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大アーティスト
なぜか埋もれていたアルバム
その2


 大演奏家たちの、どういうわけか見過ごされてしまっている不遇な音源を紹介する特集。
 廃盤になるのが早いこの業界、こういう特集でその存在をきっちり押さえておいていただければ。


 ただ入荷数が少なかった場合は抽選となる場合もあります。

クラウス・テンシュテット
生誕100年記念、41枚組ボックスにも入らなかった
「テンシュテット最高の《巨人》」



 DOREMI



 DHR 8241
(2CD)
\6000
メーカー在庫限り
クラウス・テンシュテット LIVE 第1集
 (1)ベートーヴェン:
  ヴァイオリン、チェロとピアノのための
   三重協奏曲 ハ長調 Op.56
 (2)ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 Op.92
 (3)マーラー:交響曲第1番 ニ長調『巨人』
 (4)ハイドン:交響曲第45番 嬰へ短調『告別』Hob.I/45
クラウス・テンシュテット(指揮)
(1)ジョゼフ・シルヴァースタイン(ヴァイオリン)
 ジュール・エスキン(チェロ)
 ピーター・ゼルキン(ピアノ)
(1)(2)(4)ボストン交響楽団
(3)北ドイツ放送交響楽団

 テンシュテット白熱ライヴ集第1弾!

 録音:(1)1977年7月30日/タングルウッド、(2)1977年7月29日/タングルウッド、(3)1977年11月14日、(4)1979年7月20日/タングルウッド

 貴重なライヴ音源をリリースしているDOREMI からテンシュテットのシリーズ。
 北ドイツとの『巨人』ライヴは知る人ぞ知る白熱の演奏。
 タングルウッド音楽祭でのボストン響との録音もピーター・ゼルキンらと共演した三重協奏曲など濃密な内容です。
 





 第1回としてご紹介した、

ラファエル・クーベリック&
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団による
ブルックナーの交響曲第3番


 録音後56年間も眠り続けていた、クーベリックの「なぜか埋もれたアルバム」でしたが、これが、驚くほど大きな反響を呼びました。

 そこで、さっそく第2回です。

 今回、登場するのはクラウス・テンシュテット。

 テンシュテットといえば、クーベリックと同じように、いまも熱烈なファンを持つ大指揮者です。
 マーラーを中心に、有名なライヴ録音が数多く発売されています。

 さすがに、もう誰にも気づかれていない録音など残っていないのではないか・・・そう思われるかもしれません。

 でもあるんです。

 「テンシュテット最高の《巨人》」が。


 2026年は、クラウス・テンシュテットの生誕100年。

 それを記念して今年5月、WARNER CLASSICSから、テンシュテットが同社に残した録音を集大成した41枚組の巨大ボックスが発売されました。
 中心となるのは、もちろんマーラー。
 ロンドン・フィルとの交響曲全集をはじめ、テンシュテットの大きな遺産がまとめられています。

 でも――

 その41枚組にも、今回ご紹介する《巨人》は入っていません。


 テンシュテットには、マーラーの交響曲第1番《巨人》の録音が複数残されています。

 EMIによるロンドン・フィルとのスタジオ録音。
 ロンドン・フィルとのライヴ。
 そして晩年、シカゴ響と残した演奏。

 どれもテンシュテットらしい、熱く、深く、すばらしい演奏です。

 しかし、今回の録音はそのどれでもありません。


 1977年11月14日、北ドイツ放送交響楽団とのマーラー:交響曲第1番《巨人》。




 英MusicWeb Internationalの批評家リー・デナムは、これまでに200種類を超えるマーラーの交響曲第1番を比較しています。

 その彼が、数ある《巨人》の中でも最上位に置いた演奏のひとつ。
 そして、テンシュテットが残した複数の《巨人》を比較したうえで、

「テンシュテットの《巨人》では、これが最もすばらしい」

と結論づけた演奏。

 それが、今回の演奏。

 さらにデナムはこの演奏について、

「クーベリックを思わせる自然さと、無邪気な喜び、子供のような驚きに満ちている」

と述べています。

 このころのテンシュテットは51歳。

 後年のテンシュテットというと、音楽のすべてを焼き尽くしてしまうような壮絶なマーラーを思い浮かべます。

 しかし、この1977年の《巨人》は少し違います。

 冒頭、遠い自然の中から、少しずつ音楽が目を覚ましていく。
 小さなトランペットの呼び声。
 宙に浮かぶようなハープの一音。
 森の奥から聞こえてくる鳥の声。
 テンシュテットは、そこに無理な思い入れを加えることなく、マーラーの音楽を自然に息づかせていきます。
 若々しく、温かく、それでいてライヴならではの生命力に満ちている。
 晩年の壮絶なテンシュテットとは異なる、まだ音楽の中に光と無邪気な喜びが残っていた時代の《巨人》なのです。

 この録音は、長く一部の非公式盤などでしか知られていませんでした。
 テンシュテット・ファンの間では存在を知る人もいましたが、誰もが普通に買える録音ではありませんでした。

 それが2024年、カナダの復刻レーベルDOREMIによって、ようやく広く入手できる形で発売されました。

 しかし、そのとき与えられたタイトルは、
「クラウス・テンシュテット・ライヴ第1集」。
 ジャケットにも、特別
「テンシュテット最高の《巨人》」
とは書かれていません。

 200種類を超える《巨人》を聴いた批評家が最上位に選んだ演奏が入っているとは、なかなか気づきません。

 その本当の価値がほとんど知られていない。
 それがこのアルバムなんです。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 そして、価値があるのは《巨人》だけではありません。

 ボストン響とのベートーヴェン第7番は、大きな呼吸と重厚な響きを持つ、古きよきドイツのカペルマイスターの伝統を感じさせる演奏。
 現在主流となっている速く、鋭く、軽快なベートーヴェンとは違います。
 その背後には、フルトヴェングラーの影さえ感じられることでしょう。

 また三重協奏曲では、録音が少ない天才ピーター・ゼルキンに加え、当時のボストン響を代表する名手、コンサートマスターのジョゼフ・シルヴァースタインと、首席チェロ奏者を長く務めたジュール・エスキンが共演。
 単なる「テンシュテットの珍しい録音」ではなく、ソリストの顔ぶれだけでも聴き逃せない記録です。

 そしてハイドンの《告別》。
 現在ではなかなか聴けない、温かく、堂々とした、大編成オーケストラによるハイドンです。
 終楽章で奏者たちが一人ずつ去っていくと、客席から笑いが起こり、最後には大きな拍手が湧き上がる。
 その日のタングルウッドの空気まで伝わってくる、じつに楽しいライヴです。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 それにしてもこの「巨人」。

 生誕100年を記念した41枚組にも入らなかった。
 
 しかし200種類を超える《巨人》を聴いた批評家が、テンシュテットの残した《巨人》の中で最もすばらしいと選んだ演奏。
 それが、この2枚組の中にひっそりと収められていた。

 クラウス・テンシュテットの、なぜか埋もれていたアルバムです。


 発売当時店主は必死で「DOREMIはすぐ完売するからすぐに押さえておくように」と訴えていました。

 幸いにも現段階ではまだ売切れてません。

 でも遠からず、手に入らなくなるでしょう。

 そのときあなたは言うのです。

 「テンシュテットの1977年11月14日、北ドイツ放送交響楽団とのマーラーの《巨人》?
 ・・・ああ、もってるよ」

と。






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