名盤雑記帳
これからどういう形で進んでいくのか店主自身もわからない。
膨大なクラシック音源の中から名盤とされているCDを無秩序に取り上げ、数年後にはそこそこのライブラリにしたいという企画。
演奏家主体なのか、作曲家主体なのか、作品主体なのか、音盤主体なのか、現段階では未定。とにかく始めちゃいます。
ここで扱うアルバムの条件は、歴史に名を残す名盤であり、且つ実際聴いて素晴らしいものであること。買って、「ギャー、やめときゃよかった〜」というようなことはありえないもの(2枚目だったとかいうのはナシです)。
そして現在入りやすいということと、・・・できれば比較的安価な価格のもの。
そんな基準で選んでいくつもりです。 |
2008.10.17
シューベルト:交響曲第5番
シューベルトの交響曲の中で、「未完成」や「グレイト」の次に人気があるという第5番。でもその2曲との間の人気の差はものすごく大きい。個人的には大好きな曲だが、一般的にはシューベルト作品の「中の上」の部類に位置付けされてるかもしれない。
でもこの曲くらい、シューベルトが、ベートーヴェンではなくモーツァルトの血を引いた作曲家なんだと思わせてくれる曲もない。薄幸で、でも楽観的。才能浪費型で非現実的で世間知らずのロマンティスト。
そんなふたりの共通点を感じさせる素敵な作品。
よく言われるのが第3楽章のメヌエットが、モーツァルトの40番と同じト短調ということ。そして奏でられる音楽も、おやまあ、その雰囲気は相当似てる。やっぱり同じ血を引いてる!
もちろん「春よ!」と小躍りしたくなるような第1楽章冒頭、第2楽章の安らかな旋律、終楽章の軽やかな雰囲気、とどれも捨てがたい。
聴いて涙したり、人生を省みたくなるというようなことはないけれど、愛すべき旧友に会ってお茶を飲むような、そんな親しい、楽しい気分にさせてくれる愛すべき秀作である。
まあ、そんな軽やかで楽しげで罪のない作品なので、演奏も「迫真の大演奏!!」というようなものはあまりない。哲学的な深みも、学究的な読みもそれほど必要ない。
で、演奏のパターンとしては二つに分かれると思う。どちらの気分を求めるかで選んでいけばいいかと。
ひとつは最近の古楽器ブームの流れもある、快活でシャキシャキっとした感じの演奏。後述の「昔ながら」の演奏に対する反発もあるかもしれない。
代表的なのはコープマン、そして意外やアバドの演奏もこの部類に入る。天国的で浮き浮きした気分に浸りたければこれらが一番おすすめ。
で、好き嫌いは分かれるが、それをさらに過激に推し進めたのがアーノンクール盤。
そしてもうひとつは優美でロマンティックな演奏。というか、一時代前まではみんなこうしたスタイルだった。もちろんチャキチャキの快活演奏もあるけれど、基本的にはこの曲の持つ優美さを前面に押し出す演奏。本来ならウィーン・フィルで聴きたくなるような演奏だが、シューリヒトのALTUS盤は素敵な演奏だが代表盤とするのはちょっぴり気が引ける。ショルティも悪くはないけれどちょっと自己主張が強すぎる。で、ここではやっぱりベーム・・・と言おうとしたら、なんとお勧めの79年版は廃盤。ガーン。頑固親父ベームはなぜかこの曲に愛着があったらしく、42年、54年、66年、そして79年と4回も録音している。中では最後のウィーン・フィルとの演奏が素敵なんだけど、廃盤なら仕方ない。復活を夢見て。
でもそれにも負けない名盤はまだまだある。
さきほどのアバドではないが、なぜかこの曲との相性がよかったのが・・・意外やクレンペラー。まあモーツァルトとの相性の良さを思えばわからない話ではない。
重鎮系ではヨッフムも捨てがたいが、ここはいきなりの代表盤を。
ワルター&コロンビア響。
しかしまさかこのワルター盤をしのぐ演奏はもう二度と現れるまいと思っていた。
ところがあったのである。完全にしのぐとは恐れ多くて言えないけれど、同じくらいの深みと温かさを持った稀有なる名演が。
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