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第73号
お奨め国内盤新譜(1)
2013.10.22〜2013.12.13


ACOUSTICA



ACST2010-02
(国内盤)
\2940
ソレール 鍵盤のためのソナタ集vol.1
 〜スペイン・ピアノ音楽のルーツ〜

 アントニオ・ソレール(1729〜1783):
  ①ソナタ第56 番 ヘ長調 ②ソナタ第59 番ヘ長調
  ③ソナタ第94 番 ト長調 ④ソナタ第84 番 ニ長調
  ⑤ソナタ第18 番 ハ短調⑥ソナタ第7番 ハ長調
  ⑦ソナタ第20 番嬰ハ短調 ⑧ソナタ第2番 変ホ長調
  ⑨ソナタ第117 番 ニ短調 ⑩ソナタ第11 番 ロ長調
イシドロ・バリオ(ピアノ)
 スカルラッティの衣鉢を継いだスペイン鍵盤芸術の巨匠ソレール、意外にピアノ録音がないところ、来日公演で絶大な成功をおさめつづけるスペイン最前線の孤高の名匠が、長年にわたる愛奏の至芸を録音!
 息をのむ美しさは「ピアノによるチェンバロ音楽」の通念を覆す出来...!

 アントニオ・ソレール神父——チェンバロ音楽の愛好家には、ナポリ出身のドメーニコ・スカルラッティと同じくスペインの王室で活躍し、無数の単一楽章ソナタを書いた鍵盤芸術家として知られる人物。今は亡き伝説的チェンバロ奏者スコット・ロスが、スカルラッティのソナタ555 曲の全集のかたわら、この作曲家の作品集も1枚ERATO に録音していたことが、ひょっとすると世界的な知名度向上にも貢献した部分はあるかもしれません。あるいは故レオンハルト御大の愛弟子ボップ・ファン・アスペレンによる全曲録音(Astree)、あるいは曽根麻矢子さんの名盤...チェンバロ界隈にはこの作曲家のソナタの素晴しい名録音が絶えないのですが、ソレールより40 歳以上も年上のスカルラッティの作品がさんざん現代ピアノでも演奏され名盤も多いかたわら、ソレールのソナタはどうしたものか、話題を作れるほどのピアノ録音は滅多に出てこない...もちろん、その鍵盤音楽世界はあくまでチェンバロを前提に作曲されていたのは事実ですが、さりとてスペイン音楽史に名を残すこの名匠の傑作群、現代ピアノでの音楽世界にまったく合わないのかというと、実はそんなことはまるでないのです。事実、スペイン語圏のピアニストたちは折に触れ、リサイタルの前半などにソレールのソナタを配することで、自分たちの国の鍵盤音楽芸術が18 世紀に遡る伝統をもっていることを明らかにしようとする人も少なくないのです(古いところではアリシア・デ・ラローチャも!)。

 そうしたなか、近年の何度かにわたる来日公演では毎回(!)すみだトリフォニーホールをはじめ圧倒的な成功をおさめつづけているマドリードのヴィルトゥオーゾ、イシドロ・バリオがCD3枚にわたってソレールのソナタだけを延々と録音——
 これが1枚1枚、1曲ごと実に深い愛情をこめて演奏されている比類ない名演に仕上がっているのです!
 バリオはヒストリカル系ユーザー垂涎の巨匠カルロ・ゼッキの教えを受けた異才で、リストの技巧派名作をまるでこともなげに弾きこなしてしまうほどの腕前を持っていながら、独特のタッチでえもいわれぬまろやかな音色を体現、それでいて音符ひとつひとつの粒立ちがきわだつ実に不思議なピアニズムで、いつくしむようにやさしく、あるいは激情をたたえながらも気高さを決して損なわない、変幻自在の音世界で、まるで魔術のように、ソレールのチェンバロ芸術を現代ピアノの美意識へと翻案してゆくのです!
 もし作曲家自身がこれを聴いたら、いっそう霊感をかきたてられてさらなる名作を書いたのでは、とも思わされる——

 3枚順次発売しますが、解説訳は「つづきもの」で作曲家の真相に迫るストーリーに。

AEON



MAECD1332
(国内盤)
\2940
ジェルジ・リゲティ(1923〜2006):
 1. 弦楽四重奏曲 第1番「夜の変容」(1953-54/58)
 2. 弦楽四重奏曲第2番(1968)
 3. 無伴奏チェロ・ソナタ(1948-53)
ベーラ四重奏団
ジュリアン・デュードガール、フレデリク・オーリエ(vn)
ジュリアン・ブータン(va) リュク・ドゥドルイユ(vc)
 クラシック・ファン以外まで広く魅了する名前、リゲティ——確かに、この人の音楽は「伝わる」もの現代音楽の名盤あまたなAeonが満を持して放つリゲティ弦楽四重奏曲集は、とてつもない凄腕プレイヤー4人がスタイリッシュに、心にすっと伝わるクラシカルさとともに届ける新名盤!

 とっつきにくい音楽も多い現代音楽シーンにあって、ごく幾人か、この種の音楽が好きな方以外にも強く訴えるものを書いてきた作曲家がいます——深い癒しと抒情の響きをつくるペルトやグレツキ、たゆたうような無軌道的な音の流れに不思議な歌心が宿るベリオ、聴きにくい音も多いけれどつい深めたくなるクセナキス...それに、リゲティ!

 ハンガリー生まれのこの大家は、オーケストラ作品などでもかなり鋭角的な音作りをしているようでいて、実は故郷の大先達バルトークと民謡ルーツ系の音作りから多くを学んだ人でもあり、とっつきにくい先進性には非常に慎重だった人で。「大切なのは、自分以外の人には薄暗がりのむこうにあってよく見えない、そういう何かに、光をあてること。それまで存在すらしていなかった“構造”を、つくりだしてゆくこと」——リゲティは常々そう言っていたそうですが、事実、彼が残した管楽器のための作品などは、有名な木管五重奏曲などをはじめ、なぜかブラス系の非マニア系リスナーも「カッコイイ!」と熱心に絶賛するような曲もしばしば。
 亡くなってから7年、彼はますますフェティッシュな作曲家であり、これからもそうなのでしょう。そんなリゲティがどのくらい伝統的なクラシック語法とつながっていたか、そしてどのあたりが20 世紀的、先進的だったのか——そうしたことを解き明かす鍵はやはり、彼が1956 年のハンガリー動乱にさいして故郷を離れ、ウィーンに向かった頃...とその少し後に間隔を置いて書かれた弦楽四重奏曲2曲に、よくあらわれているようです。「現代音楽」に抵抗があるなら、本盤はその意味で絶妙のイントロダクションになるはず——
 なにしろ演奏団体のベーラ四重奏団は、リヨン音楽院とパリ音楽院の凄腕たちが、これらの作品の新解釈を打ち出そうと(リゲティも敬愛していた)ベーラ・バルトークのファーストネームを団体名に冠し、ようやく作曲家に監修してもらえる...というところでリゲティが亡くなってしまったという経緯があるくらい。
 しかも平時は人形使いや中近東の民俗系プレイヤーなどとも幅広い視野のパフォーマンスで広範な聴き手に興奮を伝えてきているグループだけに、上に掲げたリゲティの「他者には薄暗がりのむこう」にある音楽に光をあて、伝わるように...という言葉はなおのこと、いかにも彼らの活動を象徴するようでもあります。ハンガリー在住時代の、検閲下で書かれて結局演奏できなかった無伴奏チェロ・ソナタや、国を離れる前後に手をくわえながら仕上がった、前衛と伝統のちょうどあいだをゆく第1四重奏曲が、作風確立へ向かう第2四重奏曲をはさんで演奏されるとき、私たちはバルトークを経由してベートーヴェンから続く「クラシックなリゲティ」のありようをすんなり受け止めることになる——その企図も、ありえないくらい求心力の強い演奏解釈あればこそ。
 この種の音楽は、やはり作曲家たちの信望も厚いaeon ならではの充実度!

ALPHA



Alpha818
(国内盤・6枚組特価)
\6300
ラルペッジャータAlpha録音全集
 〜17世紀イタリアから、20世紀へ...!

CD1: 『ジローラモ・カプスベルガー作品集』
 (Alpha012)
CD2: 『ステーファノ・ランディ作品集』
 (Alpha021)
CD3-4: 『カヴァリエーリ:オラトリオ
 “魂と肉の劇”』全曲
 (Alpha065)
CD5: 『ラ・タランテッラ〜タランチュラの
 毒を清める方法』
 (Alpha503)
CD6: 『アル・インプロヴィゾ〜鬼才たちが織りなす
 ルネサンス&バロック即興変奏曲集』
  (Alpha512)

クリスティーナ・プルハル(バロックハープ・テオルボ)
Ens.ラルペッジャータ(古楽器使用)
マルコ・ビズリー、ドミニク・ヴィス、ヨハンネット・ゾーメル、
ハンス・イェルク・マンメル、
ルチッラ・ガレアッツィ 他(古楽歌唱)
ミシェル・クロード、アルフィオ・アンティーコ(perc)ドロン・シャーウィン(コルネット)
ブリュノ・コクセ、酒井淳(vc)
エドアルド・エグエス(バロックギター)
エディン・カラマゾーフ(アーチリュート)
ヴェロニカ・スクプリク(vn)他
 今や、カリスマ的古楽歌手ジャルスキーとの共演でもすっかり有名。その圧倒的な出世作となったアッコルドーネのマルコ・ビズリーをゲストに迎えての「ラ・タランテッラ」をはじめ、伝説的レーベルAlpha にこの異才集団が刻んだ足跡のすべてが、BOXに!
 全編日本語解説付でお届けします
 21 世紀に入ってから、古楽シーンに民俗音楽のムーヴメントがまったく抵抗なく重なるようになり、そうした音がヨーロッパではクラブシーンや地方フェスまで巻き込んで、もはやクラシックなどという枠組では語れなくなるくらいになってきているのだとすれば、その変化の過程で大きなターニングポイントを作った団体のひとつが、オーストリア出身ながら完全にフランス語圏になじんでいる異才バロックハープ奏者クリスティーナ・プルハル率いるアンサンブル・ラルペッジャータ!日本にも熱狂的ファンが少なくないE.エグエスやスティングとの共演で知られるE.カラマゾーフなど、欧州古楽界きっての撥弦楽器奏者たちをいちはやくメンバーに迎え、「何より好きなのは17 世紀」と嬉しそうに語るプルハルを中心に彼らが織りなしてきた「ほんのり民俗音楽寄り」の最高にパフォーマーな演奏解釈は、ナポリ生まれの異才歌手マルコ・ビズリーや、イタリア民俗音楽界の新風ルチッラ・ガレアッツィ、あるいは欧州ジャズ界のシングルリードの巨匠ジャンルイージ・トロヴェシなど、とてつもない多芸な共演陣とともにますます勢いづいてゆくのでした。
 昨今では日本でも愛されてやまない世界的カウンターテナー歌手フィリップ・ジャルスキーの共演バンドとしても名をあげていますが、そんな彼らが頭角をあらわしてきたのが、やはり古楽シーンの刷新に大きな一石を投じたフランスの革命的小規模レーベルAlpha—— レーベル創設からすでに15 年、そのカタログに刻まれた5作の金字塔的アルバムが待望のBOX 仕様となって登場です。
 原文解説はWeb のみ公開のところ、日本語解説は完全添付でのお届け!
 豪華ゲスト歌手陣を迎えての“世界初のオラトリオ”こと『魂と肉の劇』の全曲やランディ、カプスベルガーらのローマ楽派もの、そしてM.ビズリーとラルペッジャータの名を世界に刻んだ出世作「ラ・タランテッラ」、豪華ソリスト結集の即興アルバム...と、好セールスで業界の通念を変えてきた古楽盤の総決算。
 


Alpha816
(国内盤・3枚組)
\5040
バッハ:ミサ・ブレヴィスのすべて(全5曲)
 〜BWV233-236、「ロ短調」第1稿〜

  ヨーハン・クーナウ(1660〜1722)/バッハ編:
   1.モテット「正義は萎えおとろえて」
  ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
   2.ミサ・ブレヴィス ト短調 BWV235
   3.ミサ・ブレヴィス イ長調 BWV234
   4.ミサ・ブレヴィス ヘ長調 BWV233
   5.ミサ・ブレヴィス ト長調 BWV236
   6.モテット「おおイエス・キリスト、わが人生の光」BWV118
   7.ミサ・ブレヴィス ロ短調 BWV232(『ミサ曲ロ短調』初期稿)
ラファエル・ピション指揮
Ens.ピグマリオン(古楽器使用)
ユジェニー・ワルニエ(S)アンナ・ラインホルト(A)
カルロス・メーナ、マジド・エル=ブシラ、
テリー・ウェイ(C-T)
エミリアーノ・ゴンザレス=トロ(T)
シドニー・フィエルロ(Br)
コンスタンティン・ヴォルフ、
クリスティアン・イムラー(Bs)
 日進月歩の勢いで、新たな才能が生まれる古楽先進国フランス——その最先端、飛ぶ鳥を落とす勢いで欧州人たちを圧倒してきた古楽界のサラブレッドたちの代表的録音がついにBOX化!

 「レコ芸」特選ほか世界絶賛の超名演、お手頃価格で解説・歌詞全訳付!

 フランスはかつてあれほど古楽に消極的だったのに、20 世紀最後の15 年くらいで状況は劇的に変化し、ヴェルサイユ・バロック音楽センターという、フランス・バロック発祥の地であるヴェルサイユ宮殿を拠点にした重要期間が発足したあとはもはや、首都パリのみならずリヨンやレンヌ、メッス、ナントなど国内数都市を巻き込んで、欧州随一の古楽先進国になってしまいました。
 それからはや20 数年、今ではなんと「チェロより先にガンバを弾いていた」とか「ピアノよりも前からフォルテピアノやチェンバロを子供の頃から弾いていた」といった驚くべき古楽奏者も、あるいは「ヴェルサイユの合唱団が少年時代の思い出」などというオペラ歌手もばんばん出てきているところ、そうした21 世紀最先端のフランスで活躍しつつある超実力派古楽プレイヤーたちが一堂に会した異才集団アンサンブル・ピグマリオンは、Alpha レーベルで3度にわたってリリースを続けてきたミサ・ブレヴィス全曲録音を通じ、日本にもその桁外れの技量を知らしめるところとなりました。
 昨今のBOX 化の流れのなか、あの高雅なDigipack がうつくしいAlpha でもようやくレオンハルトBOX やカフェ・ツィマーマンのバッハBOX、あるいはエリック・ル・サージュのシューマンBOX など「これまでのかけがえのない遺産の集成」たるBOX シリーズが登場しはじめたところ、ここに新たに世に出てきたのが、その驚くべきミサ・ブレヴィス全集というのは、なんとも嬉しい話ではありませんか!

 「ミサ・ブレヴィス」とはカトリック・ミサ曲の通作5章のうち「キリエ」と「グローリア」の2章だけに曲をつけたもので、これはバッハらルター派プロテスタントの礼拝でも唱えられる数少ないラテン語歌詞の声楽曲だったわけですが、そこに我らが「音楽の父」がつけた音楽は、オペラ・アリアを思わせるさまざまな独唱曲を交えつつ、一連のカンタータよりも圧倒的に合唱の活躍率が大きい、異例の充実声楽大作4編。さらに『ミサ曲 ロ短調』も当初は最初の2章だけに曲をつけたものがドレスデン宮廷楽団という精鋭集団のために書かれており、本盤ではこの宮廷楽団の編成をもとにした濃密な演奏結果に仕上げられています。
 ライプツィヒにおけるバッハの先任者、同時代人たちからつとに尊敬されていた大家クーナウの名品が聴けるのも、さりげなくうれしいところ。

 解説はすべて日本語訳付(歌詞も!)でこのお値段。BOXシリーズは初回プレスのみになることもあるのでお見逃しなく!

ARCANA



Mer-A371
(国内盤)
\2940
イタリアの超凄腕集団アンサンブル・ゼフィーロ
 テレマン:3本のオーボエを伴う三つの序曲(管弦楽組曲)

  ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681〜1767)
   1.8声の序曲(管弦楽組曲)ニ長調 TWV55:D15
   2.8声の序曲(管弦楽組曲)ニ短調 TWV55:d3
   3.8声の序曲(管弦楽組曲)変ロ長調 TWV55:B10
ゼフィーロ・バロック・オーケストラ(古楽器使用)
アルフレード・ベルナルディーニ、
エミリアーノ・ロドルフィ、
パオロ・グラッツィ(バロックob)
アルベルト・グラッツィ(バロックfg)
 パッハと同時代に、この人をしのぐ名声を誇り得た作曲家はドイツにいなかった——天才テレマン、その名声はダテじゃない!を痛感させてくれる、オーケストラというものの本質を問う異色作。
 イタリア古楽勢のとてつもない職人芸ぶりは例によって圧巻そのもの、じっくりお愉しみを!一度メジャーレーベルで活躍したあと、小規模レーベルに戻ってくる一流プレイヤーが増えているように思います——とくに、古楽界。そもそもメジャーレーベルというものの存在感が、このジャンルでは機能しにくいわけですから(広告費と演奏内容が全然つりあわないことも多い...というか、広告費をたくさんかけてもらっている演奏家と、そうでないけれどすごい!という演奏家の間にクオリティ的な違いがほとんどない)、ひととき大手広告宣伝の路線に巻かれてみるも一興、でもやっぱりやりたいことは貫きたい...と、自分たちの意向を汲んでくれたり、じっくり対話ができたりするプロデューサーがいて、小回りのきく丁寧な音盤作りができる小規模レーベルに戻ってくる、というのは必然の流れなのかもしれません。
 Deutsche Harmonia Mundi やAmbroisie/Naive といった、メジャーレーベルやメジャー感を強く打ち出したレーベルで活躍をみせてきたイタリアの超凄腕集団アンサンブル・ゼフィーロも、近年は晴れて母国イタリアのレーベルになった名門Arcana で音盤制作をするようになり、今回のように堅調かつ非常にクオリティの高い古楽路線の録音をじっくり練り上げてくる、好感度の高い録音シーン攻勢を仕掛けてくるように。
 古楽器+小規模器楽合奏の粋・テレマンのめくるめく音楽世界はゼフィーロの面々にとっても親しみ深いであろうところ、今回はとくにダブルリード系(オーボエとファゴット)の存在感がきわだつ三つの組曲をフィーチャリング!バロック期には「オーケストラ」というものが明確にあったわけではなく、基本は各パートひとりずつの室内楽編成、それをどうふくらませるか...という発想だったところ(コレッリのトリオ・ソナタを200 人で弾く...ということさえあったそうです)。
 ここに収録されている組曲では、弦楽合奏4パートとまったく対等に、オーボエ3本とファゴットからなる4パートの管楽隊が歌い交わす、いわば四重奏+四重奏の八重奏編成で演奏される音楽。
 ゼフィーロはもともと凄腕バロック・オーボエ奏者アルフレード・ベルナルディーニが、異才古楽集団イル・ジャルディーノ・アルモニコで活躍していたグラッツィ兄弟(オーボエ&ファゴット)を誘って創設した「弦楽器はあとから加えた」異色の古楽アンサンブルで、こうした曲目でがぜん活き活きとした持ち味を発揮するのはいわば必定!
 演奏編成は通奏低音以外、弦も各パートひとりずつの室内編成なのはもはやデフォルト。
 テレマンの音作りの面白さ、仕掛けのテクニックを縦横無尽に味わえる、本格派の充実録音になっているのです。
 解説充実全訳付、めくるめく極上バロックの世界へいざなわれる充実盤です!
 


Mer-A369
(国内盤)
\2940
パンドルフィ・メアッリ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ 作品4
 ジョヴァンニ・アントニオ・パンドルフィ・メアッリ(1629〜1679):
  『ヴァイオリン独奏[と通奏低音]のためのソナタ集』作品3(1660)
   1. 第1ソナタ「ラ・ステッラ」
   2. 第2ソナタ「ラ・チェスタ」
   3. 第3ソナタ「ラ・メラーナ」
   4. 第4ソナタ「ラ・カステッラ」
   5. 第5ソナタ「ラ・クレメンテ」
   6. 第6ソナタ「ラ・サッバティーナ」
グナール・レツボール(バロック・ヴァイオリン)
アルス・アンティクヮ・アウストリア(古楽器使用)
 「ようやく」の感あり、前作原文解説で予告されていたのが早、2年前——異才レツボールの面目躍如、17世紀オーストリアで活躍した異才中の異才パンドルフィの至芸をまたしてもじっくり味わえる「下巻」、ついに登場

 熾烈さ・苛烈さ・比類ない歌、何でもありぱかつてフランス発のメジャーレーベルErato の古楽セクションを盛り上げたあと、小規模レーベルAstreeを立ち上げた敏腕技師ミシェル・ベルンステンが、生涯最後に興した古楽専門レーベルArcana——

 ベルンステン急逝後、イタリアの古楽プロデューサーに買われて奇跡の復活を遂げたこの名門は、2009 年の取扱開始とともに大人気を記録したフェシュテティーチ四重奏団のハイドン全集、廃盤状態から復活あいなったガンバ奏者ドゥフトシュミットやエンリーコ・ガッティ、ファビオ・ビオンディらのイタリア鬼才勢の傑作盤...とますます名盤を連発。さらに近年ではイタリア随一の古楽集団アンサンブル・ゼフィーロまで名録音を続々提案するようになってきましたが、そうしたなか今もさらなる新録音で素晴らしい充実企画と名演を続々放ってくれているのが、ベルンステンがこのレーベルに引っ張ってきた、「音楽大国」オーストリアの古楽界で最も注目すべきバロック・ヴァイオリンの異才、グナール・レツボールぱ Pan Classics レーベルから2012年に再発売されたSymphonia 録音のビーバーのソナタ集は、昨年度レコード・アカデミー賞を受賞、今年初めに大きなセールスを記録したのも記憶に新しいところ。さらについ最近は、自ら主宰するアルス・アンティクヮ・アウストリアとともに(「皇帝レクイエム」で知られる)フックスの新発見オラトリオを全曲録音、朝日新聞の「試聴室」でも絶賛を戴くなど、自国の音楽遺産の発掘にかける情熱と確かな成果はとどまるところを知らぬかのようです。
 そんな彼が、ベルンステンの忘れ形見であるArcana レーベルで久々の新録音をリリース——すでに2年前にも好評を博した、モンテヴェルディの世代とコレッリなど後期バロックをつなぐ17世紀の謎の異才、パンドルフィ=メアッリの作品集が、さらにもうひとつ

 この作曲家、実は輸入盤セールスが最も熱かった20世紀最後の10年ほどのあいだ、Channel Classics とHarmonia MundiFrance でアンドルー・マンゼが連発したいくつかの名盤によって急激に知名度をあげ、バロック通のあいだにフェティッシュな存在感を印象づけた鬼才。
 かそけきピアニッシモから突如、叩きつけるような最強音の和音の連続が飛び出したり、めまぐるしい超絶技巧から一転、誰もが心とろかすカンタービレへと移ったり...といった先の読めないスリリングな展開に、聴き手側の心が驚くほど惹きつけられてしまう、謎のカリスマ的音運びを知ったなら、1曲でも多くその世界に出会いたい...と思わずにはおれないところ。今回の「作品4」全曲盤でも、そうした作風とレツボールの桁外れな名手ぶりが最高のマッチングをみせているうえ、作品解説も充実(全訳付)。
 今年が没後300年にあたるコレッリの作品との聴き比べも示唆的なところ、バロック・ヴァイオリンのディープな世界へのイニシエーションとしても絶好の充実度、ぜひお試しを!


パンドルフィ・メアッリ旧譜
聴いてみていいと思います。


Mer-A360
(国内盤)
\2940
ジョヴァンニ・アントニオ・パンドルフィ・メアッリ(1629〜1679)
 『ヴァイオリン独奏[と通奏低音]のためのソナタ集』作品4(1660)
 1. 第1ソナタ「ラ・ベルナベイ」
 2. 第2ソナタ「ラ・ヴィヴィアーナ」
 3. 第3ソナタ「ラ・モネッラ・ロマネスカ」
 4. 第4ソナタ「ラ・ビアンクッチア」
 5. 第5ソナタ「ラ・ステッラ」
 6. 第6ソナタ「ラ・ヴィンチョリーナ」
グナール・レツボール(バロック・ヴァイオリン)
アルス・アンティクヮ・アウストリア(古楽器使用)
A360
(輸入盤)
\2500→\2190
 パンドルフィ・メアッリ。
 ことあるごとに店主がお話しするSYMPHONIAレーベルの「17〜18世紀イタリアのヴァイオリン芸術 VOL.1」。そのなかでマッテイスとともに収録されて異彩を放っていた幻の作曲家。
 はかなげで美しく、聴けば聴くほどいとおしくなるような音楽。この時代のイタリアには何と素敵な音楽を生み出す土壌があったことだろう。その豊穣さは19世紀のドイツ・オーストリアをしのぐ。
 パンドルフィ・メアッリの生涯は謎が多いが、イタリアで生まれ、その後ハプスブルク家のフェルディナント皇子の元で音楽家を務めていたというから、中期のバロックにおいてイタリアのヴァイオリン音楽をオーストリアにもたらした最初期の人と思われる。イタリアから大陸を横断してロンドンで大成功したマッテイスや、大陸中央で活躍したヴァルター、ヴェストホフ、ビーバーたちが1950年前後の生まれ。このパンドルフィ・メアッリが1629年生まれ・・・確かにこの人の音楽には、マッテイスやビーバーたちの音楽の源流ともいうべきにおいがする。

 さてそのパンドルフィ・メアッリのソナタ集。ヴァイオリンは麗しき大道芸人レツボール。これまでガッティやマンゼの演奏で聴いてきたからか、レツボールの演奏はあいかわらず体臭ムンムンで個性全開だが、パンドルフィ・メアッリの音楽にはそういう感性も平気で呑み込む度量がある。大衆性がある。豊かさがある。さらに通奏低音にはチェンバロ、オルガン、アーチリュート、バロックギター、コントラバス、南イタリアの民俗楽器コラシオーネまで登場。これまでどちらかというと独奏で奏でられることが多かったパンドルフィ・メアッリの音楽が、華やかで饒舌になる。しかしこれはこれで悪くない。ここ数年で進んだこの謎の作曲家の研究の成果ということか。確かに違和感なく、心から楽しめる。
 ここ最近で最も聞いたアルバムである。 
 
Pandolfi Mealli - Violin Sonatas
CANAL GRANDE
CG 06005
\1800→\1690
アンドリュー・マンゼ
 パンドルフィ・メアッリ:ヴァイオリン・ソナタ集(1660)
 ヴァイオリン・ソナタ 作品3-2
 ヴァイオリン・ソナタ 作品3-4
 組曲 ハ長調(チェンバロ独奏曲)
 ヴァイオリン・ソナタ 作品3-5
 ヴァイオリン・ソナタ 作品3-6
 組曲 ニ短調(チェンバロ独奏曲)
 ヴァイオリン・ソナタ 作品4-1
 ヴァイオリン・ソナタ 作品4-4
 組曲 イ長調(チェンバロ独奏曲)
 ヴァイオリン・ソナタ 作品4-6
アンドリュー・マンゼ(Vn)、
リチャード・エガー(Cemb)
フレッド・ヤーコブズ(テオルボ)

 さてそのパンドルフィ・メアッリ。ガッティの演奏も繊細で印象的だったが、実はその最大のライバルとも言うべきマンゼもやはり早くも1990年代中盤にこの謎の作曲家を取り上げていた。
 しかも1枚のアルバムまるまる。
 これがまたマンゼらしい「超絶技巧」満載の大サーカス演奏で、すさまじい。
 あんまりすごすぎて聴いてて疲れるために休憩を入れたほうがいいということで、途中にエガーのチェンバロ独奏が入ることになった(・・・というのは店主の推測だが、おそらく当たり)。
 こちらも超お奨めの1枚。



ARCO DIVA



UP0053
(国内盤)
\2940
中欧の近代音楽、二重協奏曲さまざま
 ラースロー・ヴェイネル(1916〜1944):
  ①フルート、ヴィオラ、ピアノと弦楽のための協奏曲
 レオン・クレッペル(1900〜1991):
  ②フルート、ピアノと弦楽のための小協奏曲
 エルネスト・ブロッホ(1880〜1959):
  ③フルート、ヴィオラと弦楽のための小協奏曲
 エルヴィン・シュールホフ(1894〜1942):
  ④二重協奏曲 WV89 〜フルート、ピアノと室内管弦楽のための
エヴァ・アルチュニアン(p)
ミラン・ラディチ(va)
カスパー・ツェーンダー(fl)指揮
カペラ・イストロポリターナ(室内合奏団)
 20世紀は、中欧の作曲家たちが面白い! マルティヌーやバルトークだけじゃない、チェコ・ハンガリー・スイス・ルーマニア...と、民俗情緒あふれる音楽世界からやってきた精緻な芸術の作り手たちが、バロック的編成で追い求めた美のありようを、堅固な名演で。

 20 世紀前半〜中盤には、前衛芸術というのとは明らかに違う、ロマン派〜近代の流れの延長にありながら埋もれていて気づかれていない、興味津々の音楽世界が広がっている。
 時代的にはフランス六人組が大御所になりつつあった頃、ショスタコーヴィチ初期から中期、マルティヌーやバルトークやヒンデミットが続々傑作を書き、ブリテンやウォルトンが英国楽壇を賑わせ、R.シュトラウスが古典派様式へと回帰しつつあった、そんな1940〜60 年頃に活躍をみせた中欧出身の作曲家たちは、ある者はフランス近代音楽、ある者はルネサンス〜バロック、またある者は故郷の(クラシックの伝統とは無関係な)民謡の音作り...と、19 世紀までのクラシックとはやや違う領域にあった音楽からさまざまな感化を受けながらも、あくまでオーケストラありき、ピアノありき、あるいは室内楽・オペラ・歌曲...といった古典的なジャンル分類ありき、の音楽世界で、ゆたかな創意をはぐくんでいました。
 相次ぐ大戦がオーケストラ運営を困難にしたか、はたまたロマン主義の過度に肥大化した大管弦楽へのアンチテーゼか、時おりしも室内合奏団のための音楽が大いに流行りはじめていた時代(そういえば、ヴィヴァルディその他のバロック後期の作曲家たちが再発見されはじめたのも、まさにこの20 世紀中盤のことでした)——ユダヤ系で大戦間に非業の死をとげた作曲家たちも含め、弦楽合奏を中心とするそうした小規模編成に活路をみいだした名匠は多く、本盤はそうした作曲家たちのうち、中欧出身の「名前はよく聴くが曲はなかなか」なラインの作曲家たちが残した、そういったバッハ風・ヴィヴァルディ風の小編成による小さな協奏曲が4曲集められています。『シェロモ』だけが飛びぬけて有名なブロッホしかり、バルトークやコダーイの影でいまひとつ認知度が低いままのヴェイネルしかり、エネスク以外はまず作曲家の名が上がらないルーマニアのクレッベル...マルティヌーやブリテンらの弦楽合奏がらみの音楽が気になる方々なら、いずれ劣らぬこれらの作品の面白さには魅了されずにおれないはず——作曲家・作品解説も充実(全訳付)した資料価値も高い内容に加え、なによりチェコとスロヴァキアの名手たちによる演奏の素晴しさが、作品の魅力をどこまでも引き立ててくれるのです。
 ヴィオラのための名品が多いのも、この時代の音楽が好きな方にはポイントなはず(ヒンデミット『白鳥を焼く男』やバルトークの協奏曲と並ぶ近代名品群、というわけです)。そこへさらにフルートやピアノが加わる「近代のブランデンブルク協奏曲編成」ともいうべき合奏形態が、どのような音世界をつくりだすのか...

ARS MUSICI


AMCD232-373
(国内盤)
\2940
ベーム オルガンのための作品集2
 〜若きバッハを教えた名匠〜

ゲオルク・ベーム(1661〜1733):
 ①前奏曲とフーガ ハ長調
 ②コラール変奏曲「救世主、あなたは太陽、昼の光」
 ③コラール「キリストは詩の縄目につながれぬ」
 ④前奏曲とフーガ イ短調
 ⑤コラール「天にまします我らが父よ」II.
 ⑥コラール「天にまします我らが父よ」III.
 ⑦コラール「わたしたちは救世主を讃美いたしましょう」
 ⑧コラール・パルティータ「神の愛にすべてを委ねる者を」
 ⑨コラール変奏曲「深き淵から、わたしはあなたを呼びます」
 ⑩前奏曲 ヘ長調 ⑪カプリッチョ ニ長調
 ⑫コラール「讃美を受けよ、汝イエス・キリスト」
 ⑬前奏曲とフーガ ニ短調
ヨーゼフ・スライス(org/アルプ・シュニットガー1701年建造)
バッハにオルガンのすべてを叩き込んだ——否、作曲の師でもあったと目される名匠ベーム。
 意外に出足好調が止まらない前作につづく「第2巻」では、収録作品数も大幅に増え「“音楽の父”の師」のより多面的な位相が明らかに。
 巨匠スライス、歴史的銘器での堂々名演!ゲオルク・ベーム...17 世紀後半から18 世紀にかけ、ブクステフーデやラインケンら17 世紀ドイツ北方の巨匠たちのオルガン音楽芸術を新時代へと伝えた、見過ごしがたい名匠!その名がいまも忘れられず、古楽復興の流れのなかで折々に注目を浴びているのは、ほかでもない、彼があの「音楽の父」ことバッハにレッスンを授けてきた、直接の師匠と目されているからにほかなりません!
 バッハのオルガン音楽は、しばしばそれ以前の(たとえばブクステフーデなどの)ドイツ北方オルガン芸術とくらべて「多彩さを志向するのではなく、多彩なものをひとつにまとめる総合性」を特徴としている、というのはよく言われることですが、そうした総合性にインスピレーション源があったとすれば、それはまぎれもなくベームの影響だったであろうことが、本盤の演奏を通じてもよくわかるのではないでしょうか。
 バッハは1700 年から数年間、ハンブルクにほど近い北ドイツ・リューネブルクの寄宿学校で勉強しており、このとき当地にいたベームからオルガン音楽のイロハを本格的に叩き込まれ、かつオルガン建造の深い知識や、ひいては作曲についてのテクニックも教えてもらったと言われています。
 ArsMusici レーベルにはベームのオルガン作品を録音したアルバムがすでにひとつ日本語解説付仕様でも流通していますが(AMCD232-342)、本盤はそこで歴史的オルガンを弾いていた古楽大国ベルギー屈指の巨匠ヨーゼフ・スライスによる、さらなるアルバム——ベームが亡くなる直前に完成をみた歴史的楽器から一転、今度は作曲家ベームが「理想のオルガンをつくる建造家」と絶賛してやまなかったという名匠アルプ・シュニットガーが手がけた1702 年製の歴史的オルガンに向きあい、ベームが心に思い描いたであろう響きをありありと「いま」に蘇らせてみせる、その泰然自若にして古色蒼然、圧倒的な風格と自然さを兼ね備えた演奏の確かさには、まったく息をのむばかり!
 弟子のバッハも、かのブクステフーデも、しばしば全音栓を使っての(ともすれば聴き手に恐怖感を植えつけかねない)荘厳華麗なサウンドを好んで用いたところ、ここでは丁寧な音栓選択のもと、楽器の良さや音運びの妙がきれいに浮かび上がる演奏解釈が続けられており、ベームという人物の芸術性の確かさを多面的な選曲でじっくり味わえるだけでなく、パイプオルガンというものに何となく抵抗感がある方にもすんなり受け入れてもらえるであろう、絶妙の自然派サウンドになっているのがまた嬉しいところです。
 例によって解説書も充実、もちろん全訳付!

CONCERTO



CNT2078
(国内盤・2枚組)
\4515
トリオ・ディ・パルマ
 ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲全集

  ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調 op.21
  ピアノ三重奏曲第2番 ト短調 op.26
  ピアノ三重奏曲第3番 ヘ短調 op.65
  ピアノ三重奏曲第4番ホ短調 op.90「ドゥムキー」
トリオ・ディ・パルマ
 イヴァン・ラバーリア(vn)
 エンリーコ・ブロンツィ(vc)
 アルベルト・ミオディーニ(p)
 スラヴの魂には、イタリアの歌心がよく似合う。しかも時にノンヴィブラート、息をのむほど美しい!
 いま何で来日しないのかさえ不思議なくらい、見過ごせないソリスト集団トリオ・ディ・パルマ、これは聴いたほうがいい。ドヴォルザークのピアノ三重奏曲をまだ知らないなら、なおのこと!
 イタリアのミラノに拠点をおくConcerto レーベルは、直接音を大切にした濃密な録音エンジニアリングもさることながら、時々この国のとてつもないプレイヤーの名演を粛々と録音してみせていたりするのが侮れないところ——ミラノ・スカラ座のコントラバス首席奏者がさりげなくボッテジーニの傑作録音を2枚もリリースしていたり(CNT2004 とCNT2051、前者は『レコ芸』特選・後者は同準特選)、ホグウッドやノリントンとの共演でも知られる古楽器の凄腕アンスニー・ペイが、現代楽器でモーツァルトのバセットホルン作品全集を作っていたり(CNT2023)...「日本では知名度がまだ高くないものの実は、桁外れの才人」は、このレーベルにごろごろしているので侮れません。そうしたなか、とくに注目したい団体のひとつがトリオ・ディ・パルマ——チェロのエンリーコ・ブロンツィだけは数年前に少しだけ来日公演をしてくれましたが、彼らは時代が時代なら(広告商売が活況だった頃なら?)確実に世界のスターダムにのしあがったのではないかと思える、個人プレイでも総合力でも勝負できる侮りがたい異才集団!
 レスピーギと同世代の異才ピッツェッティの室内楽曲集は2枚とも実に充実した仕上がり(CNT2056・2057、後者は『レコ芸』準特選)でしたが、お国ものばかりではなく、たとえばシューマンやリストなどでも侮りがたい実績をあげてみせるのが憎いところ——
 しかし今回の新譜は、かなりきわめつけです!そもそも、ラテン系の演奏家たちはチャイコフスキーやドヴォルザークなどスラヴ系の作品に独特の相性をみせることがしばしばで(それは逆もまたしかり...ロシアやブルガリアの若手が弾くピアソラ、ルービンシュタインの弾いたアルベニス...etc)、東と西とで情熱のありかが似ているのか?と思ったりもするのですが、ここで彼らが手がけたドヴォルザーク解釈は、ちょっと単純な言葉ではくくれないほど仕掛けたっぷり。イタリア人ならではの濃密な歌心がそこかしこに潜んでいるのですが、それは決して濃密なヴィブラートや緩急はげしいアゴーギグというかたちでは出てこない。
 3人の息の合い方は異常なほどぴったりで、しかし互いに聴きあい...というのとは違う、ゆずりあわずとも心がひとつになる!といった感じのストレートな情熱的演奏は、直接バイヤー様に聴き確かめていただきたいクオリティ(「音」あります)。『ドゥムキー』の変幻自在なリズムの妙を、この一体感で突っ走りながら、囁くようなピアニッシモをノンヴィブラートで艶やかに仕上げてみせる瞬間など、ほんとうに息をのむ——どこまでも曲者なのです!ドヴォルザークのピアノ三重奏曲は、初期はかなりの若書きから中期もあり、晩期の異色作もあり、と相当多彩にもかかわらず、全体としてはどうしてもスラヴ系奏者たちのお家芸になるか、散発的に第3番がとりあげられるか、程度。本盤で初めて出会う、という方にも本当に強くお勧めできる逸品です。

FUGA LIBERA



MFUG513
(国内盤)
\2940
ラフマニノフ:コレッリの主題による変奏曲、
 ラフマニノフ編曲による大作曲家たちの名曲さまざま
  〜バッハ、クライスラー、ムソルグスキー、メンデルスゾーン...〜

セルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943):
 ①コレッリの主題による変奏曲 作品42
ラフマニノフ編曲によるピアノ独奏版
 ②バッハ:前奏曲・ガヴォット・ジグ〜
  「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番」BWV1006 より
 ③シューベルト「どこへ」〜『美しき水車小屋の娘』D795より
 ④ビゼー「メヌエット」〜『アルルの女』第1組曲より
 ⑤ラフマニノフ「ひなぎく」〜『六つのロマンス(歌曲)』作品38 より
 ⑥メンデルスゾーンのスケルツォによるパラフレーズ 〜『真夏の世の夢』より
 ⑦ムソルグスキー「ゴパック」〜『ソロチンツィの定期市』より
 ⑧チャイコフスキー「子守唄」〜『六つのロマンス(歌曲)』作品16 より
 ⑨リムスキー=コルサコフ「熊蜂の飛行」〜『スルタン皇帝の物語』より
 ⑩クライスラー「愛の悲しみ」⑪クライスラー「愛の喜び」
◆パヴェル・ラム(1882〜1951)&コンスタンティン・イグムノフ(1873〜1948)
 編曲によるラフマニノフの歌曲のピアノ独奏版
  ⑫リラの花〜『12 のロマンス(歌曲)』作品21 より
エカテリーナ・メチェティナ(ピアノ)
 「コンクール破り」のキャリアは、伊達じゃない!磨き抜かれたテクニックあればこそ、の引き出しの多さがこのような多元的なヴィルトゥオーゾ・プログラムを可能にした——ロシアの思わぬ名手メチェティナ、.息をのむほどの超絶技巧と、めくるめく深みあふれるピアニズム。
 ロマン派の残り香、むせかえるように...

 駆け出しの頃、華やかにコンクール破りを続けてきた凄腕ピアニストは、その後どうなってゆくのか——コンクールが全てというわけでは当然なく、世の中にはコンクール受賞経験はさほどなくとも瞠目すべき活躍を続けている異才ピアニストがごろごろしているから恐ろしいのですが、かといってコンクールでの成功はそのまま誰もがヴァン・クライバーン的な結末を迎えるのかというと、まったくそういうことはなく。スタニスラフ・ブーニンと同時期に恐るべきコンクール破りの快進撃を続けていたイーゴリ・カメンツやゼーフェリン・フォン・エッカルトシュタインのように、その後欧州で確実なキャリアを積みながら折々痛快なレコーディングを放ってくる、そういう名手たちの「いま」は確実に進歩を続けているうえ、なにぶんコンクールで満場を沸かせるだけのパフォーマー的芸達者さ、完膚なきまでに磨き抜かれたテクニックといったものを早くから持っていたわけですから、当然弾ける曲も多く引き出しも多い...といった実に喜ばしいコンディションを保っている人も少なくはないようです。
 Fuga Libera レーベル創設から間もなく、エリザベート王妃国際コンクールやシンシナティ国際コンクールでの成功もまだ話題として新しかった頃に、ロシアの思わぬ異才エカテリーナ・メチェティナが録音していた本盤も、まさにそうした“コンクール破りの名手・その後”の面白さを如実に印象づける内容!ラフマニノフに焦点をしぼり、20 世紀初頭、まだロマン派以来のヴィルトゥオーゾ志向・超絶技巧偏愛が脈々と息づいていた時代ならではの、ラフマニノフによる艶やかなピアノ編曲作品の数々を「ただの派手系」で終わらせない芸達者ぶり、すでにして深みたっぷりの音楽性が、息をのむほど美しく磨き抜かれたピアニズムとともに、馥郁たるロシア音楽の、超絶技巧派のピアノ芸術の粋を味あわせてくれます!
 選曲の妙(上記!)もあってか、「コレッリの〜」さえラフマニノフがコレッリの楽譜を即興的に編曲・展開して弾いているのかと錯覚するほど...侮れない1枚、お見逃しなく!

GRAMOLA



GRML99015
(国内盤)
\2940
北ドイツ——弦楽四重奏450年の歴史
 〜メクレンブルク地方の伝統と、いま〜
   弦楽四重奏で聴くドイツ音楽の歴史

 トーマス・メンケン(1550〜1612):
  ①第2ファンタジア 〜4パートのための(1588)
 アントニオ・ロゼッティ(1750〜1792):
  ②弦楽四重奏曲 イ長調 作品2-1(1775)
 リヒャルト・ワーグナー(1813〜1883)/ラインハルト・リッペルト編:
  ③温室にて(弦楽四重奏版)〜『ヴェーゼンドンクの五つの歌』(1857〜58)より
 フリードリヒ・フォン・フロトー(1812〜1883):
  ④弦楽四重奏曲 ハ長調
 イェルク・ウルリヒ・クラー(1976〜):
  ⑤弦楽四重奏のためのファンタジア(2006〜07)
デムラー四重奏団
 ディートリヒ・ヘンペル(vn1)
 トーマス・プロープスト(vn2)
 マリア・シェーネ(va)
 イェルク・ウルリヒ・クラー(vc)
 ロゼッティ初期の名品、ルネサンス作品のほか、近年の大発見!フロトーの弦楽四重奏曲も。
 室内楽ファン垂涎のめくるめくプログラム、さすがドイツ!な、筋金入りの企画力。

 音楽にかけては長らく後進国コンプレックスのあったドイツが、いま世界屈指のクラシック大国になっているのには、いくつか理由があるのだと思います。とくに、19 世紀まで群雄割拠の小国分立状態だったところ、フランスや英国やロシアなどの周辺強国と張り合ってゆくためには「ドイツ人がひとつになれる何か」が必要で、ドイツ語話者たちが大事にはぐくんできた文化を徹底的に見据えた結果、ドイツの歴史とふかくむすびついた「歴史あるドイツ文化」が研究され、確かめられ、愛され続ける...という素地ができあがったのが19 世紀末。音楽、とくに古典派以降の交響曲やソナタなど、ドイツ語圏が牽引してきた曲種が、自分たちのバックボーンを再確認しつづけるためのレクリエーションとして、おのずと大事にせずにはいられない存在となっていったとしても、まず不思議はなかったわけです。
 そのようなかたちで、弾く曲への深い愛があると、聴く側が彼らとバックボーンを共有していなかったとしても(つまり、ドイツ人でもドイツ語話者でもなかったとしても)、おのずと深く魅了されてしまう求心力の強い演奏ができあがるもの——自分たちのルーツを徹底的に見つめ直し、弦楽四重奏というまさに古典派以来の演奏編成によって、周到なプログラム構成でわかりやすく「ドイツの音楽の歴史」を(古典派以前の「前史」にまでさかのぼって)じっくり味あわせてくれるこのアルバムは、気軽な聴き手にも快く、かつ深く聴き込もうとする人間にはいわば「求めたぶん与えてくれる」味わい豊かな1枚に仕上がっています。
 原題にいわく「メクレンブルク地方の音楽450年」——北海のむこうに英国や北欧諸国、ロシアやポーランドなどを臨むドイツ北部のメクレンブルク地方に焦点をあてているのは、この地域の中心都市シュヴェーリンに、なんと450 年にわたって継続的に(←ここが重要!)演奏活動を続けてきた、ドイツ最古の部類に属するオーケストラが存在するから。このメクレンブルク州立シュヴェーリン管弦楽団に名を連ねる若き名手4人が提案してくれたのは、この地にゆかりのある音楽家がルネサンス(!)以来どのような音楽をはぐくんできたか、ルネサンス、古典派、初期&盛期ロマン派、現代...と、5人の作曲家の名品を通じてたどってゆく企画。これが実に耳になじむ、ただかけているだけでも、1曲ずつ聴き込んでも面白い内容になっているのです!とくに嬉しいのは、近年再発見されて間もないフロトーの四重奏曲がとびきりの名演で収録されているところ——「庭の千草」のアリアが有名な歌劇『マルタ』で知られるフロトーはオペラばかりが目立つところ、同曲の初期ロマン派然とした魅力を、日本語解説とともにじっくり味わえるのは嬉しいところ!
 古典派愛好家垂涎の作曲家ロゼッティの思わぬ初期作品、ワーグナーの充実編曲などでの名演もさることながら、弦楽四重奏と相性のよいルネサンス曲、耳にやさしい新作楽曲の味わいも格別!
 


GRML98987
(国内盤)
\2940
ピアノ連弾による『パルジファル』!
 リヒャルト・ワーグナー(1813〜1883)/
  エンゲルベルト・フンパーディンク(1854〜1921)編:
   楽劇『パルジファル』
    〜ピアノ連弾のためのパラフレーズ版
アンナ=マリヤ・マルコヴィーナ、
コード・ガーベン(ピアノ連弾)
 ワーグナー最後の傑作に、こんな注目すべきピアノ版があったとは——しかも編曲者は当時バイロイト祝典劇場でがっちり作曲家のそばにいた、若きフンパーディンク!
 さらに演奏陣は、名盤あまたなドイツ・リートの超有名伴奏者&多芸な異才...熱い、熱すぎる。
 楽都ウィーンのまっただなかに拠点をかまえるGramola レーベル、その明敏な音楽知と音楽愛あればこそ!の痛快な新名盤が届きました。今年が記念年で大いに盛り上がりをみせた楽劇の巨匠ワーグナー、その最後の傑作『パルジファル』はCD 録音でどう詰め込んでも3 枚が限度、の超大作——それをCD1枚の長さで端的に、というのはつまり、本盤はこのドラマティックにして示唆に富んだ楽劇のなかから的確な場面を選り抜き、ピアノ連弾で弾けるようにしたパラフレーズ編曲版なのです。
 こうした連弾編曲楽譜は、インターネットもレコードもラジオもなかった19 世紀の人々にとって、オーケストラ作品やオペラなど大編成を要する音楽を日常的に愉しむため、ぜひとも必要なものでした(外食産業もほとんど発展していなかった当時、ピアノはいまよりも暮らしに必須な「おもてなしの家具」として、客間に必ずといってよいほど置かれていたのです)——ただ、あまりに需要が多かったせいで次から次へと編曲版が粗製濫造されもした当時にあって、作曲者自身や、あるいはその監修を受けられるくらい近くにいた才能ある音楽家が作った編曲版というのは、いろいろな点できわめて示唆的かつ信頼のおける内容であり、ともすれば——そう、この録音に収録されているフンパーディンク編曲版のように——作品のほんとうに大事な部分を端的にひろいあげた、原作の本質と核心に迫る独立作品になっていることさえあるのです。
 オペラ・ファンにはいまさら繰り返すまでもありませんが、フンパーディンクは『ヘンゼルとグレーテル』と『王様の子供たち』の2作が飛びぬけて有名な、1900 年前後に活躍したドイツ軽歌劇の作曲家...というのは「いま」の世界的認識にすぎず、実は『パルジファル』初演時にワーグナーのアシスタントとしてバイロイト祝典劇場で仕事をし、その後もドイツ皇帝とつながりを持つなど、ドイツ楽壇の中枢で確たる存在感を発揮していた人物でもありました。
 その慧眼あらたかな編曲版を弾くのが、フィッシャー=ディースカウやクルト・モルら無数の巨匠リート歌手たちを伴奏してきた名盤あまたのコード・ガーベンであり、あるいはウゴルスキとマルグリスの門下でロシア・ピアニズムの一端を叩き込まれたのち、バドゥラ=スコダ門下から羽ばたき秘曲発掘や意外な演奏活動を展開してきた多芸なる実力派マルコヴィナとは...!
 「うた」を知り尽くした二人が繰り広げる名演、充実解説全訳とともにCD1枚で『パルジファル』の粋に迫れる瞠目の内容。
 


GRML98988
(国内盤)
\2940
ヴァンハル:クラリネットとフォルテピアノのためのソナタ5編
 〜ウィーン古典派の立役者、ロマン派前夜の晩期作品〜

 ヨハン・バプティスト・ヴァンハル(ヤン・クシチテル・ヴァニハル 1739〜1813):
  1.フォルテピアノとクラリネットのためのソナタ 変ホ長調(1800 頃)
  2.フォルテピアノとクラリネットのためのソナタ ト長調(1808 頃)*
  3.フォルテピアノとクラリネットのためのソナタ 変ロ長調(1801 頃)
  4.フォルテピアノとクラリネットのためのソナタ ハ長調(1803 頃)
  5.フォルテピアノとクラリネットのためのソナタ変ホ長調(1808 頃)*
   (*印はヴァイオリン・ソナタからの転用)
エルンスト・シュラーダー(クラリネット/古楽器使用)
ヴォルフガング・ブルンナー
(フォルテピアノ/1795年頃製オリジナル)
 「ウィーン古典派っぽさ」を作ったのは、どうやらこの人だったらしい...ハイドンもモーツァルトもあれこれ感化された、モーツァルトより前からフリーランスでやれていた天才器楽作曲家。
 まさか晩年の傑作がこんなに続々!古楽器でも珍しい楽器の顔ぶれ、じっくりとどうぞ。

 ウィーン古典派らしさ。大雑把に「モーツァルトっぽさ」ということかもしれませんが、ああいった歌いまわしそのものはモーツァルトだけのものでなかったことは、古典派の音楽をちょっと聴けば誰でもすぐにわかること(そのうえで、やっぱりモーツァルトは断然すごいんですが)。でも、「みんなこの人をまねして育った!」という、あのウィーン古典派っぽさのルーツは幾人かいることも事実です。
 J.C.バッハやマルティーニ神父などイタリアで活躍した名匠たちの「歌うアレグロ」、あるいはヴァーゲンザイルその他のウィーンの先達たち...そして、後年まで多くの作曲家たちが夢中になった人気作曲家、ヴァンハルも!この人の交響曲は、彼より7歳も年上のハイドンさえ必死に研究対象にしたと言われているほか、ウィーン周辺だけでなく遠くパリでもさかんに演奏会でとりあげられ、室内楽の楽譜はいたるところで飛ぶように売れていたのだとか。
 当時の著述家たちも軒並みヴァンハルの熟達したセンスを誉めていましたが、何はともあれ、モーツァルトも数年で頓挫した「フリーの音楽家として生きてゆく」という道を、ヴァンハルは半世紀にわたり続けていた...という一事だけでも、彼が当時どれほど人気だったかは推して知れようというものです。幸いLP 時代からヴァンハル作品の録音というのは(彼の故郷でもある)チェコの俊英楽団がずいぶん多く発掘してくれ、Naxos にも録音多数、日本でもシンフォニエッタ・トウキョウが充実したCD 録音を連発してくれていますが、彼の人気に拍車をかけたという室内楽曲はなぜか、ここ近年になるまであまり録音が出てきませんでした。しかしウィーンに拠点を持つGramola レーベルの新譜は、そのなかでもさらに未開拓な「ヴァンハル晩期」に光をあてた、非常に貴重な1枚!ベートーヴェンがヴァイオリンやチェロとピアノのための二重奏ソナタを続々書いていた頃、最晩期のヴァンハルがピアノとクラリネットの二重奏のために書いた協奏的二重奏ソナタ群——この二つの楽器の組み合わせで演奏される曲からして、実はヴェーバーやメンデルスゾーンの曲が出てくるまで滅多になかったところ、まさか18 世紀を席巻した老匠が、こんなにもエキサイティングでスタイリッシュなソナタを5曲も残していたとは…ウィーン古楽界きっての、録音多き名手ふたりが、オーガニックで玄妙なニュアンス変化に富んだ古楽器サウンドで、伸びやかな歌も軽微な技巧性も思いのまま、形式美と歌心あふれる作品の魅力をじっくり引き出します。初期ロマン派の趣きも、うっすら。もちろん解説充実全訳付。


INDESENS!



INDE058
(国内盤)
\2940
パリ・ギャルド最新録音
 パリからの旅路 アメリカ・ロシア・アルメニア
  〜ガーシュウィン、アルチュニアン、リムスキー=コルサコフ〜

 ジョージ・ガーシュウィン(1898〜1937)/
  ティモフェイ・ドクシツェル編:
  ①ラプソディ・イン・ブルー(トランペットと吹奏楽版)
 アレクサンドル・アルチュニアン(1920〜2012)/ルネ・カストラン編:
  ②トランペット協奏曲(トランペットと吹奏楽版)
 ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1883〜1945)/フランソワ・ブーランジェ編:
  ③交響組曲「シェヘラザード」(吹奏楽版)
エリック・オービエ(トランペット)
フランソワ・ブーランジェ指揮
パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団
 フランス近代の作曲家トマジの作品集でヒットを飛ばしたばかりのところ、さらなる新譜が「実はロシア系」のガーシュウィンから、トランペット協奏曲の至宝へ、そして「あの傑作」へ。
 パリ・ギャルド最新録音、痛快すぎるロシアン・コネクション...オービエの妙技、どこまでもぱナポレオン戦争の時代から、世界に冠たる管楽器プレイヤーたちが活躍をみせてきたフランス——そのクオリティの高さを象徴するのが、まさしく19世紀初頭にまで歴史を遡る吹奏楽団「パリ・ギャルド」。
 数々の名盤を刻んできたこの団体が、昨今また音楽監督フランソワ・ブーランジェのもと、ひそかに新名盤を録音しはじめています。
 「管の王国フランス」の最前線で活躍する名手たちの録音を続々リリースしてきたIndesens!レーベルが、その頼れるパートナーになったことも大きいのかもしれません——なにしろこのレーベルには、故モーリス・アンドレの衣鉢を継ぐフランス随一のトランぺッター、エリック・オービエも看板アーティストで活躍しているところ、つい先日もこの両者の共演で、日本では吹奏楽関係者の絶大な支持を受けながらいまだ知名度が高いとは言えないフランス近現代屈指の巨匠、アンリ・トマジの作品集をリリースしたばかり。
 ところが、トマジがいかに日本で知られていなくとも、彼らの名演はすぐに圧倒的な支持を集め、思わぬ売れ行きをみせているから大したもの...そんな折も折、さらなる共演盤が同レーベルから登場するとあっては、しかも収録作品がトマジ盤よりも圧倒的に有名な傑作ばかりとあっては、どうして注目を集めずにおくでしょうか?!
 タイトル作品はなんと、あのピアノとビッグバンドのために書かれた20 世紀屈指のボーダーレス異色傑作「ラプソディ・イン・ブルー」——そのピアノ・パートをトランペットひとつで余裕綽々、心とろかす圧巻のブロウで吹きこなしてみせるエリック・オービエの妙技はまさに痛快、ギャルドがくりだすクリスピー&グラマラスな音響美とともに、圧倒的な存在感で私たちの耳と心を惹きつけずにはおきません!
 そのあとにはさらに吹奏楽アレンジが2曲——うち1曲はトランペット奏者たちの憧れの的、20 世紀音楽の至宝・アルメニア人作曲家アルチュニアンの傑作協奏曲。
 もうひとつはオービエ不在ながら、パリ・ギャルドのあの息をのむほどのサウンド作りに唸らされる『シェヘラザード』の超・名演——ラヴェルの「ボレロ」や「ダフニスとクロエ」など、色彩感をきわだたせたオーケストラ名曲の編曲ですばらしい実績をあげているパリ・ギャルドならでは、めくるめく演奏解釈をじっくり聴き究めたいところ。吹奏楽ファン垂涎の逸品です!
 


INDE056
(国内盤)
\2940
イリーナ・ランコヴァ(ピアノ)
 シューベルト(1797〜1828):

  1.三つのピアノ小品 D 946
  2.ピアノ・ソナタ 第20 番 イ長調 D 959
  3.即興曲 第3番 D 899-3(op.90-3)
イリーナ・ランコヴァ(ピアノ)
 ロシア・ピアニズムは続く。レフ・ナウモフやV.トゥロップに学んだ俊才、絶美のシューベルトぱ晩期の、死の影を見据えていた作曲家の、加減ひとつでこわれてしまいそうな儚さをぎりぎりの、絶妙の美で奏でつないでみせる。さすがスクリャービン弾き、息をのむ名演新たに「ロシア・ピアニズム」という言葉には、今もなお魔力のような響きがあります——

 ネイガウス、ヴェデルニコフ、オボーリン、イグムノフ、ガヴリーロフ、リュビモフ...新旧の名だたる名匠、名教師たちの名前をあげてゆくだけでゾクゾクしてしまいますが、その系譜は今もなお連綿と続き、折々に現れる新星たちにも「ひょっとして、これは大成する頃には過去の名匠たちに並ぶ、いや凌駕する大物になるのでは…?」と思わされる才人は少なくありません。
 ふだんはエリック・オービエ(tp)やヴァンサン・リュカ(fl)、パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など、“管楽器の王国”フランス最前線をゆく管楽器プレイヤーたちの名演を多く世に届けてきたIndesens!のプロデューサーが「彼女はぜひ自分のレーベルで紹介したい」と管楽器いっさいぬきでもアルバム制作に乗り出したのも、そんなロシア・ピアニズムの系譜をひくロシアの俊才、イリーナ・ランコヴァ。ロシアでは巨匠ネイガウスの門下に連なるL.ナウモフやV.トゥロップといった名教師に師事、のちにV.アシュケナージにも私淑しながら培われてきた彼女のピアニズムは、完璧に磨き抜かれていながら絶妙に自然体、かそけき弱音から鮮烈なフォルテまで、よどみない音楽の流れにあざやかに文脈づけ...などと言葉で表現するのももどかしいくらい、ほんとうに一言で「美しい」と言い切れるような解釈をつくりあげてみせるのです。
 シューベルト最後の3大ソナタのうち「第20 番」を選んだのも、そのほか亡くなる前の作品から死の影がどこかちらつく曲を選んでいるのも、彼女の芸術性にはぴたりと合っているよう——なにしろ彼女はレコーディング・アーティストとしても必ずしも新人ではなく、すでに数年前リリースされた3 枚のCD では、スクリャービンの名演で批評家勢からも賞賛されている...、自分の作風を世に印象づけてゆくことを徹底して考え、そこで導き出された答え=成功実績が、あの1900 年前後の、革命前夜のロシア楽壇に新境地をきりひらいた異才の絶美の作品だった...ということを、本盤のシューベルト解釈に接すれば接するほど、あらためて思い起こさずにはおれません(IRINA LANKOVA でYoutube 検索すると、ラフマニノフやスクリャービンのオフィシャル映像が続々出てきますので、どうぞご参照を...)。
 モーツァルト最晩年の作品のひとつ、あのクラリネット協奏曲と同じイ長調で書かれた長大なD959 のソナタは、ほんとうに彼女が弾き終わってしまうのが惜しくなるほど—1 曲ごと“小品”というにはあまりに長いD946 の端正な、それでいてどこまでも深みを感じさせる解釈も、絶美の即興曲第3 番も...試聴したら必ずや欲しくなる、かけがえのない1枚です。
 


INDE050
(国内盤)
\2940
パリ・ギャルド・レピュブルケーヌ吹奏楽団
 トマジと、フランスの吹奏楽
  〜トランペット協奏曲、トロンボーン協奏曲、遺灰の婚礼、
   3本のトランペットのための組曲〜

アンリ・トマジ(1901〜1971):
 1. トランペット協奏曲*
 2. トロンボーン協奏曲**
 3. 組曲「遺灰の婚礼」*
 4. 3本のトランペットのための組曲
  1-3:吹奏楽版・世界初録音
  4: エリック・オービエ、アレクサンドル・バティ、フレデリク・メヤルディ(tp)
エリック・オービエ(tp)
ファブリス・ミリシェー(tb)
フランソワ・ブーランジェ*、
セバスティアン・ビヤール**指揮
パリ・ギャルド・レピュブルケーヌ吹奏楽団
 「パリ・ギャルド」新録音が、なんと“管の国フランス”屈指のレーベルIndesens!から登場!
 トランペットには故モーリス・アンドレの高弟エリック・オービエ、トロンボーンは今をときめく気鋭ミリシェ...吹奏楽版では世界初録音の名曲群、じっくり耳を洗いたい意気揚々の名録音!
 フランスは、世界に冠たる「管楽器の王国」——その誉れを19 世紀半ば以来ずっと保ちつづけてきたフランス随一の管楽バンド、言わずと知れたパリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団が、驚くべきソリストたちとともに、金管楽器というもののしなやかな魅力を縦横無尽に味あわせてくれる注目の新録音をリリースしてくれました。
 制作はIndesens!レーベル、パリ管弦楽団のソリストたちの名盤群をはじめ、創設以来この国のすぐれた管楽器演奏の伝統を「いま」に伝える名盤を数多くリリースしてきた名門。
 このレーベルと創設以来タッグを組んできたトランペットのエリック・オービエ(昨年惜しくもなくなったモーリス・アンドレの高弟にして、その衣鉢を継ぐ活躍をみせている現代最高峰のソリストぱ)も協奏曲で参加、さらにトロンボーンにはミュンヘンARD 国際コンクール優勝以来、世界的に注目を集めている“いまが旬”の気鋭奏者ファブリス・ミリシェーもゲスト出演。
 指揮はフランソワ・ブーランジェ&セバスティアン・ビヤールという、ギャルドの最先端を担う名指揮者たちぱ彼らがいま、そのあふれんばかりの情熱をかけてその名を世界に広めんとしているのは、「管の国」の20 世紀における躍進と歩みを揃えてきたフランス近代屈指の名匠、アンリ・トマジ——吹奏楽経験があれば、その管楽器のための作品群の素晴しさに強く惹かれている方も多いのではないでしょうか(合唱におけるジョン・ラター、ギター界におけるアグアドやソル…などのように?)。
 コルシカ系の血をひく親のもと南仏マルセイユに生まれ、地中海の温かい心と情熱を胸に、わかりにくい前衛音楽とはっきり距離を置いた作曲活動を通じ、ユーモアとヒューマニズムにあふれた名品を数多く残したトマジですが、彼は自分が企図した通りではない演奏編成のために自作品が編曲されて広まることを、むしろ作品に広がりが生まれるきっかけになると考え容認していたとのこと。
 同じフランスの20 世紀楽壇を支えてきたパリ・ギャルドのレパートリーに彼の作品が組み込まれてゆくということはつまり、トマジの人間愛をまったく正統に受け継ぐ演奏行為にほかならないのですぱ事実、ふたつの協奏曲といい、ニュアンス豊かな「遺灰の婚礼」といい、伸縮自在の幻想生物のように魅力あふれる響きの妙をメリハリたっぷり楽しませてくれるパリ・ギャルドの演奏を聴いていると、トマジ自身も絶賛したに違いない、と強く感じずにおれないはずぱ痛快な吹奏楽サウンドと、極上のフランス近代的エスプリの交錯——聴き逃したくない逸品です!

INTRADA


INTRA051
(国内盤)
\2940
バッハを、セーヌ川の教会で
 〜ドイツ式の銘器による傑作選〜

 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
  1.トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
  2.トッカータ、アダージョとフーガハ長調 BWV564
  3.パッサカーリャとフーガ ハ短調 BWV582
  4.トッカータとフーガ ニ短調「ドリア旋法風」BWV538
  5.トッカータ(前奏曲)ホ長調 BWV566
  6.トッカータとフーガ ヘ長調 BWV540
ヴァンサン・ヴァルニエ(オルガン)
使用楽器:ベルナール・オーベルタン2004年、ドイツ・バロック風
(パリ、サン=ルイ=アン=リル教会)
 パリ・セーヌ川の中須に、純然たるドイツ式の楽器がある——弾くのは、フランス屈指の名手。
 ヴァンサン・ヴァルニエが満を持して堂々たる名演に刻みつけた、バッハ屈指の傑作群!

 新時代の実り豊かなクロスカルチャーが、正統な音楽精神にたどりついた傑作録音。
 バッハのオルガン音楽——CD の世界では古めかしい録音が多いなか、なにしろヨーロッパには無数に教会があり、ただでさえオルガニストの需要に事欠かないうえ、歴史的銘器も相当な数が残っているところ、地域遺産振興などのイベントで彼らが名演を聴かせなくてはならない大舞台も毎年かなりあるわけで。畢竟、すぐれたオルガン演奏の新録音というものも次から次へと出てきているのに、そのあまりにすばらしい世界がほとんど気づかれないまま埋もれてゆくなど、ほんとうにもったいない話ではありませんか!
 ヴァルヒャやリヒターの持ち味も、こういった新しい名演と比べてみると、いっそうきわだつというもの——そう、オルガン音楽の世界では日々、さまざまな美意識についての新たな意見が活発に交わされながら、誰もが心そそられずにおれない魅力的な世界がどんどん切り拓かれている。「音楽の父」バッハのオルガン音楽ひとつとっても、その世界はそれこそカザルスやメンゲルベルクの時代から大きな変化をとげてきた古楽器演奏の組曲や受難曲などと同じく、今こそ聴きたい新録音があるのです。
 セーヌ川の中州にあるパリ随一の歴史ある観光名所のひとつ、サン=ルイ=アン=リル教会で録音された本盤も、まさにそうした新しい名演のひとつ——演奏はIntrada レーベルで多数の注目盤を連発してきたヴァンサン・ヴァルニエ。ふだんは(かつてデュティユーが正規オルガニストをしていた)サンテティエンヌ=デュ=モン教会で、作曲家ティアリー・エスケシュと共同正規奏者をしている彼ですが、ここで演奏しているセーヌ川中州のオルガンは、さる歴史的オルガンからパイプを移転、ドイツ・バロック様式のエッセンスを反映させて改修された銘器——日本語解説でも詳説されていますが、今や「レオンハルトの再来」とも噂される名手バンジャマン・アラールが正規奏者をしている、「ジルバーマンとヒルデブラントの影響が息づく」とも言われるこのオルガン(Alpha にアラールによるバッハのトリオ・ソナタ集もあり。
 Alpha152)がヴァルニエの手にかかると、まさしくバロック期のドイツさながらに深々とした響きで唸る32 フィート足鍵盤パイプの響きのなか、圧倒的にシンフォニック、しかしあくまで18 世紀的な明快さをそなえた、えもいわれぬ境地が甦るのです!選ばれた7曲は、ごらんのとおり、バッハ屈指の名曲ぞろい。
 「こういう世界が広がっているのだ!」と圧倒される、オルガン音楽へさらなる一歩を踏み出したくなる名演なのです。

NCA(New Classical Adventure)



NCA60126
(国内盤・3枚組)
\3780
ダンツィ:木管五重奏曲全集
 〜19世紀ドイツ管楽芸術の幕開け〜

フランツ・ダンツィ(1763〜1826):
《CD I》
 三つの木管五重奏曲 op.56*
  〔変ロ長調・ト短調・ヘ長調〕
《CD II》
 三つの木管五重奏曲 op.67
  〔ト長調・ホ短調・変ホ長調〕
《CD III》
 三つの木管五重奏曲 op.68
  〔イ長調・ヘ長調・ニ短調〕
ライヒャッシェ五重奏団
カール・カイザー(ft)
ハンス=ペーター・ヴェスターマン(ob)
ギィ・ヴァン・ワース(cl)
クリスティアン・ボイゼ(fg)
オリヴァー・ケルセン*、
ヴィルヘルム・ブルンス(hr)
 木管五重奏の古楽器録音は、滅多にない。その困難を易々乗り越えられるのは、異才揃いだから。
 ブリュッヘン、ファイ、インマゼール...といった古楽系の名匠たちが信頼を寄せるトップ奏者たちがこのアンサンブルの「ほんとうの姿」に迫った、流麗・充実・発見にあふれた驚くべき全集、ここに!

 演奏陣は欧州古楽界のトップをひた走るスーパープレイヤーたち——ブリュッヘン、インマゼール、ヘレヴェッヘ、トーマス・ファイ、ヘンゲルブロック...といった錚々たる古楽系指揮者たちの並居る名盤のメンバー表ではもう常連(今ではソロ活動の方が多いのでは?)、幾多の名演で輝かしいソロを聴かせてきた「古楽におけるアンサンブル・ウィーン=ベルリン」と言ってもよい面子。
 自分の操る「当時の楽器」の良さと機能を知り尽くした彼らの個人プレイはもとより、共演者たちの古楽器にまで意識を向けつつの比類ないアンサンブル力がなくては実現しなかったであろう企画が、この3枚に詰まっているのです。
 そう、木管五重奏——現代型の管楽アンサンブルのレパートリーが徐々に充実しはじめた1800 年前後に誕生し、ベートーヴェンと同じボン出身のチェコ系作曲家ライヒャ(レイハ)が無数の名曲を書いて完成の域へと導いたこのアンサンブル形態を、ドイツ語圏の室内楽スタイル、つまり全体の調和の美をも体現できる形式へと洗練していったのが、マンハイム宮廷楽団出身の名匠ダンツィでした。
 ライヒャはパリ音楽院で対位法の先生をしていたこともあり(ベルリオーズの先生でもあります)、あくまで五つの楽器の独自性を重視した曲作りをしていたのですが、ダンツィは楽器ごとの違いをうまく使い分けながらも、五つもの音色を使いながら一体感ある響きの調和も体現してみせるなど、木管五重奏の面白さをさらに深めていった立役者。時おりしもベートーヴェンやシューベルトの交響曲が続々生まれていた頃で、ダンツィはそうした新時代のオーケストラ音響理念を室内楽分野でもあざやかに実現しながら、初期ロマン派へと扉を開く不穏かつドラマティックな短調作品までこの編成で書いてみせています。
 現代楽器のプレイヤーにも、木管五重奏の定番として愛されているこれら9曲はしかし、あくまで今の楽器とは違う、ベーム式キィ・システムも金管向けピストン機構も一般的ではなかった頃の管楽器で演奏されることを念頭に置いて書かれていた——つまり本盤の名演の数々は、これらの傑作がほんとうはどのような響きの魅力を持っていたかを明らかにする金字塔的録音でもあったわけですぱ古楽器によるロマン派以降のオーケストラ音楽に興味がある方なら、ぜひ聴いていただきたいセット——ベートーヴェンの七重奏曲やモーツァルトのセレナードと同じく、小編成アンサンブルにこそ初期ロマン派の創意の鍵がいたるところに見出せるもの。ノンヴィブラート、ストップ音、音色交替…あらゆる「仕掛け」を、稀代の名手たちが明らかにしてくれます!

PAN CLASSICS



PC10299
(国内盤)
\2940
え??バッハの新発見ソナタが、6曲も...?
 J.S.バッハの『新しいソナタ』(全6曲)
  〜リコーダーとチェンバロのための組曲とソナタさまざま〜

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 1. 序曲(組曲)ニ短調
  〔BWV1011・1003・814・827・Anh.17〕
 2. ソナタ ト長調
  〔BWV1005・1021・590・998〕
 3. 組曲 イ長調
  〔BWV817・815・1010・819・809〕
 4. リュート組曲によるパルティータ ハ短調
  〔BWV997〕
 5. リコーダーと通奏低音のためのソナタ
  ハ長調〔BWV1033〕
 6. ソナタ ト短調〔BWV198・1024・508・35〕
ミヒャエル・フォルム(アルト&テナー・リコーダー)
ディルク・ベルナー(チェンバロ/ミートケ・モデル)
 え??バッハの新発見ソナタが、6曲も...?しかも使用楽器は、リコーダーとチェンバロ??
 編曲の達人だった大バッハの傑作から楽章を選び、周到に仕上げられた二重奏の数々は原曲を忘れて恍惚となるほどひカフェ・ツィマーマンでも活躍の二名手、これは必聴です!

 制作元からのリリース予定表に「バッハの新しいソナタ」と書かれていたので、音楽学にもまんざら無知ではない先方の販売担当に「なにこれ?」と聞いたところ「届いてからのお愉しみ」と。
 悶々としながら日本語解説の準備だけは進めておりましたところ、先日ようやく届いたサンプルに耳を通し、唖然とするほどの鑑賞体験にさらされることとなりました。
 バッハが生前、ヴァイオリン協奏曲をチェンバロ協奏曲に、あるいは室内楽からカンタータの序曲を、あるいはカンタータのアリアからカトリック向けのミサ曲を...と、自作をさまざまな編成に移し替えて編曲をくりかえしていたことは、つとに有名。かの晩年の大傑作『ミサ曲 ロ短調』や中期の三重協奏曲などにも転用楽章はありますし、無伴奏ヴァイオリンのための前奏曲を堂々たるオルガン曲に仕立ててしまうなど、その編曲スキルの高さにはつくづく驚かされるところ、本盤はそうしたバッハの作曲習慣を逆手にとって、すでによく知られている鍵盤作品や室内楽曲、無伴奏作品などを原曲に、さながら18 世紀前半によくあったような、組曲とソナタをかけあわせて6編セットの「ソナタ集」(この当時のニュアンスでは厳密にソナタというより「合奏曲集」くらいの感覚)とうたい出版する...というような状況を想定し、完全に編曲だけからなる注目の作品集を作りあげてみせたのは、指揮者としてもヘンデルのオペラを振るほど本格的なキャリアを築きつつある天才的リコーダー奏者ミヒャエル・フォルムと、その頼れる共演者であるチェンバロ奏者ディルク・ベルナー。日本のCD ユーザー様のあいだではおそらく、ふたりともカフェ・ツィマーマンの『バッハ:さまざまな楽器による協奏曲集』シリーズで闊達なソロを聴かせてきた名手...という言い方がいちばんピンとくるかもしれません。
 歴史的古楽解釈に長けた二人のこと、こうした編曲はお手のもので、あまりに自然な響きに仕上がっているため、まるでバッハ自身がこういう編曲版を作って残していたのでは...とさえ錯覚するほど(通な方ほどびっくりされると思います)。
 欧州古楽界随一の演奏クオリティで仕上がっているのも、この内容を企画倒れにしないで、その魅力を幾倍にも増幅させるポイントとなっているように思われます。あえてネタバレを避けるべく、ここでは原曲の詳細な種明かしはせず、引用元のBWV 番号だけ記しておきます..
 


PC10292
(国内盤・訳詞付)
\2940
グラウプナー:バス独唱カンタータとシャリュモーのための協奏的組曲
 〜バッハとテレマンの同時代人、未踏の巨匠の傑作さまざま〜

  クリストフ・グラウプナー(1683〜1760):
   ①高みに昇り、網を投げよ(1746)
   ②シャリュモー、弦楽合奏と通奏低音のための組曲 変ロ長調(1737〜46)
   ③イエスは尊く気高き祭司(1720)
   ④なんと驚くべきことか、神の善とは(1717)
クラウス・メルテンス(Bs)
ジリ・リノ(シャリュモー)
シャラフ・アド=エル(cmb・org)指揮
アカデミア・ダニエル(古楽器使用)
 もしバッハとテレマンを高く評価するなら…グラウプナーに魅了されないはずが、ない!
 引き出しの多さ、心とらえる音作りのうまさは、テレマン並。しかも音楽の深さはバッハやゼレンカにも匹敵——精鋭集団がドイツで刻んだ名録音、見過ごせない1枚!
 21 世紀...広告商売がなりたちにくい時代です。20 世紀までのように、大声でくりかえし刷り込んでいった結果がセールスにつながる...という時代ではないのでしょう。
 そんな今、巷で主流の話題とは別に、自分にとってほんとうに大切なものを選び取る人が徐々に増えてきているのだとすれば、バロック方面でそういう確かな鑑賞生活を続けておられるユーザーの方々にぜひじっくり浸透してゆけば…と切に思うのが、「バッハをライプツィヒ楽長に推薦した」「テレマン並の多作を誇る」「18 世紀前半に、ドイツ人の楽長で最も俸給が高かった」グラウプナーという作曲家が、いかにすばらしい傑作ばかり残しているか?という事実。
 古楽大国ベルギーの総力を結集してのRicercar レーベルからの2枚組『九つの傑作カンタータ〜降誕祭オラトリオのように』(MRIC307・フローリアン・ヘイエリック指揮)が『レコード芸術』誌で特選に選ばれ、作品によってはバッハの教会カンタータにも充分比肩しうるその充実の音楽が今もなおセールスを伸ばし続けているところ——
 ドイツの放送局のなかでも、クラシック系制作陣の優秀さをそこはかとなく感じさせるヘッセン放送(HR)で制作されたこの独唱カンタータ集は、かねてからレオンハルト、ブリュッヘン、クイケン、コープマン、ヘレヴェッヘ...といった伝説的古楽指揮者たちの信頼もあつい名歌手クラウス・メルテンスを迎え、イスラエルの俊才アド=エルを中心に世界の俊才たちが集うアカデミア・ダニエルの面々が、作品への限りない愛着をこめて織り上げた充実の名演!
 独唱カンタータは1717〜46 年、つまりまさしくバッハやテレマンのカンタータ群と同じ頃に作曲されていますが、なにしろグラウプナーは生前テレマンやヘンデルらと並び称されるほど絶大な名声を誇った巨匠だっただけあってか、その作曲手腕には息をのむばかり...各パートの出どころ引きどころを熟知した音作りはテレマンとゆうに肩を並べるほど、メロディと和声のたくみな扱いで音楽的ドラマを演出してゆく感性は、かの大バッハや、あるいは人によっては彼と同等という人もいるゼレンカをも思わせるほど——
 そう、彼らの音楽を愛してやまないバロック・ファンなら、必ずや遠からずグラウプナーの「とてつもなさ」に気づくことでしょう。
 解説・歌詞とも全訳付でお届けする本盤は、きっとその一助となるに違いありません。クラリネットの前身シャリュモーを使った、スリリングかつ憂愁の影あざやかな組曲も絶妙——ぜひご注目頂ければ幸いです!
 


PC10259
(国内盤・訳詞付)
\2940
ケルル(1627〜1693):ミサ・ノン・シネ・クアーレ
 〜北と南をつなぐ大家、ミュンヘンからウィーンへ〜

 ヨハン・カスパール・ケルル(1627〜1693):
  ①ミサ曲第1番「ミサ・ノン・シネ・クワーレ」
  ②トリオ・ソナタ ヘ長調
  ③讃えよ、民に向かう聖母を〜4声と通奏低音のための
  ④わたしの心は愛してやみません〜
    4声(独唱2+ヴァイオリン2)と通奏低音のための
  ⑤どうかお許しください、あなたを讃えることを〜
    4声と通奏低音のための
  ⑥2挺のヴァイオリン、低音独奏部と通奏低音のためのソナタ ト短調
   ※曲順は①の楽章間に②③が入り、
    そのあとに④⑤⑥⑦が続き、最初と最後にグレゴリオ聖歌が入ります
ファビオ・ボニッツォーニ(オルガン&指揮)
Ens.ラ・リゾナンツァ(古楽器使用)
 大バッハもヘンデルも、この17世紀ドイツきっての国際派の前では脱帽した——イタリアの17世紀様式をあざやかに身につけ、ルネサンス的感性さえ発揮しながら、ミュンヘンとウィーンの君主たちを魅了しつくした男。
 作風を鮮やかに伝えるミサ曲とソナタ、極少編成が生きる名演。

 ファビオ・ボニッツォーニ率いるアンサンブル・ラ・リゾナンツァといえば、なによりもまず、あの俊才パンドルフォやラ・ヴェネシアーナを世に出し、近年のブリュッヘンと幾多の名盤を紡ぎ出し続けてきた名門Glossa レーベルが誇る天才古楽集団ぱ躍進めざましくも玉石混合の感もあるイタリア古楽界で、間違いなく「玉」の最高峰に位置づけられてきた名門団体のひとつで、今なおGlossa には17 世紀イタリア諸楽派の傑作盤あり、はたまたヘンデルやスカルラッティなどのスタイリッシュな声楽作品あり、コープマン門下の高弟でもあったボニッツォーニの独奏によるフレスコバルディの銘録音あり...と、この世界的レーベルが続々と録音を世に出してきたところからも、欧州における彼らへの信頼と確かな実績は推して知れるのではないでしょうか。

 そんな彼らが、今はなきSymphonia レーベルに1枚の秀逸録音を残していたところ、それがPanClassics から再リリースされているのを幸い、ここに解説・歌詞訳付にて国内盤リリースする次第——なぜなら、ここで取り上げられている作曲家ケルルが、実は17 世紀ドイツ語圏でも屈指の、それこそ北方のブクステフーデや南方のビーバー、中部のパッヘルベルらと並び称されるべき重要な作曲家であるにもかかわらず、ほとんど国内盤流通がなく、日本語で本格的にとりあげられる機会もめったにないからです。
 まだシュッツをはじめとする“ドイツ三大S”が現役最先端で活躍していたころにザクセン地方で生まれ、ウィーンで認められてローマへ留学、おそらくフレスコバルディに師事したのち、ミュンヘンやブリュッセルでの活躍をへて、ふたたびウィーンの神聖ローマ皇帝のもとへ...と諸国をまたにかけて活躍したケルルは、イタリア流儀の初期バロック様式のあれこれを完璧に自分の音楽言語にし、その本場仕込みの技量をドイツ語圏の人々に圧倒的に印象づけ、君主たちから作品を求められる大家となったのでした。
 ヘンデルがその作品の一節をさも自作であるかのように引用していたり、バッハがオルガン作品を大切に筆写して学んでいたりと、その影響力は遠く18 世紀まで及んだのですが、何はともあれ、作品をお聴きあれ——ボニッツォーニ率いる各パートひとりずつの声楽・器楽集団が織りなす切なくも艶やかな旋律美の交錯は、なんともいえず古風でありながら、なんと情念ゆたかに私たちの心をそそってやまないのでしょう...ぱこのケルルが「往年の巨匠」と讃えられていた時期のウィーンにやってきた名匠フックスが、のちに書いた(21 世紀の日本でも愛聴者の多い)『皇帝レクイエム』とも相通じる味わいが宿っているのも、その影響力の一環だったと考えらえるわけです。試聴展開にも、うすぐもりの日の店頭演奏にも映えそうな、滋味と抒情あふれるコンチェルタート様式の傑作群と、ビーバーの様式をさらにスタイリッシュに洗練したような合奏ソナタ2編、「巨匠ケルルとは何者か」をあらためて知るにはうってつけの、充実解説(歌詞とも全訳付)まで見過ごせないバロック盤なのでございます。

PASSACAILLE



PSC990
(国内盤)
¥2940
ロレンツォ・ギエルミ&Ens.ラ・ディヴィナ・アルモニア
 ヘンデル:オルガン協奏曲集Vol.2

 1. オルガン協奏曲第13番 ヘ長調(1740) HWV295a「カッコウと夜啼鶯」
 2. オルガン協奏曲 第14番 イ長調 HWV296a(1740)
 3. オーボエ協奏曲 ト短調 HWV287(1704/05)
 4. オルガンと合奏のためのシャコンヌ ト長調 HWV343(1738/39?)
 5. オルガン協奏曲 第15番  ニ短調 HWV304(1746)
 6. オルガン協奏曲 第11番 ト短調 op.7-5 HWV310(1750)
ロレンツォ・ギエルミ(オルガン独奏)指揮
Ens.ラ・ディヴィナ・アルモニア(古楽器使用)
パオロ・グラッツィ(オーボエ独奏)
 今やバーゼル・スコラ・カントルム教授、名盤あまたの多忙な名手もすでに大御所。名手ぞろいの主兵を率い大好評のオルガン協奏曲集、続編から登場します!
 まずは何よりこの新譜から。ロレンツォ・ギエルミといえば、かつてイル・ジャルディーノ・アルモニコの通奏低音を支えた腕利きの鍵盤奏者として鳴らし、その後はソリストとして、また兄弟デュオでのヴィットリオ・ギエルミ(ガンバ)との室内楽演奏家として...と、無数のレーベルで名盤を刻んできた飽くなき多忙な超実力派オルガニスト=チェンバリスト。近年は欧州の俊才たちが集うイタリアの古楽集団ディヴィナ・アルモニアを率いて、Passacailleレーベルに数々の名録音を刻み続けてきました。そうしたなかでもとくに重要なリリースが、ハープ奏者マルフレート・ケルをゲストに招いての「オルガン協奏曲集Vol.1」、(つまりハープ協奏曲も収録あり)でしたが、2009年にリリースされたこのアイテムによって、ギエルミ率いるラ・ディヴィナ・アルモニアという団体の稀有な存在感を知ったという方も多いに違いありません。
 本盤はその続編にあたる第2弾で、12月に予定されているディヴィナ・アルモニアの来日公演にあわせて、Passacailleレーベルの国内仕様リリース第1弾として登場。
 ヘンデルの偉容や聴き手を魅了するあのダイナミックな作風は、もともと若き日のイタリア滞在をへて培われたところも多く、知性派でありながら外連と繊細のコントラストを知り尽くしているギエルミのオルガンは、そうした作風の機微をじっくりあぶり出してゆく適任者ぶりを強く感じさせてやみません。
 さらに前回ハープ協奏曲を併録していたのと同じように、今回も「オルガン以外のための協奏曲」として、最初期のドイツ語圏生活時代に書かれたと思われるオーボエ協奏曲も収録——昔から現代楽器の名手たちにも録音されてきた有名作品とはいえ、アンサンブル・ゼフィーロの名手パオロ・グラッツィをはじめとする腕利きの古楽奏者たちによって奏でられるコントラスト鮮やかな演奏は、イタリア渡航以前の“青年ヘンデル”が発揮していた独特の才覚の瑞々しさをあらためて強く印象づけてくれる、必聴のトラック!
 欧州古楽界の最前線の興奮が詰まった充実盤です。
 


PSC945
(国内盤)
¥2940
ノイジートラー、ドイツ・ルネサンスのリュート芸術
 ハンス・ノイジートラー編
  『最新編集 芸術性高きリュート曲集』(1536)

 ①たいへん立派なオルガン奏者式のプレアンベル
 ②ベネディクトゥス(原曲:H・イザーク)
 ③ライン川のほとり、アンデルナハで(原曲:E・ラピツィーダ)
 ④立派なトリオに、美しいフーガを添えて
 ⑤わたしのAをひとしきり(原曲:P・ホフハイマー)I
 ⑥わたしのAをひとしきり(原曲:P・ホフハイマー)II
 ⑦立派なウェールズの舞曲
 ⑧たいへん芸術的なプレアンベル、またはファンタジー
 ⑨ああ、悩みながら恋をしたらいい(原曲:P・ホフハイマー)I
 ⑩ああ、悩みながら恋をしたらいい(原曲:P・ホフハイマー)II
 ⑪プレアンベル ⑫エリーザよ、わが最愛のエリーザよ(原曲:L・ゼンフル)
 ⑬たおやかな美しき御婦人
 ⑭ラモーラ(原曲:ハインリヒ・イザーク)
 ⑮ ラ・アルフォンシーナ(原曲:J・ギスラン)
 ⑯わたしの心は、いつも欲望はちきれんばかり(原曲:ピエール・ド・ラ・リュ)
 ⑰ライン川のほとり、アンデルナハで(原曲:ヤーコプ・オブレヒト)
 ⑱さらば、わが恋する者たち(原曲:ジョスカン・デプレ)
 ⑲ウェールズの舞曲「ヴァシャ・メーサ」
バルト・ロース(ザクセン型ルネサンス・リュート)
使用楽器:ハンス・フライ1520-30年頃製作モデルによる
ピーテル・ファン・ヴォンテルヘム2007年製作
 1536年、ニュルンベルク——楽器演奏が「職人芸」から 「芸術家の仕事」へと変わっていった頃。
稀代の名手 B・ロースが、当時のモデルで奏でる「本物の16世紀」

 Passacailleレーベルの主宰者は、自らも古楽大国ベルギーの現場第一線で活躍を続けてきたトラヴェルソ奏者=アンサンブル・イル・ガルデッリーノ主宰者ヤン・ド・ヴィンヌ。
 古楽器ならではの、あの玄妙な生音の魅力を肌で知る男だけに、録音にひときわ繊細さが要求されるタイプの楽器でも、妥協のないアルバム制作でみごとな名盤をつくりあげてみせる頼もしさ。
 というわけで、このレーベルにいくつもある、繊細なリュートの響きをあざやかに捉えた名録音も続々ご紹介してゆきたいと思います。

 まっさきにとりあげるのは、オランダ語圏ベルギーの名手バルト・ロースが織り上げた、息をのむような玄妙さで奏でられる16世紀ドイツの名品群。
 やがてワーグナーが『ニュルンベルクのマイスタージンガー』で描くことになる中世いらいの職人文化の町ニュルンベルクでは、16世紀はじめに発明された楽譜印刷術が導入されるや、ブラティスラヴァ(現スロヴァキア)出身の職人ノイジートラーの編纂により、さっそくみごとなリュート曲集が続々産声をあげることとなりました。
 イザークやホフハイマーらドイツ語圏の名匠たち、あるいはジョスカン、ギスランなどフランコ=フランドル楽派の声楽曲編曲など、この時代のドイツ・リュート音楽は既存の声楽曲やオルガン独奏の技法を受け継ぎながら、リュートならではの玄妙な響きを生かした編曲作品が続々作られ、その技芸が少しずつ磨かれていました。
 名もなき中世職人の技芸が、芸術へとわってゆく時代の静かな響き。解説も充実(全訳付)で、リュート音楽の創成期を知る非常に貴重な1枚です。
 


PSC981
(国内盤)
¥2940
パウル・ドンブレヒト指揮&Ens.オクトフォロス
 R.シュトラウス:管楽合奏のための3傑作

 リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949)
 1. 13管楽器のための組曲 変ロ長調 op.4(1884)
 2. 13管楽器のためのセレナード 変ホ長調(1881)
 3. 16管楽器のためのソナチネ第2番 変ホ長調「楽しい仕事場」(1945)
パウル・ドンブレヒト指揮
Ens.オクトフォロス
 古楽器の達人は、難曲も余裕綽々。R.シュトラウスの意外な一面を解き明かす——
 管弦楽法の達人、鮮やかな管楽器の至芸を、センス抜群の名演でひオクトフォロスといえば、クイケン兄弟やレオンハルト御大などのオランダ・ベルギー古楽界最高の名匠たちが絶大な信頼を置いていた古楽オーボエ奏者、パウル・ドンブレヒトを中心に集まった「古楽器奏者たちによる管楽合奏団」の先駆けをなした団体のひとつ——

 古楽大国ベルギー随一の古楽レーベル、ACCENTで制作されたベートーヴェン『戦争交響曲』を含む名盤の、あの驚くべき演奏聖歌が心に刻まれている方は、日本の古楽器ファンにも少なくないと思います。
 本盤は20世紀末に録音された、この団体屈指の注目録音が仕様変更盤としてPassacailleから昨年リリースされたもの。
 稀代の管弦楽法の大家として知られるようになる前、ごく早いうちから天才的な作曲センスを発揮していたリヒャルト・シュトラウスが、20歳前後に作曲した2傑作と、晩年のクラシカルな充実作を集めた1枚ですが、これらは容赦ない難局がいたるところに盛り込まれており、なまじな面子では高度な演奏になりにくい難曲ぞろい。
 しかし基本的に現代楽器使用の演奏でありながら、オクトフォロスの抑揚あざやかな音作りは細部までよく考え抜かれ、18〜19世紀の音楽を「当時の楽器」で演奏し続けてきた面々ならではの精緻なニュアンスが実に頼もしく、次の瞬間への期待感をことごとく上回る痛快な演奏でこれらの傑作をたっぷり味わえるのは実に気持ちいい体験!
 アレグロ楽章にホルンのソロがあろうと、10本以上の管楽器がそれぞれ独自の動きをみせながらメロディを交錯させようと、シュトラウスの設計した造形が崩れることなく、活き活きとした音楽として紡がれる格別な名演はまさしく、古楽器奏者が主宰するPassacialleレーベルが自信をもって再発売に臨んだだけのことはある内容...というわけです。
 それもそのはず、メンバー表には巨匠ブリュッヘン指揮の18世紀オーケストラや、昨今ますます活躍めざましいファン・インマゼール指揮アニマ・エテルナ・ブリュッヘ、ヘレヴェッヘ指揮シャンゼリゼ管弦楽団など、古楽大国ベルギーでも最前線を張ってきた超一流古楽器オーケストラの猛者たちが続々!
 損はさせない充実盤、もちろん日本語解説付での登場です!
 


PSC930
(国内盤)
¥2940
パウル・ドンブレヒト指揮&イル・フォンダメント
 モーツァルト:最初の六つの交響曲

 1. 交響曲(第1番)変ホ長調 KV16
 2. 交響曲(第4番)ニ長調 KV19
 3. 交響曲 ヘ長調 KV.Anh.223/19a
 4. 交響曲(第5番)変ロ長調 KV22
 5. 交響曲 ニ長調 KV32「ガリマティアス・ムジクム」
 6. 交響曲 変ロ長調 KV.Anh.214/45b
パウル・ドンブレヒト指揮
イル・フォンダメント(古楽器使用)
演奏編成:
ob2, fg2, hr2, str(4/4/3/2/1), cmb
 ブラームスやマーラーやベートーヴェンの「第1番」は有名でも、なぜか意外に知られていないモーツァルトの「第1番」周辺...精鋭古楽集団の極上演奏で、じっくりと!

 大作曲家の作品群が、くまなくさかんに録音されているわけではありません——
 天才モーツァルトの無数の名品のなかにも、意外に見過ごされがちな分野というのがいくつかあります。
 若書きの交響曲群も、そのひとつ。最後の交響曲「ジュピター」が“第41番”とされながら、実は音楽史研究の進展から結果的に50曲ほどもあるとされるモーツァルトの交響曲ですが、その最初期の作品群は意外に接する機会が少ないもの。Passacailleには、そうしたモーツァルト最初期の交響曲群を集め、充実した作品解説とともにその才能の萌芽をじっくり聴き確かめられる、クリスピーな名盤があります。演奏はレオンハルトやブリュッヘンら世界的な大御所古楽指揮者たちの信望もあついバロック・オーボエ奏者、パウル・ドンブレヒトが率いる少数精鋭集団イル・フォンダメントひ引き締まった小規模編成でくりだされる、歯切れの良い精悍な音作りに接しながら、充実の作品解説(全訳付)とともに、父親に連れられて欧州各地を仰天させていた少年モーツァルトがいかに「交響曲」というものを知っていったか、その創意のルーツに思いをはせてみたいもの。ドンブレヒト指揮イル・フォンダメントはPassacailleにかなり多くの名盤を残しており、これらモーツァルトの交響曲につながる先達たちの逸品でもみごとな実績をあげていますので、それらも順次国内仕様でお届けしてゆく予定です。
 何はともあれ、その出発点として申し分ない6曲のモーツァルト作品はやはり、レーベルとアンサンブルの存在感をあらためてアピ−ルするのにうってつけの1枚!
 


PSC991
(国内盤)
\2940
ジョフロワ:クラヴサンのための小品集
 〜フランス17世紀、ルイ14世時代のクラヴサン芸術〜

  ジャン=ニコラ・ジョフロワ(1633?〜1694):
  ①組曲 ハ長調
   〔アントレ〜プレリュード(ダングルベール作曲)〜
    アルマンド〜クラント*〜サラバンド*〜カナリー〜ロンドー*〕
  ②組曲 ハ短調〔プレリュード(クレランボー作曲)〜
   アルマンド〜クラント〜サラバンド〜ジグ〜シャコンヌ〜トンボー〕
  ③組曲 ト長調〔ラ・ミュゼット/羊飼いの娘の歌*〕
  ④組曲 ト短調〔プレリュード(マルシャン作曲)〜
   アルマンド〜クラント〜サラバンド〜ジグ〜
   はばたけ、愛らしき喜び〕
  ⑤組曲 ニ短調〔プレリュード(ルベーグ作曲)〜
   アルマンド〜クラント〜サラバンド〜
    ムニュエとドゥーブル*〜シャコンヌ*〕
オレリアン・ドラージュ(cmb/フランス、1690年頃“D.F.”)
トーマス・ダンフォード(アーチリュート)*
 17世紀パリのクラヴサン芸術、まだまだ知られざる名品がたくさん——ダングルベールやシャンボニエールにも通じる古風さを、あざやかで接しやすい音に宿した名匠ジョフロワ。

 17世紀フランスのオリジナル楽器、堅固な美音で流麗に奏でる俊才ドラージュの妙技に陶然フランスのクラヴサン(チェンバロ)のための音楽といえば、誰もがまっさきに思い浮かべるのが「大クープラン」ことフランソワ・クープランの標題音楽。

 少し後のラモーの曲集とともに、ドビュッシーやラヴェルらフランス近代音楽の旗手たちも一目置いたことで知られる名品ぞろいですが、彼らの鍵盤技法は実のところ、かなり18 世紀に踏み込んだ「晩期バロック」でもありまして、フランス古楽に少し深く足を踏み入れてゆくと、たとえばその大伯父にあたるルイ・クープラン、彼をフランス王室に招いた先達シャンボニエール、あるいはその後継者でリュリの盟友でもあったダングルベール...と、むしろ太陽王ルイ14 世が存命中だった17 世紀の名匠たちが、この種の音楽の大成者だったことに気づかされ、その整然として優美な宮廷音楽様式の虜になってしまう方も多いはず...
 幸い、いま名前をあげた3人の名匠のほかにも、この時代のフランスには数多くのすぐれた作曲家たちが活躍していたようで、他にもルベーグ、クレランボー、マルシャン...といったクラヴサン音楽家ないしオルガン芸術かたちの曲集が、さまざまなかたちで録音されているのもご存知の通り。
 しかし、オルガニスト&教会音楽の作曲家として知られたジョフロワのクラヴサン曲集まで発掘されてきた...となると、これはもうかなりのフランス古楽通でも驚かざるを得ないのではないでしょうか?Naxos にエルヴェ・ニケ指揮のモテット集があるこの作曲家、名匠ルベーグの門弟とも言われている程度ながら正体は不明、しかし作品の良さが何よりこの曲集の存在意義を高めているとしか言いようがない——
 フランス・バロック然とした、チェンバロの繊細な響きのなかで偉容ある高雅な音楽が紡がれ、流麗さや瀟洒な立ち回りにも事欠かないのは、ランヌー、デュブリュイユ、ジョワイエ、ステヴァール...といった現役第一線のフランス人奏者たちの薫陶を受けた新世代の優駿ドラージュの音楽性にも負うところが大きいようです(なんて美しい!)。
 しかも使用楽器は17 世紀末のフランスで作られたオリジナル楽器、息をのむようなその美音を、直接音・残響音ともほどよく捉えた自然派録音もため息もの!
 解説の充実度も、知られざる作曲家に接するうえで申し分ない詳しさです(全訳付)。古楽奏者がプロデューサーをつとめるレーベルならではの、筋金入りの逸品。どうぞお見逃しなく!

RICERCAR



MRIC104
(国内盤8 枚組、英文原書、
日本語解説付)
\8925
リチェルカール古楽器ガイド2
 〜19世紀から20世紀へ 1800-1950〜

 ・英文解説154p
 ・日本語解説24p予定(書下し概説:佐伯茂樹/
 序文訳・トラック一覧訳・図版一覧訳)
 ・CD×8枚(完全新規録音多数含む)
ジャン=フランソワ・マドゥーフ(各種tp・サクソルン他)
マルク・ジラール(オフェクレイド)
エリック・ホープリッチ(cl)
コンラート・ヒュンテラー(ベーム式fl)
マルク・ジラール(チンバッソ)
ジェレミー・パパセルジオー(ロシアfg他)
ニコラ・モネタ(オクトバス)
ジェラール・コセ(va)
モニカ・ハジェット、ダニエル・ゼペック他(vn)
ジャン=フィリップ・ヴァスール(va d'amore)
ヨーリス・ヴェルダン(org)
ヨス・ファン・インマゼール、
イェルク・デームス、
ジェローム・アンタイ、
クロード・ドビュッシー(ロール)他(各種p)
ソフィー・アランク(エラールhrp)
ホセ=ミゲル・モレーノ(各種g)
ヴァンダ・ランドフスカ(プレイエルcmb)etc,etc...
 「あの」充実企画の、とほうもなさすぎる続編、ついに上陸!完全新規録音だらけの音源だけでもじっくり聴き確かめる価値が、ありすぎる...!

 トラック一覧・図版一覧は完全日本語版完備。
 さらに「全文訳・順次別売計画」も...フランス語圏からみた楽器の歴史が、音楽史の通念を覆す!200 ページに及ぶ仏英独語解説書に、8枚のCD で「古楽器」というものを十全に解き明かしてきたジェローム・ルジュヌ博士の『リチェルカール古楽器ガイド』(MRIC100)。

 完訳日本語解説付での高額商品として好セールスを記録したあの充実企画に、今年はとてつもない続編が!
 前作がおおまかに1800 年以前の古楽器を扱っていたのに対し、今度は1800 年から1950 年、つまりベートーヴェンの交響曲第1番からブリテンの『青少年のための管弦楽入門』くらいまで、クラシック王道の名曲がことごとくすっぽり入る時代を扱いつつ、楽器の変遷が実際どのようであったかを周到に検証してゆく内容!
 とにかく、8枚のCD の内容だけでも充実度満点!ということで、全訳プロジェクトもひそかに進行しつつ、まずはトラック&図版一覧をまじえながら日本語概説と序文訳(「弦楽器」「金管楽器」などの各章序文も予定)で、音源をじっくり味わっていただこうと発売に踏み切ります!
 さまざまなピストン付ホルンやオフェクレイド、サクソルン...といった音楽史でのみ名を聴く楽器の正体も、さらには巨大コントラバス(オクトバス)、二段鍵盤ピアノやモダンチェンバロ、19 世紀楽曲にも出てくるヴィオラ・ダモーレ、各種ギター、そしてテルミンやチェレスタなど20 世紀の楽器...と、扱う年代に関してはまさに「死角なし」かと思われるほどの網羅的内容!
 しかも原文は前作同様フランス語で(弊社からの出荷商品は英語版)、フランス語圏側からみた、つまりドイツ優先の音楽史で見過ごされがちなポイントも逐次突いた構成になっているのが何より興味深いのです。
 


MRIC330
(国内盤)
\2940
クープランの「ソナード」〜トリオ・ソナタさまざま、
 『諸国の人々』の原曲含む〜

フランソワ・クープラン(1668〜1733):
 ①ソナード「ラ・スュルターヌ(トルコの太守)」
 ②ソナード「ラ・ピュセル(おとめ)」〔フランスのソナタ〕
 ③ソナード「ラ・ステンケルク」
 ④ソナード「ラ・コンヴァレシャント(快方に向かう)」〔神聖ローマ帝国のソナタ〕
 ⑤ソナード「ラストレ」(ピエモンテのソナタ)
 ⑥ソナード「ラ・スュペルブ(至高)」
 ⑦ソナード「ラ・ヴィジョネール(高望み)」〔=スペインのソナタ〕
アンサンブル・レ・ドミノ(古楽器使用)
フローランス・マルゴワール、
ステファニー・ド・ファイー(バロックvn)
セルジュ・サイタ、
アメリー・ミシェル(ft)
ジョナサン・ルービン(テオルボ)
グイード・バレストラッチ、
イザベル・サン=ティヴ(vg)
ブランディーヌ・ランヌー(cmb)
 フランス・バロック鍵盤音楽最大の作曲家は、イタリア音楽がものすごく好きだった——イタリア嫌いの同国人たちからも絶賛された周到なるソナタ(ソナード)は、全部で7曲。
 「諸国の人々」の原曲含め、ランヌーやマルゴワールら、フランスの名手たちの決定的名演で!

 「ソナード」というのは、「ソナタ」のフランス語型。フランス・バロック最大の作曲家クープランは、フランス国粋派が幅をきかせていた太陽王ルイ14 世時代から活躍をしていただけあって、彼らが往々にしてよく思ってはいなかった「イタリアからきた外来文化」であるソナタというものにつよく心惹かれながらも、その紹介には非常に慎重だったようです。
 うっかり「ローマ教皇庁の回し者」呼ばわりされてしまったが最後、仕事がしづらくなってしまうわけですから、これは致し方のないところ...それでも彼は「イタリアにいる親族が送ってきた楽譜」などともっともらしい触れ込みで、ひそかに自分でもソナタ(否、「ソナード」ぱ)を書き、着々とその魅力にフランス人たちを開眼させていったのでした。
 本盤に収録されているのは、そうしたクープランの涙ぐましくも周到な創意が数十年のあいだに生ましめた、全7曲の傑作ソナタ。クープランの「ソナード」と呼ばれる作品はこれで全てで(有名な『王宮のコンセール』は「ソナード」ではなく、フランス様式の合奏組曲という扱い)、うち4曲はのちにそれぞれ異なる題のもと『諸国の人々』という合奏曲集に編み込まれたかたちでも有名になりましたが、ここでは基本的に18 世紀以前の手書き楽譜が演奏の底本になっていて、当初ついていた謎めいた表題のもとに録音されています。
 イタリア様式とフランス様式のあざやかな融合をめざして綴られたその音楽は、どこかコレッリその他の端正なイタリア式トリオ・ソナタに通じるセンスを感じさせながら、楽器編成にはフルート(トラヴェルソ)も盛り込まれ、同時代の絵画作品の色彩美を思わせるニュアンス豊かな音色表現のなか、仮面舞踏会のように色とりどり、変幻自在の音使いが耳を愉しませてやみません。
 しかもここでは、あの異色の『ゴールトベルク変奏曲』(ZZT101001)をはじめとする名盤群で古楽通を唸らせてきた鍵盤奏者ランヌー、「ヴィターリのシャコンヌ」の真相を解き明かす名盤で話題のド・ファイーや数多の超一流古楽バンドでトップ奏者をつとめてきたF.マルゴワール、S.サイタやA.ミシェルらクリスティやヘレヴェッヘ陣営の俊才トラヴェルソ奏者、ル・ポエム・アルモニークでも活躍するY.サン=ティヴ、カフェ・ツィマーマンのブランデンブルク協奏曲第6番(Alpha169)でも活躍をみせたグイード・バレストラッチ、無数の録音にクレジットされてきた多忙なるテオルボ奏者J.ルービン...と、まさにどこを向いてもフランス&ラテン語圏随一の名手しかいない精鋭陣が結集。バロック様式の出どころ・引きどころをふまえた機微豊かな名演でこれらの傑作が聴ける、まさにクープランのソナタの決定的新名盤と言うべき内容になっているのです!
 ヴェルサイユ・バロック音楽センター系の碩学カトリーヌ・セサックによる明快な解説も充実(全訳付)。
 意外に見過ごされがちな領域を周到に押さえた逸品、どうぞご注目を!

ZIG ZAG TERRITOIRES



ZZT328
(国内盤)
\2940
ハインツ・ホリガー指揮&ローザンヌ室内管弦楽団
アルノルト・シェーンベルク(1874〜1951):
 ①浄夜 作品4 〜弦楽合奏版
 ②室内交響曲 第2番 作品38
アントン・ヴェーベルン(1883〜1945):
 ③弦楽四重奏のための緩徐楽章
 (ラングザマー・ザッツ)〜弦楽合奏版
ハインツ・ホリガー指揮
ローザンヌ室内管弦楽団
 もはや、近代音楽の古典——えもいわれぬ玄妙な弦楽芸術、スタイリッシュな「大室内楽」。
 シェーンベルクとヴェーベルンの、あでやかなロマンティシズムの残り香ただよう初期の「恋の歌」を、いわずと知れた作曲家=オーボエの神=指揮者と、欧州精鋭集団の弦で。

 のちに十二音技法やらセリー理論やら「とっつきにくい現代音楽」の基礎となるような技法を生みだした新ウィーン楽派の導師シェーンベルク、その門弟のヴェーベルン...とはいえ、彼らが若き感性をはぐくんでいたのは、あくまで晩期ロマン派の1900 年前後のこと。マーラーやR.シュトラウスらの傑作をよそに、彼らは彼らで、音楽美というものを独自のやり方で追い求めていました。とくに、ヴェーベルンがシェーンベルク門下で学んでいた若い頃、後に妻となるヴィルヘルミーネとの恋のさなかで作曲された弦楽四重奏のための『ラングザマー・ザッツ(緩徐楽章)』、あるいはその数年前、男女の愛をテーマに若きシェーンベルクの傑作『浄夜』(弦楽六重奏のための音詩)が、いずれも弦楽合奏版に編曲された版でも広く演奏される定番名曲になったほど、つまり前衛芸術に興味のない聴き手からも深く愛されている...ということにも、そうした「美しき新ウィーン楽派初期」の魅力のありようはよく現れていると言えます。しかもそれらは、後年の彼らの音楽や、その影響下で生まれた20 世紀の前衛音楽に通じた演奏家たちにも愛されているという——そんな状況下、申し分ない演奏陣が、これら2曲の新たな決定的解釈ともいうべき名録音を世に送り出してきたのです!
 近代音楽揺籃の地たるスイスに集う、ソリスト多数の少数精鋭集団・ローザンヌ室内管弦楽団を指揮するのは、世界随一のオーボエ奏者として世界に知られているだけでなく、20 世紀を担う作曲家・指揮者としても名高い巨匠中の巨匠、ハインツ・ホリガー!!これら初期作品だけでなく、シェーンベルク後期の巨大室内楽ともいうべき「室内交響曲第2番」も収録し、シェーンベルクのなかで何が変わったのか、後期の作品にも何が変わらず生き続けているのか、あらためて思い至るようなプログラム構成になっているのも憎いところ。
 演奏の上質さ、静々とニュアンスを変えてゆく弦楽の響きの精緻な解釈設計は、静かに流し聴いても驚くほど心地よく、聴き深めれば深めるほど細かなところに気づかされる充実度——シェーンベルク作品の着想源となったデーメルの詩も含め、解説も充実しており(訳詩あわせ全訳付)、彼ら新ウィーン楽派とは、あるいは二人の作曲家はどういう存在だったのか、じっくり向き合えるアルバムなのです。
 


ZZT335
(国内盤・3枚組特価)
\4515
クリスティアン・アルミンク指揮&ベルギー王立リエージュ・フィル
 サン=サーンス:
 ヴァイオリンおよびチェロと管弦楽のための作品全集
 カミーユ・サン=サーンス(1835〜1921):
  ①ヴァイオリン協奏曲第1番 イ長調op.20 vn(LP)
  ②同 第2番ハ長調op.58 vn(JdM)
  ③同 第3番ロ短調op.61vn(TS)
  ④序奏とロンド・カプリチョーゾ イ短調op.28 vn(LP)
  ⑤ロマンス 変ニ長調op.37(フルートまたはヴァイオリン)vn(HL)
  ⑥オラトリオ『洪水』op.45:前奏曲vn(EB)
  ⑦ロマンス ハ長調op.48 (フルートまたはヴァイオリン)vn(HL)
  ⑧ワルツの形式による練習曲op.52-6(イザイ編)vn(MM)
  ⑨演奏会用小品 イ長調op.62 vn(EB)
  ⑩アヴァネーズ(ハバネラ)op.83vn(HL)
  ⑪アンダルシア奇想曲op.122 vn(EB)
  ⑫アレグロ・アパッショナート ロ短調op.43vc(NW)
  ⑬チェロ協奏曲 第1番イ短調op.33vc(AK)
  ⑭同 第2番 ニ短調op.119vc(DP)
  ⑮チェロと管弦楽のための組曲op.16bvc(PC)
  ⑯ロマンス ヘ長調op.36(ホルンまたはチェロ)vc(WF)
  ⑰ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための「ミューズと詩人」op.132vn,vc(MM,NW)
クリスティアン・アルミンク指揮
ベルギー王立リエージュ・フィルハーモニー管弦楽団
エリーナ・ブクシャ(EB)、
ヨレント・ド・マーイェル(JdM)、
ハリエット・ラングレー(HL)、
マリア・ミルシテイン(MM)、
リヤ・ペトロヴァ(LP)、
タチヤーナ・サムイル(TS)(ヴァイオリン)
パウ・コディーナ(PC)、
ヴォイチェフ・フダラ(WF)、
アダム・クシェショヴィエツ(AK)、
ペ・デボラ(DP)、
ノエル・ヴァイトマン(NW)(チェロ)
 新日本フィル→老舗リエージュ・フィルで、ますます躍進めざましいクリスティアン・アルミンク、充実新譜!
 サン=サーンスの協奏的作品を、今やソリストとしても欧州中を賑わす元モネ劇場コン・ミスのサムイル他
 デュメイ門下の俊才たちが腕によりをかけてアルミンクの充実解釈と対峙。解説付でも特価の3枚組!

 今年8月、新日本フィルでの延長任期に有終の美を飾る退任公演をあざやかに決めてみせたクリスティアン・アルミンク。
 近年ますます話題を呼んでいるこの名門楽団の盛り上げ役としても痛快な活躍をみせたこの若き名匠、次なる活躍地は一昨年から音楽監督の座にあるフランス語圏ベルギーの老舗楽団リエージュ・フィルぱすでにFuga Libera レーベルからもベルギー随一の“ロマン派”フランクの交響曲他作品集がリリースされていますが、なんと今回はいきなりZig-Zag Territoiresレーベルにぱクリヴィヌ、ホリガーなど、いよいよ大指揮者の域に入ってきた名匠がこのレーベルに続々集まる中、アルミンクの歩みもまた決してブレることがありません。

 芸術大国ベルギー随一の音楽院のひとつ、名匠オーギュスタン・デュメイが主幹をつとめるエリザベート王立音楽院との連携で制作が続くシリーズの最新作でもある今回の新譜は、なんとフランス近代屈指の巨匠サン=サーンスの、弦楽器のための協奏的作品全集。
 ヴァイオリン協奏曲の第1・2番やチェロ協奏曲第2番が(個々にすばらしい魅力があるにもかかわらずぱ)なかなか演奏されないことを憂えておられる方々にはとくに朗報——
 こうした19 世紀中〜後半作品、またフランス語圏の作品でのアルミンクのスコアリーディングの精緻な魅力を思えば、この3枚組は記念碑的録音となるに違いありません。
 この多作家が「序奏とロンド・カプリチョーゾ」他の有名曲以外にも小規模協奏的作品をこんなに書いていたのかぱと驚きつつ、解説(全訳付)を紐解きながら末永く愉しめること請け合いの充実企画。
 


ZZT333
(国内盤・9枚組)
\9450
フランソワ=フレデリク・ギィ(ピアノ)
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集BOX

 ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770〜1827):
 《CD I》
  ①ソナタ第14 番嬰ハ短調op.27-2「月光」
  ②ソナタ第9番ホ長調op.14-1
  ③ソナタ第10 番 ホ長調op.14-2
  ④ソナタ第11 番 変ロ長調op.22
 《CD II》
  ⑤ソナタ第8番 ハ短調op.13「悲愴」⑥ソナタ第5番 ハ短調op.10-1
  ⑦ソナタ第6番 ヘ長調op.10-2 ⑧ソナタ第7番ニ長調op.10-3
《CD III》
  ⑨ソナタ第13 番 変ホ長調op.27-1「幻想曲風」
  ⑩ソナタ第12 番 変イ長調op.26「葬送」
  ⑪ソナタ第4番 変ホ長調op.7
《CD IV》
 ①ソナタ第15 番 ニ長調op.28「田園風」
 ②ソナタ第19 番ト短調op.49-1 ③ソナタ第20 番 ト長調op.49-2
 ④ソナタ第21 番 ハ長調op.53「ヴァルトシュタイン」
《CD V》
 ①ソナタ第16 番 ト長調op.31-1 ②ソナタ第17 番 ニ短調op.31-2「テンペスト」
 ③ソナタ第18 番 変ホ長調op.31-3「狩」
《CD VI》
 ①ソナタ第23 番 ヘ短調op.57「熱情」②ソナタ第25 番 ト長調op.79
 ③ソナタ第24 番 嬰ヘ長調op.78「テレーゼ」④ソナタ第28 番イ長調op.101
 ⑤ソナタ第22 番 ヘ長調op.54
《CD VII》
 ①ソナタ第1番 ヘ短調op.2-1 ②ソナタ第2番 イ長調op.2-2
 ③ソナタ第3番 ハ長調op.2-3
《CD VIII》
 ④ソナタ第26 番 変ホ長調op.81a「告別」⑤ソナタ第27 番 ホ短調op.90
 ⑥ソナタ第29 番 変ロ長調op.106「ハンマークラヴィーア」
《CD IX》
 ⑦ソナタ第30 番 ホ長調op.109
 ⑧ソナタ第31 番 変イ長調op.110⑨ソナタ第32 番 ハ短調op.111
フランソワ=フレデリク・ギィ(ピアノ)

ZZT333
(輸入盤9CD)
\6590
日本語解説なし
 ついにBOX化!かなりなお買い得+日本語解説完備。『レコード芸術』特選相次ぐ傑作全集、もしまだ未入手なら...ある意味幸いです。

 このBOX とともに、じっくり聴き深めたい名匠の至芸
 Naiveでの一連の録音から10年、異才中の異才ギィがゆっくり醸成してきたベートーヴェン解釈!

 ベートーヴェンのソナタ、32 曲の全曲録音となるとさすがにおいそれとは手が出しにくいものでしょうが、実際に着手してしまう演奏家というのは概して、極度の完成度を誇る演奏解釈をくりだしてくるもの。しかも、不思議と思いのほか早くから着手する人が多い気がするのですが、それでいて信じがたいくらい立派なベートーヴェン読解をカタチにしてくる人ばかりなのですから、世の中には驚くべき天才がいるものだなあ...と改めて感服、いや戦慄さえ禁じ得ません。Caro Mitis レーベルで企画進行中のイーゴリ・チェトゥーエフもそうですが、その後にリリースが始まり、またたく間に完成をみたフランスの異才F-F.ギィの全曲録音もまた、そうした近年まれにみるクオリティを誇る逸品。
 日本でもリリースされるたび『レコード芸術』特選に輝き、ベートーヴェンの全集ものがつねにそうあるとおり、発売当初のマーケットの猜疑心を大きく覆すセールスへとつながっています(同じことは、現在も好況がつづく同レーベルの弦楽四重奏曲全集(ZZT315・321、ベルチャSQ)にも言えることで)。周到な選曲のもと、3枚ずつのBOX で3度に分けてリリースされてきたこの全集、ついに全集化がなされたとなれば、当然価格も多少なりとお求めやすく——
 もちろん日本語解説も完備でお届けいたします(国内盤のみ)。原文解説書はウェブサイトのみの公開です。

 R.シュトラウスやワーグナーを誰よりも尊敬している、つまりオーケストラ音楽にも彼自身の造詣が深い異才ギィだけに、ピアノ作品でも解釈の視座がおそろしく広い...という印象を受ける演奏も多いところ(めったに全曲録音が出ないリストの『詩的で宗教的な調べ』(ZZT110301)が特にそうでした)、ベートーヴェンでは初期の堅固なソナタの形式感から、後期作品では予想外の広がりと深まりへ...と、聴きどころは尽きません。末永く愉しんで頂きたいBOX、どうぞお見逃しなく!





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