゅうぶん愉しめるくらい…カールスルーエでのプロジェクト成功を導いた歌手陣の充実ぶりもすばらしく、初演時にはクッツォーニや(のちにドレスデンの楽長ハッセの妻となる)ファウスティーナ・ボルドーニら腕利き歌手たちが技量を競ったソロ・パートを痛快・圧巻の味わいで歌い上げてゆく、オペラ・ファンにも堂々おすすめできる内容です。
 充実・的確な解説の全訳付、トラックごとの内容を詳述したあらすじも添付——内容を愉しむもよし、純粋に音楽美を味わうもよし、お値打ち度の高いアルバムであること間違いなし!です。

PHI


JS Bach: ‘Sei Solo’
LPH008-DO
(国内盤・2枚組)
\4200
ヘレヴェッヘのレーベルでありながら初めてのヘレヴェッヘ不在のアルバム!
 演目は・・・バッハの無伴奏ヴァイオリン!

J.S.バッハ:
 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(全6編)
 1. ソナタ第1 番 ト短調 BWV1001
 2. パルティータ第1番 ロ短調 BWV1002
 3. ソナタ第2番 イ短調 BWV1003
 4. パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004
 5. ソナタ第3番 ハ長調 BWV1005
 6. パルティータ第3番 変ホ長調 BWV1006
クリスティーネ・ブッシュ(バロック・ヴァイオリン)
使用楽器:
 18世紀、南ドイツ
 またはチロル地方製オリジナル
 昨年末、あの素晴しいバッハの1723 年カンタータ集(LPH006)と、驚くべき至高の名演によるベートーヴェン『ミサ・ソレムニス』(LPH007)で私たちを魅了しつくした天才古楽指揮者ヘレヴェッヘの自主制作レーベル、Phi...徐々にリリースのペースも上がってきたか?と思いはじめたところ、待望の最新新譜はなんと「ヘレヴェッヘ不在」!
 しかし、あの異才古楽指揮者が自分の自主レーベルで、まさか義理や大人の事情などでこうした対応をするはずがない、必ず何かあるはず——と思い解説をひも解いてみたところ、疑問はたちどころに解消しました。“新譜が出れば必ず買う”というユーザー様も少なくないバッハ屈指の名曲集『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』をここで(当然、バロック楽器と弓を使って、古楽奏法で)録音してみせたのは、ヘレヴェッヘ率いるコレギウム・ヴォカーレ・ヘントの弦楽セクションでコンサートミストレスをつとめることも多いドイツ出身の経験豊かなバロック・ヴァイオリン奏者、クリスティーネ・ブッシュ——
 解説(全訳付)に寄せられたヘレヴェッヘ自身の紹介コメントによれば、彼女の存在がいかにコレギウム・ヴォカーレ・ヘントの演奏現場で大きな影響力を持っているか、どれだけ彼女の感性がアンサンブルにとって刺激となってきたかが綴られているのですが、実際に演奏を聴いてみれば、そこに圧倒的なまでに「ヘレヴェッヘのバンドならではのバッハ」が息づいているのがすぐにわかることでしょう。
 言葉で説明できるような特徴的なことを何かしているわけではない、けれども没個性的な王道的演奏というのとは根本的に何かが違う——音運びひとつひとつに、きわめて深い含蓄が感じられるのです!
 ことさら気負って弾いているようには聴こえないのに、この深み...なるほどヘレヴェッヘが大推薦で、自主レーベルの1タイトルとして紹介したがるだけのことはあります。
 凡百の『無伴奏』録音をはるかにしのぐ、この泰然自若の深いバッハ解釈...ここ最近もPhi レーベルは出足好調で、とくに3作のバッハ録音(モテット集(LPH002)、ロ短調ミサ(LPH004・2枚組)、カンタータ選(LPH006)...)は入荷したそばからすぐに品切れ...の連続ですから、Phi というレーベルのブランド力はもはや確立されたも同然(というより、個々に素晴しいアルバムばかり出てくるのですから、これは当然といえば当然でしょう)。

紹介済みの輸入盤
LPH008-IM
(輸入盤2CD)
¥3200→\2690
日本語解説書なし
J.S.バッハ:
 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ
クリスティーネ・ブッシュ(Vn)


プラハ交響楽団



FOK0005
(国内盤)
\2940
イジー・コウト指揮&プラハ交響楽団
 リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949):
  1.交響詩「ドン・フアン」op.20
 シルヴィエ・ボドロヴァー(1959〜):
  2. 交響曲第1 番「仲間たちがついている」
イジー・コウト指揮
プラハ交響楽団
FOK 0005
(案内済みの輸入盤)
\2300→\2090
 チェコ楽壇の「いま」は、耳を聾さず音楽的な世界へと開かれている——
 ドイツ・ロマン派の堅固な響きを伝える名匠コウトのタクトでしなやかに描き出されるのは中欧特有の滋味深い響きと、みずみずしい新時代の呼び声...チェコの「いま」、ここに!

 2009 年に立ち上げられたプラハ交響楽団の独自レーベルFOK からリリースされた新譜について、同レーベルの販売を受け持つArco Diva 担当者は「チェコ現代を代表する作曲家の“最初の交響曲”が収録されているんだ!」と誇らしげに語ってくれました。
 たんなる付帯情報を伝える...というのとは違う、何か自国の伝統の先端を担っているんだ、という自負を感じる頼もしい言い方でした。耳になじみやすい現代音楽——たとえばスペクトル楽派やクラスター系などとは一線を画した、ショスタコーヴィチ〜グレツキ〜ペルト路線に近い感じ——への回帰が進むチェコ現代の楽壇で、壮大なオラトリオから極少編成の室内楽までさまざまな音楽を書いてきたシルヴィエ・ボドロヴァーが満を持して書き上げた「交響曲第1 番」の前に、近現代のシンフォニックな芸術の一つのルーツであるリヒャルト・シュトラウスの交響詩をひとつ。
 中欧の叩き上げオーケストラ、プラハ交響楽団を率いて作曲家たちの創意を堅固に、あるいはしなやかに伝えてくれるのは、かつて社会主義体制への批判から国外追放され、ドイツ各地の名だたる歌劇場で叩き上げのキャリアを築いてきた巨匠中の巨匠、イジー・コウト!近代の交響曲という作曲ジャンルがおよそベートーヴェン以降、ドイツ語圏を中心に発展してきたのだとすれば、コウトがたどった経歴はこうした種類の新作を初演するのに最適、ということにもなるでしょう。
 ボドロヴァーはチェコの民主化以来、諸外国の演奏家や音楽祭などとも積極的にかかわり、アメリカでも定期的にマスタークラスを開催するなど広範な活躍をみせてきた人ですが、そんな彼女がついに書き上げた交響曲に「仲間がついている con le campagne」というタイトルが付されているのはある意味、象徴的なことかもしれません。
 壮麗かつドラマティックな音響体が少しずつかぶさりあい、ずれあいながら、スケール感あふれる終章へと向かう——これぞ「交響曲」の至芸!というにふさわしい充実の演奏に仕上がっているのは、やはり指揮者がドイツ最前線で活躍を続けてきた名匠コウトだからこそなのかもしれません。彼が音楽監督として、このプラハ交響楽団とどれほど分かちがたく結ばれているかは、前半の「ドン・フアン」からすぐにわかるところ。引き締まった曲の造形から、じわじわと響きの味わいが滲み出てくるような演奏です。
 解説も的確で充実(全訳付)、秘曲探訪、どこをとっても小気味よい1枚なのです。

RAMEE



RAM1202
(国内盤)
\2940
ジャン=マリー・ルクレール(1697〜1764):
 『六つの協奏曲』作品7(1733)   

 ①協奏曲 第5番 イ短調
 ②協奏曲 第2番 ニ長調
 ③協奏曲 第4番 ヘ長調
 ④協奏曲 第1番ニ短調
 ⑤協奏曲 第6番 イ長調
ルイス・オタヴィオ・サントス(バロックvn)
ペーテル・ファン・ヘイヘン指揮
アンサンブル・レ・ムファッティ(古楽器使用)
ドミトリー・バディアロフ、
マリー・ハーフ、
カトリーヌ・メーユス(vn1)
マルサン・ラシア、
ラウレント・ヒュルスボス、
中丸まどか(vn2)
ヴェンディ・ライメン、
ユリー・フェルミューレン(va)
マリアン・ミンネン、
コランタン・デリクール(vc)
ブノワ・ファンデン・ベムデン(cb)
クリス・フェルヘルスト(cmb,org)
 フランス・ヴァイオリン楽派の祖ルクレール、あまりにもセンスのよい協奏曲群を、一挙に!独奏者はRamee初期の大ヒット盤でも独奏をつとめたラ・プティット・バンド出身の俊才。
 古楽大国ベルギーの最前線をひた走るレ・ムファッティの新譜、充実度高いです!!

 私たち日本のクラシック・ファンが普通に「バロック」と認識する音楽、つまり「聴きたいバロック」は、実は少しロココ期が見えてきた18 世紀前半の音楽である場合が多いように思います。
 つまり、ヴィヴァルディの「四季」やバッハの協奏曲群、ヘンデルの一連の合奏曲...といったあたりを中心とするレパートリー、1720〜30 年代以降の音楽の感覚。イタリア音楽こそが最も広く愛されていた時代の音楽ですね。
 当時ヨーロッパ上流階級の音楽生活は、イタリア音楽とフランス音楽という2種類の美しい音楽に彩られていたわけですが、実はこの1720〜30 年代ともなると、すでに太陽王ルイ14世も亡くなり、フランスの音楽家たちでさえイタリア音楽の良さをみとめないわけにはゆかず、ついにフランスでもイタリア最前線の音楽がもてはやされはじめた頃——まして、元来イタリアからもたらされたヴァイオリン音楽や協奏曲・ソナタといったジャンルでは、フランス人たちの書く音楽もほとんどイタリア人のそれと変わらないくらいイタリア的になりつつあったのが、1720〜30 年代の実勢だったのでした。
 そんな時代にあって、イタリアにも近い南仏リヨンで生まれたルクレールは、若い頃に(後のイタリア統一運動の中心地となる)トリノの宮廷で仕事をしていたこともあり、さらに後年はイタリア人も多い国際都市アムステルダムで同世代の異才ロカテッリと出会うなど、ことさらイタリア最先端のヴァイオリン芸術に触れる機会の多かった人物——そしてそのルクレールの書く協奏曲やソナタは、もはや最高級のヴィヴァルディやアルビノーニの作例にも比肩しうるほど、イタリアでも充分やってゆけるのでは?と思うくらいとびきり洗練されたイタリア様式が聴かれる傑作ぞろい!
 20 世紀初頭のヴァイオリンの名手たちもタルティーニやコレッリらと並んで常にその名を忘れることのなかった、常に意識されていたヴァイオリン芸術家ルクレールではありますが、実は体系的な録音というのがあるようでなく、とくに協奏曲群をまとめて聴ける機会となると、もう何十年も前の初期古楽器録音などに頼らざるを得なかったところ、古楽大国ベルギーの俊才集団レ・ムファッティがセンス抜群の協奏曲集を録音してくれたというのですから、これはもう飛びつかずにいるほうが難しいというもの。
 バロック・ヴァイオリン奏者ライナー・アルントが録音技師からプロデュースまで丁寧な仕事を続けているRamee レーベルは、立ち上げ初期にもルクレールの素晴らしいソナタ集をリリースしてくれていましたが、そこで玄妙な名演を聴かせてくれた名手L-O.サントスがここでもソロとして招かれており、ヴィヴァルディの名品も顔負けな作品美を縦横無尽の運弓で堪能させてくれます。
 DigiPack ジャケットの美麗さも、解説(全訳付)の充実度も、同レーベルの常どおり——ドキドキするようなバロック体験に絶好の1枚!

ZIG ZAG TERRITOIRES



ZZT317
(国内盤)
\2940
ベートーヴェン/リスト編:
 1. 交響曲第7番 イ長調(1840/1865 編曲)
 2. 交響曲第1番 ハ長調(1863〜65 編曲)
ユーリ・マルティノフ
(ピアノ/パリのエラール社1837 年製作オリジナル)
リュビモフとのモーツァルト共演アルバムが絶好調の「ロシア・ピアニズム系フォルテピアノ奏者」、マルティノフ、昨年の話題騒然企画の続編を早くも! 圧巻の技量、全編聴きどころ満載...
解説のとてつもない充実度(全訳付!)も、この種の録音と向き合うには絶好の付加価値です

 すでに第1 弾録音(交響曲第2・6番、ZZT301)は昨年『レコード芸術』誌で特選、更に先日リリースされたばかりの、アレクセイ・リュビモフとの共演によるモーツァルト2台ピアノ作品集(ZZT306)はリリース早々レビューされるよりも早く好調な売れ行き——ユーリ・マルティノフ、すでにその才覚は日本でもしっかり評価されているようです!
 なにしろ彼は先行盤で共演している異才リュビモフと同じく、19 世紀ロマン派やロシア国民楽派の活躍を支えたヴィルトゥオーゾたちに連なるロシア・ピアニズムの系譜をひく現代ピアノの名手でありながら、「作品そのもの」に迫ろうとする真摯な解釈姿勢からフォルテピアノなど「作曲家の知っていた、当時の楽器」の奏法にも深く親しみ、特別な研鑽が必要となってくるそれら古い楽器とのつきあい方もマスターしてしまった、完全無比の新世代型ピアニストなのですから。
 そんな彼がいま徹底的に向き合っているのは、かつて“レパートリー開拓の鬼”たる名手シプリアン・カツァリスが現代ピアノで録音を続けていた「リスト編曲によるベートーヴェン交響曲のピアノ独奏版」シリーズ。
 ピアノ編曲というのはもともとレコードもラジオもなかった時代、オーケストラ音楽を身近な環境で愉しむため、客間のピアノで誰かが弾けるように...と編曲した楽譜が飛ぶように売れていた時代の産物であり、このリストの編曲版もまさにそうした時代に生まれたのですが、リストはそういう編曲作業が実は非常に細やかな感性の問われる仕事だということをよく理解しており、原曲をだめにしてしまう凡百の編曲を横目に、自ら高く評価してやまない先人の大作を、凄腕ピアニストにして稀代の作曲家でもある自分の感性の全てを傾けて編曲してみようと思い立ちました。
 結果、彼は途中しばし中断をはさみながらベートーヴェンの9曲すべてをピアノ編曲(ピアニストとして活躍した若い頃だけでなく、ヴァイマール宮廷楽団の指揮者として自らベートーヴェンの交響曲を指揮したあとに改めて編曲作業を再開しているのは象徴的です)。
 しかしその企図はやはり、リストが亡くなった後にもさまざまな機構の変更があった末の現代ピアノでは充分に伝わり得なかったのだ...!と、リストも愛したプレイエル社で作られ、19 世紀に広く普及していたタイプのピアノによる演奏を聴いていると、つくづく思わされずにはおれません。
 楽器の“鳴り”の制約と音域ごとに違うニュアンスをよく活かした、当時のピアノを知り尽くしていたリストならではの境地...!
 マルティノフは作曲家の意向を入念に探りながら、桁外れの腕前で超絶技巧をものともせず(そういうことをフォルテピアノでやるのは、どれほど大変なことでしょう...!)オーケストラの響きを私たちの脳裡に再構築させながら、明らかに現代のそれとは違う「19 世紀の響き」をその場に息づかせてゆきます。稀代の楽器製作者が丹念にリストアしたオリジナル楽器を、デリケートな楽器の特性をよくふまえた自然派録音で収めたZig-Zag Territoires の録音姿勢も実に頼もしく、前作にもまして充実した解説(全訳付)も情報満載です!
 

ZZT314
(国内盤・訳詞付)
\2940
『幸福の門』 1453年、コンスタンディヌポリスから
 イスタンブールへ
  〜欧州古楽、イスラム圏の音楽と出会う〜

 ①『哀歌』より(朗誦)
 ②コンスタンディヌポリス聖母教会の嘆きの歌(デュファイ作曲)
 ③イラヒの調べ、ガゼルの調べ(ネヴァの旋法で)
 ④ペシレヴの調べ(イラクの旋法で/エルジ作曲)
 ⑤わたしは仕えたい、これまで以上に(ジレ・ヴェリュ作曲)
 ⑥さあ来たれ、春よ(ボローニャQ18 写本より)
 ⑦アイル・セマイ(ペンガフの旋法で/アブドゥルカディル・メラギ作曲)
 ⑧ペシレヴの調べ(ネヴァの旋法で/伝バヤゼット2世作曲)
 ⑨もし、かの麗わしき乙女が(ブクスハイムのオルガン曲集より)
 ⑩バス・ダンス「クレーヴの踊り」と「フランスだより」
  (マルグリット・ドートリッシュの舞曲集より)
 ⑪バス・ダンス、コリネット、後宮のコリネット(コルナッツァーノの舞踏指南書より)
 ⑫悲しみを和らげるには(作曲者不詳)
 ⑬ペシレヴの調べ(ペンズガンの旋法で/カンテミール公子編)
 ⑭グローリアとアニュス・デイ(ギヨーム・フォグ『バス・ダンスのミサ』より)
 ⑮メヴレヴィ・アイニ(ペンズガンの旋法で)
 ⑯さらば、わが最も美しき恋の相手(バンショワ作曲)
 ⑰ガゼルの調べ(アゼム・アシランの旋法で)
 ⑱讃歌(ネイ(イスラム圏の笛)の即興演奏)
 ⑲ユリュク・セマイ(ラストの旋法で/ハフィス・ポスト作曲)
ドゥニ・ラザン=ダドル (各種笛)&
クドシ・エルグネル(朗誦・歌)指揮
Ens.ドゥス・メモワール(古楽器使用)、
エルグネル・バンド
 素朴な古楽器サウンドが、ほんのり異国情緒をはらんだ上品な民俗サウンドと重なり合う——
 俊才ラザン=ダドル率いるドゥス・メモワールの新譜は、トルコの異才エルグネルとのコラボレート。テーマは「コンスタンディヌポリス陥落」。哀調とエキゾチズム、憂愁と癒しの絶妙サウンドに陶酔。

Alpha の白シリーズにまさるとも劣らない、越境型古楽の痛快なアルバムをZig-Zag Territoires が贈り出してきました!
 すでにAstree/Naive やRicercar に名盤多数のベルギーの異才古楽集団ドゥス・メモワールが、ふだんはトルコ〜中近東の伝統音楽を演奏している異才クドシ・エルグネル率いるバンド(エルグネルはWikipedia に写真入り詳細記事があるほどの、そちらのシーンでは大物中の大物のひとり。)とがっちり組み、ダブルバンド編成で、トラックによっては相手方のディレクターに指揮されながら、地中海の覇権がヨーロッパ人とイスラム教徒たちのあいだで揺れ動いていた中世末期〜ルネサンス初期の音楽世界に迫ってみせました。
 テーマは「コンスタンディヌポリス陥落」。現在のイスタンブールはご存知の通り、15 世紀半ばまでは東ローマ帝国以来(いわゆるビザンティン帝国)の首都だったのですが(ギリシャ語名はコンスタンディヌポリス)、対岸の小アジア半島に台頭してきたオスマン=トルコ帝国の猛攻にあい、ついに1453 年陥落してしまいます。
 ビザンティン正教の総本山ソフィア大聖堂はイスラム教のモスクに改装されました(現在のアヤソフィア寺院)が、オスマン帝国の人々はかねてから隣国ビザンティンの、あるいはヴェネツィアやジェノヴァから来たキリスト教徒たちと友好的にも交渉をかさねてきた経緯があり、両者の15 世紀音楽は互いに刺激を与えあい続けてきた...というのがアルバムコンセプトとしてあるわけですが、何はともあれ、理屈より「音」——冒頭からいきなり、グレゴリオ聖歌と東洋風の朗誦とが重なるように交互にあらわれ、そのあとはイスラム楽器とルネサンス西欧系の楽器とが、それぞれ素朴な音色で、時には相手方の音楽の演奏にも参加してみたり...アルメニア正教の祈祷所跡で録音された、異国情緒と古楽的安らぎが併存する、静かな刺激に満ちたアルバムの内容は、指揮者ラザン=ダドルによるわかりやすい解説(全訳付)や神秘的な歌詞(訳詞付)としっかり向き合いながら聴くのにも、トルコ料理やギリシャ料理のお供に流し聴きするにもよし。



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