
fr 673 |
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K. 488
同第27番変ロ長調 K. 595 |
デニス・マシュース(P)
ルドルフ・シュワルツ指揮
フィルハモニア管 |
Recording date : 1954
Length : 00:57:06 Original edition : Columbia
S 1039 et S 1032 |
英国モーツァルト演奏の良心、デニス・マシューズが残した協奏曲第23番と第27番。華麗さを競うのではなく、楽譜の呼吸を丁寧にすくい上げ、明るさの奥にある翳りまで静かに浮かび上がらせる。ルドルフ・シュワルツとフィルハモニア管も、独奏を包み込みながら決して重くならず、1950年代英国ならではの端正で気品あるモーツァルトを形づくる。円熟の第23番と、モーツァルト最後の協奏曲第27番という組み合わせも絶妙。派手な名盤とは違うが、聴くほどに心へ染み込んでくる、忘れがたい一枚。マシューズの清潔なタッチ、シュワルツの誠実な支え、そして往年のフィルハモニアの柔らかな響き。その三者が過不足なく溶け合った演奏は、静かな夜にじっくり向き合いたくなる。 |

fr 674 |
C.P.E.バッハ:
フルートと管弦楽のための協奏曲イ短調 Wq
166
同ト長調 Wq 169
交響曲ニ長調 Wq 183/1*
同ヘ長調 Wq 183/3 |
ジャン=ピエール・ランパル(Fl)
オワゾリール・アンサンブル
ルイス・デ・フロメント指揮*
パリ器楽アンサンブル* |
Recording date : 1956 Length : 01:13:08
Original edition : L'Oiseau-Lyre OL 50121
-Pathe DTX 180 |
若き日のジャン=ピエール・ランパルを聴く、なんとも魅力的なC.P.E.バッハ集。疾走する楽想、突然の陰影、鋭い感情の揺れ――古典派の整然とした世界から一歩はみ出すC.P.E.バッハの面白さを、ランパルの明晰な音色と自在な息遣いが鮮やかに描き出す。さらにルイス・デ・フロメント指揮による交響曲2曲を収録し、協奏曲だけでは見えにくい作曲家の大胆な管弦楽感覚まで味わえる構成。古楽器演奏が一般化する以前の録音ながら、音楽の生命力はまったく古びない。ランパル・ファンはもちろん、バッハ一族の「最も刺激的な息子」を知る格好の一枚。二つの協奏曲の性格の違いも鮮やかで、イ短調の切迫感からト長調の晴朗さへと移る流れが心地よい。初期ランパルの若々しい勢いと、すでに完成された歌の技術が同居している。 |

fr 675 |
J.C.バッハ:
2本のクラリネット、2本のホルンとバスーンのための4つの四重奏曲
Recording date : 1957
同:
交響曲変ロ長調 op. 18 nー 2(「ルーチョ・シッラの為の序曲」
Recording date : 1956
W.F.バッハ:交響曲ニ短調 F.65
Recording date : 1956 |
ジャン・ランスロット(Cl)
ギルバート・クルジエ(Hr)
アンドレ・フルニエール(Hr)
クラウド・デスルモント(Cl)
パウル・ホンネ(バスーン)
フランス管楽アンサンブル
ルイス・デ・フロメント指揮
パリ器楽アンサンブル |
Length : 01:02:14
Original edition : L'Oiseau-Lyre OL 50135
-Path? DTX 180 |
これは管楽器好きにはたまらない珍品。J.C.バッハの、2本のクラリネット、2本のホルンとバスーンのための四重奏曲を中心に、交響曲、さらに兄W.F.バッハの激しいニ短調交響曲まで収める。ジャン・ランスロットをはじめ、フランス管楽界の名手たちが織りなす響きは、柔らかく典雅でありながら、各楽器の色彩がくっきりと立ち上がる。ルイス・デ・フロメントの指揮も軽快で、18世紀音楽の快活さと意外なドラマ性を見事に両立。モーツァルトへとつながる優雅な世界と、バロックの激情を引きずる世界が一枚の中で交差する、まさにForgotten Recordsらしい発見盤。とりわけ管楽器同士が問いかけ、応え、笑い合うような四重奏曲の愉悦は格別。名曲中心のカタログではまず出会えない作品と名手が一堂に会した、資料的価値だけでは終わらない楽しいアルバムである。 |

fr 676 |
レスピーギ:
ヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲「グレゴリオ聖歌風」
Recording date : 1953
ベリオ:
ヴァイオリンと管弦楽のための「バレエの情景」
op. 100*
Recording date : 1955 |
クルト・スティーラー(Vn)
エルネスト・ボルサムスキー指揮
ライプツィヒ放送響
カール・タシュケ(Vn)*
ヘルベルト・ケーゲル指揮*
ライプツィヒ・フィル* |
Length : 00:44:08
Original edition : Urania URLP 7100 et URLP
7166 |
レスピーギの《グレゴリオ聖歌風協奏曲》は、華麗な《ローマ三部作》とはまるで異なる、祈りと古い旋法の神秘に包まれたヴァイオリン協奏曲。クルト・スティーラーの独奏は、作品の内省的な美しさを誇張せず、静かな熱をもって歌い上げる。併録のベリオ《バレエの情景》では、カール・タシュケと若きヘルベルト・ケーゲルが、より劇的で色彩的な世界を展開。ライプツィヒの二つのオーケストラによる1950年代録音という点も興味深い。知られざるイタリア近代のヴァイオリン作品を、東独演奏陣の重厚な響きで聴くという、実に味わい深い一枚。レスピーギの長い旋律が静かに空へ伸びていく瞬間と、ベリオの舞台的な華やぎとの対照も鮮明。44分という収録時間ながら、知られざる協奏的作品の世界を濃密に味わえる。 |

fr 677 |
グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 op. 16
Recording date : 1944
スクリャービン:ピアノ協奏曲嬰ヘ短調 op.
20*
Recording date : 1954 |
フリードリヒ・ヴューラー(P)
カール・ベーム指揮
ウィーン・フィル
ハンス・スワロフスキー指揮*
ウィーン・プロ・ムジカ管* |
Length : 00:54:50
Original edition : Urania URRS 7-15 - Vox
PL 9200 |
これは強烈。1944年、フリードリヒ・ヴューラー、カール・ベーム、ウィーン・フィルによるグリーグの協奏曲というだけで、歴史的録音ファンなら胸が騒ぐ。ヴューラーのピアノは甘美さに流れず、骨太な和音と堂々たる構築力で作品を北欧の抒情詩から巨大なドラマへと変貌させる。ベームとウィーン・フィルの濃密な伴奏も聴きもの。さらに1954年のスクリャービン協奏曲では、ハンス・スワロフスキーとともに、夢幻的な作品を明晰かつ力強く描く。録音年代も指揮者も異なる二つの協奏曲から、ヴューラーという大ピアニストの知性と剛毅な個性が鮮烈に伝わる貴重盤。ヴューラーの録音を追う人にはもちろん、ベームやスワロフスキーの戦中・戦後初期の姿を知りたい人にも見逃せない。二作品を貫くのは、虚飾を排して音楽の骨をむき出しにするような強さである。 |

fr 678 |
ドビュッシー:弦楽四重奏曲ト短調
ラヴェル:弦楽四重奏曲ヘ長調 |
カーティス四重奏団 |
Recording date : 1955
Original edition : Westminster WN 18049 |
ドビュッシーとラヴェルの弦楽四重奏曲を、アメリカの名門カーティス四重奏団が演奏した1955年ウェストミンスター録音。フランスの団体とは異なる、引き締まった造形と力強い推進力が大きな魅力で、色彩や香りだけに寄りかからず、両作品の緻密な構造をくっきりと浮かび上がらせる。ドビュッシーでは鋭いリズムと官能的な陰影、ラヴェルでは精密なアンサンブルと気品ある歌が際立つ。録音史上、この二曲は数多く組み合わされてきたが、これほど骨格が明瞭で、室内楽としての緊張感に満ちた演奏は意外に少ない。フランス近代の名作を、別角度から再発見させてくれる一枚。カーティス四重奏団特有の、四人が大きなひとつの楽器となって鳴るような統一感も聴きどころ。ウェストミンスター全盛期の骨太な録音美学を伝える、室内楽ファン注目の復刻である。 |

fr 679 |
アルベニス/エンリケ・フェルマンデツ・アルボス編:
イベリア(管弦楽版)
Recording date : 1953 |
ジョージ・セバスティアン指揮
コンセール・コロンヌ協会管 |
ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」
Recording date : 1952 |
アンパリト・ぺリス・ド・プリュリエル(S)
ジャン・マルティノン指揮
パリ・オペラ・コミーク管&合唱団 |
Length : 01:07:01
Original edition : Urania URLP 7085 et URLP
7034 |
スペイン音楽の熱気とフランスの洗練が一枚に凝縮された魅力盤。アルベニス《イベリア》のアルボス編曲版を、ジョージ・セバスティアンとコンセール・コロンヌ協会管が、濃厚な色彩と躍動感をもって描き出す。そしてファリャ《三角帽子》では、若きジャン・マルティノンがパリ・オペラ・コミークのオーケストラと合唱を率い、舞台の匂いが立ちのぼるような生々しい演奏を展開。後年の精緻な名指揮者マルティノンとはまた違う、血気盛んな推進力が実に痛快である。1950年代初頭のパリで花開いた「スペイン趣味」を、豪華な二本立てで堪能できる、色彩派必携の復刻。歌手を含む《三角帽子》の本来の劇場的魅力も十分で、単なる管弦楽組曲とは違う熱と匂いがある。パリのオーケストラがスペインの光と影をどう受け止めたか、その歴史的な面白さも尽きない。 |

fr 680 |
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第25番ハ長調 K. 503
Recording date : 1958
幻想曲ハ短調 K. 475
Recording date : 1959
ピアノ・ソナタ第14番ハ短調 K. 457
Recording date : 1959
同第10番ハ長調 K. 330
Recording date : 1959 |
アンドレ・チャイコフスキー(P)
フリッツ・ライナー指揮
シカゴ響 |
Length : 01:15:55
Original edition : RCA LSC 2287 et LSC 2354 |
アンドレ・チャイコフスキーとフリッツ・ライナー、シカゴ交響楽団――この顔合わせだけでも特別だが、演奏は期待以上に鮮烈。第25番ではライナーの厳格で引き締まったオーケストラに対し、チャイコフスキーが鋭い知性と独特の自由さで切り込み、モーツァルトの雄大さと危うい緊張を同時に引き出す。後半の幻想曲とソナタでは、彼の孤高の精神がさらに露わになり、ハ短調作品の暗い情念からK.330の透明な明るさまで、ひと筋縄ではいかない表情を聴かせる。奇人として語られがちな彼だが、ここに刻まれているのは、疑いなく第一級のモーツァルト弾きの姿である。ライナーの冷徹さとチャイコフスキーの奔放さは、衝突するどころか互いを刺激し、比類ない緊張を生む。名盤の多い作品でなお、これでしか聴けない個性がはっきり存在する。 |

fr 681 |
リスト:ダンテ交響曲 S 109 |
ジョージ・セバスティアン指揮
コンセール・コロンヌ協会管 |
Recording date : 1953
Length : 00:52:47 Original edition : Urania
URLP 7103 |
リストの《ダンテ交響曲》を1953年のコンセール・コロンヌ協会管で聴くという、なんともそそられる復刻。ジョージ・セバスティアンは、地獄篇の禍々しい咆哮から煉獄篇の静かな祈りまで、作品の巨大な振幅を劇場的な感覚で描き切る。現代の超高性能オーケストラによる精密な演奏とは違い、管楽器の生々しい色合い、弦の熱っぽいうねり、そして一歩間違えば崩れそうなほどの切迫感が、かえってダンテの幻想世界を目前に出現させる。フランスの伝統あるオーケストラが奏でるリストという組み合わせも独特。作品の宗教性と怪奇性を濃厚に味わえる、歴史的録音ならではの一枚。終結部に女声合唱が加わる瞬間の劇的効果も大きく、暗闇の彼方から救済の光が差し込むようだ。音の豪華さよりも物語の切実さを求める聴き手に、強く薦めたい《ダンテ交響曲》である。 |

fr 682 |
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第17番ト長調 K. 453
同第24番ハ短調 K. 491 |
ジーナ・バッカウアー(P)
アレク・シャーマン指揮
ロンドン響 |
Recording date : 1956
Length : 00:58:17 Original edition : His
Master's Voice DLP 1124 |
ジーナ・バッカウアーのモーツァルトは、優雅で可憐という一般的なイメージを鮮やかに突き破る。第17番では豊かな音量と堂々たるフレージングで作品の祝祭性を押し広げ、第24番ではハ短調の悲劇性を深く掘り下げ、まるでベートーヴェンへ直結するかのような劇的世界を築く。それでいて細部は粗くならず、旋律の歌わせ方には独特の温かさがある。夫でもあったアレク・シャーマンの指揮、ロンドン交響楽団の厚みある響きも、このスケールの大きなモーツァルトをしっかり支える。小粒で端正な演奏とは正反対。大ピアニストが真正面から作品に挑み、巨大な音楽へと成長させた異色の名演。バッカウアーの大きな手から生まれる豊かな響きは、決して鈍重にならず、弱音では驚くほど柔らかい。この豪胆さと繊細さの両立こそ、彼女が世界的名声を得た理由を雄弁に物語る。 |

fr 683 |
モーツァルト:
ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K. 216
同第4番ニ長調 K. 218 |
ポール・マカノヴィツキー(Vn)
カール・リステンパルト指揮
ザール室内管 |
Recording date : 1961
Length : 00:43:41 Original edition : Le
Club Francais du Disque CFD 2266 |
ポール・マカノヴィツキーとカール・リステンパルト――通好みの二人が出会った、実に魅力的なモーツァルト。マカノヴィツキーのヴァイオリンは、艶やかさを前面に押し出すのではなく、細身で気品ある音色の中に鋭い集中力を宿す。ひとつひとつの装飾やフレーズが自然に息づき、第3番の若々しい輝き、第4番のより堂々とした表情が鮮明に描き分けられる。リステンパルトとザール室内管の伴奏も、軽快でありながら芯が強く、独奏との対話が絶妙。古楽器以前の演奏でありながら、重さやロマン的な誇張とは無縁で、清新な生命力に満ちている。1961年という時代の先を行くモーツァルト像。カデンツァでも自己主張を膨らませず、作品の若々しい会話を壊さない節度が美しい。リステンパルトのディスコグラフィーを追う人にも、マカノヴィツキー再評価の入口としても絶好である。 |

fr 684 |
モーツァルト:
交響曲変ロ長調 K. 311 A「フランス風序曲」
交響曲第32番ト長調 K. 318「イタリア風序曲」
同第33番 変ロ長調 K. 319
同第34番ハ長調 K. 338 |
モーリス・エウィット指揮
エウィット管 |
Recording date : 1951 Length : 00:55:25
Original edition : Les Discophiles Francais
DF 88 |
モーリス・エウィットが自らのオーケストラを率いて録音した、若きモーツァルトの交響曲集。K.311aの《フランス風序曲》から第34番まで、オペラ序曲のような華やかさと、交響曲としての充実が一気に深まっていく時期をまとめて味わえる選曲がうれしい。エウィットはヴァイオリニストとして培った感覚を生かし、弦楽器をしなやかに歌わせながら、鋭いアクセントと快活なテンポで音楽を前へ進める。1951年録音らしい端正さの中に、戦後フランスの明るさと洒脱さが宿る演奏。後期三大交響曲とは違う、劇場人モーツァルトの若々しい才気を存分に楽しませてくれる、軽やかで味わい深い一枚。小編成ならではの透明感がありながら、必要なところではティンパニとトランペットが鮮やかに輝く。忘れられた指揮者エウィットの音楽家としてのセンスを再認識させる、実にチャーミングな復刻。

|

fr 685 |
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K. 466
Recording date : 1959
フランク:交響的変奏曲*
Recording date : 1955
ラフマニノフ:
パガニーニの主題による狂詩曲 op. 43*
Recording date : 1955 |
モニク・ド・ラ・ブルショルリ(P)
ジャン・マルティノン指揮
パリ・フランス放送響
イオネル・ペルレア指揮*
コンセール・コロンヌ協会管* |
Length : 01:08:57
Original edition : Pathe-Vox PL 9750 |
モニク・ド・ラ・ブルショルリの個性を知るには、これ以上ないほど強烈な一枚。モーツァルト第20番では、悲劇的なニ短調の世界へ真正面から踏み込み、強靭な打鍵と大胆な感情表現で音楽を燃え上がらせる。ジャン・マルティノンの鋭敏な伴奏も見事。さらにフランク《交響的変奏曲》とラフマニノフ《パガニーニ狂詩曲》では、華麗な技巧、濃厚なロマン、そして驚くほど繊細な歌心が一気に解き放たれる。事故によって演奏活動を断たれ、録音も決して多くない彼女だけに、この三作品をまとめて聴ける価値は大きい。気品よりも情熱、均整よりも生命――ピアノが生き物のように躍動する。ブルショルリはコルトー、ザウアーらに学び、舞台で圧倒的な人気を得ながら、残された録音は限られている。だからこそ、この激しくも華麗な演奏の一音一音が、失われた大芸術家の証言として重い。 |

fr 686 |
ハチャトゥリアン:
ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
Recording date : 1953
サン=サーンス:
序奏とロンド・カプリチョーソ op. 28*
Recording date : 1957 |
イーゴリ・オイストラフ(Vn)
ユージン・グーセンス指揮
フィルハモニア管
シュヒター指揮*
プロ・アルテ管* |
| Original edition : Columbia CX 1141, CX 1594 |
イーゴリ・オイストラフ若き日のハチャトゥリアン協奏曲。父ダヴィッドの名演があまりにも有名だが、息子イーゴリもまた、鋭い技巧と灼熱の歌心を備えた大ヴァイオリニストだったことを思い知らせる。民族舞曲の激しいリズム、官能的な旋律、火花を散らす終楽章まで、一瞬たりとも気を緩めない。ユージン・グーセンスとフィルハモニア管の豪快な伴奏も圧巻で、1953年のモノラル録音とは思えぬ迫力を放つ。併録の《序奏とロンド・カプリチョーソ》では、軽やかな身のこなしと洒脱な色気を披露。大協奏曲の熱狂と小品の鮮やかな切れ味、二つの顔を楽しめる充実盤。父とは異なる、やや硬質で直線的な音の運びが、ハチャトゥリアンの野性味をいっそう際立たせる。若きイーゴリが自らの名を刻もうとする気迫が、スピーカー越しにもひしひしと伝わってくる。 |

fr 687 |
ショパン:24の練習曲集 |
コルトー(P) |
Recording date : 1942
Length : 00:51:48
Original edition : La Voix de Son Maitre
W1531/36 (78t.), FJLP 5030 |
コルトーによるショパン《24の練習曲》、1942年録音。これは技巧の完全無欠さを測るための演奏ではない。音がこぼれ、リズムが揺れ、時に危うさを見せながら、その一瞬一瞬から詩とドラマが噴き出してくる。コルトーにとって練習曲は「指の訓練」ではなく、24篇からなる巨大な幻想詩だった。作品10では若々しい情熱と憂愁、作品25ではさらに深い陰影と夢幻性が広がり、有名な《別れの曲》《革命》《木枯らし》も、聴き慣れた表情を脱ぎ捨てて迫ってくる。戦時下のパリで刻まれた歴史的記録であり、現代のピアニストには決して再現できない、危険なまでに人間的なショパン。ミスタッチさえ表現の渦に飲み込まれ、聴き手は採点することを忘れてしまう。技術の時代が進むほど、こうした演奏の自由と切実さは貴重になる。ショパン演奏史の中でも、避けて通れない記録である。 |

fr 688 |
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第12番イ長調 K. 414
同第14番変ロ長調 K. 449 |
デニス・マシューズ(P)
ルドルフ・シュワルツ指揮
フィルハモニア管 |
Recording date : 1954
Length : 00:48:39 Original edition : Columbia
SX 1031 |
デニス・マシューズ、ルドルフ・シュワルツ、フィルハモニア管による1954年のモーツァルト。第12番と第14番という、華やかな大協奏曲の陰に隠れがちな二作品を組み合わせたところが何とも渋い。マシューズは軽やかなタッチと自然な語り口で、室内楽的な親密さを大切にしながら、ふとした転調や陰影にモーツァルト特有の切なさをにじませる。第12番の晴朗な美しさ、第14番の引き締まった気品が明瞭に描き分けられ、シュワルツの伴奏も控えめながら実に雄弁。スター的な誇示とは無縁だが、音楽そのものが静かに語りかける。英国の良質なモーツァルト演奏文化を伝える佳品。第23番や第27番のような深いドラマとは異なり、若いモーツァルトの社交性と創意が親密なサイズで花開く。派手な宣伝文句は似合わないが、棚から静かに取り出して何度も聴きたくなる一枚。 |

fr 689 |
ヘンデル:オルガン協奏曲集
第2番変ロ長調 op. 4, n° 2
第4番ヘ長調 op. 4, n° 4
第8番イ長調 op. 7, n° 2
第10番 ニ短調 op. 7, n° 4 |
ジェライント・ジョーンズ(オルガン)
シュヒター指揮
フィルハモニア管 |
Recording date : 1952
Length : 01:04:23
Original edition : His Master's Voice DLP
1037 et DLP 1052 |
英国の名オルガニスト、ジェライント・ジョーンズが弾くヘンデルのオルガン協奏曲集。壮麗な教会オルガンの響きを押し出すのではなく、オーケストラとの軽やかな応答、即興的な装飾、舞曲のような躍動を大切にした、実に音楽的な演奏である。シュヒター指揮フィルハモニア管も、厚ぼったくならず、晴れやかな弦と明快なリズムで独奏を支える。第2番、第4番、第8番、第10番と、作品4・作品7から性格の異なる4曲を選び、ヘンデルの機知、荘厳さ、親しみやすさを一度に楽しめる構成も秀逸。1952年録音ながら古びた重厚さはなく、むしろ現代にも通じる爽快な生命力がある。ジョーンズはヘンデル演奏・研究の先駆者としても知られ、その確かな様式感が随所に息づく。古楽器の刺激とは別種の、英国的な品格と親しみやすさを備えたヘンデルを存分に楽しめる。 |

fr 691/2
(2CD-R)
\5990 |
ボッケリーニ:
チェロ協奏曲第9番 変ロ長調 G.482
Recording date : 1955
ハイドン:
チェロ協奏曲 ニ長調 op. 101, Hob. VIIb,
2
Recording date : 1955
ラロ:チェロ協奏曲ニ短調+
Recording date : 1952
ブルッフ:コル・二ドライ op. 47+
Recording date : 1951
シューマン:トロイメライ(子供の情景より)+
Recording date : 1951 |
ティボル・デ・マヒュラ(Vc)
パウムガルトナー指揮
ウィーン響
オッテルロー指揮+
ハーグ・フィル+ |
Length : 01:26:34
Original edition : Philips S 04020 L, N 00602
R, N 00107 R, 430007 PE |
ティボル・デ・マヒュラ――フルトヴェングラーに招かれてベルリン・フィルの首席を務め、戦後はコンセルトヘボウ管の首席として長く活躍した名チェリスト。その貴重な協奏曲録音を2枚に集成した注目盤である。ボッケリーニとハイドンでは、端正な技巧と気品ある歌を聴かせ、ラロでは一転、太く情熱的な音で作品のドラマを押し広げる。《コル・ニドライ》と《トロイメライ》では、深い呼吸と温かな人間味が胸を打つ。パウムガルトナー、オッテルローという名匠の伴奏も申し分ない。オーケストラの名物首席にとどまらない、独奏者デ・マヒュラの大きな器を実感できる、チェロ愛好家必携の復刻。艶を誇示せず、深く落ち着いた音で旋律を語るため、聴き進むほどに味わいが増していく。名門オーケストラの中核を支えた奏者が、独奏の場で見せた誇りと風格がここにはある。 |

fr 693 |
サン=サーンス:
交響詩「オンファールの糸車」 op. 31
Recording date : 1950
同:交響詩「ファエトン」 op. 39
Recording date : 1956
同:交響詩「死の舞踏」 op. 40
Recording date : 1950
同:交響詩「ヘラクレスの青年時代」 op. 50
Recording date : 1956
デュカス:「魔法使いの弟子」
Recording date : 1956
ラボー:夜の行列 op. 9
Recording date : 1950 |
ミトロプーロス指揮
NYP |
Length : 01:04:06
Original edition : Columbia ML 5154, 5198,
2170 |
ミトロプーロスとニューヨーク・フィルによる、フランス管弦楽曲の大饗宴。サン=サーンスの四つの交響詩をまとめて聴けるだけでも貴重だが、《魔法使いの弟子》とラボー《夜の行列》まで加わる選曲が実に豪華。ミトロプーロスはフランス音楽を上品な色彩画として整えるのではなく、物語の狂気、怪奇、官能をむき出しにする。《死の舞踏》の不気味な跳躍、《ファエトン》の破滅的な疾走、《魔法使いの弟子》の制御不能な高揚――どれも手に汗握る迫力である。ニューヨーク・フィルの強靭な響きも痛快。洗練だけでは終わらない、暗く激しく燃えるフランス音楽を堪能できる異色の名演集。サン=サーンスの交響詩を「軽い名曲」と思っている人ほど、この演奏の凄みには驚かされるはず。ミトロプーロスは作品の奥に潜む死と運命の影を暴き、聴き慣れた曲を異様なドラマへ変えてしまう。 |

fr 694 |
J.S.バッハ:
ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調 BWV 1042*
Recording date : 1956
同:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 BWV 1052+
Recording date : 1958
同:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ ト短調 BWV
1001
Recording date : 1954
ヴィターリ:シャコンヌ
Recording date : 1954
モーツァルト/クライスラー:
セレナーデ第7番 ニ長調 K. 250**
Recording date : 1954 |
イーゴリ・オイストラフ(Vn)
コンヴィチュニー指揮
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管*
シュターツカペレ・ドレスデン+
アブラム・マカロフ(P)** |
Length : 01:16:31
Original edition : Eterna 820027 et 720064
- Le Chant du Monde LD A-8092 |
イーゴリ・オイストラフの若き日の多彩な芸術を一枚に凝縮。バッハの協奏曲では、コンヴィチュニーとゲヴァントハウス管、シュターツカペレ・ドレスデンという重厚な東独の響きを背景に、力強く格調高い独奏を聴かせる。無伴奏ソナタでは、一本のヴァイオリンだけで巨大な建築を築くような集中力を示し、ヴィターリ《シャコンヌ》ではロマンティックな情熱を存分に解放。さらにクライスラー編曲によるモーツァルト《ハフナー・セレナード》の小品では、軽妙さと優雅な歌心を披露する。協奏曲、無伴奏、大技巧的小品まで、イーゴリの芸風を立体的に知ることのできる、内容ぎっしりの76分。父ダヴィッドの巨大な影の下で語られがちなイーゴリだが、このアルバムには独自の若々しい気迫と、端正な造形感覚が刻まれている。東独録音の渋い音色も、この芸風によく似合う。 |

fr 695 |
ボロディン:交響曲第2番 ロ短調 op. 5
Recording date : 1953
同:だったん人の踊り(歌劇「イーゴリ公」より)
Recording date : 1952
同:交響詩「中央アジアの草原にて」
Recording date : 1954
イッポリトフ=イヴァノフ:組曲「コーカサスの風景」
opus 10
Recording date : 1954 |
ミトロプーロス指揮
NYP |
Length : 01:11:48
Original edition : Columbia ML 4966 et ML
4815 |
ミトロプーロスとニューヨーク・フィルが描く、土の匂いと原色の輝きに満ちたロシア音楽集。ボロディンの交響曲第2番では、冒頭から骨太なリズムと濃密な歌がぶつかり合い、《だったん人の踊り》では舞台を突き破るような高揚感が押し寄せる。《中央アジアの草原にて》の静かな遠景から、イッポリトフ=イヴァノフ《コーカサスの風景》の豪快な民族舞踊まで、同じ指揮者とオーケストラで一気に味わえるのも魅力。美しく整えるより、作品の野性、熱気、哀愁をむき出しにするのがミトロプーロス。ニューヨーク・フィルの逞しい金管と厚い弦が、その強烈な音楽観に応える。ロシア管弦楽曲の楽しさを真正面から浴びる、痛快な一枚。聴き終えたあとには、遠い草原の風と祭りの熱狂が鮮烈に残る。 |

fr 696 |
ハイドン:交響曲第80番 ニ短調 Hob. I/80
(Haydn)
Recording date : 1955
同:ディヴェルティメント第5番ハ長調 Hob.
II/29
Recording date : 1955
モーツァルト:
セレナーデ第6番 ニ長調 K. 239 「セレナータ・ノットゥルナ」
Recording date : 1955
ベートーヴェン:交響曲第1番 ハ長調 op.
21
Recording date : 1953 |
ジョン・プリッチャード指揮
フィルハモニア管
ウィーン響(ベートーヴェン) |
Length : 01:04:10
Original edition : His Master's Voice CPL
1061- Philips S 06037 |
若きジョン・プリッチャードが、古典派音楽の多彩な表情を一枚にまとめた興味深い録音。ハイドンの交響曲第80番は、ニ短調の緊張感と機知に富んだ展開が交錯する隠れた名作で、続くディヴェルティメントでは軽やかな室内楽的対話が楽しめる。モーツァルト《セレナータ・ノットゥルナ》の夜の優雅さを経て、最後はベートーヴェンの交響曲第1番へ。バロック的な名残から、古典派の洗練、そして新時代の力強さへと向かう流れが見事である。フィルハモニア管の精緻な響きと、ベートーヴェンでのウィーン響の豊かな量感も聴きどころ。プリッチャードの端正さだけでなく、若々しい推進力と劇場的な呼吸が感じられる、選曲の妙が光る一枚。古典派好きなら、思わぬ発見が連続するはず。 |

fr 698 |
ワルター・ゲールの第9!
ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調op.
125 「合唱」 |
ワルター・ゲール指揮
オランダ・フィル&
同合唱団
Soprano : Corry Bijster
Tenor : David Garen
Contralto : Elisabeth Pritchard
Bass : Leonardo Wolovsky |
Recording date : 1951
Length : 01:06:52
Original edition : Musical Masterpiece Society
MMS 2034 |
ワルター・ゲールによる1951年録音の《第九》。この名前でベートーヴェンの「合唱」を聴けるというだけでも、Forgotten Recordsらしい発掘の喜びに満ちている。ゲールは作曲家、編曲家、指揮者として幅広く活動した音楽家で、ここでも作品を巨大な記念碑として仰ぎ見るのではなく、各声部を明晰に動かしながら全曲を一つの劇として押し進める。演奏時間66分台という引き締まった進行も印象的で、第1楽章の切迫感、スケルツォの鋭い推進、終楽章の熱気が途切れない。オランダ・フィルと合唱団、四人の独唱者が一体となって築く、素朴で真摯な歓喜の歌。豪華さや重厚さとは別の、戦後間もない時代の切実な祈りが伝わってくる貴重な《第九》である。 |

fr 699 |
ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 op. 98 |
クリスティアン・フェラス(Vn)
ラファエル・クーベリック指揮
フランス放送フィル |
Recording date : 1960
Length : 01:02:58 |
クリスティアン・フェラス、ラファエル・クーベリック、フランス放送フィルという顔合わせで、ベルクのヴァイオリン協奏曲とブラームスの交響曲第4番を組み合わせた、あまりに魅力的な1960年録音。フェラスのヴァイオリンは、ベルク作品の複雑な書法を冷たく分析するのではなく、一本の長い哀歌として歌い抜く。繊細な美音の奥に、張りつめた神経と深い悲しみが宿る。一方のブラームスでは、クーベリックが透明な構造感と熱い呼吸を両立させ、終楽章へ向かって悲劇の密度を高めていく。ベルクからブラームスへ――時代は異なっても、失われたものへの追憶と厳しい美が響き合う。演奏家、作品、組み合わせのすべてが特別な、忘れがたい一枚。 |

fr 700 |
J.S.バッハ:
ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調BWV1041、
同第2番ホ長調 BWV1042cki
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
op. 61 |
ロマン・トーテンベルク(Vn)
スタニスラフ・ヴィスウォッキ指揮
ワルシャワ・フィル
ポズナン・フィル(ベートーヴェン) |
Recording date : 1958 Length : 01:19:58
Original edition : Muza XL 0049 et XL 0050 |
ロマン・トーテンベルクの芸術を、バッハとベートーヴェンという二つの頂点で聴く充実の一枚。バッハの二つの協奏曲では、端正な造形の中にしなやかな歌と気品を宿し、旋律を過度に飾ることなく自然に息づかせる。ヴィスウォッキ指揮ワルシャワ・フィルとの呼吸もよく、独奏と合奏が対等に語り合う。一方、ベートーヴェンではポズナン・フィルを背景に、より大きなスケールと内面的な強さを示す。華やかな技巧を前面に押し出すのではなく、長い旋律を深く歌い、終楽章まで揺るがぬ品格を保つ演奏である。1958年のポーランド録音という点も興味深い。トーテンベルクの知性、温かさ、古典的な節度を一度に味わえる、ヴァイオリン好きには見逃せない79分。 |

fr 702 |
シューマン:謝肉祭 op. 9、ウィーンの謝肉祭の道化
op. 26
リスト:パガニーニによる大練習曲 |
ロバート・ゴールドサンド(P) |
Recording date : 1953 Length : 01:16:54
Original edition : Musical Masterpiece Sociey
MMS 2053 et 3012 |
ロバート・ゴールドサンドが、シューマンの二つの《謝肉祭》とリストの《パガニーニ大練習曲》を弾き切った、76分を超える壮大なピアノ・アルバム。シューマン《謝肉祭》では、短い小品が次々と姿を変える仮面舞踏会を、鋭い性格描写と鮮やかな転換で描く。《ウィーンの謝肉祭の道化》では、外向的な華やかさの中に突然現れる抒情を丁寧にすくい上げる。そしてリストでは、技巧そのものが音楽の幻想へ変わる瞬間を聴かせる。派手さだけで押し切らず、各曲の輪郭を明確にしながら、ロマン派ピアノ音楽の奔放さを解放していくのがゴールドサンドの魅力。シューマンの詩情とリストの超絶技巧を一人のピアニストで味わえる、1953年録音の隠れた大作。 |