これ以外はない
アイザック・スターン、1951年ニューヨーク・ライヴ
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲
店主がスターンを見直すきっかけになったのがこのドヴォルザーク。
ハイフェッツは、スターンのデビュー当時(1943年)の演奏を聴いて衝撃を受け、テクニックの練達のため1年間の引退生活を決心したという。
このドヴォルザークは、スターンのデビュー当時のものすごさを知らしめてくれる。
1951年、スターンがまだ経済的にも政治的にもほとんど無力で、一介のアーティスト、純粋なアーティストだったときのライヴ。
ヴァイオリンの音色はいつもピンと張り詰め透明で清らか、メロディーの先端まで心が行き渡り、でも神経質ではなく澄み切った青空のように明快。そして歌うところでは恥も外聞もなくよよよと歌いきる。
この作品の機微、心意気、内面、華やかさ、そうしたものを完璧に捉えた唯一の演奏といっていい。
この作品がこんなにもいい曲だということを教えてくれたのはこの録音である。
だからこの演奏以外、いまだに誰の演奏を聴いても満足できない。
ムターもすごかったし、ファウストも素敵。
でもこのスターンの演奏だけは特別。
これ以外はない。
作品と演奏とが完全に一致してしまった、ある意味幸福であり不幸でもある、極めて稀有な例。
残念ながらこの至上の名演がすでに廃盤。
再プレスされることもないだろう。あとは海外の倉庫の在庫限りである。お早めに・・・。
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