大アーティスト
なぜか埋もれていたアルバム
その4
その名の通り。
大演奏家たちの、どういうわけか見過ごされてしまっている不遇な音源を紹介する特集。
廃盤になるのが早いこの業界、こういう特集でその存在をきっちり押さえておいていただければ。
ただ在庫数が限られている場合、抽選、あるいは早めの完売の可能性もあるのでご容赦ください。
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「1939年の二人は、まだ音楽の中を走っていた。」
バックハウス55歳、ベーム44歳
ブラームス:ピアノ協奏曲第2番
バックハウスがベートーヴェンと並んで本領を存分に発揮したもうひとつの世界――それがブラームス。
この盤に収められているのは、1939年、カール・ベーム指揮、ザクセン国立歌劇場管弦楽団とのピアノ協奏曲第2番。
バックハウスのブラームス:ピアノ協奏曲第2番というと、1953年のシューリヒトとの録音(DECCA)。
そして1967年のベーム&ウィーン・フィルとの録音(DECCA)。
とくに1967年のベーム&ウィーン・フィルとのステレオ録音は、いまだにこの曲の絶対的名演として君臨しています。
ところが、その28年前、二人はこの曲をHMVに録音していたんです。
1939年。
バックハウスは55歳。
ベームは44歳。
ただ上記二つの録音に隠れてまったく日の光を浴びることはありません。
で、この演奏、聴き始めたときには少し意外でした。
バックハウスとベーム。
この超重量級の二人なのだから、もっとずしりと重く、巨大なブラームスがやってくるものだと思っていたのです。
ところが、第3楽章まで聴いても、思ったほど重くない。
最初は「ヘンスラーの復刻が少しおとなしいせいかな」とさえ思いました。
しかし終楽章に入って、印象が一変しました。
なんと軽やかで、ダンサブルで、楽しげな演奏なのだろう。
二人が音楽の中を自由自在に駆け回っているんです。
本当に野原を跳び、走り、踊っている。
後年の1967年盤は、その立派さ、風格、深さはもちろん比類がありません。
しかし1939年盤には、そこにはないものがあるんです。
跳躍力。
躍動感。
自分たちの前にまだ果てしない未来が広がっているかのような勢い。
バックハウス55歳。
ベーム44歳。
まだ若い。
まだまだ若い。
このあと二人が20世紀を代表する大巨匠となっていくことを、私たちは知っています。
しかしこの録音のとき、まだ二人はそのことを知りません。
1939年の二人は、まだ音楽の中を走っていた。
しかもこの録音のときというのは・・・
そう、世界が大きく暗転していく、その直前の時代です。
その歴史を知って聴くと、この終楽章のまぶしいほどの生命力が、いっそう胸に迫ってきます。
そしてカップリングは1937年録音のシューマン《幻想曲》。
こちらもまた、後年のイメージとは少し違うバックハウスに出会えるはずです。
大演奏家の「埋もれた演奏」を聴く 第4弾。
今回は、大巨匠になる前のバックハウスとベームです。
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