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書籍新刊紹介

 ここ最近刊行された音楽書籍の中から面白かったものをご紹介します。
 基本的にここでは出版社に在庫があるものを紹介するつもりですが、書籍はCD以上に完売になるのが早いのでご注意くださいませ。

<11/21紹介>
1 中公新書 西洋音楽史 「クラシック」の黄昏    岡田暁生著 ¥819
2 新書館 CD&DVD51で語る西洋音楽史    岡田暁生著 ¥1575
3 芸術現代社 伝説の名演 〜衝撃のオーケストラ・ライヴCD〜     野崎正俊 著 \2730

<11/14紹介>
1 音楽之友社 名曲悪口事典 ベートーヴェン以降のクラシック名曲悪評集 スロニムスキー 編 ¥3465
2 新評論社 歌の国スウェーデン クラシック音楽ガイド 戸羽晟著 ¥3990
3 音楽之友社  ONTOMO MOOK 21世紀にも聴きつづけたい演奏家 クラシック不滅の巨匠たち100 ¥1995
4 音楽之友社 ONTOMO MOOK ウィーン・フィル&ベルリン・フィル最新パーフェクト・ガイド ¥1785



<11/21紹介>

西洋音楽史 「クラシック」の黄昏
岡田暁生著
中公新書 ¥819

【出版社紹介文】
 一八世紀後半から二〇世紀前半にいたる西洋音楽史は、芸術音楽と娯楽音楽の分裂のプロセスであった。この時期の音楽が一般に「クラシック音楽」の歴史と呼ばれている。本書は、「クラシック」音楽の歴史と、その前史である中世、ルネサンス、バロックで何が用意されたのか、そして、「クラシック後」には何がどう変質したのかを大胆に位置づける試みである。
 音楽史という大河を一望のもとに眺めわたす。
【著者紹介】
 岡田暁生
  1960年、京都生まれ。大阪大学文学部博士課程単位取得退学。ミュンヘン大学およびフライブルク大学で音楽学を学ぶ。
  現在、京都大学人文科学研究所准教授。文学博士。
  『〈バラの騎士〉の夢』(春秋社、1997年)でデビューし、『オペラの運命』(中公新書、2001年)でサントリー学芸賞を受賞。そのほか『西洋音楽史』(中公新書、2005年)、『恋愛哲学者モーツァルト』(新潮選書、2008年)などの著書がある。

【店主駄文】
 ひょっとしたら今年読んだクラシック関係の書物で一番面白かったかもしれない。
 出版されたのは2005年だからかなり前。
 本屋とかではちらちら目に入っていたが実際に買って読むまでに時間がかかった。「今更西洋音楽史なんて」、という思いがどっかにあったからだと思う。
 だがこの本は面白かった。
 著者は音楽以外の知識、とくに西洋史の造詣が非常に深いので、音楽史の流れが常に世界の歴史とシンクロして語られる。間違いなく音楽が主役なのだが、音楽史は音楽だけの閉じられた世界の話ではなく、動き惑い停滞し進化する人間の歴史のひとコマとして描かれる。だから音楽の歴史の流れが非常にわかりやすいしイメージしやすい。
 店主も以前から音楽史が音楽史だけで単体で語られ述べられることにいつも違和感を感じていた。
 なぜジョスカン・デ・プレはジョスカン・デ・プレだったのか、なぜモンテヴェルディはモンテヴェルディだったのか、なぜモーツァルトはモーツァルトだったのか、なぜベートーヴェンはベートーヴェンだったのか・・・、たいていの音楽の歴史書は教えてくれない。それぞれの音楽史の○○派の中での立場や作風を教えてくれるだけ。なぜ彼らが生まれ、なぜ彼らがそうした作品を書くことになったのか、そこまで突っ込んで書いてくれない。
 それは確かに難しいと思う。
 背景となる歴史を熟知し、その知識と生の音楽とを絡めて話せるだけの応用力がないといけないから。いい加減な推理で結論付けてしまうと、どんなところから厳しい反駁を受けるかわからない。
 しかし、この岡田暁生という人は、それを極めてシンプルにやり遂げた。読む人によっては「それはそうだよ」と軽く受け流すかもしれない。しかしここまで音楽史を西洋史に引き寄せ、個人的な概念の中で完結させた人はいなかったのではないか。しかもその論述や流れに矛盾がない。逆に、「そうそう、そうなんだよね、いままで誰も言わなかったけど」、というような画期的な記述に何度も出会うことになる。
 この本を読むことで、初めてはっきりしたイメージで捉えられる時代や作曲家もあるのではないだろうか。
 強烈な説得力と迫力ある筆致で読むものを引きずり込んでくれる、稀有な西洋音楽史入門といえる。
 いや、入門書ではないか・・・、まったく西洋音楽史についての知識がない人が読むとどういうことになるかはちょっと予測がつかない。ひょっとしたら全然つまらないかもしれない。
 なので、ある程度音楽史の知識のある人が読むと非常に面白い、と付け加えておきます。




CD&DVD51で語る西洋音楽史
岡田暁生著
新書館 ¥1575

【出版社紹介文】
 グレゴリオ聖歌からハリウッド映画音楽まで??
 作品や史実のみならず、斬新な切り口で作曲家、指揮者、 演奏家をも語る。新たな視点からの西洋音楽史入門!
【まえがきより】
 音楽体験とは常に、「過去とのコミュニケーション」でありたい。音楽に機能主義的な完璧さを求めるモダニスト。巨匠の大振りな演奏との出会いを渇望する復古主義者。クラシック音楽の解釈はコラージュないし異化という形でのみ可能だと感じるポストモダニスト。どの方向の演奏もそれなりに楽しもうとする折衷的な教養主義者。もちろん、解釈の方向性などどうでもいいと思う人もいよう。だが快原理のみにひたすら従う脱歴史イデオロギー的な聴き方もまた、ポストモダン以後の音楽状況を特徴づける一つの歴史的態度だろう。プレトニョフのしっちゃかめっちゃかなベートーヴェンを聴いて、それを面白がるのも、苦々しく舌打ちするのも、どちらも音楽史への態度表明なのだ。−−岡田暁生

【店主駄文】
 で、上記「西洋音楽史」を書いた岡田暁生氏が、最近また本を出した。
 「CD&DVD51で語る西洋音楽史」。
 これが、本屋とかで見ると、なんとなく「ヤワラカ系」クラシック読本みたいに売られていて、初心者入門書みたいに見えるのだが、全然とんでもない。
 言ってみればこれは上で紹介した「西洋音楽史」の参考書。西洋音楽史を45の章に区切り、岡田流西洋音楽史観が炸裂する。上記本を読んだ人には復習的な内容になるが、もちろん新しい記述も山盛りである。そして何より今回の「参考書」の面白いのは、それぞれの章に、そこにもっともふさわしいCDやDVDが紹介されていること。それはよくある名盤紹介の類いではない。名演でなかろうが、無名の人の演奏だろうが、そこで紹介するに最もふさわしいと著者が考える盤が紹介されているのである。
 実際にCDを買おうという読者のために基本的にメジャー・レーベルのものが多いが、中には店主も知らなかったこんなアイテムも紹介されている。
 登場するのは「国民国家のための音楽」の章。国民楽派台頭の話である。まあ、普通ならそこで「わが祖国」のクーベリック盤でも持ってきてさらっと終わりそうだが、著者が紹介したのは以下の盤。
 紹介文とあわせてどうぞ。

GOLDEN MELODRAM
GM 2.0010(2CD)
¥3600
ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」 マリア・カラス、
ジノ・ベッキ
ヴィットリオ・グイ指揮
ナポリ・サン・カルロ劇場
 録音1949年、ナポリ/ライヴ
 「第二次世界大戦が終わって間もない頃のこの海賊録音の最大の聴きどころは、若き日のカラスでも、名指揮者グイの統率のもとで燃え上がるような表現を見せるサンカルロ劇場のオーケストラでもなく、聴衆である。・・・この「ナブッコ」公演でも彼らは「クラシック」の観客とは思えないくらい、好き放題にふるまっている。「行け我が想い、黄金の翼に乗って」の途中、客席から突如感極まった「イタリア万歳!」の叫び声があがり、合唱とオーケストラがまだ」演奏を続けているというのに、お構いなしに大騒ぎが始まるのである。・・・曲が終わるとまたもや「イタリ万歳!」の嵐。蜂の巣をつついたような騒ぎとなって、「ブー」とわめいているらしい連中との間で凄まじい口論まで起きる。客席の騒ぎはいつまでたっても終わらない。やがて熱烈なリクエストに応え、もう一度「行け我が想い」がアンコールされる。前奏からしてオーケストラは1回目よりもさらに気合が入っている。冒頭のトゥッティによるフォルテッィシモの一撃など、全員が渾身の力を込めて「どうだ!」とばかりにポーズを決めてくれる。ほとんど郷土芸能の世界である。」(「CD&DVD51で語る西洋音楽史」より)

 どうです?聴きたくなったでしょう?ぜひ注文してみてください。店主もさっそく注文して今入荷待ちです。

 とまあこんな感じで、読む人の心をこんなにゆすぶってくれる「西洋音楽史」の本は初めて。あなたもエキサイティングでドラマティックな音楽の歴史にどうぞ。
 それにしても岡田暁生という人、これからどんどんすごくなっていくような気がする・・・。






伝説の名演 〜衝撃のオーケストラ・ライヴCD〜
野崎正俊 著 芸術現代社 \2730

【出版社紹介文】
巨匠が生むライヴ演奏における一期一会!
演奏家の多くは一発勝負のライヴ演奏において自らの命を賭ける。
オーケストラを相手にする指揮者の場合、一世一代の奇跡的な名演が生まれることさえある。本書はトスカニーニ、フルトヴェングラーからクライバー、ゲルギエフに至るマエストロ42人のライヴ録音をピックアップ、その名盤の素晴らしさと魅力を縦横無尽に語る。
目 次(一部)
 アルトゥーロ・トスカニーニ/ヴィレム・メルゲンベルク/ブルーノ・ワルター/オットー・クレンペラー/
 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ハンス・クナッパーツブッシュ/シャルル・ミュンシュ/カール・ベーム
 ジョージ・セル/ロヴロ・フォン・マタチッチ/フランツ・コンヴィチュニー/オイゲン・ヨッフム
 アラン・ハチャトゥリアン/エフゲニー・ムラヴィンスキー/ヘルベルト・フォン・カラヤン
 ヨーゼフ・カイルベルト/エーリヒ・ラインスドルフ/セルジュ・チェリビダッケ/イーゴル・マルケヴィチ
 ゲオルグ・ショルティ/カルロ・マリア・ジュリーニ/ラファエル・クーベリック/レナード・バーンスタイン
 ペーター・マーク/クラウス・テンシュテット/イシュトヴァン・ケルテス/カルロス・クライバー
 リッカルド・ムーティ/ダニエル・バレンボイム/ヴァレリー・ゲルギエフ、他全42名

【店主駄文】
 今から十数年前までは、クラシックの録音といえばスタジオ録音が当たり前で、ライヴ録音、ましてや拍手が入るようなライヴ録音は欠陥商品の手前のような扱いを受けていた。
 フルトヴェングラーやカルロス・クライバーといった一部の神様だけがライヴ音源をリリースされても許された。
 しかし90年代に入りメジャー・レーベルが資金難におちいり、ライヴ録音をきれいに細工してスタジオ録音と変わらぬ音質に仕立て上げ始めた。また過去の歴史的音源が枯渇し、めぼしい音源がなくなったところに、老舗のORFEO、さらにALTUSやWEITBLICK、AUDITE、BBC LEGENDSといったレーベルが貴重なライヴ音源をザクザク掘り起こし、ベストセラーをかっとばした。さらにCDレーベルとの録音取引が激減した各オーケストラが自力でCDを制作販売するという手法を学び、自分たちの優れたライヴ音源をどんどんCD化するようになった。さらに、大声では言えないが、それらよりもさかのぼること数年前から、ライセンスのないライヴ録音のCDやCD-Rが次々と発売され、玉石混交ながらそうした音源の中に後に伝説となるような演奏も現れ、優秀な正規ライヴ音源発売を熱望し受容する土壌を作っていた。
 いわば、クラシックCD業界のこの15年は、ライヴ音源の急速な浸透に最も特徴があったといっていい。
 さて、今回紹介するのは、そのライヴ音源に焦点を絞ったオーケストラ・アルバムの本。
 野崎正俊氏は「オペラ・ディスク・コレクション」というオペラ・ファンにとっては聖書のような事典を書いた人だが、まさかオーケストラ録音にも造詣が深いとは思わなかった。
 ただ、野崎氏は、アリアCDの店主や、上で紹介した岡田氏のように読者を煽り揺さぶるタイプの人ではないので、どちらかというとCDの紹介はとても淡々と進む。しかしツボを押さえ、誇張を抑え、正確な描写を心がける氏の文章にはとても信頼感が持てる。もちろん氏が取り上げていない名演も多くあるとは思うが、自分がよいと思ったものを遠慮なくバンバン取り上げるなど、そのまっすぐな心がけもすばらしい。
 オーケストラ・ライヴ音源マニアの方はぜひ。





<11/14紹介>

名曲悪口事典
ベートーヴェン以降のクラシック名曲悪評集
スロニムスキー 編
音楽之友社 ¥3465

【出版社紹介文】
 本書は、古今の有名作曲家とその作品(ベートーヴェンからコープランドまで)をめぐる批評(雑誌記事、新聞批評、書簡など)を集めた事典である。
 悪口、酷評ばかりが収録されているのが特徴で、思わず笑えるような珍批評もあり、読み物としても楽しめる。また、当時の聴衆の反応を知る貴重な証言も多く、音楽史の第一級の資料でもあり、一般の音楽愛好家、専門家双方にとって、大変に興味深いものである。
 それぞれの作曲家ごとに様々な作品がとりあげられ、例えばベートーヴェンでは《第2交響曲》《第3交響曲》《第5交響曲》《第6交響曲》《第7交響曲》《第8交響曲》《第9交響曲》《ウェリントンの勝利》《フィデリオ》《ミサ・ソレムニス》《弦楽四重奏曲第13番》《ピアノ・ソナタop.106「ハンマークラヴィーア」》《ピアノ・ソナタop.111(第32番)》の作品個々の批評、そしてそのほかに様式論等の批評などが収められており、様々な作曲家の様々な作品の、生み出された当時の評判が読める大変に興味深い、貴重な本であるといえる。

【店主駄文】
 いろんなところで話題になっている本である。
 内容はタイトル通り、「名曲悪口事典」。
 ベートーヴェン以降のクラシック音楽の名曲、あるいは作曲家そのものに対する悪口、酷評を集めたもの。
 その批評は悪意に満ち、短絡的で、好き嫌いだけで書かれ、誠意と愛情に欠ける。
 ・・・しかし・・・面白い。こういうのをありがたがるっていうのもほんと悪趣味かもしれないけれど、ここに書かれている人も書いている人も現在ほとんど生きていないわけだし、ま、いいのではないかと。

 では一部ご紹介しますので、Aのコメントに該当する作品、あるいは作曲家をBから選びましょう。
 
1.何らかの方法で短縮されない限り、この交響曲はまもなく廃品となるだろう。
2.比類なく馬鹿げて大げさな贅沢品の卸売業者。大言壮語と耐えがたい不協和音のごちゃごちゃした外観。
3.無秩序と混乱状態が時には彼の最良の作品をも侵食しているが、・・・のちに彼の頭脳も冒されてしまった。
4.彼は現存する音楽の中で最も醜いものを書いている。
5.これは毒だ。それも猛毒だ。私たちが掴み取れるのは支離滅裂ながらくたの塊である。
6.この作品にはメロディが欠けている。このオペラがレパートリーに定着するチャンスはほとんどない。
7.我々が音楽を愛する方々にお勧めする点はない。・・・彼には本当に偉大な交響作品を作るために極めて必要である創造力とその広がりが、明らかに欠けているのだ。
8.汚いドブに人間の絶望の掃き溜めを編みこんだ作品。
A.ベートーヴェン:英雄
B.ショパン
C.シューマン
D.リスト
E.ワーグナー:ローエングリン
F.ヴェルディ:リゴレット
G.ブラームス:交響曲第4番
H.チャイコフスキー:悲愴

 解答は・・・全部上から順です。
 まあ、言いたい放題なので読んでて「ひどいなあ」と思うものもある。でも、「な〜んだ、当時の人もそう思っていたんだ」、というようなところも結構ある。
 どうしてもリストのよさがわからないという人、どうしてもブルックナーが理解できないという人、どうしてもドビュッシーが好きになれない人・・・。いやいや人にはいろいろあっていいと思う。でもなかなかそれを口に出していうことははばかられる。でもこの悪口集を読んで自分の考え方が決して独りよがりではなかったと認識するのもいいと思う。
 また最高、最良だと思っていた傑作や作曲家も、人によってはこんなふうに思えるんだ、と新たに認識するのも面白い。先入観や世間の常識というものをもう一度白紙にしてイチから物事を見つめるというのも大切なことかもしれないから。





歌の国スウェーデン クラシック音楽ガイド
戸羽晟著
新評論社 ¥3990 352ページ


【出版社紹介文】
 スウェーデンのクラシック音楽の知られざるその魅力を紹介する日本初のガイド。
 本書は、スウェーデン・クラシックの知られざる豊かな魅力を日本の音楽愛好家にひろく知らせたいという意図のもとに書かれたものである。本書の基盤となっているのは、400枚を超えるCDおよびLPレコードである。執筆にあたって手当り次第に集めたことで、日本では無名の作曲家の魅力的な作品にも多く接することができた。
 スウェーデンの音楽の基礎にあるのは「歌」だ。スウェーデンではたくさんの歌曲や合唱曲がつくられており、それらはどれも極めて美しい。またスウェーデン民謡のもつもの悲しい旋律は多くの人を魅了するものであり、それらを歌うスウェーデン人の声の素晴らしさは世界一と言っても過言ではないと思う。楽器はヴァイオリンが好まれ、特にフォークダンスには不可欠とされてきた。そのせいか、ヴァイオリンソナタや弦楽四重奏曲には優れた作品が多い。
 管弦楽については、スウェーデンでは16世紀頃から、宮廷で楽士がこぢんまりと演奏する形態で登場したらしい。この宮廷楽団がそっくりスウェーデン王立歌劇場に引き継がれたのだから、歴史的には王立歌劇場はヨーロッパでも最古のオーケストラの一つであろう。
 本書は二部構成になっており、第一部ではスウェーデンの作曲家とその時代背景について述べる。第二部では作曲家別にそれぞれの特徴を詳説し、ディスコグラフィーを添えた。本書を読んで是非スウェーデンの音楽に関心を抱き、その魅力を堪能していただければ幸いである。

戸羽晟(とば・あきら)
 1940年小樽市生まれ。1989-91年ロサンゼルスに転勤、L.A.フィルの演奏を50回以上聴く。94年から(財)スウェーデン交流センター事務局長。2004年退職。


【店主駄文】
 いわゆる音楽評論のプロの書き手でない人が、ときどきこうしたモンスター的な本を出す。
 これはまさにズバリ、「スウェーデン・クラシック音楽ガイド」。
 スウェーデン・クラシックに大家はいない。そのため熱狂的なファンというのもそれほど多くない。しかし声高に言わないだけで、店主も含め、その朴訥とした中に北欧ロマンを満載したスウェーデン音楽を愛する人は実は少なくない。
 ただ、これまでスウェーデン音楽がまとまって書籍で紹介されることはなかった。店主の資料も大束省三の「北欧音楽入門」くらいである。
 しかし今回の本は愛情と熱意でこのスウェーデン音楽の総まとめを目指す。前半60ページでスウェーデン音楽の歴史を総括、そしてそれ以降250ページはスウェーデン作曲家の個別紹介である。なので当然かなりマイナーな作曲家も含まれる。そして何より嬉しいのは著者の豊富なCDが随時紹介されること。これは本当に貴重な指針となる。
 店主の愛するマルティン・クラウスやラーションやについて、ここまで詳しい本は今までなかった。著者は店主と違って主観をできるかぎり抑えるタイプの人なので、どちらかというと話は淡々とドライに進んでいくが、そのなかに深い薀蓄と長い経験を読み取ることができる。
 北欧ファンならできるだけ手元においてほしい力作。これから何かにつけて手に取ることになりそう。




〔音楽之友社  ONTOMO MOOK〕
21世紀にも聴きつづけたい演奏家
クラシック不滅の巨匠たち100
音楽之友社 編  248頁 \1995

【出版社紹介文】
 クラシック音楽界を支えている要素で、最も大きなもののひとつが、「巨匠・名匠」と呼ばれている超一流の演奏家たちである。
 とくに日本の場合、CDなどのメディアによってかなり昔からの巨匠・名匠たちの演奏を聴くことが、クラシック音楽を人生の伴侶として長く親しみぶかいものにしていることは間違いない。
本書は、これまでONTOMO MOOKで刊行された「クラシック 不滅の巨匠たち」(93年7月)、「クラシック 続・不滅の巨匠たち」(94年12月)、「クラシック 現代の巨匠たち」(94年4月)で紹介されたクラシック音楽の巨匠たちを、2008年の時点で新たに選定した後100人に厳選して紹介したものである。  


【店主駄文】
 もう10年以上も前になるか・・・、音友から出た「クラシック 不滅の巨匠たち」(93年7月)、「クラシック 続・不滅の巨匠たち」(94年12月)、「クラシック 現代の巨匠たち」(94年4月)という巨匠の生涯と録音を紹介した3冊のベストセラー・ムック。
 それぞれの演奏家に思い入れのある執筆陣が、よくある「演奏家事典」などでは書かれないもっとコアでベタな話を盛り込みながらその演奏家を紹介していく。
 今回出たのはその21世紀版。取り上げる演奏家を戦前の演奏家から今活躍中の演奏家まで100人に絞り、新たな執筆陣で構成されている。
 取り上げるのは以下の100人。もちろん他にもすごい人はいっぱいいるが、まずはいいところを押さえていると思う。事典的にも、読み物的にも、自分の苦手なジャンルを克服するためにも、いろいろ使い道のあるムックだと思う。またそれぞれの執筆陣一演奏家につき5枚ずつ代表盤を選びコメントしてくれているのも大いに参考になる。

◆不滅の大巨匠15
1.マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
2.レナード・バーンスタイン(指揮)
3.マリア・カラス(ソプラノ)
4.パブロ・カザルス(チェロ)
5.ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
6.ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
7.ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
8.ウラディミール・ホロヴィッツ(ピアノ)
9.ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
10.ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
11.マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
12.ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)
13.アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
14.アルトゥーロ・トスカニーニ(指揮)
15.ブルーノ・ワルター(指揮)

◆不滅の巨匠85
●指揮者(35名)
アバド/アンチェル/アンセルメ/バレンボイム/バルビローリ/ビーチャム/ベーム/ブーレーズ/
チェリビダッケ/クリュイタンス/フリッチャイ/ジュリーニ/アーノンクール/ハイティンク/ヨッフム/
カイルベルト/ケンペ/カルロス・クライバー/エーリヒ・クライバー/クレンペラー/クーベリック/
クナッパーツブッシュ/モントゥー/ムラヴィンスキー/ミュンシュ/オーマンディ/プレヴィン/ライナー/
リヒター/シューリヒト/シノーポリ/ショルティ/ストコフスキー/セル/ヴァント
●鍵盤楽器奏者(21名)
アラウ/アシュケナージ/バックハウス/ブレンデル/カサドシュ/コルトー/カーゾン/
フランソワ/ギーゼキング/ギレリス/グルダ/グールド/ハスキル/ケンプ/
レオンハルト/リパッティ/ミケランジェリ/リヒテル/ゼルキン/ヴァルヒャ/ツィマーマン
●弦楽器奏者(11名)
バシュメト(ヴィオラ)/デュ・プレ(チェロ)/フルニエ(チェロ)/グリュミオー(ヴァイオリン)/
ミルシテイン(ヴァイオリン)/ムター(ヴァイオリン)/オイストラフ(ヴァイオリン)/
セゴビア(ギター)/シゲティ(ヴァイオリン)/スターン(ヴァイオリン)シェリング(ヴァイオリン)
●管楽器奏者(3名)
アンドレ(トランペット)/ホリガー(オーボエ)/ランパル(フルート)
●声楽家(13名)
デル・モナコ(テノール)/ディ・ステファノ(テノール)/ドミンゴ(テノール)/フェリアー(アルト)/
フレーニ(ソプラノ)/ホッター(バリトン)/デ・ロス・アンヘレス(ソプラノ)/ニルソン(ソプラノ)/
パヴァロッティ(テノール)/プライ(バリトン)ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)/シュヴァルツコップ(ソプラノ)/テバルディ(ソプラノ)
●アンサンブル(2団体)
アルベン・ベルク四重奏団/ジュリアード弦楽四重奏団






〔音楽之友社 ONTOMO MOOK〕
ウィーン・フィル&ベルリン・フィル最新パーフェクト・ガイド
¥1785 A5・240頁

【出版社紹介文】
 2008年秋、久々に世界の両雄オーケストラの競演が日本で実現する。この絶好の機会をとらえ、本書では2大オーケストラの魅力を余すところなく紹介する。今や巨匠の域に達したリッカルド・ムーティーとサイモン・ラトルが、それぞれウィーン・フィルとベルリン・フィルについて語る。また、両楽団の歴史、代表的なディスクなども紹介。まさにファン必携の【永久保存版】である。


【店主駄文】
 ムックだがなかなかの力作である。
 VPOとBPOに少なからず興味を抱くものにとっては、宣伝文句でなく、ほんとにためになる。昔から「ベルリン・フィルのクラリネットの○○って知ってますよね・・・?」とか、いやに詳しい人がいてどうしてそんな人の名前まで知ってるんだろう、と思っていたけれど、そういうこともこの本があればもう大丈夫。
 まずは両者の歴史から入り、それぞれの「現在」についての考察に至る。
 その後
 ・名コンサートマスター、 ・名プレーヤー、 ・室内楽グループ、 ・本拠地、 ・指揮者
 についての話。
 現コンマスの本音トークや、団員の給料とかの下世話な話もやっぱり興味深い。
 そしてそのあといよいよ名盤の紹介となる。名盤の紹介は
 ・代表的作曲家
   ハイドン/モーツァルト/ ベートーヴェン/シューベルト/ニューイヤー&ウィンナ・ワルツ/シューマン/
   ワーグナー/ヴェルディ/ブルックナー/ブラームス/チャイコフスキー/ドヴォルザーク/プッチーニ/
   マーラー/R・シュトラウス/フランスの作曲家/ロシア・東欧の作曲家/北欧の作曲家/イギリスの作曲家/新ウィーン楽派
 ・代表的指揮者
   フルトヴェングラー/カラヤン/アバド/ラトル/クレンペラー、バルビローリ/ベーム/
   ヨッフム、クリュイタンス、カイルベルト/チェリビダッケ、ヴァント/バーンスタイン/ハイティンク/
   マゼール/小澤征爾/バレンボイム/レヴァイン/その他の指揮者
 とに分かれて行われる。
 またそれ以外にもいくつかの寄稿によって構成されているが、なかでも黒田恭一によるカラヤンのインタビュー回顧の話などちょっとうるうるしてしまった。
 この手のムックはほんとにすぐに廃刊になるが、この1冊は出版社の表現を借りるまでもなく永久保存盤的要素が強い。すぐに完売になると思うのでお早めに。




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