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アリア・レーベル第22弾
ARIA AR 0022 1CD-R\1700
フルトヴェングラー＆ベルリン・フィル
1942年3月
ベートーヴェン：交響曲第9番
これはすでに音楽ではないだろう。
終楽章ラスト。
ここに「歓喜の歌」はない。
あるのは、凶暴な狂気。そして恐怖。
あるいは一人の指揮者が抱える苦しみというものをはるかに超えた、人類の苦悩、懊悩。
第３楽章はしかし、美しい。
おそらく最初の３分で彼岸の世界に連れて行かれる。
美しく穏やかで優しい天上の世界。
聴いた者はいつの間に自分はこんなところへやってきたのだろうと思うに違いない・・・。
・・・しかし、終楽章が始まるやいなや、むりやり現実の地獄に連れ戻される。
おまえがいるのは、ここなんだよ！
魑魅魍魎妖怪変化が跋扈し、死肉を喰らいながらせせら笑っている、これがおまえがいる現実！
フルトヴェングラーとベルリン・フィルによる1942年3月のベートーヴェンの交響曲第9番。
この演奏の背景にあるのは、5300万人がわずか数年間で地上から去ることになる史上最悪の戦争。今の日本の人口のおよそ半分が死んだのである。
我々はここで、音楽によって70年前の阿鼻叫喚の地獄絵図を見せ付けられることになる。本格的なホロコーストが開始されたのはちょうどこのころ。
「芸術というものは政治や権力や戦争とは無縁のものだ。憎しみから生まれるもの、国々の間の憎しみを広げるものとはいっさい無縁なのである。芸術とはそうした争いごとを超越している。」
「今日ほど人々がベートーヴェンを、自由や人間愛に関するベートーヴェンのメッセージを聴かねばならないと思ったことは決してなかった。そうした必要性にさいなまれたことは決してなかった」
フルトヴェングラーはそう考えて多くの人々の心を救うためにドイツで演奏を続けた。そして同時に「ドイツに残っているユダヤ人でフルトヴェングラーの援助を受けなかった者は一人もいない」と言われるほど、多くのユダヤ人を救い続けた。
が、そうした行動も、そうした思いも、すでに限界が来ていた。
芸術の政治的利用を拒否していたフルトヴェングラーだが、今回紹介する「第９」の演奏会の１ヵ月後には、９年間逃げ回っていたヒトラーの誕生式典演奏会についに引きずり出され、同じ「第９」を振ることになる。
ベルリンの新聞はそのコンサートを、「ドイツ国民が時代の危機と運命を乗り越えていくことをヒトラー総統に示した」と激賞した。
ドイツでは生きて音楽を演奏するだけで、ナチスの協力者となってしまう。もはやその現実からは逃れられない。
そんな時期のフルトヴェングラーとベルリン・フィルによるベートーヴェンの「第９」。
一人の指揮者が抱える苦しみ、というものをはるかに超えた人類の苦悩、懊悩。
フルトヴェングラーが生み出すことになった録音の中で、おそらく最も壮絶で悲痛な演奏。
こんな演奏は、人類があと１万年生きながらえても出てくることはないだろうし、願わくば出てこないでほしい。
こんな熾烈な音楽が生まれてしまう時代が、二度と来ないことを切に願う。
AR 0022
\1700
フルトヴェングラー＆ベルリン・フィル
1942年3月
ベートーヴェン：交響曲第9番
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ブルーノ・キッテル合唱団
ティラ・ブリーム（S）
エリーザベト・ヘンゲン（A)
ペーター・アンダース（T)
ルドルフ・ヴァッケ（Bs)
原盤：12inch Melodiya 33D-010851/4(OCT5289-61)
録音：1942年3月22-24日 ベルリン
フォーマットはＣＤ-Ｒ。ケースは薄型で、シンプルなデザインのジャケットと盤面印刷の仕様です。
針音や歪みなどのオリジナル・ノイズがありますがご了承ください。
（フルトヴェングラーのベートーヴェン交響曲第９番の主な録音）
戦前
1937.5.1
ロンドン
BPO
戦中
1942.3.22-24
BPO
当録音
1943.12.8
ストックホルム
ストックホルム・フィル
戦後
1951.1.6-10
VPO
1951.7.29
バイロイト
バイロイト祝祭O
1952.2.3
VPO
1953.5.31
VPO
1954.8.9
バイロイト
バイロイト祝祭O
1954.8.22
ルツェルン
フィルハーモニアO
アリア・レーベル全体インデックス（こちらからも全タイトル注文可能です）
第1弾 クリップス＆ウィーン・フィル/チャイコフスキー：交響曲第5番
第2弾 クレンペラー＆フィルハーモ二ア管/ベートーヴェン：交響曲第5番「運命」
第3弾 シュミット＝イッセルシュテット＆北ドイツ放送交響楽団/チャイコフスキー：交響曲第6番「悲愴」
第4弾 シルヴェストリ＆ウィーン・フィル/ドヴォルザーク：交響曲第7番
第5弾 バーンスタイン/ニューヨーク・フィル音楽監督就任直後のハイドン：交響曲第104番「ロンドン」＆メンデルスゾーン：交響曲第4番「イタリア」
第6弾 カール・ベーム＆ウィーン・フィル/1954年6月/シューベルト：交響曲第8番「未完成」＆交響曲第5番
第7弾 パウル・ファン・ケンペン指揮＆ベルリン・フィル/ベートーヴェン：交響曲第3番「英雄」
第8弾 オイゲン・ヨッフム指揮＆ベルリン・フィル/ブラームス：交響曲第1番
第9弾 ジャン・マルティノン指揮＆コンセール・ラムルー管弦楽団/モーツァルト：交響曲第31番「パリ」、第32番、第33番
第10弾 フリッツ・ブッシュ指揮＆デンマーク国立放送交響楽団/ブラームス：交響曲第2番
第11弾 フルトヴェングラー＆ベルリン・フィル/1943年6月/ベートーヴェン：交響曲第5番「運命」、第4番
第12弾 ハンス・クナッパーツブッシュ＆ベルリン・フィル/1944年9月9日、ブラームス：交響曲第3番
第13弾 ヘルベルト・フォン・カラヤン＆トリノ放送交響楽団 / モーツァルト：交響曲第35番「ハフナー」 1942年10月
第14弾 カラヤン＆ウィーン・フィル/1948年11月チャイコフスキー：交響曲第6番「悲愴」
第15弾 エーリヒ・クライバー＆アムステルダム・コンセルトヘボウ/ベートーヴェン：交響曲第7番
第16弾 フルトヴェングラー＆ベルリン・フィル 1942年12月 / シューベルト：交響曲第9番「グレイト」
第17弾 ジュリーニ＆フィルハーモニア管 / シューマン：交響曲第3番「ライン」
第18弾 ベーム＆ベルリン・フィル / 1956年 『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』
第19弾 カラヤン＆ベルリン・フィル / 1960年のチャイコフスキー：交響曲第4番
第20弾 エーリヒ・クライバー＆ベルリン国立歌劇場管 / 1929年/ドヴォルザーク：交響曲第9番「新世界より」
第21弾 ケンペ＆フィルハーモニア管 / モーツァルト：交響曲第34番
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Ｃｏｐｙｒｉｇｈｔ（Ｃ） 2013 ＡＲＩＡ−ＣＤ．Ａｌｌ ｒｉｇｈｔｓ ｒｅｓｅｒｖｅｄ．44.45.46
